“Yes”しか言えなかった僕が、“No”を言えるようになるまで

「断れない日本人」が海外で学んだ、健全な“ノー”の伝え方

  1. 「できる?」と聞かれて、断れなかったあの頃の僕
    1. 「No」と言うことに、恐怖すら感じていた
    2. でも、“Yes”を積み重ねた先にあったのは…
    3. “断れなかった”ことが、チームに迷惑をかけた日
    4. 「No」を言うのは、弱さじゃなく、誠実さだった
  2. “No”が言えるようになるまでの小さな練習
    1. 最初の“No”は、震えるほど怖かった
    2. 「断る」のではなく、「代替案を出す」
    3. “No”を言えるようになって、チームとの距離が縮まった
    4. “Yes病”の正体は、「嫌われる恐怖」だった
    5. 僕がよく使っている、“やわらかいNo”フレーズ集
  3. “Yes”の積み重ねが、チーム全体を疲弊させた日
    1. 「やります!」が引き起こした、誰も得をしない結末
    2. 「Yes」と言うたびに、信頼貯金が目減りしていく
    3. 海外のエンジニアたちは、なぜあんなに“ハッキリ断る”のか?
    4. 「断る勇気」と「受け入れる責任」のバランス
    5. “No”を言えることで、周囲も安心する
  4. “No”を言えるようになって、ようやくチームの一員になれた
    1. “頼まれたら断れない人”から、“信頼して任せられる人”へ
    2. 自己犠牲の“良い人”ではなく、共に働く“対等な仲間”へ
    3. 信頼されるエンジニアの共通点は「Yes」と「No」のバランス
    4. 海外で働く日本人エンジニアに伝えたいこと
    5. 「No」を言えるようになった僕が得たもの
    6. まとめ|“No”を言える人が、信頼を得ていく

「できる?」と聞かれて、断れなかったあの頃の僕

「Hiro, can you take care of this hotfix before tomorrow’s release?」

時差もある。チームの中で僕が一番そのコードに詳しかった。
忙しい時期だったけれど、口から出た言葉はこうだった。

“Sure, I’ll take care of it.”

本当は──
(今やると他のバグ対応が遅れる)
(今日はもう時間がない)
(一度確認してから返事すべきだった)

そんな迷いが頭の中をぐるぐるしていた。
でも、返事はすでに「Yes」だった。


「No」と言うことに、恐怖すら感じていた

僕は日本で育ち、日本で社会人としてのキャリアをスタートした。
「頼まれたら断らない」はある意味で“美徳”とされてきた。

– 空気を壊さない
– 期待に応える
– 融通が利く人と思われたい

それが長年、自分の中に根を張っていた。
特に英語環境では、自分の英語力に自信がなかったこともあり──

“No”=ネガティブに思われる
“No”=協調性がない
“No”=評価が下がる

そんなふうに思い込んでいた。


でも、“Yes”を積み重ねた先にあったのは…

「No」を言わないことで、一時的にはスムーズに回るように見えた。

けれど、そのツケは確実に自分に返ってきた。

– タスクを抱えすぎて、納期がギリギリ
– 他の作業に手が回らなくなって信用を落とす
– 休日や深夜対応が常態化し、メンタルが疲弊していく

周囲から見れば「頼めば何でもやってくれる便利な人」になっていたけど、
その“便利さ”は、僕自身の首を絞めていた。


“断れなかった”ことが、チームに迷惑をかけた日

あるプロジェクトで、リリース直前に仕様変更が入り、
「ドキュメント更新もやっておいて」と頼まれた。

スケジュール的に無理があった。でもまた「Yes」と言ってしまった。

結局、時間が足りずにレビューも不十分なまま提出してしまい、
誤った手順で運用チームが作業を進め、軽微な障害が発生。

その後、リーダーのCarlosからこう言われた。

“If it’s too much, just say so. We don’t expect you to do everything.”

この言葉が、僕にとっての「転機」になった。


「No」を言うのは、弱さじゃなく、誠実さだった

このとき、はじめて本気で気づいた。

“Yes”はその場の調和を守るけど、
“No”は長期的な信頼を守るために必要な言葉だと。

無理をして引き受けて迷惑をかけるくらいなら、
最初から「No」と言って、他の方法を一緒に考える方がよかった。

“No”が言えるようになるまでの小さな練習

最初の“No”は、震えるほど怖かった

Carlosから「無理なら断っていい」と言われた翌週、
また似たようなシーンがやってきた。

“Hiro, could you review this new module and give feedback by end of day?”

その日はバグ対応で既に手一杯。
でも以前の僕なら、反射的に “Yes” と言っていただろう。

でも──今回は言ってみた。

“Actually, I won’t be able to finish it today. Can I take a look tomorrow morning?”

言い終えたあと、内心ビクビクしていた。
「仕事ができないと思われるんじゃないか」
「評価が下がるんじゃないか」

でも返ってきたのは、驚くほどあっさりした返事だった。

“Sure. Thanks for letting me know.”

なんだ、こんなものか。
むしろ言ってよかった──そう思えた最初の瞬間だった。


「断る」のではなく、「代替案を出す」

それ以降、“No”を言うときにはセットで“代案”を出すように意識した。

たとえば:

  • ✘ “I can’t do this.”
  • ✔ “I’m afraid I can’t finish this today, but I can take care of it first thing tomorrow.”
  • ✘ “No, I don’t have time.”
  • ✔ “I’m quite full this week—how about we pair up with someone else?”

断ること自体はネガティブに受け取られる可能性がある。
でも、「別の解決策を一緒に考える」という姿勢があるだけで、印象が全く違ってくる。

これは、**「断る」のではなく「協力の形を変える」**ということだと学んだ。


“No”を言えるようになって、チームとの距離が縮まった

面白いことに、“No”を言い始めてから、逆にチームからの信頼が高まった。

– 無理なときに無理と言ってくれるから、見通しが立てやすい
– 自分のキャパシティを理解している人として認識される
– 言うべきことを言ってくれる人=信頼できる人

ある日、リーダーがこんなふうに言ってくれた。

“I appreciate your honesty. It helps us plan better.”

以前は「頼まれたことを全部こなす人」が評価されると思っていたけれど、
海外では“正直に状況を伝える人”のほうがむしろ信頼される

それがようやく、実感として理解できるようになってきた。


“Yes病”の正体は、「嫌われる恐怖」だった

よくよく考えると、「No」と言えなかった理由はスキルの問題ではなく、
**「断る=嫌われる」**という思い込みだった。

でもそれは、自分自身にとっても、チームにとっても優しくない。
むしろ、「できないことはできない」と言えることの方が、
周囲への誠実さにつながる。

英語が下手でも、文法が間違っていてもいい。
大事なのは、“誠実に、自分のキャパシティを伝えること”。


僕がよく使っている、“やわらかいNo”フレーズ集

状況フレーズ例
タスクの期限が厳しいとき“I might not be able to finish it today. Is tomorrow OK?”
優先順位を調整したいとき“I’m currently focusing on X. Can we discuss when to slot this in?”
断るけれど前向きに返したいとき“Unfortunately I can’t take this now, but maybe someone else can support?”

ポイントは、完全に拒否するのではなく、相手の意図を尊重しながら代替策を提示すること

“Yes”の積み重ねが、チーム全体を疲弊させた日

「やります!」が引き起こした、誰も得をしない結末

あるとき、担当プロジェクトとは別に「UIテストの自動化をお願いしたい」と頼まれた。
ちょうど他メンバーの手が回っていないときだった。

タイミングは最悪だった。メインの機能開発が佳境に差し掛かっていて、
コードレビュー、バグ修正、仕様変更対応が山積み。

それでも、僕はこう言った。

“Sure, I can take care of that.”

なぜ断れなかったか?
──頼まれた相手が、自分にとって“信頼してくれている”リードエンジニアだったからだ。
そして何より、「期待に応えたい」という気持ちがあった。

結果どうなったか?

✔ UIテストは中途半端にしか対応できず
✔ 本来のタスクが遅れ、リリース直前でバグが見つかる
✔ チーム全体で修正のしわ寄せを食らう

最終的にリードエンジニアからこう言われた。

“I trusted you to tell me if it was too much.”

ぐさりと刺さった。


「Yes」と言うたびに、信頼貯金が目減りしていく

それ以降、僕は意識するようになった。

「Yes」は信頼されている証ではあるけれど、
無条件で出し続けると、“信頼の浪費”になりかねない。

一見、なんでも引き受ける人は「頼りがいがある」ように見える。
でも実際は──

  • チームのリソース把握が難しくなる
  • スケジュール管理が不安定になる
  • トラブルの原因が見えづらくなる

つまり、「Yesばかりの人」は、予測不能な存在になってしまうのだ。


海外のエンジニアたちは、なぜあんなに“ハッキリ断る”のか?

海外の職場で働きはじめたころ、驚いたことがある。

✔ 締切に間に合わないときは、即「無理です」と言う
✔ 優先度を理由に、依頼を断る
✔ 「今は違うことに集中している」とはっきり主張する

最初は「冷たいな」とさえ感じていた。
でもだんだんわかってきた。

断ることは、自分の責任範囲を明確にし、
仕事の質と納期を守るために必要な行為
だった。

むしろ彼らの行動は、“信頼に対して誠実”だった。


「断る勇気」と「受け入れる責任」のバランス

印象的だったやりとりがある。

あるメンバーが新しいタスクを依頼されたとき、こう返していた。

“At this point, I can’t commit to that without dropping something else.
Would you like me to de-prioritize current Task X?”

断るだけじゃなく、「選択を上司に委ねる」というスタイル。
責任感と誠実さがにじみ出ていた。

このとき、「No」はシャットアウトではなく、
**“より良い選択肢を一緒に考える入り口”**だということを学んだ。


“No”を言えることで、周囲も安心する

僕が“言える人”になってから、チームの雰囲気も少しずつ変わっていった。

– 「正直に断ってくれるから、安心して頼める」
– 「見通しが立てやすくなった」
– 「頼まれたことにYesが返ってきたら、ちゃんとできるってことだと分かる」

つまり、“Yes”の重みが変わった。

✔ 「この人が引き受けたなら、本当に大丈夫なんだな」
✔ 「必要ならNoと言ってくれるはずだ」

そんな**信頼の裏打ちがある“Yes”**に、僕自身も誇りを持てるようになった。

“No”を言えるようになって、ようやくチームの一員になれた

“頼まれたら断れない人”から、“信頼して任せられる人”へ

「No」を言うようになってから、明らかに変わったことがある。

それは、周囲の自分への接し方だった。

以前は、タスクを頼まれる頻度は多かったけれど、
どこか「便利屋」として見られていた節がある。

でも、“断るときは断る”というスタンスを取るようになってから、
僕に依頼が来るときには、相手も準備してくれるようになった。

“I know you’re busy—if it doesn’t fit your current priority, just let me know.”
“Do you think this could be realistic from your side?”

つまり、“引き受けてくれるなら信頼できる”という見方に変わったのだ。
Yesが前提ではない関係になったとき、初めて対等なプロフェッショナルとして扱われるようになったと感じた。


自己犠牲の“良い人”ではなく、共に働く“対等な仲間”へ

以前の僕は、「断ったら嫌われる」と本気で思っていた。

でも今は、それがまったく逆だったことがわかる。

✔ 無理なYesは、結果的にチームの足を引っ張る
✔ 断ることで、チーム全体のリソース管理が正確になる
✔ 自分のキャパを守ることは、質の高い仕事を維持することにつながる

そう気づいてからは、“No”は自己防衛ではなく、チームへの誠実さだと考えるようになった。


信頼されるエンジニアの共通点は「Yes」と「No」のバランス

僕の周りにいる、海外で長く活躍しているエンジニアたちには共通点がある。

それは、「Yes」と「No」の境界線を自分の中に持っていることだ。

– 自分がどこまでなら責任を持てるか
– 何を優先し、何を後回しにすべきか
– チームの成功にとって、今この依頼を受けるべきかどうか

この判断を日々の会話の中で自然とやっている。
「断らない優しさ」ではなく、「選ぶ責任」こそが、信頼の源だった。


海外で働く日本人エンジニアに伝えたいこと

僕たちは、日本で培ってきた「察する力」「責任感」「協調性」を武器にできる。
だけど、それに加えて、自分の意見・判断を明確に伝える力を持てば──
もっと強く、しなやかに働けるようになる。

✔「できません」と言う勇気
✔「代わりにこうしては?」と提案する習慣
✔「ここまでなら対応できます」と明確にする姿勢

これらはすべて、言葉の壁を越えて、プロフェッショナルとして信頼を得るためのスキルだ。


「No」を言えるようになった僕が得たもの

– 無理をしなくなった
– 自分のペースで仕事に集中できるようになった
– チームにとって頼れる存在になれた
– 英語で働くことへの“引け目”が減った

そしてなにより──
**「自分の言葉で、自分の働き方をつくっていける」**という自信を持てるようになった。


まとめ|“No”を言える人が、信頼を得ていく

英語がうまくなくても、文化が違っても、
「自分の軸」を持って判断し、伝える力は必ず伝わる。

“断らないこと”が優しさなのではなく、
断ったあとでも一緒に考える姿勢こそが、本当の協調性だ。

僕にとって“断る勇気”は、単なるスキルではなく、
プロとしての自立の一歩だった

コメント

タイトルとURLをコピーしました