海外で燃え尽きないために。C#エンジニアが辿り着いた「マインドフル仕事術」

海外エンジニアの幻想と、僕がエナドリを手放すまで

どうも、こんにちは!海外(今はヨーロッパの某国です)でITエンジニアとして働いています。メインの技術スタックはC#とWPF。クライアント向けのデスクトップアプリケーションの設計と開発をゴリゴリやっています。

「海外で働くエンジニア」って聞くと、どんなイメージがありますか?

フレックスタイムでゆったり出社して、多国籍な同僚とスマートに英語でディスカッション。週末はカフェで読書したり、ふらっと隣国に旅行したり…。うん、そういうキラキラした側面がゼロとは言いません。

でも、これから海外で働こうと思っている、あるいは働き始めたばかりのエンジニアの皆さんに、まず声を大にして言いたいことがあります。

「技術力さえあれば、どこでもやっていける」――これは、半分ホントで、半分は危険な幻想です。

僕もそう思っていました。C#の言語仕様は熟知してるし、WPFのXAML(ザムルって読みます)を使ったMVVM(Model-View-ViewModel)パターンの設計も得意。非同期処理(async/await)だって使いこなせる。技術的な引き出しさえ多ければ、環境が変わったって大丈夫だろう、と。

でも、現実はそんなに甘くなかった。

海外で働くってことは、自分の「OS」が動く「ハードウェア」ごと、まったく違う環境に持っていくようなものなんです。電圧も違えば、ネットワークのレイテンシも違う。頼れるドキュメント(=日本の常識)も通じない。

僕の場合、最初の3ヶ月が地獄でした。

まず、時差ボケが抜けない。日本とのミーティングが変な時間に入ったりして、生活リズムがガタガタ。慣れない食事で胃腸も安定しない。スーパーで買う食材ひとつとっても、「これ、なんだ?」の連続。

そして、何より「認知コスト」の爆増です。

朝起きてから寝るまで、すべてが「非ネイティブ」なんです。同僚のジョークに愛想笑いするのも、ランチの注文をするのも、送られてくるチャットのスラングをこっそりググるのも、全部、脳のメモリとCPUを消費していく。

日本のオフィスにいれば、無意識にできていたことが、全部「意識的なタスク」に変わる。

この状態で、WPFの複雑な設計と向き合うのがどれだけしんどいか。

WPF開発って、結構「脳みそに汗をかく」タイプの仕事なんですよね。ユーザーコントロールの依存関係プロパティ(DependencyProperty)がどう連携するか、ViewModelのロジックがViewにどう影響するか、膨大なXAMLの中からパフォーマンスのボトルネックを見つけ出すか…。

ロジックとUIが密結合しやすいWPFを、いかに疎結合(そけつごう)に、テスト可能に、そして高速に保つか。これって、ものすごく高い集中力と、クリアな思考力が要求されるんです。

でも、当時の僕はどうだったか。

脳が常に「霧がかかった」状態。時差ボケと疲労で、簡単なロジックさえ思いつかない。コードレビューでは、普段なら絶対に見逃さないような凡ミスを連発。「あれ、俺、こんなに仕事できなかったっけ?」と、自信を失う日々。

その時、僕が頼ったもの。それが、皆さんお馴染みの**「エナジードリンクと大量のコーヒー」**です。

朝、霧のかかった頭を叩き起こすために1本。昼食後、猛烈な睡魔と戦うためにコーヒーを2杯。そして、夕方。集中力が切れてきたところで、ダメ押しのエナジードリンクをもう1本。

カフェインの力で、無理やり脳を「オーバークロック」させて、その場しのぎのパフォーマンスをひねり出す。まさに「睡眠負債」を「カフェイン」という高金利のローンで返済しているような状態でした。

もちろん、そんなものが長続きするわけがない。

夜はカフェインのせいで眠りが浅くなり、翌朝はさらにひどい疲労感で目覚める。パフォーマンスは日に日に落ちていく。そして、ついに「事件」は起きました。

ある重要なリリースの直前。僕が担当していたのは、WPFアプリケーションのコア機能の一つで、非同期処理を多用してバックグラウンドで重いデータを処理し、その進捗をUIにリアルタイムで反映させる、という割と複雑な画面でした。

寝不足とストレスで判断力が鈍っていた僕は、async/awaitのコンテキスト(お作法みたいなもの)を一部で見誤りました。結果、特定の操作をするとUIスレッドがデッドロックを起こし、アプリが完全にフリーズする、という致命的なバグを埋め込んでしまったんです。

リリース前の最終テストでそれが発覚し、チームは大騒ぎ。

その時、リードエンジニア(オランダ人のおじさん)に言われた一言が、僕の目を覚まさせました。

「君、最近ちゃんと寝てるか? 君のコードは技術的に間違ってるんじゃない。ただ、すごく『疲れてる』コードだ」

ハンマーで頭を殴られたような衝撃でした。

問題は、C#の知識が足りないことでも、WPFの経験が浅いことでもなかった。

僕が管理すべきだったのは、コードの品質(Quality)である前に、僕自身の「認知機能(Cognitive Function)」の品質だったんです。

アスリートが最高のパフォーマンスを出すために、練習(技術)だけでなく、睡眠、栄養、メンタルケアを徹底するのと同じです。僕たちエンジニアも、複雑な設計を考え、バグのないコードを書くという「知的パフォーマンス」を発揮するために、自分の脳と体を最高のコンディションに保つ義務がある。

特に、僕のように環境ストレスの多い「海外」で戦うなら、それは「できればやること」じゃなくて、「絶対にやるべき最重要スキル」なんだと痛感しました。

そこから僕は、「技術書」を読むのと同じ熱量で、「人間のパフォーマンス」について学び始めました。

どうすれば脳の疲労を回復できるのか?

どうすればプレッシャーやストレスと上手く付き合えるのか?

どうすれば失敗を「学習」に変えられるのか?

そして行き着いたのが、今回のブログのテーマでもある**「The Mindful Engineer(マインドフルなエンジニア)」**という考え方です。

これは、「禅」とか「精神論」みたいなフワフワした話じゃありません。

  1. 睡眠と栄養を最適化し、脳の「ハードウェア」を最高の状態に保つ。
  2. マインドフルネスで、マルチタスクの誘惑や「今ここ」にない不安から脳を守り、集中力をハックする。
  3. グロースマインドセット(成長マインドセット)で、失敗やバグを「脅威」ではなく「フィードバック」として受け入れるメンタルを構築する。

これらはすべて、持続的に高いパフォーマンスを発揮するための、超具体的な「技術スタック」です。

このブログでは、僕がエナジードリンクを手放し、燃え尽き寸前からどうやってV字回復したのか。そして、C#やWPFの技術と同じくらい、いや、それ以上に重要だと気づいた「サステナブル(持続可能)なパフォーマンス術」について、実体験ベースで余すところなくお話ししていこうと思います。

もしあなたが「技術力には自信があるけど、最近どうもパフォーマンスが出ない」とか、「これから海外に行くけど、環境の変化が不安だ」と感じているなら、きっと役に立つヒントがあるはずです。

コードは「脳」で書く。睡眠と栄養がWPFの設計をどう変えたか

(起からのつづき)

さて、「君のコードは疲れてる」という、あのグサリとくる一言。

あれから僕は、技術書をいったん脇に置き、代わりに「睡眠」と「栄養」に関する本や記事を読み漁りました。

正直、ナメてましたね。「寝る間も惜しんでコード書くのが美徳」みたいな、昭和のスポ根ドラマみたいな価値観が、僕のどこかにまだ残ってたんです。

でも、海外のトップエンジニアたちの話を聞くと、みんな口を揃えて言うんですよ。「睡眠はコストじゃない、投資だ」と。

僕たちエンジニアの仕事道具って、なんだと思いますか?

もちろん、ハイスペックなPCや、使いやすいキーボードも大事です。でも、一番大事な、そして替えが効かない道具は、僕たちの**「脳」**ですよね。

WPFで「なんでこのBindingがうまく動かないんだ?」とか、「このDataGridのパフォーマンスが最悪だ。UI仮想化は効いてるはずなのに…」とか、そういう複雑な問題をデバッグする時。あるいは、新しい機能のために、「このViewModelの責務はどこまでだ?」「このロジックはService層に切り出すべきか?」みたいな、拡張性の高い設計(アーキテクチャ)を考える時。

これ、全部「脳」がやってる高負荷な知的作業です。

その「脳」が、寝不足や栄養不足で「低スペックモード」になっていたら?

そりゃあ、バグも埋め込むし、フリーズするアプリも作っちゃいますよね。リードエンジニアの言う通り、僕は「疲れたコード」を量産していたわけです。

僕がまずやったこと。それは「睡眠時間の絶対確保」です。

それまでの僕はひどかった。夜中までダラダラとコーディングしたり、ネットを見たり。カフェインで無理やり起きてるから、ベッドに入ってもなかなか寝付けない。

これを全部変えました。

まず、「夜12時以降はPCを開かない」という鉄のルールを決めました。

そして、「最低7時間半はベッドにいる」とカレンダーに予定としてブロックする。もう、クライアントとの最重要ミーティングと同じ扱いです。

最初はソワソワしましたよ。「あ、あの機能の実装、夜中にやろうと思ってたのに…」って。

でも、強制的にPCを閉じて、ベッドで(技術書じゃない)普通の小説とかを読むようにしたら、驚くほどスッと眠れるようになったんです。

そして、翌朝。違いは明らかでした。

比喩じゃなく、本当に「視界がクリア」なんです。頭にかかっていた霧が、サーッと晴れていく感じ。

そのクリアな頭で、昨日まで悩んでいたWPFの設計図を見直してみたんです。

それは、複数のユーザーコントロールが協調して動く、ちょっと複雑な画面でした。以前の僕なら、ViewModel同士を無理やりMessenger(イベントバスみたいなやつ)でつないで、スパゲッティコード一歩手前のものを作っていたかもしれません。

でも、その朝の僕は違った。

「あ、これ、共通の親ViewModelDependency Injection(依存性の注入)でSharedService(共有サービス)を一個挟めば、全部そいつ経由でキレイに状態管理できるじゃん」

…と、ものの10分でスッキリした設計が頭に浮かんだんです。昨日まであんなに悩んでいたのが嘘みたいに。

これ、別に僕のC#やWPFのスキルが急に上がったわけじゃない。

単に「脳」が、本来のパフォーマンスを取り戻しただけなんです。

寝不足の脳って、いわば「メモリリーク」を起こしてる状態。ガベージコレクション(GC)がうまく働いてなくて、思考のゴミが溜まってる。だから新しいアイデアを入れるスペースがないし、処理も遅い。

しっかり寝ることで、この「脳のGC」がちゃんと動いて、メモリが解放される。当たり前のことでした。


次に手を出したのは「栄養」、特に「カフェインと糖質」です。

海外のオフィスって、エナジードリンクやスナック菓子が、福利厚生で「取り放題」みたいなところ、結構あるんですよ。僕のいたところもそうでした。

そりゃ、飲みますよね。午後3時、ちょっと集中力が切れてきたな…って時に、エナドリをプシュッ。小腹が空いたら、クッキーやチョコレートをつまむ。

これが最悪のループでした。

血糖値が急上昇して一時的に元気(になったフリ)をして、その直後に急降下。猛烈な眠気とダルさに襲われる。そして、そのダルさを解消するために、またエナドリかコーヒーを飲む…。

まさに「負債」を「高金利ローン」で返してる状態。

僕は、まず「午後3時以降のカフェイン」を一切断ちました。

そして、デスクに常備していたエナドリと甘いお菓子を撤去。代わりに置いたのが、**「ナッツ類(無塩)」と「ダークチョコレート(カカオ70%以上)」、そして大量の「水」**です。

ランチも変えました。以前はパスタとかピザとか、手っ取り早い炭水化物で済ませがちだったんですが、野菜や鶏肉、魚(タンパク質)をメインにするように意識しました。

効果はテキメンでした。

何より変わったのは、**「集中力の持続時間」**です。

以前は、午前中は調子が良い(カフェインのおかげで)けど、昼食後は必ずパフォーマンスがガタ落ちしていた。

それが、血糖値の乱高下を抑える食事に変えたことで、午後も安定して集中力が続くようになったんです。

WPFのデバッグって、本当に地道で集中力がいる作業なんです。

Snoop(スヌープ:WPFのデバッグツール)とかVisual Studioの「ライブビジュアルツリー」を睨みつけながら、「なぜこのButtonのIsEnabledがFalseになってるんだ?」「どのStyleがこのMargin(余白)を上書きしてるんだ?」って、UI要素のツリーを延々と追いかけないといけない。

以前は、こういう作業が午後になると苦痛で仕方なかった。集中力が続かないから、すぐ他の作業に逃げちゃってたんです。

でも、食生活を改善してからは、そういう「地味だけど重要なタスク」にも、しっかり腰を据えて取り組めるようになりました。結果、バグの発見も早くなったし、何より仕事のストレスが激減しました。


まとめると、僕がやったのは以下の2つだけ。

  1. 睡眠を「最優先タスク」としてスケジュールする。(脳のGCを回すため)
  2. エナドリと砂糖をやめ、血糖値を安定させる食事に変える。(脳のCPUを安定稼働させるため)

キーボードを叩くのは「指」かもしれないけど、コードを設計し、バグを見つけるのは「脳」です。

僕たちエンジニアは、その「脳」という最重要ツールのメンテナンス方法について、あまりにも無頓着すぎた。WPFの最新テクニックを学ぶ前に、まず自分の脳を最高のコンディションに保つこと。

これが、僕が海外で燃え尽きかけて学んだ、一番大事な「パフォーマンス術」の第一歩です。

…ただ、これだけではまだ足りませんでした。

体調(ハードウェア)は万全になった。でも、今度は僕の「心(ソフトウェア)」が悲鳴を上げ始めたんです。

それが、海外で働くエンジニアが必ずぶち当たる「ストレス」と「失敗への恐怖」という、もっと厄介な問題でした。

襲い来る「不安」との戦い。僕を救ったマインドフルネスと「失敗」の正しい活かし方

(承からのつづき)

さて、睡眠と栄養。この「ハードウェア(身体)」のメンテナンスを徹底したことで、僕のパフォーマンスは劇的に改善しました。霧が晴れた頭で、WPFの複雑な設計にも、地味なデバッグ作業にも向き合えるようになった。

「よし、これで俺も海外でバリバリやっていけるぞ!」

…そう思った矢先でした。

ハードウェアが快調になったことで、逆に、もっと厄介な問題がクッキリと浮かび上がってきたんです。

それは、僕の「ソフトウェア(心・思考)」の問題。

具体的に言えば、**「際限のない不安」「失敗への極度な恐怖」**です。

海外で働くエンジニア、特に僕みたいに英語が第二言語の人間にとって、これ、本当にあるあるだと思うんです。

例えば、

  • ミーティングで、自分の拙い英語のせいで、せっかく考えた設計(アーキテクチャ)の意図が正しく伝わらなかったらどうしよう…
  • コードレビューで、ネイティブの同僚から「こんな簡単なことも知らないのか?」って思われるような指摘を受けたらどうしよう…
  • Slackで飛び交うジョークやスラングの意味が分からず、会話から取り残されたらどうしよう…

技術(C#やWPF)には自信がある。でも、それを「伝える」部分で、常にハンデを背負っている感覚。

この「不安」が、僕の集中力をじわじわと蝕んでいきました。

WPFのコードを書いていても、頭の片隅で、さっきのミーティングでの自分のたどたどしい英語をリピート再生して「ああ言えばよかった…」と後悔したり。

デバッグ中にSlackの通知音が鳴るたびに、「緊急のトラブルか?」「俺、何かやらかしたか?」とビクッとしたり。

これ、エンジニアの仕事にとって致命的ですよね。

僕らの仕事、特にWPFのUI設計や、async/awaitを使った非同期処理のロジックを組む時って、**「深い集中(ディープワーク)」**が不可欠なんです。

WPFのVisualTree(ビジュアルツリー)とLogicalTree(ロジカルツリー)の違いを意識しながらカスタムコントロールを作っている時に、Slackの通知で思考が中断される。

…たったそれだけで、元の集中状態に戻るのに15分以上かかる、なんてザラです。

この状態、まさに僕の脳が「コンテキストスイッチング」を頻発させて、CPUリソースを無駄遣いしている状態でした。


そこで僕が取り入れたのが、「マインドフルネス」です。

「マインドフルネス」って聞くと、なんかスピリチュアルな「無になる」みたいなイメージ、ありませんか?

僕も最初はそう思ってました。でも、エンジニア向けに調べてみたら、全然違った。

僕なりの解釈ですが、**エンジニアにとってのマインドフルネスは、「脳のタスクマネージャーを起動する技術」**です。

僕の脳は、メインタスクである「コーディング」の裏で、「不安」「後悔」「未来の心配」みたいな、無駄なバックグラウンドプロセスが大量に動いて、CPU(集中力)を食い荒らしている状態でした。

マインドフルネスは、まず「あ、今、俺は”コーディング”タスクじゃなくて、”不安”タスクを処理してるな」と**『気付く』**ことです。

そして、『気付いたら』、そっとそのプロセスを終了して、意識をメインタスク(目の前のコード)に戻す。

僕がやったのは、すごく簡単なことです。

  1. ポモドーロ・テクニックの導入: 25分集中して、5分休む。その25分間は、Slackもメールも、スマホの通知も全部オフ。物理的に「割り込み(Interrupt)」を遮断します。
  2. 「呼吸」をアンカーにする: 25分の集中タイムが始まるとき。まず10秒だけ、深く息を吸って、吐く。意識を「今、ここ」に強制的に持ってくる儀式です。
  3. 「気付き」の訓練: コーディング中に「あ、またあのミーティングのこと考えてる…」と気付いたら、自分を責めずに、「はい、思考逸れたね。OK、コードに戻ろう」と、淡々と意識を戻す。

これを繰り返すうちに、明らかに「今、ここに集中する力」が強くなりました。

不安がゼロになるわけじゃないんです。でも、不安という「プロセス」にCPUを乗っ取られる時間が、劇的に短くなった。

これは、海外で働く上で、最強のストレス管理術になりました。英語がどうとか、評価がどうとか、そういう「今コントロールできないこと」に脳のリソースを割くのをやめられたんです。


そして、もう一つの「大ボス」が、「失敗への恐怖」でした。

体調を整え、集中力を手に入れた。それでも、僕は「失敗」をしました。

それは、WPFアプリケーションのコア機能である、データの「保存」ロジックに関するものでした。

要件の解釈を一部間違えていて、特定の条件下でユーザーが入力したデータが正しく保存されない、というクリティカルなバグを、リリース直前にQA(品質保証)チームに見つけられてしまったんです。

もう、血の気が引きました。

頭に浮かんだのは「終わりだ」「俺の評価はガタ落ちだ」「あの時、なんで確認しなかったんだ…」という自己否定のオンパレード。

これが、いわゆる**「固定マインドセット(Fixed Mindset)」**です。

「自分の能力は”固定”されていて、失敗は、自分の”能力の低さ”の証明だ」と思い込む、最悪の思考パターン。

この時、僕を救ってくれたのも、またあのリードエンジニア(オランダ人のおじさん)でした。

彼は僕を呼び出すと、怒るでもなく、ため息をつくでもなく、こう言ったんです。

「OK。バグは見つかった。それはラッキーだ。じゃあ、このバグから『何を学べる』?

ハッとしました。

彼は、僕を「評価」するんじゃなく、バグを「データ」として見ていたんです。

これが、スタンフォード大学のキャロル・S・ドゥエック教授が提唱する**「成長マインドセット(Growth Mindset)」**との出会いでした。

「失敗は、自分の能力の”終点”ではなく、能力を伸ばすための”情報”である」

この考え方に切り替えた瞬間、世界が反転しました。

  • デバッグが「罰ゲーム」じゃなくなった。バグは「俺のせいだ…」から、「お、面白い。どのロジックがこの想定外(Exception)を生んだんだ?」という「謎解き」に変わりました。WPFのデバッグツール(Snoopとか)でBindingエラーを追跡するのも、以前は苦痛でしたが、「なるほど、このDataContextがnullになるタイミングがあるのか。いいこと知ったわ」と、学習の機会に変わったんです。
  • コードレビューが「攻撃」じゃなくなった。以前は、レビューコメントが付くたびに「うわ、また否定された…」とビクビクしていました。でも、成長マインドセットでいれば、それは「僕の知らないC#の書き方」や「僕が見落としていた設計の穴」を教えてくれる**「無料の技術コンサルティング」**に変わるんです。「ああ、この方がICommandの実装としてクリーンだな、ありがとう!」って、素直に思えるようになりました。

海外で働く、特に文化も言語も違う環境では、日本にいる時の10倍は「失敗」や「誤解」に遭遇します。

そのたびに「固定マインドセット」で「俺はダメだ…」と落ち込んでいたら、あっという間に燃え尽きます。

そうじゃなくて、すべての失敗を「お、新しいデータが取れたぞ」「次はこうアップデートしよう」と、git commitするみたいに、自分の経験値として積み上げていく。

「バグ(失敗)は、敵じゃない。最高の学習リソースだ」

このマインドセットの転換こそが、僕を「燃え尽き」から本当に救ってくれた、一番の「人生術」だったんです。

体(睡眠・栄養)を整え、心(マインドフルネス)を整え、そして、思考(グロースマインドセット)を整える。

この3つが揃って初めて、エンジニアは持続的に高いパフォーマンスを発揮できる「マインドフル・エンジニア」になれるんだと、僕は確信しました。

最強のスキルは「持続可能性」だった。明日からできるマインドフル・エンジニアリング

(転からのつづき)

「起」で僕の燃え尽き寸前の大失敗を、「承」で睡眠と栄養という「ハードウェア」の再構築を、そして「転」でマインドフルネスとグロースマインドセットという「ソフトウェア」のデバッグについてお話してきました。

長くなりましたが、僕がこの一連の経験から学んだ、たった一つの、しかし何よりも重要な「得する情報」であり「人生術」は、これです。

海外で働くITエンジニアにとって、最強のスキルはC#でもWPFでもなく、「自分自身の持続可能性(サステナビリティ)」である。

どういうことか。

僕たちはエンジニアとして、常に「拡張性(Scalability)」や「保守性(Maintainability)」の高いコードを書こうと努力します。async/awaitを使ってUIの応答性を保ったり、MVVMパターンでロジックとUIをきれいに分離したり。

なぜそんな面倒なことをするかと言えば、その方が「長持ち」するし、「将来の変更に強い」し、「バグが減る」からです。その場しのぎのコピペコードは、いつか必ず技術的負債になって、プロジェクト全体をクラッシュさせますよね。

これ、僕たちエンジニア自身にも、まったく同じことが言えるんです。

エナジードリンクと寝不足でひねり出すパフォーマンスは、まさしく「その場しのぎのコピペコード」です。

「不安」や「失敗への恐怖」を放置したまま働くのは、例外処理(try-catch)を忘れたままリリースするようなもの。いつか必ず、致命的な「例外(Exception)」でアプリ(=あなた自身)がクラッシュします。

僕もそうでした。自分の「技術スタック(C#, WPF)」を磨くことばかりに夢中で、その技術スタックを動かしている「OS(自分自身)」のメンテナンスを、完全に怠っていました。

海外という、慣れない高負荷な環境(=本番環境)で、デバッグもロクにしてないOSを動かそうとしていた。そりゃフリーズ(燃え尽き)もしますよ。

「マインドフル・エンジニア」とは、特別な人間になることじゃありません。

自分の「ハードウェア(身体)」と「ソフトウェア(心・思考)」の状態に常に気を配り、バグ(不調)があれば早期に検知し、適切なメンテナンス(睡眠・栄養・マインドフルネス)を怠らない。

そして、失敗(バグ)を「学習の機会」としてcommitし、自分自身を日々アップデート(グロースマインドセット)していく。

これって、僕たちが毎日やっている「エンジニアリング」そのものじゃないですか?

WPFのBindingがうまくいかない原因を探るように、自分の集中力が続かない原因を探る。

C#のコードをリファクタリングするように、自分の思考のクセ(固定マインドセット)をリファクタリングする。

そう考えると、僕たちが「エンジニア」として学んできた論理的思考は、すべて「自分自身を最適化する」ために応用できるんです。


さて、明日から。

この長いブログを読んでくれたあなたが、これから海外で働くにあたって、まず何をすべきか。

「全部やらなきゃ!」と気負う必要は、まったくありません。

(そういう「完璧主義」こそが、燃え尽きの第一歩ですからね!)

この記事で紹介した「得する情報」は、たった一つでいいから、試してみてください。

  • 今夜、いつもより30分だけ早くPCを閉じて、ベッドに入ってみる。それだけで、明日のあなたの「脳のGC(ガベージコレクション)」は、いつもより少しだけうまく動くはずです。
  • 明日、仕事中に「あ、今、関係ない不安を考えてるな」と気付いたら、1回だけ、深呼吸して意識を目の前のコードに戻してみる。それだけで、あなたの「CPU(集中力)」の無駄遣いを、数分だけ防げたことになります。
  • 明日、コードレビューで指摘を受けたら、「うわっ」と思う代わりに、「なるほど、この視点はなかった。情報ゲット」と、心の中で(演技でもいいから)呟いてみる。それだけで、あなたの「固定マインドセット」に、小さなヒビを入れることができます。

海外で働くというチャレンジは、マラソンです。短距離走じゃない。

必要なのは、一瞬の爆発的なスピードではなく、どこまでも走り続けられる「持続可能性」です。

あなたのC#やWPFの技術は、素晴らしい武器です。

でも、その武器を振るい続けるための「体力」と「精神力」がなければ、宝の持ち腐れになってしまう。

僕もまだまだ道半ばです。今でも不安になるし、失敗もします。

でも、そのたびに「おっと、メンテナンスの時間だな」「いいデータが取れたぞ」と、自分自身をエンジニアリングするようになりました。

あなたの海外でのエンジニアライフが、燃え尽きることなく、持続可能で、実りあるものになることを、心から願っています。

最後まで読んでくれて、ありがとうございました!

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