「え、まだWPF?」と言われた僕が思ったこと。
「お前、まだWPFやってんの?」
最初にこの言葉を投げかけられたのは、アメリカのシアトルで某エンタープライズ向けソフトウェア企業のエンジニアと話していたときだった。
現場は完全にReact + .NET Core、クラウドはAzure一択。フロントはWeb、バックエンドはREST API、UI/UXはフルモダン。「Windowsアプリ開発? あー、レガシーね」という雰囲気がある中で、僕の「WPFで業務アプリを開発しています」という自己紹介は、まるで「まだ黒電話使ってます」と言っているような反応を引き出した。
でも、僕はこう思った。
「いや、だからこそチャンスだ。」
時代遅れ?本当にそうか?
正直、WPFが「古い」と思われるのは仕方ない。
初版は2006年。もう20年近く前の技術だ。
XAML?MVVM?聞いたことある人はいても、今から学ぶ人は少ない。
Webとモバイルが主戦場になった今、WPFは確かに“隅っこ”に追いやられている。
でも逆に言えば、それって競争が少ない市場ってことじゃないか?
実際、僕がWPFを使っていた日本の現場も、
「WPFが好きだから」使っていたわけじゃなかった。
・医療現場の端末はWindowsオンリー
・銀行業務アプリのUIは高精度&レスポンス命
・工場のラインモニターにはWebブラウザを使えない
つまり、WPFじゃなきゃいけないという「制約」が残っている世界がまだある。
そして、そこで開発・保守・改善ができる人材は、めちゃくちゃ少ない。
「ニッチ = 危険」じゃなくて「ニッチ = 特化」だった
これは僕の実体験だけど、WPF案件に関わってから、年収が上がった。
最初は「ニッチだし将来性なさそう」と思って不安もあったけど、
その“ニッチさ”が逆に武器になった。
たとえば海外では、
- 製造業向けのデスクトップツール
- 医療診断ソフト
- 金融系のオンプレ業務アプリ
など、Web化しにくい分野が残っている。
そこで「ちゃんとWPFでUI組めて、MVVMも理解してる人材」っていうのは、
英語ができるかどうか以前に、希少価値がある存在なんだよね。
Web未経験でも海外で採用された理由
僕がアメリカで仕事を得られたとき、実はReactもBlazorもやったことがなかった。
でも、WPFで10年以上UI開発に取り組んできた経験を伝えると、
「そのUX設計力とXAMLスキルがほしい」と言われた。
具体的にはこんなスキルが評価された:
- MVVMアーキテクチャ設計経験
- カスタムコントロールの実装力
- デスクトップUIでのアクセシビリティ対応
- 高パフォーマンスなグラフ表示などのUI最適化
それって、Web開発経験がなくても通用する“本質的なUIスキル”だったんだよね。
「今さらWPF」は「今こそWPF」かもしれない
エンジニアって「新しい技術をやるべき」っていう無言のプレッシャーがある。
でも、それって「使われてる現場」によって全然違う。
世界にはまだWPFが必要な現場があって、
そこにはまだまだ価値が眠っている。
そしてその価値を「英語で伝えられる」エンジニアは、もっと少ない。
だから、僕は思い切ってWebに流れるのをやめた。
「WPFのままで海外行っていいのか?」と悩んでる人がいたら、僕はこう言いたい。
「その“まま”で武器になる。あとはそれを英語で語る準備をするだけだ」
「WPFは終わった技術」だと思われた中で、僕がやったこと
自分の市場価値を“言語化”する
WPFは古い。使ってる現場も少ない。
それは確かに事実だ。
でも、僕が実際に海外でチャンスを掴んだとき、一番意識したのは、
「この技術をどう説明すれば、“価値がある”と伝わるか?」
という点だった。
たとえば日本では、「MVVMアーキテクチャ設計経験あり」と書けば通じるけど、
英語圏ではそれだけでは足りなかった。
僕が意識して書き換えた例をいくつか挙げる:
✏️ 日本でよくあるWPF職務経歴の書き方(例)
- WPF+MVVMで業務用UIを開発
- Prismによるモジュール設計
- カスタムコントロール開発
- DataGrid、ChartなどのUIコンポーネント実装
- Excel連携やPDF出力機能を開発
✅ 海外向けにリフレーズした例(実際に僕が使った英語)
- Designed modular and maintainable enterprise desktop applications using WPF and MVVM architecture.
- Utilized Prism framework for dependency injection and scalable UI module management.
- Created custom WPF controls to enhance user experience beyond standard components.
- Optimized real-time data visualization using dynamic charts and data grids.
- Implemented seamless export functions to Excel and PDF for enterprise reporting needs.
この「リフレーズ」が、実はめちゃくちゃ大事だった。
“使った技術”ではなく、“何を実現したか”を語る。
これだけで、WPFというニッチ技術が「ソリューションを作るスキル」に変わる。
ポートフォリオを「技術自慢」から「提案型」に変えた
僕は海外転職に向けてポートフォリオを一新した。
意識したのは、「ただ作ったアプリを並べる」んじゃなくて、
**「これを見た面接官が、あなたをチームに入れたくなる構成」**にすること。
僕のWPFポートフォリオ構成(実例)
1. Dashboard App for Factory Monitoring
- リアルタイム温度・湿度グラフ(LiveCharts使用)
- デバイス通信はSignalRで双方向
- アラート通知機能付き(MVVM構造+EventAggregator)
- 英語UI/多言語切替対応(ResX + IValueConverter)
2. Medical Imaging Viewer
- DICOM画像をWPFでレンダリング
- スクロール、ズーム、フィルター付き
- GPU処理(WriteableBitmap + DirectX連携)
- デスクトップUIでしか成立しないUXをアピール
3. Financial Desktop Tool with Advanced DataGrid
- 数百万件のデータ表示でも高速スクロール(VirtualizingStackPanel)
- セル内で編集可能な入力フォーム
- 行単位の色分けルール(DataTrigger)
- WPFだからこそ可能な“密度の高いUI設計”を見せた
どれも、「WPFでなければ難しいUI要件を解決した例」にしていた。
これは実は海外でも響く。
特にアメリカやドイツの製造・医療・公共系のエンジニアには、
「このUIならWebじゃ厳しいよね」という共感があるから。
英語で話すWPFスキル
海外面接では、技術を英語で説明するのは当たり前だけど、
WPFの場合、「日本語では言い慣れてるけど、英語で詰まる」単語がいくつかあった。
そこで僕は、自分なりの“WPF英語表現テンプレ”を用意していた。
よく使ったWPF関連フレーズ(英語面接用)
| 日本語表現 | 英語表現 |
|---|---|
| MVVMで設計 | I implemented a Model-View-ViewModel pattern for better testability and separation of concerns. |
| XAMLでUIを構築 | I designed UIs using XAML, focusing on responsiveness and maintainability. |
| DataBindingを活用 | I used DataBinding extensively to reduce code-behind and improve maintainability. |
| コントロールをカスタマイズ | I built custom WPF controls tailored to business requirements. |
| UI/UX最適化 | I optimized UI responsiveness and performance, especially for data-heavy views. |
こういう「定型文ストック」があるだけで、面接中に焦らない。
技術+背景+課題解決能力=WPFの武器化
最終的に評価されたのは、WPFの技術だけじゃなかった。
- なぜこの技術を選んだか?(背景)
- どんな課題を解決したか?(文脈)
- それがどう価値を生んだか?(成果)
この3つをセットで話せるように練習した。
たとえば:
“In a previous project, I chose WPF over web frameworks because the client required a high-performance, secure desktop tool for in-hospital use. Using MVVM and Prism, I developed a responsive and maintainable application that reduced support tickets by 40% within 6 months.”
ここまで言えると、「WPFでも戦える」という説得力が出る。
まとめ|“ニッチ”を世界標準に翻訳する
日本の現場で評価されていたWPFのスキルは、
翻訳しないと海外では伝わらない。
でも逆に言えば、“翻訳”さえできれば、それは通用する。
僕はWPFを捨てなかったし、Webに流れなかった。
だからこそ、独自のポジションを築けた。
WPFは終わってない、むしろ“始まってすらいない”国もある
海外でもまだまだ“Windowsオンリー”はある
「海外ではもう誰もWPFなんて使ってないよ」
ネット上ではよくそう言われる。
でも、実際にいくつかの国で現地のIT企業に接してみて、僕はこう思った。
「いや、むしろ“ちゃんと使えてる人がいない”だけじゃないか?」
たとえば、以下のような現場がいまだにゴロゴロしている:
- 医療系:Windows専用端末、ユーザー数1000人以下の小規模クライアントアプリ
- 公共機関:最新Webより“安定動作”重視、20年動く前提のUI
- 工場ライン:通信不能なネットワーク環境でのスタンドアロンアプリ
- 金融セキュリティ:ローカル端末での閉域管理・USB制限下のデスクトップ環境
しかも、こういった分野ほどWeb系の技術者が敬遠しがちなんだ。
逆に、僕のようにWPFに慣れていてMVVMパターンを設計からできるエンジニアは、
「Webはできないけど、この分野の要求は理解できる」という強みがあった。
“技術力”よりも“文脈理解力”が求められた現場
海外に出て分かったのは、
技術力よりも、業界特有の事情をわかっているか?が重要視されることが多いという事実。
あるヨーロッパの病院向けアプリ開発案件では、こんな要望があった。
- キーボードとタッチ、両対応
- ネットが落ちても動作すること(診療記録が飛ばないこと)
- スキャナ連携、プリンタ出力、高解像度ディスプレイ対応
- メニュー項目は視覚障がい者対応でアイコン+音声通知
これらを聞いた瞬間、Web技術でやるにはハードルが高いと直感した。
WPFならできる。しかもMVVMでテスト性も維持できる。
そんな提案を出したら、逆に現地のPMが驚いてこう言った。
“I didn’t know that WPF can still be used like that. Can you lead the UI part of the project?”
── つまり、WPFが“終わった”んじゃなくて、
ちゃんと知ってる人がいなかっただけだった。
“古い技術”をあえて英語で発信するメリット
実は、英語でWPFに関する技術記事や動画を出している人って、本当に少ない。
だからこそ、発信するだけで目立てる。
僕がやったのはこんなこと:
- GitHubにWPFのサンプルプロジェクト(英語README付き)を公開
- Mediumに「WPFが今でも使える理由」という技術記事を英語で投稿
- YouTubeにMVVMパターン解説動画(英語字幕付き)をアップ
結果として、これらが**自己紹介代わりの“海外用名刺”**になった。
LinkedIn経由で「このプロジェクト参考にしたよ!」というメッセージが来たとき、
「やっぱりWPFって、今も求められてる」と実感した。
世界には「始まってない」国がある
WPFというと、どうしてもアメリカや日本などの先進国視点になりがち。
でも、僕はある中東の国で短期プロジェクトに参加したときに気づいた。
その国では、WPFすら“最新技術”だった。
現場では、いまだにWindows Formsが主流。
XAML?MVVM?初耳。
でもUI刷新をしたい。UXを改善したい。
だからこそ、“ちょっと先を行ける”WPFの技術者が重宝された。
実際に求められたWPFスキル(現地求人より)
- MVVM + IoCコンテナで保守性の高いアーキテクチャ設計
- カスタムUI要素(例:WPFでGoogle Maps風マップ)
- 多言語・右から左へのレイアウト対応(RTL言語)
- 既存WinFormsからWPFへの段階的移行経験
ここで気づいたのは、“先端じゃない=ダメ”ではないということ。
“先端すぎる”と使えない国もある。
だからこそ、「ちょうどいい技術」としてのWPFの居場所がある。
僕がWebを選ばなかった決定打
正直、ReactやBlazorを勉強しようかと何度も思った。
でも、こう考えた。
「WPFなら英語で提案できる。でも、Reactは“勉強中”でしかない」
そして、
- スタートダッシュを切れる技術はどっちか?
- すでに10年使ったスキルを“翻訳”すれば戦えるなら、それが最短では?
という理由で、あえてWebに行かず、WPFに賭けた。
結果、WPFを求めている“見えないニーズ”に応えられた。
まとめ|WPFの居場所はまだ世界にたくさんある
- ニッチ技術こそ、翻訳すればグローバルで価値がある
- “古さ”よりも“理解と提案”ができるかがカギ
- 世界の全てがモダンWebではない
- “先端に疲れた企業”にもWPFは届く
だから僕は、**WPFで生き残るのではなく、“WPFを武器に攻める”**ことを選んだ。
“ニッチ”を越えて、自分だけの武器に変える
WPFという技術を、単なるスキルから“戦略”に変えた日
海外で働いていて痛感するのは、「何ができるか」以上に、
**「なぜそれをやってるのか」**が強く問われるということ。
僕はずっとWPFを使ってきたけど、正直、日本では“仕方なく”だった。
- 会社の方針でWindowsオンリー
- 新規技術導入に慎重な業界構造
- Webに比べて人材が少ない=任されやすい
そんな環境で、気づけばWPF歴10年。
でも海外では、これを**“キャリア戦略の軸”として語る**ことで、一気に価値が変わった。
たとえば、僕は自己紹介でこう言っていた:
“I specialize in building enterprise-grade desktop applications using WPF, focusing on high-performance, long-life-cycle software solutions for industries that require security, offline capability, and precise UI control. While many developers shifted to web, I decided to master this niche and serve markets that still heavily depend on it.”
これは、技術ではなく**「視点」と「選択のストーリー」**だ。
ここまで話せたとき、WPFはもはや「古い技術」ではなく、
**“特定の課題に応える専門スキル”**になった。
海外でWPF人材が差別化する5ステップ
ここで、これからWPFスキルで海外進出を目指す人に向けて、
僕が実際に行った差別化の5ステップを紹介する。
Step 1|技術を言語化せよ(技術翻訳)
→ 自分がやってきたことを成果ベース&英語で書き出す。
例:
×「DataGridを使った」
◎「Displayed and managed over 100,000 records in a performant, filterable data grid UI using virtualization techniques.」
Step 2|WPFでしかできないことを見つけよ
→ たとえばオフライン対応、超高速描画、タッチ対応、特殊UIなど。
→ これを「Webでは難しい」とセットで語ることで、差別化になる。
Step 3|GitHubでポートフォリオを公開せよ
→ コードだけでなく、READMEやGIFアニメでUI動作も見せる。
→ 英語の説明文+技術選定理由を書くと、海外の採用者の目に留まりやすい。
Step 4|技術記事やノウハウを英語で発信せよ
→ Medium、Dev.to、HashnodeなどにWPF関連記事を書く。
→ タイトル例:「Why WPF Still Matters in 2025 — A Developer’s Perspective」
→ 書くことで“発信できる技術者”という印象に。
Step 5|WPFの先にある“UI/UX設計力”へと進化せよ
→ あくまでWPFは“ツール”であって、“価値”はUI設計力そのもの。
→ それを証明するには、WPFからBlazorやMAUIへの“ブリッジ”を理解しておくと強い。
「WPFのその先」に僕が見ているもの
WPFを突き詰めていくと、次に見えてくるのは、
**“プラットフォーム非依存のUIスキル”**だと思っている。
たとえば、以下のような方向性に自然と興味が湧いてきた:
- .NET MAUI:WPFのXAMLスキルをそのままクロスプラットフォームへ応用
- Blazor Hybrid:WPFのようにC#でUIを書くが、Web技術と融合
- Electron.NET:デスクトップUIをWeb風に、でも.NETで実装
- OpenSilver:WPFと似た構文でWebアプリを構築できるオープンソースフレームワーク
つまり、WPFに詳しい=新しい技術に適応する基礎体力があるということ。
僕はWPFを使いながら、「次に来る技術の“橋渡し役”になれる」という立場にシフトしている。
これこそが、僕にとっての**“WPFキャリアの未来形”**だ。
さいごに|流れに乗らない強さも、武器になる
世の中には、「今はWebだ」「AIだ」「クラウドだ」という声が溢れてる。
それらが重要なのは間違いない。
でも、全員が同じ方向に走るときこそ、逆張りに価値が生まれることがある。
僕は、それをWPFという“逆風の中の追い風”で感じた。
流れに逆らってでも、
「自分の選んだ道を深く掘れる人」が、最終的に独自の立ち位置を築ける。
もしあなたが、
「WPFのままで海外でやっていけるのか?」と迷っているなら、
こう言いたい。
「それ、むしろチャンスだよ」
そして、もしあなたが英語でそれを語る準備さえできれば、
WPFはまだまだ、世界とつながるための“切符”になる。
まとめ|「なぜWebに流れなかったのか?」の答え
- WPFは一部業界で今も“主力技術”として生きている
- 海外では“知られていない技術”こそ、翻訳するだけで武器になる
- WPFはスキルではなく“戦略”に変えられる
- 自分の選択を英語で語れるようになれば、キャリアは変わる
- Webじゃない道を、信じて歩くのも、ひとつの強さ

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