Decoding Your Professional DNA

自分の「軸」を見つける旅の始まり

海外で働き始めて最初の数か月間、正直に言うと僕は「自分って何者なんだろう?」という問いにずっと悩まされていました。日本でエンジニアをやっていた時は、ある意味「肩書き」や「スキルセット」で評価される場が多かったんです。C#でWPFアプリを作れる、設計書がきっちり書ける、納期を守れる。そういう部分で「評価されている」と感じていた。でも海外に出てみると、それだけじゃ全然通用しない。

なぜかというと、チームメンバーとのコミュニケーションや、自分の意見をちゃんと出す力、時には相手のやり方に「No」と言える姿勢の方がずっと重視されるからです。言い換えると「あなたが何を作れるか」よりも「あなたがどんな人間で、チームにどんな価値を持ち込むか」が試される。これが僕にとって最初の大きな壁でした。

そこで必要になったのが、自分自身を「解読する」こと。つまり、自分のプロフェッショナルとしてのDNAを見つける作業です。DNAっていうとちょっと大げさに聞こえるかもしれませんが、要は「自分が何に価値を置いているのか」「自分の強みは何か」を言語化すること。これをしておかないと、海外で働く上での土台がぐらぐらしてしまう。


僕が最初に気づいた「迷子感」

実際のところ、僕も最初は「とりあえず英語をなんとかしなきゃ」と思って必死でした。会議では相手の言っていることの半分くらいしか理解できないし、自分の発言は短くて単調。頭の中では日本語でめちゃくちゃ言いたいことがあるのに、口から出るのは “Yes, I agree.” くらい。正直、悔しかった。

でもある時、ふと気づいたんです。
「これ、英語力だけの問題じゃないな」って。

英語が流暢になれば解決すると思ってたけど、実はそれ以上に、自分が「何を大事にしてる人間なのか」をうまく伝えられていなかった。たとえば「設計の段階ではUIの一貫性を優先したい」とか、「メンテナンス性を意識したコードレビューが得意」とか。そういう自分ならではの「軸」を持っているのに、それを出せていなかった。

このとき初めて、「自分のコアバリューや強みをちゃんと認識して、それを外に出す練習をしなきゃ」と思ったんです。


コアバリューを見つける小さな実験

そこで僕がやったのは、毎日の終わりに「ジャーナリング」をすること。ノートにその日の仕事で「自分が一番納得できた瞬間」と「逆にイライラした瞬間」を書き出しました。

例えばある日は、

  • 納得できた瞬間:レビューで「このコードは読みやすい」と言われたこと
  • イライラした瞬間:設計の方向性が途中で変わって、無駄な作業が発生したとき

こうして書き出すと、自分の中に「軸」が少しずつ浮かび上がってきます。僕の場合は「チーム全体がスムーズに進めるような設計を重視する」とか、「無駄を減らす効率化への強いこだわり」があることに気づいた。

これって一見当たり前に見えるけど、実は人によって全然違うんです。ある同僚は「ユーザー体験が最優先」って考えるタイプだし、別の人は「新しい技術をどんどん試すのが好き」ってタイプだった。僕は「堅実さと効率」が自分のDNAだとわかって、少しずつ自信を持てるようになりました。


フィードバックを「自分解読ツール」にする

もう一つやったのは、勇気を出して同僚にフィードバックをもらうこと。最初は正直めちゃくちゃ怖かったです。だって「お前、存在感ないよな」みたいに言われたらどうしようって思ってたから。

でも実際に聞いてみると、「君の設計は細かいところまで気が配られていて安心できる」とか、「レビューの時に質問が的確で助かる」とか、意外な強みを指摘してくれたんです。自分では当たり前にやっていることが、周りにとっては「助かる」と感じられている。それを知るだけで、自分の「スーパー・パワー」の輪郭が少し見えてきました。

自分を深掘りしていくプロセス

僕は海外で働き始めた当初、自分の存在意義に迷っていました。けれど、ジャーナリングやフィードバックを通して「堅実さ」や「効率化へのこだわり」といった自分のDNAの一端を見つけ始めた。

ここから先は、その小さな手がかりをさらに深掘りして、自分の「コアバリュー」や「スーパー・パワー」を明確にしていったプロセスです。


ジャーナリングが教えてくれた「パターン」

毎日の終わりにノートに書き出す習慣を続けていると、だんだん「繰り返し出てくるテーマ」が見えてきます。

僕の場合、頻繁に出てきたのはこんな内容でした。

  • 「設計が曖昧なまま進められるとストレスを感じる」
  • 「レビューで具体的に指摘すると相手から感謝される」
  • 「無駄なタスクを削減できたときに達成感を覚える」

これを眺めていて気づいたのは、僕は“秩序”と“効率”を大切にする人間なんだということでした。

一方で、ある同僚は「混沌が好き」なんです。彼は新しい技術やツールを次々に試すのが好きで、「とりあえず動かしてから考えよう」というタイプ。僕とは正反対。でもその違いがあるからこそチームはバランスを取れていたんですよね。

つまり、ここで分かったのは「自分の価値観が何なのかを知ることは、他人との違いを理解することにつながる」ということ。これを知らないと、「なんであの人はそんな行動をするんだ?」とストレスがたまる。でも理解していれば「これは価値観の違いだな」と受け止めやすくなる。


自分のDNAを言葉にしてみる

ジャーナリングだけだと感覚的な気づきにとどまることも多いので、ある時、あえて言葉にする作業をしてみました。

僕が使ったのは「I believe …」の形。英語で書くと、逆に日本語よりシンプルで核心をつけるんですよね。

  • I believe clarity in design saves time and energy for everyone.
  • I believe efficiency is not about speed, but about sustainability.
  • I believe asking good questions is more powerful than giving quick answers.

こうやって書いてみると、「ああ、これが自分のDNAなんだ」としっかりと輪郭が見えるんです。特に海外で働く場合は、この「言葉にしておく」ことが大切。なぜなら、同僚に自分の考えを説明するときに、シンプルなフレーズとして使えるからです。

会議で「なぜこの設計を選んだの?」と聞かれたときに、ただ「使いやすいと思ったから」じゃなくて、
“I believe clarity in design saves time.” と言えると、自分の価値観ごと相手に伝えられる。これが「存在感」につながるんですよね。


フィードバックを「鏡」にする

さらに深掘りするために、僕は同僚や上司に定期的にフィードバックをお願いしました。正直、最初は勇気が必要でした。でも続けていくと、意外なほど多くの「自分の強み」が浮かび上がってきます。

例えば、ある上司からはこんなことを言われました。
「君はコードレビューの時に、ただエラーを指摘するだけじゃなく、“なぜこれを直す必要があるのか”を説明してくれる。それが新人にとってすごく助けになるんだよ」

これは僕にとって大きな発見でした。自分では「当たり前のこと」と思っていたけれど、実は他人から見たら「スーパー・パワー」だったんです。

つまり、自分にとっての当たり前は、他人にとっての価値。これに気づけるのが、フィードバックの醍醐味です。


「スーパー・パワー」を認める勇気

ここで一番大事だったのは、「自分のスーパー・パワーを誇る勇気を持つ」こと。日本にいた時の僕は、どちらかというと「出しゃばらない」「謙虚でいる」ことが美徳だと思っていました。でも海外ではそれだと「存在感がない」と思われがちです。

だから僕は、少しずつ「自分の強みを堂々と出す」練習を始めました。

たとえば会議でこう言うんです。
“I think my strength is structuring complex systems into something simple.”
(僕の強みは、複雑なシステムをシンプルに構造化することだと思います)

最初は正直、声が震えるくらい恥ずかしかった。でも、これを言葉にするだけで周りが「あ、君はそういう役割を得意としてるんだな」と理解してくれる。そしてその理解が、僕に新しいチャンスを運んでくれるんです。

自分のDNAを現場で試す

「設計レビュー」で訪れた試練

ある日、僕が担当していたWPFアプリのモジュールについて、設計レビューの場がありました。チームにはインド出身のリードエンジニア、アメリカ人のUIデザイナー、そしてヨーロッパからのプロジェクトマネージャーと、まさに多国籍なメンバーが揃っていました。

レビュー中、UIデザイナーからこんな指摘を受けたんです。
「この設計だと、将来的にユーザーが求める新しい機能を追加するのが難しくなるんじゃない?」

以前の僕なら、そこで黙ってしまっていたと思います。あるいは “I see. I’ll fix it.” とだけ言って、相手の意見をすべて受け入れてしまっていたでしょう。

でもこの時は違いました。僕は「承」で書いたように、自分のDNAを言葉にする練習をしていたからです。勇気を出してこう言いました。

“I believe clarity and simplicity in the current design will make future changes easier, not harder. Because when the structure is simple, adding new features becomes more predictable.”

会議室が一瞬静まりました。内心「やばい、変なこと言ったかも」と焦ったんですが、リードエンジニアがうなずきながらこう言ったんです。
「Good point. Simplicity is always a good investment.」

その瞬間、自分のDNAが現場で「効いた」と実感しました。


DNAを発揮するときの「怖さ」

とはいえ、こうした場面でDNAを発揮するのはいつも簡単じゃありません。特に「自分の意見をはっきり言う」ことは、僕にとって大きな挑戦でした。日本では「波風を立てない」ことがチームワークだと教わる場面が多かった。でも海外では、むしろ「意見を言わない=存在しない」とみなされる。

僕は何度も「これを言ったら場を乱さないか?」と自問しました。そのたびに、“I believe …” のフレーズを心の中で唱えて、自分の軸を確認しました。そうすると、ただ反論しているわけじゃなくて、「自分の価値観から出た意見なんだ」と思えて、少しずつ怖さが和らいでいきました。


DNAが「役割」を作る

もう一つ印象的だったのは、プロジェクトの後半で起きた出来事です。納期が近づくにつれて、タスクが混乱し始め、誰がどの仕事を担当しているのか曖昧になってきました。

そこで僕は、自分のDNAである「秩序と効率」を発揮することにしました。具体的には、タスク管理ツールを整理し直し、担当者と進捗を見える化する小さな仕組みを作ったんです。

すると、それを見たマネージャーから「君はチームを整える力があるね」と言われました。これまで「設計が得意」としか思っていなかった僕にとって、「チームを整える」という新しい役割をもらえた瞬間でした。

この時、「自分のDNAを出すことで、チームに自然と役割が生まれるんだ」と理解しました。DNAはただの自己理解じゃなくて、チームにとっての「あなたの存在意義」を形作るんです。


失敗も「DNAテスト」になる

もちろん、DNAを出すことがいつもうまくいくわけじゃありません。ある時は「効率化」を強調しすぎて、逆に「それじゃユーザー体験が軽視される」とデザイナーに反発されたこともありました。正直、その時は落ち込みました。

でも後から振り返ると、それも大事な「DNAテスト」だったんです。自分のDNAが偏りすぎるとどうなるかを学べた。つまりDNAを現場で試すことで、ただの“強み”じゃなく“使いこなせる力”に変わっていくんです。

DNAがキャリアを形づくる

DNAが「自信の根拠」になる

海外で働いていると、どうしても「自分は英語がネイティブじゃないから不利だ」と感じる瞬間が多いです。実際、早口の議論についていけなかったり、ジョークに笑えず取り残されたりすることもあります。

でも、自分のDNAを知っていると、その劣等感に飲み込まれなくなるんです。たとえ完璧な英語を話せなくても、「自分は設計の明確さを武器にしている」「チームを整える力がある」と胸を張れる。これが、僕にとっての“自信の根拠”になりました。

ある意味、言語力や技術スキルは「表層的な武器」。それに対してDNAは「芯の武器」。この芯を持っていると、多少外側が揺れても立ち直れるんです。


DNAが「キャリアの方向性」を示す

DNAは単なる自己理解にとどまらず、キャリアの方向性にも影響を与えました。

例えば、僕は「秩序と効率を大切にする」というDNAを持っていると気づいてから、自然とプロジェクトマネジメントやアーキテクチャ設計の領域に関心が広がりました。単なる「WPFの実装者」ではなく、「チームが混乱しない仕組みを作る人」として役割を担うようになったんです。

その結果、数年後には「設計レビューをリードする役割」を任されるようになりました。以前の僕なら「そんなの自分には無理」と思っていたはず。でもDNAを軸に考えると、「自分の強みが求められている」と思えたので、自然に挑戦できたんです。


DNAが「人間関係の潤滑油」になる

もう一つ意外だったのは、DNAが人間関係を円滑にする役割を果たしたことです。

たとえば新しいチームに入ったとき、自己紹介でこう言いました。
“I believe clarity and efficiency are my core values. I like to help the team move smoothly.”

すると同僚から「それなら君にレビューをお願いしたい」とか「プロセス改善のアイデアがあれば教えてほしい」と声をかけてもらえるようになったんです。

つまりDNAを言葉にして伝えることは、「自分はこういう人間です」という名刺のようなもの。これがあると、周りも安心して接してくれるし、役割を振ってくれる。結果として、信頼関係を築くスピードも早くなりました。


DNAを持つことは「No」を言う力になる

海外で働く上で避けて通れないのが、「No」を言う場面です。最初の頃の僕は、それが本当に苦手でした。相手に悪い印象を与えないかと心配で、いつも“Yes”ばかり言ってしまっていた。

でもDNAを意識するようになってからは、Noも言いやすくなりました。たとえば「無理に新しい機能を詰め込むと設計が崩れる」と思ったときは、こう言えるんです。

“I understand the request, but based on my core value of clarity, I believe it’s risky to add this now. Could we prioritize stability first?”

これは単なる否定じゃなく、「自分のDNAに基づいた意見」として伝えられる。すると相手も納得してくれることが増えました。Noを言えるようになったことで、僕の仕事の質も守られたし、逆に信頼が深まったんです。


海外で働くエンジニアへのメッセージ

もしこれから海外に出るエンジニアがいたら、僕が伝えたいのは「まず自分のDNAを解読してほしい」ということです。

  • あなたは何にイライラする?
  • 何をしているときに一番満足する?
  • 周りから「助かる」と言われるのはどんな時?

これらをジャーナリングやフィードバックで掘り下げれば、きっと自分のDNAが見えてきます。

そのDNAを言葉にして、実際の現場で試してください。最初は怖いかもしれないけれど、それが「あなたにしかできない価値」を示す最強の武器になります。

海外で働く上で大事なのは、完璧な英語でも最新の技術スキルでもなく、「自分はこういう存在だ」と言える芯です。その芯こそが、あなたのプロフェッショナルDNAです。

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