【海外エンジニアの告白】「それ、大丈夫?」その小さな火花、プロジェクトを丸ごと焼き尽くす大炎上の始まりかもよ?

小さな違和感、見て見ぬフリしてませんか?

やあ、皆さん。海外のIT現場、楽しんでますか?

僕は今、こっち(海外)のチームでC# WPFを使って、主に金融系や製造業向けのデスクトップアプリの設計・開発をやってます。WPFって、MVVMパターンとかデータバインディングとか、キレイに作ろうと思えばとことん設計にこだわれる、奥深い技術ですよね。

だからこそ、「設計(Design)」にはうるさいつもりでした。でも、そんな僕でも、こっちの現場の「スピード感」と「多様性」の中で、危うく大火事を起こしかけた(というか、何度か火消しに走った)経験があります。

今日は、そんな「火花」の話。

“From Flickers to Fire: Why Small Issues Ignite Major Collapses”(火花から大火事へ:なぜ小さな問題が大きな崩壊を引き起こすのか)なんて言うと大げさ? いや、全然そんなことない。僕らの仕事って、マジでこれの連続だから。

特に、これから海外で働こうって考えてる人には、技術力と同じくらい「火種のヤバさ」を嗅ぎ分けるセンスが必要だと思ってます。なぜなら、海外の現場は「ドミノ倒し」が起きるスピードが、日本の比じゃないから。

ドミノの第一投:その「小さなズレ」、本当に小さい?

僕が以前アサインされたプロジェクトでの話。

新しい機能を追加して、さあテストだ!って時に、UIチームから「なんか、グリッドの一番右の列だけ、表示がコンマ数ミリずれる時があるんだよね」っていう、超〜〜〜微妙な報告が上がってきたんです。

WPFやってる人なら「あー、あるある(笑)」って思うかもしれない。High DPI対応の問題か? XAMLのWidth="Auto"の解釈違いか? それとも、ただのMarginの指定ミスか?

正直、僕も最初は「またかよ。忙しいのに」って思いました。

見た目、言われないと気づかないレベル。機能的には、データはちゃんと表示されてる。納期は、来週。…うん、優先度「低」だよね。

当時のプロジェクトマネージャー(PM)も、「ユーザー、気づかないでしょ。それよりクリティカルなバグ先に潰してよ」って感じ。

これが、悪夢の始まりでした。

「後で直す」タスクとしてバックログの底に沈められた、その「小さなズレ」。

実は、それは「見た目」の問題じゃなかった。

根本的な原因は、非同期で取得される巨大なデータセット(C#のバックエンド処理)と、WPFのUIスレッドがデータをバインディングする「タイミング」の微妙なズレが、特定の条件下でだけ発生する「競合状態(Race Condition)」だったんです。

その「コンマ数ミリのズレ」は、システムが「俺、今、想定外のデータ食わされて、ちょっと混乱してるわ!」って発してた、か細いSOSだった。

最初はUIだけの問題だったはずが、気づけば「特定の操作をすると、データが保存されない」「なぜか関連する別画面の集計がバグる」「最悪、DBに不整合なデータが書き込まれる」っていう、部署をまたいだ大問題に発展。

まさにドミノ倒し。

一つの「見て見ぬフリ」が、他の部署のエンジニアを巻き込んで、「なんで俺の担当箇所まで!?」「犯人探しはよ!」みたいな、最悪の空気を作り出したんです。

こっち(海外)のチームって、役割分担が日本よりドライなことが多いから、「それはあなたの問題(That’s your problem.)」ってバッサリ切られがち。火種を放置すると、火消しどころか、チームの信頼関係まで燃え尽きることになる。

レビューの盲点:「誰かが見てる」は誰も見ていない

じゃあ、なんでその「ヤバい火種」はバックログの底に沈んだのか。

そう、レビューの盲点です。

僕らのチームでも、もちろんコードレビューはやってました。

プルリクエスト(PR)出して、シニアエンジニアがチェックして、マージする。当たり前の流れですよね。

でも、あの「小さなズレ」の修正(というか、その場しのぎのパッチ)がPRで上がってきた時、みんな「忙しかった」。

レビューのタイトルは「UIの微調整(Minor UI Fix)」。

中身を見ても、XAMLが数行変わってるだけ。「ああ、Margin調整したのね。はいOK(LGTM!)」

誰も、その「微調整」が、C#の ViewModel や Model 層にどういう影響を与えるかなんて、深く考えてなかった。

なぜなら、それは「UIのチケット」だったから。

海外のチームは、いろんな国の、いろんなバックグラウンドを持ったエンジニアの集まりです。

それは最高に刺激的だけど、同時に「品質に対する共通認識」を揃えるのが、めちゃくちゃ難しい。

  • パフォーマンス命のバックエンドエンジニアは、UIの数ピクセルのズレなんて気にしない。
  • デザイン至上主義のフロントエンドエンジニアは、DBの整合性より見た目を優先する。
  • スケジュール絶対厳守のPMは、リファクタリングなんて「時間の無駄」とさえ思ってる。

そういう「文化の違う」人たちが集まってレビューすると、「自分の担当範囲」でしかモノを見なくなる。

「このロジック、なんか気持ち悪いけど…まあ、俺の担当じゃないし、UIチームのシニアが見てるっしょ」

「この非同期処理、ちょっと危ういけど…バックエンドのAさんがOK出してるなら、大丈夫か」

「誰かが見てる」と思った瞬間、それは「誰も見ていない」のと同じ。

ルーティンになったチェック、専門分野への過度な信頼、そして「忙しいから」という最強の免罪符。

これらが組み合わさると、クリティカルな詳細なんて、いとも簡単に見逃されちゃうんです。

「これでいっか」の罠:その妥協、未来の自分への時限爆弾

そして、ドミノを加速させ、レビューを形骸化させる最強の悪魔。

それが、「Good enough(まあ、これでいっか)」メンタリティです。

特に納期がヤバい時、これ、発動しませんか?

「根本原因を追及する時間がない!」

「完璧な設計(例えば、WPFで言えば、このケースに最適なBehaviorを実装するとか、DIコンテナを見直すとか)を考える余裕がない!」

「とりあえず、動くように見えればいい!」

僕らの現場でも、そうでした。

あの「小さなズレ」が再発した時、チームが取った行動は「Task.Delayで無理やり待機時間を挟む」とか「Code-behind(MVVMの原則を無視した、XAMLの分離コード)で強引にデータを書き換える」とか、そういう「その場しのぎ」の対応でした。

なぜなら、それが「一番早かった」から。

海外の現場は、良くも悪くも「結果(=動くこと)」をスピーディに求められることが多い。そのプロセスが多少強引でも、動けば「Good job!」って言われちゃう。

でも、僕らエンジニアは知ってるはず。

その「サブ最適なソリューション」が、どれだけ危険か。

その「これでいっか」で塗り固めたコードは、もっと深い設計上の欠陥を「隠蔽」してるだけ。

最初は小さな絆創膏(ばんそうこう)だったはずが、気づけば膿(うみ)が溜まって、もう手当のしようがない。

技術的負債という名の時限爆弾を、未来の自分(あるいは、後から入ってくる新しい仲間)にセットしてるのと、まったく同じなんです。

火種は、すぐそこに

どうでしょう?

「あるわー…」「耳が痛い…」って思った人、たぶん僕だけじゃないはず。

小さな表示ズレ、見逃されたレビューコメント、納期に追われて妥協した設計。

これらは全部、僕らが日常的に遭遇する「小さな火花」です。

でも、海外という環境、多様な文化、そして猛烈なスピード感が組み合わさると、この「火花」は、僕らの想像をはるかに超えるスピードで「大火事」に変わる。

じゃあ、なんで僕らは、こんなに分かりやすい「火種」を、何度も何度も見過ごしてしまうのか?

そして、このドミノを止めるために、海外で働くエンジニアとして、僕らは何をすべきなのか?

次回、「承」のパートでは、この「火種」が「巨大なバグ」へと進化する恐ろしいメカニズムについて、さらに深く、僕の失敗談も交えながら掘り下げていこうと思います。

なぜ、僕らは「火種」を見過ごすのか?――スピード、文化、そして「優秀なエンジニア」の罠

「起」のパートでは、WPFアプリの「コンマ数ミリのUIズレ」っていう、クソどうでもいいレベルに見えた「火花」が、実はシステム全体を巻き込む「競合状態(Race Condition)」っていうヤバい爆弾で、それがドミノ倒しみたいにDBの不整合まで引き起こした、っていう話をしました。

レビューの盲点。「Good enough」な妥協。

頭ではわかってる。わかってるけど、なんで僕らエンジニアは、同じ過ちを繰り返しちゃうんでしょうか?

ここが、今回のブログで一番伝えたい「人生術」の部分。

その理由は、技術力(スキル)の問題じゃない。

むしろ、海外の現場特有の**「環境」と「心理」**に、デカい落とし穴があるんです。

1. 「スピード」という名の麻薬: “Done is better than perfect” の落とし穴

まずデカいのが、これ。スピード感。

特に僕がいるような欧米のテック企業は、「まず世に出せ(Time to Market)」が至上命題なことが多い。Facebook(現Meta)の有名なモットー “Done is better than perfect”(完璧を目指すより、まず終わらせろ)ってやつですね。

これ、日本の「品質は神。バグは悪」っていう文化で育つと、最初はめちゃくちゃ戸 C惑います。

「え、こんな中途半端でリリースすんの!?」って。

でも、このスピード感、慣れると「麻薬」なんですよ。

不完全でも、早くリリースすれば、早くユーザーの反応がもらえる。早く改善できる。この「高速イテレーション」の快感を一度知っちゃうと、もう元には戻れない。

…で、ここが落とし穴。

あの「UIのズレ」問題が再発した時。

僕の頭をよぎったのは、「WPFのレンダリングスレッドとC#の非同期処理を根本から見直す」っていう正論と、「Task.Delay(100)でもぶち込んどきゃ、とりあえずタイミングずれて動くんじゃね?」っていう悪魔のささやきでした。

そして、横には「Hey、あのバグまだ?ミーティング、あと30分で始まるんだけど」って顔してるPM(プロジェクトマネージャー)がいる。

はい、負けました。

「Good enough」のメンタリティ、爆誕の瞬間です。

その場しのぎのパッチを当てて、テストを(無理やり)通して、PRをマージする。PMは「Good job! Thanks!」って喜んでくれる。

でも、これが一番ヤバい。

「Done is better than perfect」は、「Perfect(完璧)じゃなくていい」って意味であって、「Broken(壊れてる)でもいい」って意味じゃない。

僕らが「Good enough」で隠した技術的負債は、「後でやるリスト」には入るけど、その「後で」は、永遠に来ない。

海外の現場のスピード感は、エンジニアの「ちゃんとやりたい」っていう良心を麻痺させる。

「完璧主義は悪だ」っていう空気に流されて、いつの間にか「動けばいいや」っていう妥協のハードルが、自分でも気づかないうちにガバガバになってるんです。

これが、火種を「見過ごす」んじゃなくて、「積極的に無視する」ようになる第一歩。マジで怖いですよ。

2. 「察して」が通用しない世界の、コミュニケーション・ギャップ

次。海外で働くなら、避けて通れない**「文化」と「言語」の壁**。

これが、レビューの「盲点」を、とんでもなく深く、暗くするんです。

日本みたいに「言わなくてもわかる(察する)」文化は、ここには一切ない。

全部、言葉にしないと伝わらない。

でも、僕ら非ネイティブにとって、これがキツい。

あの「UIのズレ」のPR。

タイトルは「Minor UI Fix」。

レビューで、チームのAさん(非ネイティブ)が、一言だけコメントしてたんですよ。

「Is this… correct?」(これ…合ってる?)

今思えば、これ、彼なりの最大限の「違和感」の表明だったんです。

「この修正、なんか気持ち悪くね?UIの修正なのに、なんでViewModel側でTask.Delay使ってんの?設計原則(MVVM)と違くね?」

…っていう、日本人なら「行間を読む」べき、痛烈なツッコミだった。

でも、当時のレビュワー(僕も含む)は、忙しさもあって、こう解釈しちゃった。

「(文法的に)合ってるかってこと?うん、コンパイル通るし、合ってるよ(Correct)」

Aさんも、自分の英語に100%自信がないから、「This is totally wrong! You shouldn’t merge this!」(これ、完全に間違ってる!マージすべきじゃない!)とまでは強く言えない。

周りも「まあ、Aさんも”Correct?”って言ってるだけだし、強く反対はしてないよね」ってスルーしちゃう。

はい、最悪の「盲点」の完成です。

海外の、特に多様な人種が集まるチームで一番怖いのは、これ。

「心理的安全性(Psychological Safety)」の欠如です。

「こんな初歩的なこと英語で聞いて、バカだと思われないかな?」

「俺の専門(C#)じゃないから、口出すべきじゃないかな?」

「今、ここで反論したら、チームの和を乱すかな?」

この「遠慮」や「恐れ」が、レビューを「ただの儀式」に変える。

「LGTM(Looks Good To Me)」は、「俺は中身を理解した上でOKを出した」っていう意味じゃなく、「俺は、このPRに責任を負わない(とりあえずマージしといて)」っていう、無責任な免罪符に成り下がる。

火種は、そこにあったのに。

みんな「ヤバいかも」って薄々気づいてたのに。

「誰かが言うだろう」

「シニアエンジニアのBさんがOK出してるから大丈夫だろう」

誰も、火に気づかないフリをした。これが、二つ目の理由です。

3. 「俺、C#なら任せろ」――専門家(エキスパート)の呪い

そして、三つ目。これは、優秀なエンジニアほどハマる罠です。

僕も、この罠にどっぷりハマってました。

僕はC#とWPFのプロフェッショナル(自称)です。

WPFのXAMLレイアウトシステム、DependencyProperty、MVVMパターン、async/awaitを使った非同期処理。その辺の知識と経験には、自信があった。

だから、あの「UIのズレ」を聞いた時、こう思ったんです。

「どうせ、XAMLのGridのWidth指定か、Marginの計算ミスだろ」

僕の頭の中は、完全に「WPF(UI層)」の問題として、このタスクを処理しようとしてた。

これが「専門家(エキスパート)の呪い」です。

心理学で「Law of the Instrument(道具の法則)」って言われるやつ。「ハンマーを持つ人には、すべてが釘に見える」ってアレです。

僕は「WAF(C#)というハンマー」を持っていたから、その問題が「釘(=WPFのバグ)」にしか見えなかった。

でも、本当の問題は「釘」じゃなくて、壁の裏でショートしてる「電気配線(=バックエンドの競合状態)」だった。

専門性が高まれば高まるほど、僕らの視野は「タコツボ化」していく。

自分の専門領域にはめちゃくちゃ強いけど、その「境界線」で何が起きてるかには、驚くほど鈍感になる。

あの「UIのズレ」は、「UIチーム」だけの問題じゃなかった。

それは「C#バックエンドチーム」と「DBチーム」と「UIチーム」の狭間(はざま)で起きていた、システム全体の悲鳴だったんです。

でも、ドミノ倒しが起きる時って、いつもそう。

問題は、一つの「専門領域」で完結することなんて、ほとんどない。

「火種」は、いつだって部署と部署、専門家と専門家の「隙間」で、誰にも気づかれずに燃え広がっていくんです。

まとめ:「見えない」んじゃない、「見てない」んだ

長くなったけど、僕らが火種を見過ごす理由は、こうです。

  1. 「スピード」という名の麻薬に脳を焼かれ、「ちゃんとやる」良心を麻痺させられるから。
  2. **「文化と言語の壁」**が心理的なブレーキになって、「おかしい」と声を上げる勇気をくじかれるから。
  3. **「自分の専門性」**に頼りすぎて、自分の専門外で起きているシステム全体の悲鳴に気づけなくなるから。

これ、全部「技術力」の話じゃないですよね?

全部、僕らの**「心」と「環境」**の話なんです。

じゃあ、この「どうしようもない」状況の中で、僕ら海外エンジニアは、どうやって火事を防げばいいのか?

次回、「転」のパートでは、この絶望的な状況をひっくり返す「転換点(ターニングポイント)」について、僕が学んだ具体的なアクションと思考法を、熱く語りたいと思います。

その火事、どう消す?――「もう、これでいっか」を、俺が捨てた日

「承」のパートでは、僕らがなぜ「ヤバい火種」を見過ごしちゃうのか、その心理的な構造を掘り下げました。

「スピード」という名の麻薬にやられ、

**「言語の壁」**で声を上げるのをためらい、

「専門家」のタコツボにハマって、視野が激セマになる。

結果、僕のプロジェクトで起きたあの「WPFのコンマ数ミリのズレ」は、どうなったか。

はい、盛大に燃えました。

クライアントへの大事なデモの、まさに前日。

「Good enough」でフタをしていた競合状態(Race Condition)が、本番に近いデータ量とネットワーク遅延でついに牙をむき、デモ用のDB(データベース)の重要データを、派手にぶっ壊しやがったんです。

「UIのズレ」どころの話じゃない。「データが、消えた」。

「コンマ数ミリ」の火種は、クライアントの信頼を丸ごと焼き尽くしかねない「大炎上」に、文字通り進化した瞬間でした。

オフィス(当時はまだリモートじゃなかった)は、阿鼻叫喚。

昨日まで「Good job!」とか言ってたPMは顔面蒼白。「どうなってんだ!」と、犯人探しを始める始末。

最悪の雰囲気です。

でも、皮肉なことに、この「最悪の炎上」こそが、僕にとって最大の「転換点(ターニングポイント)」になりました。

この地獄の中で、僕は「海外エンジニアとしての人生術」を3つ、同時に学んだんです。

転換点1:「エンジニア語」をやめ、「PM語」でリスクを翻訳する

デモが吹っ飛んだ日の夜。僕らは、文字通り徹夜で復旧作業にあたっていました。

ぶっ壊れたDBを前に、例の「UIのズレ」を放置したことを、死ぬほど後悔していました。

「なんで、あの時もっと強く言わなかったんだ…」

「なんで、Task.Delayなんていうクソみたいなパッチを、俺はレビューで通しちまったんだ…」

その時、ふと気づいたんです。

僕らエンジニアが「これ、ヤバいっすよ」って言ってたのは、「技術的な負債が」とか「MVVMの原則が」とか、そういうエンジニア語だったな、と。

PMからすりゃ「知らんがな。で、動くの?」で終わり。

彼ら(PMやビジネスサイド)が理解できる言語は、**「時間(Time)」と「金(Cost)」と「信頼(Trust)」**だけ。

この炎上をなんとか鎮火させた後、僕はやり方を根本から変えました。

二度と、あんな思いはしたくない。

レビューで「ん?」と思う火種を見つけたら、もう「Is this correct?」なんて生ぬるいことは言わない。

こう言うようにしたんです。

「(PMに向かって)このPR、今マージしたら50%の確率で、月末のリリース後にデータが壊れます」

「(シニアエンジニアに向かって)この設計、今は速いけど、半年後の機能追加で、工数が3倍かかります。この『技術的負債』は、今なら1日で返せるけど、半年後は2週間かかります。どっち選びますか?」

これ、魔法みたいに効きました。

C#のコードがどうとか、WPFのXAMLがどうとか、そういう話は一切しない。

彼らが理解できる「リスク」という言語に、僕が「翻訳」してやったんです。

「Good enough」で進めようとするPMに、「じゃあ、このリスク、あなたがサインしますか?」と、選択を突きつける。

これが、僕が学んだ一つ目の「人生術」。

エンジニアは、コードを書くだけが仕事じゃない。「技術的リスク」を「ビジネス上のコスト」に翻訳して、チームの舵取りを修正する「翻訳家」でもあるんだ、と。

転換点2:「弱い声」を拾う「拡声器」になる

二つ目の転換点は、コミュニケーション。

あの炎上のさなか、僕は「承」で書いたAさん(”Is this correct?”とだけコメントした非ネイティブの彼)のことを思い出しました。

彼、気づいてたじゃん。

なんで、俺たちは彼の「か細い声」をスルーしたんだ?

僕も非ネイティブだから、痛いほどわかる。

英語のミーティングで、ネイティブの超早口な議論に割って入る勇気。

自分の文法が合ってるかビクビクしながら、「あの、たぶん、それ、間違ってると思うんだけど…」って切り出す恐怖。

でも、気づいたんです。

火種は、そういう「か細い声」が指し示す先にこそ、ある。

デモが炎上した後、「Blamestorming(犯人探しの嵐)」みたいな最悪のミーティングが開かれました。

僕は、そこで(クソなまりの英語で)こう言いました。

「待ってくれ。この問題、Aさんがレビューで指摘してた。俺たちはそれを見逃した。Aさん、あの時、本当は何が言いたかったんだ?」

指名されたAさんは、最初はビクビクしてましたが、僕が味方だとわかると、ついに口を開きました。

「あのTask.Delayは、タイミングの問題を解決してない。ただ、問題を『隠してる』だけだと思った。いつか、別のタイミングで爆発する、って…」

それな!!!

この瞬間、チームの空気が変わりました。「犯人探し」から「原因究”明」へ。

僕はこの時、学んだんです。

海外の多国籍チームで生き残るには、自分が「うまく話す」ことより、「うまく話せない」仲間の声を、拾って、増幅(Amplify)してやることの方が、100倍大事だ、と。

それ以来、僕はミーティングやレビューで「拡声器(Megaphone)」になることに決めました。

「ねえ、Bさん(だいたい静かなアジア系のエンジニア)、この件についてどう思う?」

「今、Cさんがチャットで良いこと言った。『〜〜』ってことだよね?(と、口頭で全員に共有する)」

心理的安全性を、誰かが作ってくれるのを待つんじゃない。俺が、作るんだ。

これが、二つ目の「人生術」です。

転換点3:「専門家」のプライドを捨て、「全体図」を描くハブになる

そして、三つ目。

あのクソみたいな「競合状態(Race Condition)」バグ。

結局、どうやって直したと思いますか?

僕(C# WPF)と、バックエンドのエンジニア(Java)と、DBA(データベース管理者)の、3人が、3時間ぶっ通しで、一つの会議室にこもって(当時はまだできた)、ようやく原因を特定し、潰しました。

原因は、やっぱり「隙間」にありました。

僕のWPFアプリが「このデータ頂戴」とリクエストを投げる。

→JavaのAPIが「OK、今DBに聞きに行くわ」

→僕のアプリが「やっぱキャンセル!(別の操作)」と短時間にリクエスト

→Javaが「さっきのDBのやつ、もう処理しちゃったよ!」

→僕のアプリ「知らんがな!(UI上はキャンセルされてる)」

→結果、DBだけが更新され、UIとDBのデータが不整合になる。

はい、全員、悪くない。でも、全体として、最悪。

僕は、自分が「C# WPFの専門家」であることに、プライドを持ちすぎていました。

XAMLのコード、C#のロジック、そればっか見てた。

「専門家の呪い」に、どっぷりかかってたんです。

炎上を消し止めたあの3時間で、僕が学んだこと。

俺の仕事は「WPFアプリを完成させること」じゃない。「ユーザーが、正しくデータを操作できる『体験』を、システム全体で作ること」だ。

それ以来、僕は「専門家」のプライドを、いい意味で捨てました。

新しい機能を作るとき、C#のコードを書く前に、まずバックエンドの担当者とDBAを捕まえて、こう聞くようにしました。

「今度、こういう画面(WPF)作りたいんだけどさ」

「(ホワイトボードに、超シンプルな『絵』を描きながら)データって、どこから、どう流れるのが一番『安全』?」

僕は「C#エンジニア」であると同時に、UIとバックエンドとDBの「隙間を埋める」、ハブ(Hub)エンジニアになったんです。

「転」のまとめ:火事を消すのは「スキル」じゃない、「視点」だ

あの炎上で、僕らは多くのものを失いました。時間、信頼、そしてPMの髪の毛(たぶん)。

でも、僕は、金(きん)よりも大事な「人生術」を手に入れた。

  1. 「翻訳」の視点:技術リスクを、ビジネスの言葉で語る。
  2. 「拡声器」の視点:言えない人の「違和感」を、チームの資産に変える。
  3. 「ハブ」の視点:自分の専門領域(タコツボ)から出て、システム全体の「隙間」を見る。

これ、全部C#のスキルとか、WPFの知識とか、一切関係ないですよね?

でも、これが、海外で「ただのコーダー」から「信頼されるエンジニア」に変わるための、僕にとっての「転換点」でした。

小さな火種は、これからも絶対になくならない。

問題は、それを「どう扱うか」。

次回、ついに最終回「結」。

この「転換点」を経て、僕らが目指すべき「真のグッド・エンジニア」の姿と、これから海外を目指す皆さんへの「最後の宿題」について、語りたいと思います。

お前は「火消し」か? それとも「火付け役」か?――海外で「食える」エンジニアの、たった一つの資質

僕らの仕事は、C#でコードを書くことでも、WPFでキレイな画面を作ることでもない。

(いや、それも大事なんだけど、本質じゃない)

僕が、あの「デモ前日の大炎上」っていう地獄から学んだこと。

それは、**「問題(火種)は、どうせ起きる」**っていう、残酷な真実でした。

どんなに優秀なエンジニアが集まっても、どんなに完璧なレビュープロセスを組んでも、あの「コンマ数ミリのズレ」みたいな火種は、絶対に、なくならない。

海外の現場なら、なおさらです。

スピードが速いから。文化が違うから。言語が混ざり合ってるから。

じゃあ、どうすりゃいいんだよ、と。

僕らは、「火事が起きてから、いかに早く消火するか(=デバッグ)」っていう「火消し(Firefighting)」のスキルばっかり磨きがちです。

「俺、あのヤバいバグ、3時間で直したぜ」

「C#のメモリリーク、俺が潰したわ」

…そういう武勇伝、酒のツマミに最高ですよね。僕も大好きです。

でも、海外の現場で本当に、本当に「コイツ、信頼できるわ」って一目置かれるエンジニアは、「火消し」がうまい人じゃない。

「火種」の段階で、その「匂い」に気づける人。

そして、「火事が起きる前」に、周りを巻き込んで「防火」できる人。

これに尽きます。

「転」で話した3つの「人生術」、覚えてますか?

  1. 「翻訳家」であれ:PMに「技術的負債がー」とか言うな。「これ放置したら、金と時間が溶けますよ」って「ビジネス語」でリスクを伝えろ。
  2. 「拡声器」であれ:自信なさげな非ネイティブの「Is this correct?」っていう「か細い声」こそ、宝の山だ。「今、Aさんが言ったこと、超重要じゃない?」って、お前がチームに拾い上げろ。
  3. 「ハブ」であれ:自分の専門(僕ならC# WPF)に閉じこもるな。「俺、バックエンド(Java)のことは知らね」って言った瞬間、お前は「タコツボ」だ。システムの「隙間」にこそ、一番ヤバい火種が転がってる。

これ、見てください。

C#の「C」の字も、WPFの「W」の字も、出てこないでしょう?

そうなんです。

僕らが海外で「Good enough(これでいっか)」の罠にハマらず、ヤバい火種を大火事にしないために必要なのは、技術スキル(ハードスキル)じゃないんです。

「あれ?このままだと、ヤバくね?」っていう違和感をスルーしない**「当事者意識(Ownership)」。

その違和感を、立場の違うPMや、文化の違う同僚に、正しく「翻訳」して伝える「コミュニケーション能力(Communication)」。

自分の専門外の領域にも、平気で首を突っ込んで「全体図」を把握しようとする「好奇心(Curiosity)」**。

こういう、クソ面倒くさい「ソフトスキル」こそが、僕らを「火付け役(=知らずに火種を放置する人)」から、「防火管理者(=火事を未然に防ぐエンジニア)」へと、進化させてくれる唯一の武器なんです。

これから海外を目指す、あなたへ

もし、あなたが今、日本で働いていて、「海外で通用するスキルって何だろう?」って考えてるなら。

C#の最新機能(.NET 8とか)を追うのも、WPFのPrismとかを極めるのも、もちろん大事。僕も毎日やってます。

でも、それと同じくらい、いや、こっち(海外)に来たら、それ以上に、さっきの「人生術」がモノを言います。

だから、明日から、今の職場で「小さな実験」を始めてみてください。

  • 「なんか、この仕様、気持ち悪いな…」って思ったら、スルーしないで。
  • それを、「エンジニア語」じゃなく、「上司や他部署の人がわかる言葉(金・時間・リスク)」に「翻訳」して、一回ぶつけてみて。
  • 会議でいつも静かなあの人に、ちょっと話を振ってみて。
  • 自分の担当じゃないAPIのドキュメントを、ちょっと覗き見してみて。

それが、海外で「ただのコーダー」にならず、「信頼されるエンジニア」として生き残るための、最高の実践トレーニングになります。

「小さな火花」を見過ごさず、チームを、プロジェクトを、そしてあなた自身のキャリアを守る。

それこそが、僕が伝えたい「海外で働くエンジニアの、最強の人生術」です。

熱く語りすぎましたね(笑)

でも、これが僕の実体験ベースの、本音です。

あなたの海外での挑戦、心から応援してます。

また次のブログで会いましょう!Cheers!

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