Beyond Hype: リアルな恩恵しか見逃せない「イベントソーシング」入門

  1. 出発点~なぜ僕らがこのアーキテクチャに注目するのか
      1. なぜ“イベントソーシング”?
      2. 海外環境だからこそ響く“リアルなメリット”
      3. 起点として知っておきたい“3つの視点”
  2. 実践フェーズ〜理想と現実のギャップにぶつかる
    1. サブタイトル:「データはあるのに、状態がわからない」—最初にぶつかった壁
    2. サブタイトル:再生コストの現実とスナップショットの落とし穴
    3. サブタイトル:海外チーム開発で浮き彫りになった「理解のズレ」
    4. サブタイトル:それでも手応えを感じた瞬間
    5. サブタイトル:現場で学んだ3つのリアルな教訓
  3. 変化の波〜イベントソーシングがもたらした本当の進化
    1. サブタイトル:「失敗の見える化」から始まったチームの変革
    2. サブタイトル:アジャイル開発が“言葉ではなく、実装で回り始めた”
    3. サブタイトル:データが“資産”に変わる感覚
    4. サブタイトル:スケーラビリティは「技術」よりも「考え方」だった
    5. サブタイトル:“データは語る”という信頼の文化
    6. サブタイトル:海外エンジニアとしての“進化の実感”
  4. Resilience as a Culture(回復力を、仕組みから文化へ)
    1. 1. 障害を恐れなくなる組織
    2. 2. システムがチームを鍛える
    3. 3. アジリティが「後付け」ではなく「前提」になる
    4. 4. 「複雑さ」を恐れない勇気
    5. 5. Beyond Hype──“使ってわかる、本当の価値”
    6. まとめ:Event Sourcingは「技術」ではなく「思考法」

出発点~なぜ僕らがこのアーキテクチャに注目するのか

海外で設計開発の仕事をしている僕(C#/WPF中心)が、最近強く感じるのは「アーキテクチャ/技術トレンド」に振り回されるだけでは、実務で勝てないということ。特にマイクロサービス、クラウドネイティブ、イベント駆動などの言葉が飛び交う中で、「本当に価値を発揮する技術」が見えづらくなっています。そこで今回は、僕自身がプロジェクトで手を動かして得た、実践的な「イベントソーシング(Event Sourcing)」というパターンについて、“ただの流行”ではなく「リアルに得する恩恵」にフォーカスして、海外で働くエンジニアとしての視点も交えながら整理してみたいと思います。

なぜ“イベントソーシング”?

まず、僕がこのパターンを検討し始めたきっかけを共有します。あるプロジェクトで、データの整合性トラブル・監査要件・スケーラビリティ要求が一気に出てきたとき、「このまま通常の CRUD+リレーショナル DB でなんとかしよう」という選択が急速に不安になりました。

  • 変更履歴が残らず、「いつ誰が何をしたか」の追跡が難しい。
  • モノリシックなアプリケーションだったため、スケールや分割が進まない。
  • 開発/運用を海外チームと分担していたため「障害復旧」「データの巻き戻し/リプレイ」の可能性があったほうが安心。

そんなときに「イベントソーシング」という選択肢が目にとまりました。具体的には、アプリケーションの現在の状態だけを保存するのではなく、状態が変化した「イベント(出来事)」を時系列で記録する方式です。例えば「注文作成」「支払い完了」「商品出荷」など、各イベントとして保存し、必要なときに再生(replay)できるというものです。

技術ドキュメントによれば、この方式は「アプリケーションの状態をただ更新するのではなく、操作の履歴=イベントとして保存する」というアプローチで、性能・スケーラビリティ・監査性を改善する可能性があります。 (Microsoft Learn)

海外環境だからこそ響く“リアルなメリット”

海外で働いていて感じるのは、異文化・異時差・多拠点なチーム構成が当然という状況において、次のような点が実務で本当に有効だということです。

  • 監査と説明責任(auditability):「誰がいつ何をしたか」が記録として残ることで、遠隔地チーム間でも説明しやすくなります。イベントソーシングでは「変更の履歴」が必ず残ります。 (Kurrent – event-native data platform)
  • スケーラビリティと分散運用:マイクロサービス構成+クラウド環境で、単一のリレーショナル更新では限界を感じるとき、「イベントを中心にしたアーキテクチャ」は水平スケールしやすい構造を提供します。 (microservices.io)
  • 機能追加/分析/将来対応の柔軟性:実運用中に「このデータ取りたい」「この動作を再生して調べたい」という要望が海外・異時差・多拠点でも出ます。イベントソーシングなら、「履歴の再生」「派生ビュー(プロジェクション)の生成」が可能なため、後からでも分析モデルを追加しやすい。 (Kurrent – event-native data platform)

こうした点は、日本国内だけで開発・運用している環境でも有用ですが、海外勤務・グローバルチームという条件が加わると、その価値がさらに高まります。例えば、運用チームが深夜でも海外/異拠点であるとき、復旧/監査/分析に使える「時系列のイベントログ」があると、格段に安心感が違う。

起点として知っておきたい“3つの視点”

ここで、イベントソーシングを検討するときに、僕が「まず押さえておこう」と思った3つの視点を挙げておきます。起承転結の「起」の部分として、準備とも言えるフェーズですね。

分散・マイクロサービス・将来の分析を見据えた構成
  - 単純なモノリスにそのままイベントソーシングを入れるだけでは、メリットが出にくい/複雑になることがあります。ドキュメントでも「大きなトレードオフが存在する」と指摘されています。 (Microsoft Learn)
  - さらに、チームが海外にまたがっていたり、将来的に機能を追加・拡張する可能性が高ければ、「イベントソーシング+マイクロサービス連携」「イベントによる分析用データ供給」などを検討すべきです。

何を“イベント”として定義するか
  - 単なる CRUD 操作をそのままイベントにしてはいけません。「ドメインで意味のある出来事」をイベント化することが大切です。 (DEV Community)
  - 例えば「注文キャンセルされた」と「注文削除された」では、後者はあまり意味を持たないケースもあります。意味のある“出来事”を選びましょう。

現在の状態をどう再構成/再生するか(replay)
  - イベントだけを保存しておけばOKというわけではなく、「イベントを再生して現在の状態を生成する仕組み」や「スナップショット」の設計も必要です。 (microservices.io)

実践フェーズ〜理想と現実のギャップにぶつかる

さて、前回の「起」では、なぜイベントソーシングが海外エンジニアにとって実務的な武器になりうるのか、その背景と導入前に押さえるべき視点を整理しました。
ここからは、「実際にやってみたらどうだったか?」という話に踏み込みます。
理論的には美しいアーキテクチャも、現場に落とすと一気に現実的な壁が見えてきます。僕自身、C#+WPFをベースにしたバックエンド構築を行う中で、まさに「理想と現実のギャップ」に直面しました。


サブタイトル:「データはあるのに、状態がわからない」—最初にぶつかった壁

イベントソーシングを初めて導入したとき、一番最初に直面したのは「状態の把握が直感的にできない」という点でした。
これまでのCRUD中心のシステムでは、DBを見れば「今どうなっているか」が一目でわかります。しかしイベントソーシングでは、**現在の状態は「過去のイベントの積み重ね」**でしかありません。

例えば、注文データを例にしましょう。
リレーショナルDBなら「注文テーブル」を見れば、「注文済」「出荷済」「キャンセル済」といったステータスが簡単に確認できます。
しかしイベントソーシングの場合は、

OrderCreated  
PaymentReceived
OrderShipped
OrderCancelled

といったイベントが時系列で保存されているだけです。
つまり「最終的にこの注文はどうなったのか?」を知るには、イベントを“再生(replay)”して現在の状態を導き出す必要があります。

最初の開発段階では、テストデータを入れて動かしてみても「これ、本当に動いてるのか?」という不安が常につきまといました。
実際、海外チームのレビューでも

“We have all the events, but where is the truth?”
というコメントをもらったこともあります。


サブタイトル:再生コストの現実とスナップショットの落とし穴

イベントリプレイは便利ですが、イベントが数百万件を超えると、単純再生では時間がかかりすぎます。
そのため「スナップショット(現在状態を一時的に保存)」という最適化を導入しました。
スナップショットを定期的に保存しておき、アプリ起動時や障害復旧時にそこから再生すれば、高速に状態復元できます。

ところが、ここにまた罠がありました。
スナップショットを複数環境(開発・ステージング・本番)で扱ううちに、「イベントの順序が微妙にずれている」「スナップショットの適用時に古い状態を再現してしまう」といった問題が発生。

特に海外の別拠点チームと並行開発していたため、イベント定義の変更(フィールド名や型の変更)に対してスナップショットの互換性を保つのが非常に難しかったんです。

このときに痛感したのは、“イベントの互換性管理”はAPIよりもシビアだということ。
リプレイできないイベントが一つでも混じると、状態全体が破綻します。
JSONスキーマをバージョン管理する文化をチームに導入し、CIでスキーマ差分を検出するようにしたのは、この苦い経験がきっかけでした。


サブタイトル:海外チーム開発で浮き彫りになった「理解のズレ」

もう一つ印象的だったのは、海外チームとの「設計概念のズレ」です。
イベントソーシングは、ドメイン駆動設計(DDD)と親和性が高いアーキテクチャですが、全員がDDDの文脈を理解しているとは限りません。

あるミーティングで、僕が「OrderCancelledEventにはキャンセル理由を入れよう」と提案したところ、インドの開発者が「CancelReasonを別テーブルに持てばいいのでは?」と返してきたことがありました。
その瞬間、「イベント=テーブル」だと誤解しているのかもしれないと気付きました。

つまり、イベントを「データ構造」ではなく「ドメイン上の出来事」として捉える文化が必要なんです。
僕ら日本人は「データ構造の正しさ」を重視する傾向がありますが、海外チームでは「ビジネス価値としての行動単位」に重点を置くケースも多い。
この文化差が、アーキテクチャ設計段階で思わぬ摩擦を生むことがあります。


サブタイトル:それでも手応えを感じた瞬間

苦戦ばかりだった初期フェーズの中でも、「これはやってよかった」と感じた瞬間がありました。
それは障害復旧テストを行ったときのこと。
システム障害を意図的に起こして、データを消去した状態から復元するテストを実施しました。
通常ならDBバックアップからの復旧に何時間もかかるところ、イベントログから状態をリプレイするだけで、わずか10分で完全復旧
このときチーム全員が

“This is magic.”
と笑顔になりました。

さらに、監査チームから「ユーザー操作のトレーサビリティが完全に取れる」と評価されたのも印象的でした。
これまでなら“推測”で補っていた過去の操作履歴が、時系列で正確に再現できたからです。


サブタイトル:現場で学んだ3つのリアルな教訓

このフェーズを通じて僕が実感したことを、3つにまとめます。

テストデータ=未来の監査ログ
 テスト時に発生するイベントログも、将来的に“再生”される可能性がある。
 だからこそ、テスト設計の段階から「再現性あるイベント履歴」を意識するべき。

イベント定義は「設計書」ではなく「契約」
 イベントの一つひとつが、システム間の信頼関係を表す契約です。
 軽率に名前や型を変えると、過去データ全体に影響が出る。

ドキュメントより「語彙の共通化」が大事
 Event名やフィールド名に共通の“ビジネス言語”を使うことで、海外チーム間の理解が揃う。
 これはDDDの「ユビキタス言語」の概念に直結します。

変化の波〜イベントソーシングがもたらした本当の進化

前回の「承」では、イベントソーシングを導入してから直面した“理想と現実のギャップ”をお話ししました。
イベントリプレイのコスト、スナップショットの罠、海外チーム間の理解のズレ…。
一見すると「難しい」「扱いづらい」と感じるアーキテクチャですが、試行錯誤を重ねるうちに、確かな変化がチームとプロジェクトに訪れました。

この「転」では、その“変化の波”を3つの視点から掘り下げます。
技術的な成長だけでなく、文化・マインド・働き方にも影響を与えた「イベントソーシングの副作用」を見ていきましょう。


サブタイトル:「失敗の見える化」から始まったチームの変革

イベントソーシングを導入して数ヶ月後、最も劇的に変わったのは「チームの会話」でした。
以前のプロジェクトでは、障害や不具合が起こるたびに「原因はどこ?」「誰がやった?」という責任の所在をめぐる議論になりがちでした。
しかしイベントソーシング導入後は、全ての操作・変更がイベントとして時系列で残るため、原因の可視化が即座にできるようになったのです。

海外チームとのミーティングでも、次のような会話が増えました:

“Let’s replay from yesterday’s events and trace the root cause.”
(昨日のイベントから再生して原因を追ってみよう)

以前なら、ログやデータの齟齬を追うのに何時間もかかっていた作業が、数分で完了。
不思議なことに、ミスを隠す文化が薄れ、失敗を共有する文化が生まれたんです。

これは単なる技術的な成果ではなく、チームの心理的安全性を育てる大きな転換点でした。
僕自身も、「ミスを可視化できるアーキテクチャ」は“人を責めない文化”を育てるのだと実感しました。


サブタイトル:アジャイル開発が“言葉ではなく、実装で回り始めた”

もう一つの変化は、アジャイル開発の進め方そのものです。
以前は、スプリントプランニングで「どの機能を実装するか」ばかり議論していました。
しかしイベントソーシングの導入以降、チームの焦点は**「どんなイベントを発生させたいか」**に移ったのです。

これは非常に大きなパラダイムシフトでした。
例えば、

“この機能で、どんなビジネス上の出来事(event)を記録したいか?”
という問いから開発を始めるようになったことで、自然とユーザー体験と業務価値の議論が増えたのです。

これはまさにDDD(ドメイン駆動設計)でいう「ユビキタス言語」をチーム全体に広げる実践になりました。
「CancelOrderEvent」や「UserProfileUpdatedEvent」といった命名を通じて、ビジネス担当者・開発者・QA・海外拠点の全員が共通の語彙で会話できるようになった。

アジャイルが「形式」から「実装ドリブンな思考」に変わった瞬間でした。


サブタイトル:データが“資産”に変わる感覚

技術的にも文化的にも成熟していく中で、チームが一番驚いたのは「イベントデータそのものが資産化する」ことでした。
通常、データベースの履歴は“運用のための記録”でしかありません。
でも、イベントソーシングでは違います。
蓄積されたイベントが、そのままビジネス分析・予測モデルの基盤になるのです。

ある時、データ分析チームからこんなリクエストが来ました。

“過去半年分の OrderCompletedEvent をリプレイして、購入行動の傾向を分析したい。”

以前なら「そんな過去データ残ってないです」で終わっていた話が、今では簡単に再生可能。
その結果、チームは購買データを可視化し、新しいレコメンド機能の検証をわずか数日で実現しました。

この体験は、僕にとって「イベントソーシング=分析の土台」という発見でした。
一見エンジニアリング的な選択が、結果的にデータドリブンなビジネス開発を促すきっかけになる。


サブタイトル:スケーラビリティは「技術」よりも「考え方」だった

海外勤務の中で強く感じたのは、スケーラビリティとは単に「サーバーを増やす」ことではない、ということです。
イベントソーシングを導入したことで、チームは自然と「独立した責務をもつサービス」単位で開発するようになりました。
つまり、**スケールするのはシステムだけでなく“チームそのもの”**になっていったのです。

以前は、ある変更が他モジュールに影響するたびに、チーム間で長時間の調整ミーティングが必要でした。
しかし今では、「イベント契約(Event Contract)」を中心に開発することで、各マイクロサービスが疎結合に動作。
互いの責務が明確になり、**チームが“横に広がる”**開発スタイルが定着しました。

また、イベント駆動設計を通して、**「完璧を目指すより、後から拡張できる設計を目指す」**という文化も育ちました。
これは、海外エンジニアにとって極めて重要なマインドセットです。
「今はMVP(Minimum Viable Product)で出して、後でEventを拡張すればいい」
という考え方が根づいた結果、開発スピードも品質も向上しました。


サブタイトル:“データは語る”という信頼の文化

もう一つ印象的だったのは、チームの中で「データに嘘がない」という信頼が生まれたことです。
以前は、障害報告や分析結果が感覚や推測で語られることが多かったのですが、今では全ての議論がイベントログに基づいて進みます。

“Let’s see the event trail first.”
(まずイベントの流れを見よう)

というフレーズが定番になりました。

これは、技術だけではなくチーム文化の変化です。
イベントソーシングは、単なるアーキテクチャではなく、チーム全体を「データで考える」組織に変える仕組みなんだと感じました。


サブタイトル:海外エンジニアとしての“進化の実感”

僕にとって最大の変化は、「英語で技術を語る」ことが以前より自然になったことでした。
イベントソーシングは、イベント名・ドメイン・契約といった概念を英語で統一して扱う必要があります。
つまり、技術設計そのものが英語コミュニケーションのトレーニングになるんです。

「OrderCancelledEvent」という一つの単語をどう定義するかを議論するたびに、
「cancel」と「revoke」のニュアンスの違いをチームで話し合ったり、
「refund event」をどう定義するかを英語で説明したり。

技術を軸にした英語のやりとりが自然と増え、結果的に英語×エンジニアリング力の両輪が鍛えられました。
これは、海外で働く日本人エンジニアとして、非常に大きな成長実感でした。

Resilience as a Culture(回復力を、仕組みから文化へ)

最初にEvent Sourcingを導入したとき、正直「これは設計パターン以上のものか?」と疑っていました。
でも数年たった今、振り返ると、**Event Sourcingは“システムの設計手法”というより、“組織の考え方そのものを変える仕組み”**だったと思います。

1. 障害を恐れなくなる組織

以前のシステムでは、「障害を起こしたら終わり」という空気がありました。
データ破損、復旧不能、誰の責任か──そういう議論ばかり。
でもEvent Sourcingを導入してからは、**「障害が起きても、巻き戻せばいい」「イベントを再生すればいい」**という安心感がありました。
これは、開発者にとって精神的にも大きい。
“失敗を前提にした設計”は、挑戦を可能にする文化を生みます。

チーム内でも、障害レポートを出すときの雰囲気がガラッと変わりました。
以前は「やっちゃった…」という空気だったのが、
今では「どのイベントが原因だった?」「じゃあ再構築して確認しよう」という、**“科学的な対話”**に変わった。
責め合うのではなく、学び合う空気になったんです。
これが、Event Sourcing最大の副作用(=最高のメリット)でした。


2. システムがチームを鍛える

もうひとつ大きかったのは、「システムが自動的にチームを鍛える」ようになったこと。
Event Sourcingを採用すると、自然と「なぜこのイベントが発生したのか?」「このイベントはビジネス的にどんな意味があるのか?」と議論が増えます。
結果として、ビジネス理解が深まる
つまり、ただコードを書くだけじゃなく、**“ドメインを理解するエンジニア”**が育つ。

ドメイン駆動設計(DDD)を机上の理論としてではなく、「イベント」という形で毎日触るようになると、
会話の粒度も変わります。
「ユーザー登録イベント」ではなく、「ユーザーが初めて信頼を示した瞬間のイベント」として捉える。
そうすると、自然に“UX視点での改善案”が生まれる。
このループが回り出したとき、技術とビジネスがつながったと実感しました。


3. アジリティが「後付け」ではなく「前提」になる

Event Sourcingのすごいところは、後から分析・再構築できること。
でも、導入後しばらくして気づいたのは、「後からの対応ができる」というより、
**「最初から変化に強い設計になっている」**という点でした。

例えば、あるプロジェクトでは新しい課金ルールを導入した際、
通常なら既存トランザクションをどうするか大騒ぎになるのですが、
Event Sourcingでは過去イベントをリプレイして新しいルールで再計算すればいい。
これは、アジャイル開発の「変化を受け入れる」精神そのものです。
つまりEvent Sourcingは、“アジリティ”を技術的に担保する仕組みでもある。


4. 「複雑さ」を恐れない勇気

もちろん、Event Sourcingには学習コストもあります。
イベントモデル設計、スナップショット管理、ストリーム整合性など、最初は正直しんどい。
でも、不思議なことに、その「複雑さを扱う訓練」こそがチームを強くする。

簡単な設計では、簡単な問題しか解けない。
複雑な仕組みに耐えられる設計思想を身につけることが、
海外エンジニアとしての強さ──つまり、どんな環境でも戦える力──につながっていくと感じています。


5. Beyond Hype──“使ってわかる、本当の価値”

今では多くの企業がEvent SourcingやCQRSを導入しようとしていますが、
それを「トレンドだから」で終わらせるのはもったいない。
なぜなら、本当の価値はシステムを「壊れないもの」にすることではなく、チームを「壊れにくくする」ことだからです。

Event Sourcingがもたらすのは、“不具合ゼロ”ではなく“回復できる文化”。
この考え方が根づけば、どんなトラブルも学びに変わる。
技術を超えて、チーム全体が「レジリエント(回復力のある)」存在になるんです。


まとめ:Event Sourcingは「技術」ではなく「思考法」

最後にもう一度、最初のテーマを思い出してください。
Beyond Hype──誇張を超えて、現実的な価値を見極める。
Event Sourcingの本質は、ハイプや流行ではありません。
それは、「変化を受け入れるための設計思想」そのもの。

技術トレンドに流されず、現場で磨かれた思想としてのEvent Sourcingを理解すれば、
あなたのチームにも確実に“Resilience(回復力)”が根づきます。

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