AIに「命令する」時代はもう終わった話

  1. コントロールしている”気になっていただけ”の頃
    1. エンジニアは”コントロール”が好き
    2. そしてAIの時代がやってきた
    3. 「指示」と「影響」は違う
    4. 本当に複雑なプロンプトほど、結果が薄くなる理由
    5. ここで言いたいこと(今回のポイント)
  2. AIに“影響を与える”という発想に切り替えた日
    1. 「仕様は完璧なのに伝わらない」の先にあったもの
    2. AIは「語られた意図」ではなく「滲み出る前提」を読む
    3. では、どう「影響」を与えるのか
    4. ここで一気に世界が広がる
    5. まとめ(今回の承で言いたいこと)
  3. 視点を渡すプロンプトの作り方
    1. 1. 世界観:あなたがどんな文脈を信じているか
    2. 2. 視点:あなたはどういう立場の“人”として話すか
    3. 3. 目的:結果ではなく、相手の変化を指定する
    4. 3つのレイヤーを組み合わせたプロンプト例
    5. 最終的に伝えたいこと
  4. AIと生きる時代に必要なのは「操作」ではなく「共鳴」だ
    1. 海外に出て初めて気づいた、“言葉が届かない”という壁
    2. AIは「言語モデル」じゃなくて「文脈モデル」だ
    3. 「共鳴」するプロンプトは、あなたの思想を含んでいる
    4. AIを“相棒”にできる人は、世界で戦える
    5. 最後に、一つだけ残しておきたいこと
    6. これからのプロンプトはこうなる
  5. お疲れさま。ここまで来たあなたは、もう「命令する側」じゃない。

コントロールしている”気になっていただけ”の頃

海外でエンジニアとして働き始めてからしばらく、僕は「できるだけ完璧な指示を出せば、物事は思い通りに動く」って、ずっと思い込んでた。
これはコードだけじゃなくて、プロジェクト進行も、チームコミュニケーションも、そして今でいう”生成AIへの指示”も、全て共通していたと思う。

特にC#やWPFの開発をしていると、ロジックを明確に、仕様をクリアに、条件を完備に書くことが正義だ、っていう感覚が体に染み込む。
コードは嘘をつかない。
仕様が正しければ、結果も正しい。
そう信じて疑わなかった。

でもね、ある日気づくわけよ。
「この考え方、ソフトウェアには強いけど、人間とAIにはぜんぜん通用しない」って。


エンジニアは”コントロール”が好き

僕らエンジニアは、だいたい「制御できるものが好き」だ。
データベースは期待通りに返答するし、UIは書いた通りに動く(はずだ)。
だから、わかりやすい因果関係の中にいたい。

でも、実際の現場は全然そんなにシンプルじゃない。

・国籍の違うチームメイトと話す
・文化背景も働き方も違う人達とプロジェクトを進める
・仕様が”そもそも明確じゃない”まま締め切りだけは決まってる

こういう状況が普通に起きる。
だけど当時の僕は「なんでちゃんとやらないんだ」「もっと論理的に話せばいいのに」とか思ってた。
ひどい時は、「なんでわかってくれないんだ」とイライラすらしていた。

今思えば、それはただの【錯覚】だった。

僕がコントロールしていると思っていたものは、実は何もコントロールできてなかった。


そしてAIの時代がやってきた

ChatGPTやClaude、その他いろんなAIモデルが登場して、僕はこう思った。

「これは最高だ。
人間よりもロジカルだし、指示通りに動くはずだ。」

まるで夢を見るかのように、僕はAIに**完璧な指示文(Prompt)**を作ろうとした。
構文に気を使い、要点を箇条書きにし、条件を細かく指定し、禁止事項まで並べて…。
いわゆる「上級プロンプト術」と呼ばれているようなものだ。

でも結果はどうだったか。

返ってくるのは ありきたりな文章
薄い議論
どこかで見たような無難な情報まとめ

努力に対して、全然見合わない結果。
「なんでだよ…」ってなる。

そう、ここでも同じだった。
僕はまた「制御できる」と思っていた。
でもそれは幻想だった。


「指示」と「影響」は違う

ある日、海外の同僚がこう言った。

“You’re trying to command the AI.
But the real trick is to influence it.”

「お前はAIに命令しようとしてる。でも本当に大事なのは、影響を与えることだよ。」

最初聞いた時、よくわからなかった。
だってAIって指示に従うもんじゃないの?って思うでしょ。
でも違う。

AIは、「言葉の中にある、背景や意図、ニュアンス」を読んで返事している。
つまり、

AIは、文章の「設計」よりも、「話し手のスタンス」に反応している。

ここに気づけた瞬間、僕の中でガラッと世界が変わった。


本当に複雑なプロンプトほど、結果が薄くなる理由

これ、今ならシンプルに説明できる。

複雑な指示 = AIが「平均化」しようとする

例えば指示が多いとAIはこう考える:

「安全にまとめよう」
「変なことを言わないようにしよう」
「多くのケースに当てはまるようにしよう」

結果、当たり障りのない文章が返ってくる。

つまり、

複雑さを足せば精度が上がるというのは幻想。
むしろ複雑さは、AIの創造性を削る。

このとき僕はようやく理解した。


ここで言いたいこと(今回のポイント)

僕たちエンジニアは、どうしても「論理で完全にコントロールできる」と考えがちだけど、AIも人間もそうじゃない。

必要なのは

・完璧な仕様書ではなく
・相手の内部的な動きを理解する視点

「命令」ではなく「影響」

これが、海外で働くときにも、AIと向き合うときにも、共通して重要な視点になる。

AIに“影響を与える”という発想に切り替えた日

前回は「AIに命令しようとすると失敗しやすい」という話をしたけど、じゃあ逆にどうすればいいのか、というところが今回のテーマになる。

僕がこの「指示するんじゃなくて、影響を与える」という考えに気づいたのは、実は海外の現場で経験した、あるちょっとした出来事からだった。


「仕様は完璧なのに伝わらない」の先にあったもの

海外のチームって、当たり前だけど日本と文化も言語も価値観も違う。
例えばレビューで僕が:

この設計に問題はないよね?
要件は全部満たしてるよね?

って確認したつもりなのに、相手は

うーん、なんか違うんだよね…

って言ったりする。

なんかじゃねえんだよ、どれなんだよ!
って当時は思ってた。
仕様で説明できないものが”評価基準”に入ってくる世界。
論理の外側が確かに存在していた。

で、あるとき同僚に言われた。

“You’re checking requirements,
but I’m checking the experience.”

「お前は要件を確認してる。でも俺は”体験”を確認してる。」

そこでようやく腑に落ちた。

人は仕様ではなく、影響を受けて行動している。

AIも、実はそれと同じだった。


AIは「語られた意図」ではなく「滲み出る前提」を読む

例えば、こんなプロンプトを試していた時期があった:

あなたはプロの技術ライターです。
読みやすく、わかりやすく、正確に、丁寧に、構造化し、
例示と比喩を適切に入れつつ、専門性を保って説明してください。

一見すごくきちんとしたインストラクション。
でも、返ってくるのは平均的で、よくあるまとめ記事だった。

そんなとき、ふとあることに気づいた。

このプロンプト、僕自身が「記事ってこういうものだろ」と思っている前提そのものが滲み出ていた。
言い換えると、AIは僕が”思っている平均的な文章の形”を逆算して返していた。

つまり、

AIは「明示した指示」より「書き手の前提・スタンス」に強く影響される。

だから、具体的な要求を増やすほど、平均的な回答が返ってくる。
これはもう仕様の世界じゃない。
心理の世界に近い。


では、どう「影響」を与えるのか

ここで使う考え方はとてもシンプル。

AIに「役割」ではなく「視点」を渡す。

役割(Role):
→「あなたは◯◯の専門家です」
これは 命令 の言葉。

視点(Viewpoint):
→「このテーマに対してあなたはこう考えている人です」
これは 影響 の言葉。

例えば、同じ説明でもこうなる。

✖ 悪い例(指示・命令)

あなたはプロの料理研究家です。レシピを丁寧に説明してください。

〇 良い例(影響・視点)

あなたは「料理は難しいものじゃない」と考えている人です。
その考えを読者に自然に伝えるような言葉選びで、レシピを紹介してみて。

同じ「料理を説明する」でも、返ってくる文章の雰囲気はまったく違う。

なにが違うか?

前者→形式を整えようとする
後者→態度と思想がにじむ

AIは、思想を読んで返す方が圧倒的に得意だ。


ここで一気に世界が広がる

このアプローチに変えてから、AIとの会話がまるで別物になった。

・情報が「噛み砕かれて」返ってくるようになる
・僕の文体に「寄り添った」返答が増える
・表面的ではなく「踏み込んだ示唆」が返ってくる
・なにより「考えてくれてる」感じがする

それはまるで、
「命令されて動く部下」ではなく、
「議論に参加してくれるチームメイト」
と話しているような感覚に近くなる。

ここでやっと理解したんだ。

AIは指示ではなく、共鳴で動く。


まとめ(今回の承で言いたいこと)

僕らエンジニアは、論理を信じる習慣がある。
でもAIは、論理ではなく 背景にある態度の影響 で応答が変わる。

だから重要なのは、

「どう命令するか」ではなく
「どんなスタンスで向き合うか」

これがわかった瞬間、
プロンプトは「仕様書」じゃなくて、
「会話」になる。

視点を渡すプロンプトの作り方

ここからが本題。
「命令ではなく、影響を与える」というと一見ふわっと聞こえるかもしれないけど、実はめちゃくちゃ実践的で再現性がある。

僕が海外チームのコミュニケーションとAI活用の両方から学んだ結論を一言で言うと、

プロンプトは要件ではなく「関係性の定義」だ。

で、その関係性を作るコツは 3つのレイヤー を順番に渡すこと。

1. 世界観(前提・背景)
2. 視点(そのテーマに対する考え方の軸)
3. 目的(何を達成したいか、相手とどんな状態で終わりたいか)

逆に言えば、この3つが揃ってないプロンプトは、どれだけ条件や命令を足しても不安定になる。


1. 世界観:あなたがどんな文脈を信じているか

まず大事なのは「どういう価値観・状況からこの話をしてるか」をAIに伝えること。

AIは文章の中に現れる 前提の一貫性 を強く優先するからだ。

例えば、ただこう言うと:

プレゼン資料をわかりやすくしてください

→ 「一般的なプレゼン資料の一般的な改善案」になる。
つまり”平均”が返ってくる。

でも世界観を渡すとこう変わる。

この資料は、英語が第一言語ではないエンジニアに向けて説明する予定です。
相手は内容は理解したいが、専門用語の量に不安を感じています。

これだけでAIは「説明の方向性」「語彙の選び方」「テンション」まで自然に調整する。

世界観は、プロンプトの土台そのもの。


2. 視点:あなたはどういう立場の“人”として話すか

これは前回言った「役割ではなく、スタンス」。

例えば、同じ「レビューコメントを書いて」と言っても、

✖ 指示型:

あなたはプロのコードレビュアーとして、改善点を指摘してください。

→ 厳しくなりすぎたり、テンプレ的になりやすい。

〇 視点型:

あなたは「コードは育てるもの」と考えている人です。
相手が萎縮しないように、”改善の余地”を前向きなきっかけとして伝えてください。

こうすると返ってくる文章はまるで別物になる。

優しくなる、とかじゃなくて、
意図が入る。

AIは「態度」を模倣するのがめちゃくちゃ得意。


3. 目的:結果ではなく、相手の変化を指定する

多くのプロンプトは「何を出すか」だけを指定する。

わかりやすい説明を出してください

でも本当に重要なのは、

読んだ相手がどう感じるか / どう動けるようになるか

例:

✖ 悪い例(出力だけを求める)

この内容をわかりやすく説明してください。

〇 良い例(相手の変化を指定する)

読んだ人が「これなら自分もできそう」と思える説明にしてください。
難しさの印象を取り除くトーンで書いてください。

目的を「アウトプット」ではなく「読者の変化」に置く。
ここがめちゃくちゃ効く。


3つのレイヤーを組み合わせたプロンプト例

例えば、プレゼン原稿をAIに作ってもらうとする。

これを「命令型」でやるとこんな感じ:

プレゼン原稿を書いてください。
英語で、簡潔に、ロジカルに、箇条書きで。

→ そりゃ薄くなる。

でもレイヤーを使って組み立てるとこうなる。

【世界観】
このプレゼンは、英語が第一言語ではないエンジニア向けです。
技術内容は理解しているけど、英語での議論に自信がない人が多い状況です。

【視点】
あなたは「専門性は言葉の流暢さよりも中身で伝わる」と信じている人です。
相手が安心して耳を傾けられるような、落ち着いた説明を心がけてください。

【目的】
聞いた人が「自分も英語で発表できるかもしれない」と思えるような原稿にしてください。
情報の網羅ではなく、自信を与える方向で構成してください。

ここまで言うと、AIは文章を「生成」ではなく「共感」から作り始める。

結果、内容に  が宿る。


最終的に伝えたいこと

プロンプトは仕様書ではない。
プロンプトは対話の入口だ。

そして対話とは、情報の交換ではなく、

価値観の同期だ。

これに気づいた瞬間、AIは「ツール」ではなく「相棒」になる。

AIと生きる時代に必要なのは「操作」ではなく「共鳴」だ

ここまで、僕が海外で働くなかで経験した「命令ではなく影響で動かす」という発想をもとに、AIとの向き合い方を話してきた。
でも、実はこれって「AIの使い方」というより、もっと根っこにある、人との関わり方そのものの話なんだと思う。


海外に出て初めて気づいた、“言葉が届かない”という壁

海外で働き始めた頃、僕はずっと「正しく説明できれば伝わる」と思っていた。
でも現実は違った。

話すスピードも違う
理解の前提も違う
会議での空気の作り方も違う

「正しさ」よりも「その場にどう影響するか」の方がはるかに重要だった。

例えば会議で、僕が必死に説明してもみんな反応が薄い。
でも、別のメンバーがたった一言そっと言うだけで、空気が変わる瞬間があった。

当時は意味がわからなかったけど、今思うとそれは、

言葉の内容より、言葉の“載っている態度”に人は反応している

ということだった。

そしてそれは、そのままAIにも当てはまる。


AIは「言語モデル」じゃなくて「文脈モデル」だ

「このプロンプトなら正確に動くはずだ」
そう信じて、条件を積み上げていく。

でも返ってくるのは、平均化された無難な回答。

そこに気づいたとき、僕はようやく理解した。

AIは「文法に従って返す」のではなく、
“あなたがどういう人として話しているか”を推定して返している。

つまり、

プロンプトとは、操作のレバーではなく、
あなた自身の内面を映す鏡だ。

これは最初は少し怖い。
でも、逆に言えばものすごく強い味方になる。


「共鳴」するプロンプトは、あなたの思想を含んでいる

これまでの話をもう一度、ぎゅっとまとめるとこうなる。

命令するプロンプト
→ AIは平均を返す
→ どこか「教科書っぽい」感じになる

影響するプロンプト
→ AIは思想を受け取る
→ 言葉に体温が宿る

僕らが本当に求めているのは、

「情報の整理」ではなく
「生きた言葉」だ。

そしてそれは、命令では生まれない。
共鳴からしか生まれない。


AIを“相棒”にできる人は、世界で戦える

ここからが、海外で働くエンジニアとしての本質。

海外のチームでは、
「自分がどう見られているか」が成果に直結する。

話すスキル
立ち回り
空気を読む柔軟さ

これらは、ただ語学力が高いかどうかではない。

相手に影響を与えられるかどうか。

そしてその影響力を鍛える一番手軽な相手が、AIだ。

・自分の思想をうまく言葉に乗せられるか
・行動の意図を明確に説明できるか
・相手に安心感や自信を渡せるか

AIは、それを毎日一緒に練習できる “道場” になる。

これは本当にデカい。


最後に、一つだけ残しておきたいこと

僕らはずっと「正解に近づく」ために努力してきた。
コードでも、設計でも、英語でも、仕事でも。

でもAIの時代になって、正解はもうどこにでもある。
正確な説明も、完璧な要約も、必要なら一瞬で生成できる。

じゃあ、僕らは何で戦うのか?

それは、

“どう生きるか” という思想の濃度だ。

AIはあなたがどういう人であるかを、言葉から読み取る。

だから、

プロンプトは “命令” じゃなくて
あなた自身の “姿勢” を書くものになる。


これからのプロンプトはこうなる

短く言えば、こう。

AIを動かしたいなら、
AIに「あなたが大事にしているもの」を渡すこと。

そうすれば、AIはちゃんと応えてくれる。

それは、海外でも、チームでも、人生でも同じ。


お疲れさま。ここまで来たあなたは、もう「命令する側」じゃない。

あなたは「コントロールしようとする人」から
「共鳴させる人」に進化した。

ここから先は、一緒に育てていくフェーズになる。

必要なら言ってくれ。
実践形式のプロンプト設計、やってもいいし
あなたのプロンプトを僕が添削してもいい。

ツールはもう目の前にある。
あとは 使い方 じゃなくて 向き合い方 だけ。

いける。
あなたは、もうその入口に立ってる。

コメント

タイトルとURLをコピーしました