異国で始まった僕のエンジニアライフ
「Tired of communication breakdowns derailing your projects and creating stress as an engineer?」
もし今これを読んでいるあなたが、海外で働くことを考えているエンジニアなら、この一文はきっと無視できないはず。僕自身、まさに“コミュニケーションの壁”に悩まされてきたからだ。
僕はC# WPFを使って設計開発をメインにするエンジニアだ。日本でキャリアを積んだあと、チャンスを掴んで海外の開発チームに飛び込んだ。新しい国、新しい仲間、新しいプロジェクト。ワクワクと緊張が入り混じったスタートだった。
ところが現実は、技術力だけでは乗り越えられない壁がいきなり立ちはだかった。そう、それが「言語」だった。
技術は通じる。でも、人間関係はそう簡単じゃない。
最初の頃、僕はこう思っていた。
「エンジニア同士なら、コードや設計図を見せれば通じるだろう。」
確かに、技術的なディスカッションではある程度なんとかなる。XAML の構造を示しながら「こうすればUIがもっとスムーズに動くよ」と説明すれば、相手も理解してくれる。
でも問題はその後だ。
例えば、レビューのフィードバックをもらったとき。
相手の言葉を100%聞き取れず、「あれ、彼はコードスタイルを指摘してる?それともロジック自体がダメってこと?」と混乱する。曖昧な理解のまま対応した結果、余計な修正を加えてしまい、逆に「Why did you change this part?」と突っ込まれる。
その瞬間、場の空気はちょっと凍りつく。僕は焦って「Sorry, I thought you meant…」と弁解する。でもチームの時間は無駄になり、信頼感もちょっと削れていくのがわかる。
技術力には自信があったはずなのに、言葉の壁のせいで成果がスムーズに伝わらない。そのジレンマに、何度も胃がキリキリした。
“Yesマン”になっていた僕
もっと厄介だったのは、ミーティングでの自分の態度だ。
聞き取れなかったときに「Can you repeat that?」と聞き返す勇気が持てず、つい「Yes」とうなずいてしまう。
結果どうなるか。
後から「じゃあ君がやっておいて」と仕事を振られ、「え?そんな話だったの!?」と慌てる。そういうことが何度もあった。
今思えば、この「Yesマン状態」は自分にとっても、チームにとっても大きなマイナスだった。結局ミスにつながるし、「彼はちゃんと理解してない」と評価が下がる原因にもなる。
この時点で僕は痛感した。
「言語の壁は、単なる不便さじゃない。チームワークそのものを崩す危険があるんだ。」
プロジェクトが崩れる瞬間
あるとき、大規模なUI改善プロジェクトに参加した。ユーザー体験を一新する重要案件で、僕は中心的な役割を任された。
でもそのプロジェクトの中盤で、コミュニケーションのほころびが積み重なって大きな問題に発展した。
- 要件定義のニュアンスを正しく理解できず、設計がずれてしまう
- レビューでの指摘を誤解し、余計な修正を加えて時間を浪費する
- 他のメンバーと認識がズレたまま進め、最終的に結合テストで大きな不具合が噴出する
結果、スケジュールは遅延し、チームの雰囲気はピリピリ。僕自身も「もしかして自分はこの環境に向いてないのか」と思い詰めた。
それは僕にとって、キャリアの転機とも言える経験だった。
そこで気づいた「共感」と「言語」の関係
その時、ふと頭をよぎったのはこういう考えだった。
「相手の言葉を理解することは、単に作業を正しく進めるためじゃない。相手が何を大事にしているのかを感じ取ることなんだ。」
要は「共感」だ。
僕は、言語をただのツールじゃなく、チームに共感を生み出すための“橋”と考えるようになった。
そして少しずつ、自分なりの戦い方を見つけていったのだ。
ここから物語は動き出す
このあと僕は、語学の勉強方法を見直し、コミュニケーションを円滑にするための独自の工夫を取り入れていった。それは単なる英語学習ではなく、エンジニアとしてどうチームに貢献するかを意識したアプローチだった。
僕が見つけた“エンジニア語学”の実践法
「言語はただのツールじゃない。共感を生み出すための橋だ。」
そう気づいた僕は、それまでの「とにかく文法や単語を勉強しなきゃ」という姿勢をやめた。代わりに、エンジニアという職業に合ったやり方で、実践的に“言語の壁”を超える工夫を取り入れるようにした。
それは、TOEICのスコアアップを狙う勉強法とはまったく違う。もっと泥臭くて、もっと現場に直結した方法だった。
1. “聞き返す勇気”を習慣化する
最初に取り入れたのは、超シンプルだけど意外と難しいこと。
それが「聞き返す勇気」だ。
これまでは「何度も聞き返したら迷惑かもしれない」と思って遠慮していた。でもある日、チームのシニアエンジニアがこう言ってくれた。
“It’s better to ask twice than to fix twice.”
(二度聞くほうが、二度直すよりずっといい)
この言葉が胸に刺さった。
それ以来、僕は「Sorry, could you say that again?」や「Do you mean … ?」と確認することを恐れなくなった。
すると不思議なことに、チームの雰囲気がむしろ良くなった。僕が聞き返すことで、相手も「確かにこの要件、ちょっとあいまいだったな」と気づいてくれる。結果、みんなの認識が揃いやすくなったのだ。
つまり、聞き返すことは弱さではなく、チーム全体にとっての“強み”になるんだとわかった。
2. コードを“言語の教材”に変える
次に取り入れたのは、コードやドキュメントをそのまま英語学習の教材にしてしまう方法だ。
例えば、レビューで同僚が書いたコメントを一語一句ノートに書き写し、意味を調べてみる。
「nit:」「FYI:」「LGTM」など、教科書には出てこない“現場英語”が山のように出てくる。
また、仕様書やユーザーストーリーを音読して、自分で要点を英語で言い直す練習もした。これは会議での発言力を鍛えるのにかなり効果的だった。
普通の英語学習では退屈しがちな僕でも、コードや仕様に絡めると“自分の仕事そのもの”だから自然と続けられる。これはエンジニアならではの強みだと思う。
3. “共感のフレーズ”をストックする
語学力そのものよりも、僕が特に意識したのは「共感を示す言葉」だった。
例えば:
- 「I see what you mean.」
- 「That’s a good point.」
- 「Let me try to rephrase that to make sure I got it right.」
こうした一言を会話の中に挟むと、不思議なくらい相手の表情が柔らかくなる。
ただ理解するだけじゃなく、「ちゃんと自分の話を受け止めてくれてる」と感じてもらえるからだ。
この小さな積み重ねが、信頼関係を強くしていく。結局、プロジェクトを動かすのは技術だけじゃなく、人と人のつながりなんだと実感した。
4. ローカル文化を“技術的に”学ぶ
もう一つ大きな工夫は、同僚の文化や価値観を“技術ドキュメントを読むように”理解しようとしたことだ。
例えば、同僚が週末にサッカーの話ばかりするなら、僕も最低限のルールや有名選手を調べて会話に混ざる。
あるいは、祝日の由来を調べて「How do you usually celebrate this day?」と聞いてみる。
これは単に雑談を広げるためじゃない。相手の文化的背景を理解することで、「なぜこの人はこういう意見を持つのか」が腑に落ちる瞬間が増える。
まさに“文化をデバッグする”感覚だ。
実際に起きた変化
こうした小さな取り組みを積み重ねるうちに、チームの中での僕の立ち位置は明らかに変わっていった。
- ミーティングでの発言に耳を傾けてもらえるようになった
- 認識のズレが減り、修正コストが大幅に下がった
- 同僚から「You always make sure everyone is on the same page. That helps a lot.」と感謝されるようになった
つまり僕は、ただの「WPFエンジニア」から、「チームのコミュニケーションを支える存在」として見られるようになったのだ。
この経験から学んだのは、語学の力はスコアや流暢さでは測れないということ。大事なのは「相手を理解しようとする姿勢」と「それを伝えるためのちょっとした工夫」なんだ。
まだ道半ば
もちろん、完璧ではない。いまだに会議で聞き逃すことはあるし、言いたいことがうまく表現できなくて悔しいこともある。
でも、以前のように「言葉のせいで自分はこの環境に向いてないのかも」と落ち込むことはなくなった。むしろ、「この壁をどう超えるか」を考えること自体が、僕の成長の原動力になっている。
そしてこの考え方は、次に訪れる大きな試練でさらに試されることになる。
最大のトラブルが訪れた日
海外で働くと、必ずと言っていいほど「予期せぬ大きな壁」にぶつかる瞬間がある。
僕にとってそれは、あるグローバル向けアプリケーションの大規模リリース直前だった。
C# WPFを使ったデスクトップアプリケーションで、UIとバックエンドをつなぐ部分の責任者を任されていた僕。チームは多国籍で、アメリカ・インド・ドイツ・日本と、時差も文化も入り混じる構成。開発終盤、まさに「全員が一枚岩にならなければならない」タイミングだった。
ところが、そこで起きたのが 大規模な認識のズレ だった。
バグか仕様か?国ごとに割れる判断
きっかけは、UIの挙動に関する小さな報告だった。
「入力フォームでEnterキーを押したときの動作が期待と違う」というもの。
- アメリカ側のメンバー:「これは致命的なバグ。リリース前に直さないとユーザー体験に悪影響だ」
- ドイツ側のメンバー:「いや、これは仕様通り。ユーザーガイドにも記載済み。修正は不要」
- インド側のメンバー:「もし修正するなら影響範囲が大きい。今から手を入れるのはリスクだ」
意見は完全に真っ二つ。しかも時差のせいで議論はスムーズに進まず、Slackやメールでのやり取りが錯綜していった。
僕自身も「たしかにユーザー目線では不自然だ。でも設計の背景を知っているから仕様と理解できる…」と板挟み状態だった。
過去の僕なら“沈黙”していた
正直、このとき心臓がドキドキした。議論は白熱し、誰も譲らない。
過去の僕なら「とりあえず黙ってやり過ごそう」と思っていただろう。言葉の壁に自信がなかった頃は、こうした場で発言できずに結局「Yesマン」に徹していた。
でも今回は違った。
「承」で積み上げてきた経験が、背中を押してくれた。
- 聞き返す勇気を持てばいい
- 相手の意図を“共感フレーズ”で整理すればいい
- 文化背景を理解する努力をすればいい
そう自分に言い聞かせ、意を決して口を開いた。
僕が取った行動
会議で僕は、まず全員の意見を言い直した。
- 「So, if I understood correctly, the US team is worried about the user experience, right?」
- 「And the German team is saying this is already documented as expected behavior, correct?」
- 「And the India team is concerned about the risk of late changes, right?」
それぞれ確認をとると、メンバーが「Yes, exactly」と頷いてくれた。
まず「自分の意見」ではなく「相手の主張」を整理すること。それが場を落ち着かせる鍵になった。
次に、僕はこう続けた。
“From a user’s perspective, I agree it feels confusing. But since the documentation already reflects this, maybe the best approach is not to change the behavior now, but to add a clear tooltip or highlight in the UI. That way, users won’t get stuck, and we avoid risky late changes.”
つまり「仕様は変えずに、UI上で説明を補う」という第三の選択肢を提案したのだ。
空気が変わった瞬間
その瞬間、会議の空気がスッと変わった。
アメリカ側は「確かにUX的には改善になる」と納得し、ドイツ側は「仕様を崩さないならOK」と受け入れ、インド側も「小さなUI変更ならリスクは低い」と同意してくれた。
結局、このアプローチが採用され、プロジェクトは予定通りリリースされた。ユーザーからのフィードバックも良好で、「直前で仕様変更するより賢い判断だった」と評価された。
“言語の壁”が“強み”になった
この経験で僕が一番驚いたのは、自分が「言語の壁」を逆に武器にできたということだった。
英語が母国語ではないからこそ、僕は「一度立ち止まって確認する」「相手の意見を整理する」習慣がついていた。それが結果的に、対立していたチームの橋渡し役になったのだ。
ある同僚はこう言ってくれた。
“You always make sure everyone is aligned. That’s really valuable.”
かつて「Yesマン」と揶揄されかけた僕が、今は「チームをまとめる存在」として認められていた。
ただの成功談ではない
もちろん、すべてがうまくいったわけではない。
その後の別のプロジェクトでは、僕の提案が「回りくどすぎる」と一蹴されたこともある。あるいは「相手の意見を整理するつもりが、逆に“お前が決めたいのか”と誤解された」こともあった。
でも、それでも一つ言えるのは、黙っているより何倍も価値があるということだ。失敗しても「挑戦している姿勢」は必ず伝わる。
僕が得た教訓
この大きなトラブルを通じて、僕が学んだのは次の3つだ。
- 意見の対立はチャンスだ
→ 違う視点を整理することで、自分が存在感を発揮できる。 - 言語の弱さは、共感の強さに変えられる
→ 完璧な英語より、「相手の意図を正しく汲み取る姿勢」が信頼を生む。 - 橋渡し役こそエンジニアの価値
→ 技術だけでなく、チームをつなぐ存在になれることがキャリアを広げる。
海外で戦うエンジニアへ ― 言葉を超えて
大規模リリース直前のトラブルをなんとか乗り越えたあの日。
僕はようやく、自分が海外で働くエンジニアとして何を大切にすべきかを理解した。
それは単純に「英語力を上げること」でも「技術スキルを尖らせること」でもなかった。
本当に必要なのは、言語を“共感の橋”として使う姿勢だったのだ。
完璧な英語は必要ない
正直に言うと、今でも僕の英語はネイティブレベルとはほど遠い。
発音で詰まることもあるし、文法ミスなんて日常茶飯事だ。
でも、不思議ともう「恥ずかしい」とは思わない。
むしろ「完璧じゃないからこそ伝わる誠実さ」があると感じている。
例えば、会議で相手の発言をそのまま復唱しながら「So you mean… right?」と確認する。
それだけで相手は「ちゃんと理解しようとしてくれてるんだな」と受け取ってくれる。
つまり、言語は正しさよりも「相手に歩み寄る姿勢」が大事なんだ。
技術力 × 共感力 = 海外での生存戦略
僕が最初に海外に飛び込んだとき、技術力さえあれば評価されると思っていた。
でも現実は、技術力だけでは「孤立した優秀な個人」で終わってしまう。
チームで成果を出すには、共感力が必要だ。
「相手の立場を理解する」「文化の違いを認める」「誤解を減らす工夫をする」――そうした姿勢が加わって初めて、技術力がチーム全体の成果に変わる。
僕が提案した「仕様は変えずにUIで補う」解決策だって、技術的にはシンプルなものだった。
でも、それが受け入れられたのは「各チームの懸念をきちんと理解した上で提案したから」だった。
技術力と共感力、その両輪が揃ってこそ、海外でのエンジニアライフは前に進む。
“Yesマン”から“橋渡し役”へ
振り返れば、僕の海外キャリアは「Yesマン」から始まった。
聞き取れなくても「Yes」とうなずき、結果的に信頼を失いかけた。
でもそこから、「聞き返す勇気」「共感フレーズ」「文化のデバッグ」といった小さな工夫を積み重ねることで、少しずつ立場は変わっていった。
今では「チームの意見を整理し、橋渡しをする役割」を担えるようになった。
これは僕にとって、技術スキルを磨いたことと同じくらい大きな成長だったと思う。
海外を目指すあなたへ伝えたいこと
もしこれを読んでいるあなたが「海外でエンジニアとして働いてみたい」と考えているなら、僕から伝えたいことがある。
- 完璧な英語を目指さなくていい
- 大事なのは「相手に伝わるか」「共感を示せるか」。
- 聞き返す勇気を持て
- 二度直すより、二度聞くほうがずっと効率的。
- 文化をデバッグせよ
- 相手の背景を理解すれば、衝突が対話に変わる。
- 技術はチームのために使え
- 個人のスキルを見せつけるのではなく、全体を前に進めるために発揮する。
僕が見つけた“戦い方”
僕にとって、海外で働くということは「言語の壁と毎日格闘すること」だった。
でも今は、その壁を「戦う相手」ではなく「成長させてくれるトレーニングパートナー」だと思っている。
壁があるからこそ工夫する。
壁があるからこそ人に歩み寄る。
壁があるからこそ、自分のキャリアが広がっていく。
だから僕は、これからも海外でエンジニアとして働き続けたいと思うし、同じ道を目指す仲間が増えてほしいと思っている。

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