その一言が怖かった:「You there?」が投げかけてくるもの
「You there?」
たったこれだけのメッセージが、こんなにも心をざわつかせるなんて——海外チームとのSlackでその言葉を初めて受け取った日、僕は一瞬フリーズした。別に失礼な言葉でもない。だけど、なぜかその一言が、胸の奥にズンと重くのしかかる。
「なにかまずいことをしたのか?」
「返事を急かされてる?」
「怒ってる……?」
こういう時、ネイティブスピーカーだったらなんとも思わず「Yeah, just a sec!」くらいでサラッと返すんだろう。でも当時の僕は、そんな軽快なレスポンスを英語で投げ返せる自信がなかった。
🧭 海外チームでの“英語チャット恐怖症”
Slackは便利だ。非同期でコミュニケーションが取れて、表情や声のトーンがない分、文面だけで気楽にやり取りができる……はずだった。
でも実際には、非ネイティブの僕にとって「テキストだけ」ってむしろ不安が大きかった。
- 絵文字を入れるべき?
- ビジネス英語で書く?カジュアルに崩していい?
- 自分の英文、ぶっきらぼうに見えない?
Slackの通知が鳴るたびに、スマホを手に取る指が緊張する。受け取った英語メッセージの裏にある「温度感」や「意図」が読めないからだ。
しかも、相手はアメリカ人やオーストラリア人、たまにインドやシンガポールのエンジニア。英語は世界共通語だけど、共通の文脈(context)までは共通じゃない。
相手がどういうテンションで書いているのか、こちらの反応にどうリアクションするか、正直、最初はぜんぜんわからなかった。
🌏「英語力」だけじゃ、Slackは乗りこなせない
そのうち気づいた。英語チャットに必要なのは、TOEICスコアでも、完璧な文法でもない。
必要なのは——
「英語で働く人たちが、どんな“空気”を当たり前と思っているのか」を掴むこと。
たとえば「You there?」に込められたニュアンスって、ちょっとググれば「在宅勤務時に、ちょっと確認したいことがあるときの軽い呼びかけ」だとわかる。でも、そのトーンを知らなかった僕は、まるで詰問のように受け取っていた。
これって、英語力の問題じゃない。文化や慣習、つまり“共通認識”の問題。
英語は「言語」だけど、「仕事の言語」には、文法以外の“ルール”がある。
それを知らないまま、正しい英語を頑張って書こうとしても、噛み合わない。
💡「通じる英語」とは、“文法的に正しい”ではなく、“職場の文脈にハマる”
ここで、僕の中にパラダイムシフトが起きた。
「英語で伝える」と「英語で働く」は、まったく違うスキルセットだと気づいたのだ。
伝えるだけなら、Google翻訳でなんとかなる。でも、働くためには「Slackの向こうの相手」が読んで、すぐ意図がわかり、違和感がないようにしないといけない。
- 自分の返信が早すぎると圧がある?
- 一言だけの返事は冷たく見える?
- 逆に、丁寧すぎて重たく感じられてない?
そんなことばかり考えてしまう。
でも同時に、「通じる英語」のルールは、たった一つじゃないことも見えてきた。
たとえば、あるアメリカ人の同僚は、とにかく絵文字多用&一言レス派。
逆に、ヨーロッパのメンバーは長文&ロジカルな返事がデフォルト。
つまり、「ネイティブ英語に合わせよう」とがんばるよりも、「相手との関係性で、通じる表現を探す」ほうがよっぽど効果的だったのだ。
🎯この記事で伝えたいこと:英語は“対話”であって、“試験”じゃない
もしあなたが、これから海外チームで働くエンジニアで、英語Slackがちょっと怖いと感じているなら、僕の失敗体験と試行錯誤が、きっと役に立つと思う。
このシリーズでは、「Fluentじゃなくていい、通じればいい」というスタンスで、非ネイティブでも成果を出すための英語コミュニケーション術を紹介していく。
- 実際に使ったフレーズ
- トラブルになりかけた一言
- 相手の文化とのすれ違い
- 言葉に頼らない“反応”の工夫
すべて、実際のグローバル案件での体験談ベースでお届けする。
Slackの「一言レス」は、武器にもなるし、地雷にもなる
「Sure.」
その一言で、Slackの向こう側がしん……となった気がした。
とあるプロジェクトで、アメリカ人のPMから「Can you check the latest UI spec before EOD?」とSlackが飛んできた。
その日はちょうどWPFのスタイルテンプレート調整で手が離せなかったが、「あとでやるよ」という意味で、僕は「Sure.」とだけ返した。
数分後、別のチャットスレッドでそのPMが他のメンバーに「Let’s double-check it internally first.」と送っているのを見て、なんとなく違和感を覚えた。
(ん……? もしかして、信用されなかった?)
気になって翌日、軽く聞いてみたら、返ってきた言葉がこれだった。
“I wasn’t sure if you were happy to do it or just saying yes out of obligation. The message felt a bit cold, I guess?”
つまり、「Sure.」は“やってもいいけどテンション低い”に聞こえたというのだ。
🧊 一言レスに潜む「温度差」のトラップ
日本語で考えてみよう。「確認してくれる?」→「了解です」
何も問題ない。シンプルでいい返事だ。
でも英語では、「Sure.」や「OK.」だけだと、ぶっきらぼうにも、嫌々やってるようにも見えることがある。
しかもSlackは顔が見えない分、「意図」がテキストの温度に乗ってこない。
つまり、短い=誤解されやすい。
特にアメリカやカナダのエンジニアたちは、やる気や前向きさをテキストに“ちゃんと乗せる”のがうまい。
たとえば、同じ返事でも:
- “Sure!”(←!があるだけでポジティブ)
- “Got it, I’ll take a look right after this call!”
- “Absolutely, happy to review it before EOD :)”
どれも、**「やる気+状況共有+ちょっとしたポジティブさ」**がセットになっている。
🧠 言葉の「熱量設計」が、英語では重要だった
Slackにおいて、非ネイティブの僕らが軽視しがちなのが、「言葉の熱量」。
シンプルに「Yes」「OK」「Sure」と返してしまいがちだけど、それが誤解や不安を生むケースが実に多い。
ここで僕が編み出した対策は、ズバリ——
一言レス+ワンフレーズ補足を基本にすること。
これは日本語でも使えるコミュニケーションの基本だけど、英語では特に効く。
たとえば:
| シンプルすぎる | 改善例 |
|---|---|
| “Sure.” | “Sure, I’ll check it out in 10 mins 👍” |
| “OK.” | “OK, noted! Will prioritize it after current fix.” |
| “Got it.” | “Got it, let me get back to you with thoughts later today.” |
この“ワンフレーズ補足”があるだけで、相手の不安や疑念を一掃できる。
Slackの向こうにいるのがネイティブなら、なおさら。
✍️ 英語表現を増やすより、組み合わせを工夫する
もう一つ大事なのは、「英語表現のストックをやたら増やす」よりも、「今ある表現をどう丁寧に使い分けるか」のほうが実践的だということ。
僕は英語が得意ではない。TOEICも800点台。でも、Slack上では「この人、英語上手だね」と言われることがある。
それは、“伝えたい温度感”に合った英語を使えているから。
▼ たとえば、こんな分類で使い分けている:
| 目的 | 表現例 | 補足でつけるフレーズ例 |
|---|---|---|
| すぐ対応する意思を見せたい | “Sure!” / “Absolutely!” | “Let me start right away.” |
| ちょっと後になりそう | “Got it!” / “OK, will do.” | “I’m on another task now, will switch soon.” |
| 優先度を聞きたい | “Understood.” | “Should I prioritize this over X?” |
| 判断がつかない時 | “Let me take a closer look.” | “Can I get back to you in an hour?” |
このくらいのフレーズ+補足で十分なのだ。
💬 ネイティブじゃなくても、「気が利く英語」は使える
一番伝えたいのはここ。
完璧な英語じゃなくていい。でも、気が利いた英語は使える。
そして、それは「語彙力」よりも、「想像力」——つまり、相手がそのメッセージをどう受け取るかを考える力があれば十分だ。
Slackでの英語は、ちょっとした気配りの積み重ね。
- “Thanks for checking!”を一言添える
- “Appreciate your help on this :)”を最後につける
- “Let me know if anything’s unclear.”と締める
こういう一言が、相手との距離をぐっと縮めてくれる。
表情のない世界で、“表情”をどう出すか?
Slackでは、言葉が表情を持たない。
声のトーンも、目線も、間(ま)もない。あるのは、文字列と絵文字だけ。
だからこそ、ちょっとした一言が冷たくもなるし、逆に温かくもなる。
この「表情のない世界」に、どうやって“人間味”を持たせるか?
それが、英語ネイティブではない僕らにとって、チャット文化で生き延びるための重要なテーマだった。
😐「ありがとう」が伝わらない世界
たとえば、日本の感覚だと「了解しました」「わかりました」って、それだけで礼儀正しいニュアンスがある。
でも英語では、たとえ “Understood.” や “Got it.” を送っても、それだけじゃ感謝も敬意も伝わらない。
むしろ「機械的なレス」と見られてしまうこともある。
実際、以前あるレビュー依頼に “Got it.” だけ返したとき、あとから先輩にこう言われた。
“You might wanna soften it a bit. Sounds a bit too dry, y’know?”
(ちょっと乾いた印象になるから、もう少し柔らかくしてもいいかもね)
じゃあ、どうやって“表情”を加えるか?
答えは、**言葉の装飾と、リアクション(反応)**だった。
✨ 英語での「共感」と「敬意」の出し方
英語であっても、「気持ちが伝わる言葉」は存在する。
大げさに感じるかもしれないが、実はちょっとした工夫だけで印象がガラッと変わる。
【例:レビュー依頼をもらったとき】
| シンプルすぎる | 気配りある表現 |
|---|---|
| Got it. | Thanks for the heads-up! I’ll check and get back soon. |
| OK. | Appreciate the detail – I’ll take a look. 👍 |
| Sure. | Will do! Thanks for sharing. |
たったこれだけ。でも、全然印象が違う。
これは「おしゃれな英語表現」ではない。ただの“人としての丁寧さ”を英語で表現しているだけなのだ。
そしてこの丁寧さを支えてくれるのが、リアクション機能だ。
👍 リアクションは“非ネイティブの表情”
Slackにある絵文字リアクション(👍🙏🔥💡)は、英語に不安のある非ネイティブにとって、まさに表情の代弁者。
言葉で感情をうまく出せなくても、
- 👍(了解!)
- 🙏(ありがとう!)
- 💡(なるほど!)
- 👀(見てます!)
- 🎯(的を射てる!)
このリアクションだけで、「読んだよ」「共感したよ」「ありがとう」など、“言わなくても伝える”ことができる。
僕が実践していたのは、次のようなシンプルなリアクション戦略:
| 相手の行動 | つけるリアクション | 意図 |
|---|---|---|
| ファイルを共有してくれた | 👍 or 🙏 | 感謝+確認済み |
| アイデアを書いてくれた | 💡 or 👏 | 興味+リスペクト |
| 自分にタスクを振ってきた | 👀 | 読んでるよアピール |
| 雑談でいい話をした | 😄 or ❤️ | 共感・感情の共有 |
こういった小さな反応が、“空気のあるチャット”を生み出すのだ。
🌐 ネイティブも「表情」を読み取っている
ある日、同僚のアメリカ人エンジニアからこんなことを言われた。
“You’re one of the few who react to stuff I share. Feels like we’re really working together.”
つまり、リアクションが“見てくれてる”という信頼につながる。
Slackのメッセージは、放っておけばどんどん流れていく。でも、そこに1つでも反応があると「ちゃんと受け取ったよ」という合図になる。
英語が完璧じゃなくてもいい。
でも、「ちゃんと見てる」「ちゃんと感じてる」ことは、リアクションで示せる。
そしてそれは、英語が得意な人よりも、リアクションの文化に敏感な非ネイティブの方が、逆に得意になれるポイントだったりする。
🛠 英語×Slackの「表情設計」3つのコツ
では最後に、この“表情を持たせるチャット設計”のコツを3つにまとめてみよう。
① 一言だけで終わらせない
- ❌ “Got it.”
- ✅ “Got it – will check this afternoon. Thanks!”
② 絵文字を一つ添える
- ❌ “Sounds good.”
- ✅ “Sounds good! 👍” ←これだけで“明るさ”が出る
③ リアクションを活用する
- 読んだら👀、ありがとうなら🙏、共感したら❤️
→ 言葉以上に「気にかけてる感」が伝わる
Slackはドライな世界にも見えるけど、“人としてのあたたかさ”を持ち込める場所でもある。
英語が流暢じゃなくても、そのあたたかさは出せる。むしろ、そこにこそ非ネイティブの強みがある。
英語で「雑に扱われない」存在になるには?
英語で働いていると、ふとした瞬間にこう感じることがある。
「あれ、自分、軽く扱われてないか?」
Slackでのレスがスルーされる。
会議で自分の提案にはコメントがつかない。
自分が確認したいと言ったことは後回しにされる。
これは英語力の問題?それともキャリアの差?
もちろん背景には色々な要因があるけれど、僕が実際に体験してわかったのは、“言葉”よりも“態度”が評価を左右しているということだった。
🧱「伝える力」より「構え」が見られている
あるとき、イギリス人のチームリーダーにこんなことを言われた。
“Your English is not perfect, but your presence is strong. People pay attention when you speak.”
この言葉で気づいたのは、英語の流暢さが信頼の中心じゃないということ。
それよりも、「この人とちゃんと仕事したい」と思われるような**“構え”=対話姿勢**が大事なのだ。
じゃあその“構え”って、何でできてるのか?
僕なりに分解してみると、こうなる:
- 発信だけじゃなく、受信に責任を持っている
- 自分の発言に「意図」と「背景」がある
- 小さな応答も、丁寧にリアクションする
- タイミングと優先度の文脈を読めている
これらはすべて、「完璧な英語力」がなくてもできることだ。
💬 雑にされない人は、「相手の困りごと」に敏感
たとえばSlackで、自分のタスクに関係ない話題が流れているとき。
普通なら「関係ないし、スルー」で終わる。
でも、雑に扱われない人は、関係なくても“観察”している。
- 誰が困っているか
- 誰が助けようとしているか
- どこにボトルネックがあるか
そういう空気を察知して、タイミングよく「Let me know if I can help 👀」と一言入れる。
それだけで、“空気の読める人”として存在感が出る。
しかも、これは非ネイティブにとって超重要な戦略になる。
なぜなら、英語で長々と話せなくても、「観察力」と「タイミングのよさ」で存在を示せるからだ。
🧭「話す」より「観る力」を磨こう
英語で仕事をしていると、つい「もっと話せるようにならなきゃ」と焦ってしまう。
でも実は、一番差がつくのは“観察力”だ。
・Slackの温度感
・会議中の相手のリアクション
・チームの中の心理的距離
こういった“非言語情報”をキャッチして、それに対して反応できるかどうか。
たとえば:
- 相手が迷っていそう → “Do you want to walk through it together?”
- 会話が止まりかけてる → “Shall I summarize where we are?”
- 複数人で意見が食い違ってる → “I can help facilitate if needed.”
こういうファシリテーション的な動きは、むしろ非ネイティブの方が得意になることもある。
自分の発言より、周囲の状況に敏感だからだ。
🎯 英語力じゃなく、「選ばれる力」を育てる
「この人とまた働きたい」
「この人の言葉は信頼できる」
そう思ってもらえるのに、流暢な英語は必須じゃない。
本当に必要なのは:
- 丁寧に人の話を聞く力
- 相手の立場に立って考える習慣
- 一言の中に、思いやりを詰め込むセンス
たとえば、“Thanks”の代わりに、
- “Really appreciate your help on this 🙏”
- “Thanks a lot – that was super helpful!”
- “Huge help! I owe you one.”
こんな言い回しを自然に使える人って、また一緒に仕事したいと思わせる“人間力”がある。
🔚 英語の壁の向こうにある「信頼」の世界へ
最後に、僕が一番伝えたいことはこれ。
英語は武器じゃなくて、橋だ。
大切なのは、その橋を渡った先でどう関係を築くか。
完璧じゃなくていい。ネイティブみたいに話せなくてもいい。
でも、「この人はちゃんと自分のことを見てくれてる」
「この人に頼めば、ちゃんと返ってくる」
そう思わせられたら、あなたはもう“通じる英語”を使いこなしている。
📝 まとめ|“Fluentじゃなくていい”は本当だった
| 英語での課題 | 非ネイティブの武器 |
|---|---|
| 表情が伝わらない | 絵文字+リアクション |
| 一言レスが冷たくなる | 補足+温度感 |
| 雑に扱われる不安 | 観察力+気配り |
| 会話についていけない | 要約+タイミング応答 |

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