「英語力より大事だった“共感力” ─ 海外エンジニアとしての第一歩」

はじめに

Are you an engineer struggling with miscommunication and team friction, especially across global teams?
もしあなたがそうだとしたら、それは僕が海外に飛び出した最初の頃とまったく同じです。

僕はC#とWPFをメインに設計開発をしているITエンジニアです。日本でキャリアを積んでから、数年前に海外の開発チームにジョインしました。正直、その時点で「プログラミングスキルさえあればなんとかなる」と思っていたんです。コードは世界共通の言語だし、技術力で勝負できるはずだと。

ところが現実は全然違いました。


初日から直面した“ズレ”

初めてのプロジェクトミーティング、画面共有しながら要件定義を進める場面でした。プロダクトマネージャーが説明をしていて、僕は「Yes, I understand」と返しました。正直、全部理解できていたわけじゃないんですが、流れを止める勇気がなくてつい返事をしてしまったんです。

すると数週間後、実装が進んだ段階で大きな齟齬(そご)が発覚。僕が「こういう動きだろう」と思っていた仕様と、チームが期待していた仕様が全然違ったんです。

結果、レビューでチームメイトから「Why did you implement it like this?」と指摘され、プロジェクトマネージャーからも「We discussed this already, didn’t we?」と冷たい視線を浴びることに。あのときの空気、今でも忘れられません。背中にじっとりと汗が流れ、「やっぱり英語力が足りないんだ…」と心底落ち込みました。


問題の本質は“言語力”じゃなかった

当時は「もっと単語力を上げなきゃ」「文法を間違えないようにしなきゃ」と必死に勉強しました。でも、半年くらい経っても状況はあまり改善されなかったんです。

なぜか。

今振り返ると、問題の本質は「英語力」そのものじゃなくて、チーム全員の認識をそろえるために必要な“確認の仕方”や“共感の姿勢”が足りなかったことでした。

例えば、日本だと「暗黙の了解」で済ませられる場面ってたくさんありますよね。会議で曖昧な言い方をしても、「まあだいたいこういう意味だろう」と互いに察して動く文化がある。
でもグローバルチームではそうはいきません。言語も文化も背景も違う人たちが集まっているから、「察する」ことを期待してはいけない。むしろ「これってこういう意味でいい?」と、はっきり確認することのほうが信頼につながるんです。

つまり僕に足りなかったのは「ネイティブみたいに話す英語力」じゃなくて、「相手の意図を掘り下げる勇気」と「自分の理解を共有する工夫」でした。


コードだけでは解決できない摩擦

プログラミングスキルはもちろん大事です。でも、海外で働くとチーム開発の中で避けられないのが“人との摩擦”なんですよね。

  • 仕様の解釈の違い
  • タスクの優先順位の捉え方の違い
  • レビューでの指摘の伝え方や受け取り方

これらの摩擦って、実はコードの外にある「コミュニケーションの習慣」や「チームの文化」に起因することが多い。僕はそれを知らずに、「自分の英語力が低いせいだ」と一人で抱え込み、ますます萎縮してしまっていました。

でもあるとき、チームの先輩からこんな一言をもらったんです。
“You don’t have to be fluent. You just have to be clear.”

その言葉が、僕の考え方を根本から変えました。

どうやって“ズレ”を埋めていったか

前回書いたように、僕は海外での初期プロジェクトで「Yes」としか言えずに大失敗しました。仕様の誤解、チームメイトとの摩擦、そして「自分は英語力が足りない」という劣等感。

でも、その状態からどうやって立ち直ったのか。ここからが本題です。


Step 1. 「Yes」禁止ルール

最初にやったのは、「Yes」とだけ答えるのをやめることでした。

例えば、会議で「Do you understand?」と聞かれたら、以前の僕なら反射的に「Yes」と返していました。でも今は必ずこう言います。

  • “So, if I understand correctly, you mean XXX, right?”
  • “Just to confirm, the flow is like this: [図を描く or 手でジェスチャー].”

こうやって、自分の理解を相手に返すんです。

これをやるようになってから、会議での「勘違いリスク」が激減しました。もし自分の解釈が違っていても、その場で訂正してもらえるから、後で大規模な修正をする必要がなくなるんです。

最初は「時間を取らせてしまって申し訳ない」と思っていたんですが、実際は逆でした。チームメイトからは「Good point!」「Thanks for clarifying」と感謝されることのほうが多かったんです。


Step 2. 曖昧さを“可視化”する

もう一つ大事だったのは、曖昧な部分を「見える化」すること。

例えば、要件が「The UI should be simple」と言われたとします。日本的な感覚なら「まあ、シンプルってことね」と察して実装を進めちゃうかもしれません。

でも海外チームでは、「シンプル」の意味が人によって全然違うんです。

  • 余計なボタンがないこと?
  • 色数が少ないこと?
  • 操作ステップが少ないこと?

そこで僕はホワイトボードやツール(FigmaとかPowerPointでもOK)を使って、具体的なUIのラフ案をその場で見せながら確認するようにしました。

すると「Oh, when I said simple, I meant fewer steps, not fewer colors」といったやりとりが生まれ、ズレを早期に修正できるようになりました。


Step 3. “共感”を先に出す

もう一つ効果があったのは、技術の前に“共感”を示すことでした。

例えばレビューで厳しい指摘を受けたとき、以前の僕ならムッとしながら「Okay, I’ll fix it」とだけ返していました。でも今はまずこう返します。

  • “I see your point.”
  • “That makes sense, because XXX.”

この一言を挟むだけで、相手との関係が驚くほどスムーズになるんです。

特にグローバルチームでは、「自分の意見が理解されている」と感じてもらうことが、信頼関係を築くうえでめちゃくちゃ大事。コードレビューは“攻撃”ではなく“協力”だと空気を変えることができました。


Step 4. 「相手の背景」を知る

もう一つ大きな気づきは、「言葉の背後には文化がある」ということでした。

例えばインドの同僚は、会議で「No」と直接言うことをあまり好みません。代わりに「Let’s see」「We can consider」と言う。でもそれは「可能性がある」という意味ではなく、ほぼ「No」に近いニュアンスなんです。

逆にアメリカの同僚は、めちゃくちゃストレートに「That doesn’t work」と言う。日本人的には「うわ、きついな」と思うけど、それは攻撃じゃなくて“効率的に進めたい”という姿勢なんですよね。

こういう違いを理解していくと、誤解でイライラすることが減っていきました。

僕は意識的に、プロジェクトメンバーの出身国や文化を調べるようにしました。ちょっとした習慣を知っておくだけで、「あ、これは文化的な違いだな」と切り替えられるようになるんです。


失敗からの“逆転”

あるプロジェクトで、また大きな仕様変更が入りました。以前の僕なら「また誤解してたらどうしよう」と不安になっていたでしょう。

でもそのときは、勇気を出してこう切り出しました。
“Can we walk through the flow step by step, just to make sure we’re aligned?”

するとプロダクトマネージャーが「Good idea」と言ってくれて、全員で画面フローを図に描きながら確認できました。結果、以前のような認識の齟齬はゼロ。むしろ「Thanks for facilitating」と感謝され、チーム内での僕の評価も少しずつ上がっていったんです。


少しずつ変わった“自分の立ち位置”

気づけば僕は「英語が苦手で迷惑をかける人」から、「認識をそろえるために確認してくれる人」へと役割が変わっていきました。

そして面白いことに、自分が発言する場面が増えるにつれて、自然と英語力そのものも上がっていったんです。会話の中で使うフレーズがパターン化してきて、スムーズに口から出るようになった。つまり、“完璧な英語を目指す”より、“会話に参加する勇気を持つ”ほうが先だったんです。

新しい壁との出会い

「Yes禁止ルール」や「共感の先出し」を実践するようになってから、確かにチーム内での誤解は減り、僕自身の自信もついてきました。

でも、物事はそう簡単には終わらないんですよね。
僕が次に直面したのは、「英語力の壁」ではなく、“スピード”と“プレッシャー”の壁でした。


グローバル開発のスピード感

ある日、ヨーロッパのクライアントから急な仕様変更が入りました。しかも納期は変わらず。

会議で議論が始まった瞬間、チーム全員が一斉に意見を出し合います。英語が母語のメンバーは早口でバンバン話すし、アメリカのメンバーは「This won’t work. We should do this instead!」と強く主張する。

僕もアイデアがあったんですが、なかなかタイミングがつかめず、気づけば会話がどんどん進んでしまっていました。結局、会議が終わったときには何も言えずに終わってしまい、ものすごい無力感を味わいました。

「英語が分からないわけじゃないのに、会話のスピードに追いつけない」
これは想像以上にストレスでした。


“沈黙=同意”と取られるリスク

日本では「何も言わない=とりあえず保留」という空気があると思います。でも海外チームでは違います。沈黙は“同意”と受け取られることが多いんです。

つまり、僕が発言できなかった時点で「彼もこの方針に賛成している」と見なされてしまう。実際に次のスプリントで「これで行くから」と話が進んでいて、「いや、僕は違う意見を持ってたんだ」と言っても後の祭り。

この経験で、「意見を出せないこと」そのものがチームに悪影響を与える、と痛感しました。


勇気を出して“割り込む”

そこで僕は新しいチャレンジをしました。
会議中に 「Sorry to interrupt, but…」 と割り込む練習です。

最初は手が震えるくらい緊張しました。日本的な感覚だと、人の話を遮るなんて失礼に思えるから。でも実際にやってみると、意外にも誰も嫌な顔をしない。むしろ「Great point, thanks for bringing it up」と受け止めてもらえたんです。

その瞬間、「あ、これは文化の違いなんだ」と腑に落ちました。
海外では“発言する権利”は自分で取りに行くもの。誰も「君はどう思う?」と聞いてくれるのを待っていたら、永遠に出番は回ってこないんです。


言語よりも大切な“勇気”

ここで僕が学んだのは、結局のところ「流暢に話すこと」よりも「勇気を持って口を開くこと」のほうが重要だということでした。

  • 完璧な文法じゃなくてもいい
  • 単語がシンプルでもいい
  • 途中で言葉に詰まってもいい

大事なのは「自分の考えを場に出すこと」。それがないと、チームに存在していないのと同じ扱いになってしまう。

これは僕にとって大きな“転換点”でした。


新しい課題:“感情の伝え方”

ただ、発言できるようになったらなったで、今度は別の課題が出てきました。
それは、「感情をどう伝えるか」 です。

日本語だと、声のトーンや曖昧な言い回しで柔らかく伝えられることも、英語ではストレートになりすぎてしまう。

例えば「ちょっと違うと思うんだけど…」を英語で「I don’t agree」と言ったら、思った以上に強い拒否に聞こえてしまったり。逆に「Maybe, but…」と言ったら、「彼は自信がないんだ」と誤解されたり。

この辺りのニュアンスは本当に難しく、何度も「空気が凍る」瞬間を経験しました。


解決のヒントは“共感+提案”

そこで意識するようになったのは、共感+提案 のセットで話すことでした。

  • “I see your point, and maybe we could also consider…”
  • “That makes sense. What if we try this approach as well?”

こうすると、相手の意見を否定するのではなく「プラスアルファ」を提案する形になり、衝突ではなく建設的な議論につながるんです。

このテクニックを覚えてから、会議での僕の発言の受け取られ方が大きく変わりました。以前は「黙っている人」か「突然反対する人」だったのが、「冷静に場を動かしてくれる人」と見られるようになっていったんです。


“コードを書く以上の仕事”

気づけば僕は、単にC#やWPFでコードを書くエンジニアではなく、チームのコミュニケーションを円滑にする役割を担うようになっていました。

  • 仕様を確認するために図を描く
  • 議論が偏ったら「ちょっと整理しよう」と声をかける
  • 文化的なギャップを感じたら通訳のように説明する

これは最初の僕が想像していた「海外でエンジニアとして働く姿」とはまったく違うものでした。

でも今思えば、グローバルチームで成果を出すには、コードだけじゃ足りないんですよね。むしろ「言葉を超えた橋渡し」ができる人材が、本当に求められているんだと実感しました。

すべてを振り返って気づいたこと

海外で働き始めた頃の僕は、ただ「英語力が足りない」と思い込んでいました。ミーティングで黙ってしまったり、誤解を招いたり、レビューで厳しく指摘されて落ち込んだり。そのたびに「もっと単語を覚えなきゃ」「文法を直さなきゃ」と必死になっていたんです。

でも実際に何年もチームで働いてきて気づいたのは、海外エンジニアとして成功する鍵は“語学力”だけじゃないということでした。


本当に必要だったスキル

僕がこの数年で学んだのは、次の3つです。

  1. 確認する勇気
    「Yes」で流さず、「こう理解したけど合ってる?」と確認する勇気。
    これだけで誤解の8割は防げる、と断言できます。
  2. 伝え方の工夫
    “共感+提案” の形で意見を言うこと。
    「反対」ではなく「追加」として伝えるだけで、相手の受け取り方が劇的に変わる。
  3. 発言する権利を自分で取る姿勢
    誰かが振ってくれるのを待つのではなく、「Sorry to interrupt…」と自分から割り込む。
    海外ではこれが「積極性」として評価される。

この3つは、文法が正しいとか、発音がきれいだとかより、ずっと実践的で効果のあるスキルでした。


変わった僕の立ち位置

かつての僕は、「英語が苦手な日本人エンジニア」という枠に自分を押し込めていました。
でも今は違います。

  • 「認識をそろえる役」
  • 「文化の橋渡しをする役」
  • 「冷静に整理してくれる役」

こんなふうにチームから見られるようになったんです。

気づけば、僕はただのコーダーではなく、チームをまとめる存在として必要とされるようになっていました。


“英語ができない自分”からの解放

一番大きかったのは、「英語ができない」という自己否定から解放されたことです。

完璧な文法じゃなくてもいい。ネイティブみたいに滑らかじゃなくてもいい。
大事なのは「相手に伝わること」そして「相手を理解すること」。

このシンプルな原則に気づいた瞬間、プレッシャーから解き放たれて、逆に英語がスラスラ出てくるようになりました。皮肉な話ですが、英語を気にしすぎないことで、英語力そのものも伸びたんです。


これから海外に出るあなたへ

もし今、あなたが「自分の英語でやっていけるかな」と不安に思っているなら、声を大にして言いたいです。

大丈夫です。

必要なのはTOEIC満点でも、流暢なスピーチ力でもありません。
必要なのは、

  • わからないときに「わからない」と言う勇気
  • 誤解を恐れずに確認する姿勢
  • 相手の意見を尊重しつつ、自分の考えも伝える工夫

この3つさえあれば、必ずチームに貢献できます。


コードの外にある“エンジニア力”

海外で働くうちに気づいたのは、エンジニアの仕事はコードを書くことだけじゃないということでした。

  • ユーザーの課題を理解する
  • チームメンバーの意見を調整する
  • 異なる文化背景を持つ人と協力する

こうした「コードの外」の部分こそ、グローバルチームで価値を生み出すために必要なスキルです。

そしてそれは、英語力よりも“共感力”と“勇気”に大きく依存していると実感しました。


最後に

Are you an engineer struggling with miscommunication and team friction, especially across global teams?
もしあなたがそうなら、僕が最初にぶつかった壁と同じです。

でも安心してください。解決の鍵は、文法でもボキャブラリーでもありません。
それは 「共感」と「確認」と「勇気」

これらを身につけたとき、あなたのチームでの立ち位置はきっと大きく変わります。
コードを書く手が、単なるタスク処理から、チームを前に進める推進力へと変わるんです。

僕自身がそうだったように。

そしてその瞬間、あなたは「海外で働くエンジニア」ではなく、**「グローバルチームを動かすエンジニア」**になれるはずです。

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