- ようこそ、アメリカの“テック・サバイバルゲーム”へ
- ストレスに飲み込まれない働き方:僕が実践した5つの対策
- あの日、Slackを閉じて逃げ出した。そして、立ち直った。
- 「俺、壊れるかもしれない」──自分で自分が怖くなった日
- 逃げた。そして、助けを求めた。
- “復帰”までのステップ:心をリブートするためにやった3つのこと
- チームの見方が変わった。自分の役割も変わった。
- キャリアを守るのは“根性”じゃない。“戦略”だ。
- 「いいキャリア」=「生き延びたキャリア」
- 日本とアメリカ、働き方の文化ギャップに注意せよ
- 「心が壊れない設計」は、自分で作る
- これから海外で働くエンジニアへ:あなたに贈りたい7つの言葉
- 最後に:このブログが“あなたの防波堤”になりますように
ようこそ、アメリカの“テック・サバイバルゲーム”へ
アメリカのテック業界で働くって、めちゃくちゃかっこよく聞こえるよね。
Google、Microsoft、Amazon、Meta…世界に名だたる企業が集まり、毎日のように革新的なプロダクトが生まれている。夢があって、刺激があって、そして高年収。
「働く場所としては最高じゃん?」
そう思っていた自分も、かつてはそうだった。
でも、いざその舞台に立ってみると、キラキラしたイメージの裏にある現実に驚く。
めまぐるしく変わるプロジェクト、次々と投入されるタスク、タイムゾーンを超えた会議、Slackの通知が止まらない日々。気づけば、**「息をつく暇がない」**という感覚に取り囲まれていた。
最初の違和感:「このスピード感、普通じゃない…?」
僕は日本で数年、C#とWPFを使ってWindowsアプリケーションの開発に携わっていた。
設計レビューも実装も一通り落ち着いて進められる環境で、「丁寧な開発」に価値が置かれていたと思う。
でも、アメリカに来てみてすぐに気づいた。開発の「密度」が段違い。
たとえば:
- 1週間でMVP(Minimum Viable Product)を出すスピード感
- スプリントが終わるたびに「次は何を壊して直すか?」という発想
- 「今週中に出さなきゃ資金調達に影響が出る」みたいなデッドラインが**“当たり前”**にある
特にスタートアップや中小のテック企業では、スピードと成果を出すことが最優先される。言い換えれば「常に100%の力を出し続けることが求められる」ということ。
そんな環境に半年ほどいたころ、僕の中に小さな変化が生まれた。
気づかないうちに心が蝕まれる
最初は「なんだか疲れやすいな」くらいだった。
けど、徐々に…
- 朝、PCを開けるのが怖くなる
- プロジェクトの進捗を見るたびにプレッシャーを感じる
- コードを書くのが楽しくなくなる
- 土日も“何かを学ばなきゃ”と焦るようになる
頭では「このプロジェクトはやりがいがあるし、自分のスキルにもなる」と思っていた。
でも、体と心が「もう無理」と言っている。
そしてある日、突然メールもSlackも開けなくなった。
手が止まり、頭が働かなくなる。あんなに楽しかったコーディングが、恐怖に変わっていた。
これは“怠け”じゃない、**バーンアウト(燃え尽き症候群)**だ
後から調べてわかったんだけど、この状態はアメリカのエンジニアには珍しいことではなかった。
**バーンアウト(Burnout)**は、継続的なストレスにさらされることで心身が疲弊し、やる気も判断力も低下する状態のこと。
特にアメリカのテック業界では、バーンアウトに陥る人が年々増加しているらしい。
いくつかの統計では、シリコンバレーのエンジニアの約6割が何らかの形でバーンアウトを経験しているという報告もある(※参考:Harvard Business Review)。
それを知ったとき、ちょっとホッとした。
「自分だけじゃなかったんだ」って。
でも、同時に思った。
「じゃあ、どうすれば防げるんだろう?」と。
アメリカ流・自己管理術を身につけろ
アメリカの職場では、基本的に**“自己管理ができる前提”**で働くことが多い。
- 「調子悪いならちゃんと休めよ」
- 「時間外に仕事する必要ないよ、ただし締め切りは守ってね」
- 「メンタルヘルス?大事に決まってるじゃん」
こう言われる一方で、実際は周囲が“24/7体制”で働いているという矛盾もあって、どうにも落ち着かない。
そこで僕は、意識的に自分を守る方法を探し始めた。
そしてわかった。
バーンアウトを防ぐには、単なる「休憩」じゃなくて、戦略的にストレスを“デザイン”する力が必要なんだって。
ストレスに飲み込まれない働き方:僕が実践した5つの対策
アメリカで働き始めて半年。
気づけば、仕事が“楽しい”から“苦しい”に変わっていた。
でも、あるときふと、こう思った。
「これって、スキルじゃどうにもならない問題だな…」
そう。WPFが書けるとか、設計が得意とか、そういう技術の話じゃない。
**「どうやって心と体を守りながら、働き続けるか」**っていう話。
そこで僕は、バーンアウトを防ぐために、具体的なアクションをいくつも試した。
その中で「これは効いた」と思えたことを、今回は5つ紹介する。
1. タスクを“切る力”を身につける
日本の感覚でいると、タスクは全部やり切るべき、と思いがち。
でもアメリカでは「これは今週やるべき?本当に?」と常に疑ってかかるのが普通。
僕が取り入れたのは、“タスクの減らし方”をルーチン化することだった。
実践したこと:
- 毎週月曜朝、「やらなくていいことを3つ決める」
- プロジェクトマネージャーとのミーティングで、「これは今週やらなくていいですよね?」と確認する習慣を持つ
- 「Done is better than perfect(完璧より完了)」という言葉を机に貼る
結果:1週間のToDoが20%削減された。
集中できる時間が増えて、**“何に時間を使っているか”**をちゃんと考えるようになった。
2. “アメリカ会議”の乗りこなし方
英語での会議って、最初はめちゃくちゃ疲れる。
しかもアメリカでは、「会議で話さない人=関与していない人」扱いされがち。
でも、常にアクティブに発言するのはバーンアウトの引き金にもなる。
だから、僕は**“会議で自分の負荷をコントロールする技”**を身につけた。
実践したこと:
- 事前に「発言するタイミング」を決めておく(例:「冒頭の進捗報告だけ発言して、あとは聞き役」)
- 会議中にリアルタイムでメモを取らない(代わりに録音・自動文字起こしを活用)
- 「会議のための会議」を断る勇気を持つ
これだけでも、会議の疲労度が激減。
**“無理に英語で頑張らなくてもいい”**と自分に許可を出せたのが大きかった。
3. 「No」と言えるようになった
最初は断れなかった。「大丈夫?できる?」と聞かれて、「Yes」と答えてしまう。
でも、できないことを無理に引き受けることが、結局チームの足を引っ張ると学んだ。
実践したこと:
- タスクを引き受ける前に、「これは他の誰かがやった方がいい?」と冷静に考える
- スケジュールを見せながら、「今週これ以上入れると品質に影響が出る」と**“可視化された理由付きで断る”**
- 「No, but…」の形で代替案を出す(例:「今週は無理だけど、来週なら可能です」)
断ることは“わがまま”ではなく、責任ある判断だと気づいたとき、自分を守る力がついた。
4. 会社のリソースをフル活用する
正直、アメリカ企業の福利厚生には驚いた。
心理カウンセリング、ヨガセッション、瞑想アプリ無料配布、メンタルヘルス休暇(Mental Health Day)など、“心を整える支援”がめちゃくちゃ充実している。
でも最初は、「そんなの使っていいの?」と遠慮していた。
実践したこと:
- 会社で契約している**オンラインカウンセリング(BetterHelp)**を毎週使った
- メンタルヘルス・アプリ(Headspace)を毎朝5分だけ使って呼吸を整える
- Slackでの通知を金曜午後はOFFにして、集中タイムを確保
結果:不安が蓄積しにくくなり、土日で気力が回復するようになった。
5. 「学ばない時間」を意図的につくる
アメリカのテック業界って、**“常に学び続けるのが当然”**っていう空気がある。
LinkedInを見るたびに誰かが新しい資格を取ってたり、副業してたり、OSS活動してたりして、焦る。
でもあるとき、**「このペースじゃ長く持たない」**と気づいた。
実践したこと:
- 毎週1日は「学ばない日」を設定(映画を観たり、料理をしたり、あえて技術から離れる)
- 技術書の代わりに、小説やエッセイを読む
- SNS断ちの時間帯を設ける(特に夜10時以降)
インプットを止めたことで、逆に頭の中の整理ができるようになった。
そして、不思議なことに**「あれ、コード書きたいかも」と自然に思える日が戻ってきた。**
「がんばる」のではなく、「折れない自分」をつくること
アメリカのテック業界は、確かにハードだ。
でも、それは“がんばり続ける力”ではなく、**“自分の限界を知って調整する力”**が求められているということでもある。
エンジニアにとって、燃え尽きる=一時的な脱落になりかねない。
だからこそ、「自分を守る技術」もまた、キャリアの武器になる。
あの日、Slackを閉じて逃げ出した。そして、立ち直った。
いくら自己管理をしても、バーンアウトの“波”は突然やってくる。
実は、前回紹介したような対策をいくつか試してみて、
「これなら乗り切れるかも」と思っていた矢先――限界がやってきた。
それは、ある金曜日の朝。Slackを開いた瞬間だった。
「俺、壊れるかもしれない」──自分で自分が怖くなった日
その週は、大きなデモ(クライアント向けの製品紹介)が控えていた。
UIの改修をC#とWPFで行っていて、フロントエンド部分の設計も全部任されていた。
PMからのレビューは容赦なく、テストチームからはバグ報告が止まらない。
時差の関係で、ヨーロッパチームとの調整も続いていた。
1日12時間以上、椅子に座っているのが普通になり、
土曜も日曜も、VS Codeを閉じたのは深夜だった。
そして迎えた月曜。
Slackには10件以上のタグ付き通知、Zoom会議は3件バッティング、GitHubのPRレビュー依頼は朝の時点で5件超。
その瞬間、頭が真っ白になった。
マウスを握った手が震えた。
息が浅くなって、胸がギュッと締め付けられる感覚。
冷や汗。手汗。手の平に貼りつくような感覚。キーボードが遠く感じた。
「これは、ヤバい」と直感でわかった。
逃げた。そして、助けを求めた。
10秒後、Slackを閉じた。
メールも閉じた。
Zoomにも入らず、PCの電源を落とした。
そして、外に出た。
近所のカフェに入って、ただただ**ラテを飲みながら“ぼーっと”**してた。
本当に、何も考えられなかった。
でも、不思議と後悔はなかった。
それから1時間後、初めて会社のメンタルヘルスサポートに連絡した。
「I think I’m burning out. Can I talk to someone?」
返事はすぐ来た。
社内のEmployee Assistance Program(EAP)を通じて、オンラインカウンセラーと話せることになった。
そしてその週、メンタルヘルス休暇を3日間申請。
上司には「ちょっと精神的に厳しい状態なので、1回立て直したい」と伝えた。
上司の反応は、驚くほどあたたかかった。
「無理して壊れるより、休んで戻ってきてくれた方が100倍いい」
そう言われて、涙が出そうになった。
“復帰”までのステップ:心をリブートするためにやった3つのこと
たった3日間だったけど、僕にとっては大きな転機だった。
この期間を、ただ“休む”だけではなく、“回復の準備期間”に使った。
1. 自分の状態を「書き出す」
ノートにこう書いた。
- 今、何が苦しい?
- どんな時に焦る?
- 何を失ってしまったと感じてる?
意外と答えられなかった。だからこそ、「書く」ことが役に立った。
たとえば…
- 「毎日、役に立ってないって思う」
- 「コードが書けて当たり前、って空気に潰されそう」
- 「英語の会議で発言するたびに、自信がなくなる」
こんな言葉が、手からこぼれるように出てきた。
アウトプットするだけで、心が少し軽くなった。
2. 「仕事軸」から「人軸」に戻す
このとき、ふと思った。
「俺、最近“自分のため”に何もしてなかったな」
だから、やってみた。
- ずっと聴きたかった音楽をプレイリストにして散歩
- Netflixで字幕付きの日本ドラマを見て、故郷を思い出す
- コーヒーショップで日本語の日記を書く(完全プライベート空間)
たったこれだけで、“あ、自分って生きてていいんだ”感覚が戻ってきた。
3. “小さく始める”再出発
休暇明け。僕はSlackを開くのが、またちょっと怖かった。
でも、完全に戻るんじゃなくて、**“半歩ずつ戻る”**ことを決めた。
- 月曜は1タスクだけ。Zoom会議は休む。
- 火曜は1on1だけ。コードレビューは翌日以降に。
- 水曜は午前だけ仕事して、午後は散歩に出る。
そうやって、**“少しずつ自分を信じられる感覚”**を取り戻していった。
そして気づいた。
「全部に100%応える必要なんて、最初からなかったんだ」って。
チームの見方が変わった。自分の役割も変わった。
復帰してから、不思議なことが起きた。
- 「ちょっと最近忙しすぎない?」とチームメンバーが声をかけてくれるようになった
- 自分が休んでいた間に、別のメンバーがフォローしてくれていた
- 上司が「バーンアウト防止のための1on1の時間を定期化しよう」と動いてくれた
**自分が「助けを求めたこと」**が、チーム全体にもプラスに働いた。
さらに、自分の働き方にも変化が出た。
- 毎週月曜に「今週やらないことリスト」を共有
- チーム内でメンタルヘルス関連のSlackチャンネルを立ち上げた
- 「疲れてる顔してるメンバー」に対して、自分から話しかけるようになった
「守ることは、弱さじゃない」
「むしろ、それを周りと共有できる人間こそ、チームを強くする」
今は、そう思えるようになった。
キャリアを守るのは“根性”じゃない。“戦略”だ。
ここまで読んでくださった方、本当にありがとう。
僕の体験が、あなたの「これから」に少しでもヒントになればと願って、このパートを書いています。
バーンアウト──燃え尽き症候群。
これは、一部の人にだけ起こる特殊な現象じゃない。
誰でもなる。
そして、何度でもなる可能性がある。
特に、アメリカのようなスピードと成果至上主義のテック業界では、
ちょっとした無理や「がんばりすぎ」が、あっという間に心と体を削っていく。
僕が伝えたいのはこれです。
「いいキャリア」=「生き延びたキャリア」
日本で働いていた頃、僕は「成果を出すこと」ばかり考えていた。
・バグを減らす
・コードを美しく書く
・納期を守る
・クライアントに褒められる
でも、アメリカで働くようになって気づいた。
**「それ以前に、自分が壊れたら何も残らない」**って。
もっと言うと、“壊れないでいられること”がキャリアの強さなんです。
言い換えれば、
「バーンアウトしないスキル」=「海外キャリアを継続する戦略スキル」
これは技術力と同じくらい重要なスキルです。
日本とアメリカ、働き方の文化ギャップに注意せよ
僕の失敗のひとつは、アメリカの企業で働くのに、日本式の働き方をそのまま持ち込んだことだった。
たとえば:
| 日本的価値観 | アメリカ的価値観 |
|---|---|
| 仕事は“期待以上”に応える | 仕事は“期待どおり”でOK |
| 休まず働くのが美徳 | 休まないと評価が下がる |
| 頼るのは迷惑 | 頼るのは戦略 |
このギャップを理解しないまま、「無理してでも成果を出さなきゃ」と思っていたら、
自然と「休むのが怖い」「頼れない」「手を抜けない」マインドにハマっていく。
でも、アメリカではそれはむしろ**“自己管理ができない人”扱いされる**ことすらある。
頼ることは、信頼されること
休むことは、責任感の証
タスクを選ぶことは、価値の判断
このマインドセットを持てるかどうかで、働き方は大きく変わる。
「心が壊れない設計」は、自分で作る
エンジニアなら、システム設計やアーキテクチャにこだわるはず。
だったら、自分自身の“働き方設計”にもこだわるべきです。
僕が実際に今、設計している「自分システム」の要素を共有します:
🔹 タスク管理レベル:
- 毎週、「今週やらないことリスト」を作る
- タスクは3つまでに絞る(”3 Big Rocks”ルール)
🔹 スケジュールレベル:
- 水曜午後は“脳のリブートタイム”(カフェか散歩)
- 金曜午後はレビューだけ、コード書かない日
🔹 メンタル管理レベル:
- 毎日10分だけマインドフルネス(Headspace)
- 月1で「心の棚卸し日記」を書く
- 週1で「誰かに相談する日」を決めておく(上司でも、友達でもOK)
これから海外で働くエンジニアへ:あなたに贈りたい7つの言葉
- 成果より、自分を大事に。
壊れてまで出した成果に、価値はない。 - がんばるのをやめる勇気を持とう。
がんばらないことで“続けられる”なら、それが正解。 - チームに頼るのは、迷惑じゃない。
「助けて」と言える人は、信頼される。 - 働く環境は、選んでいい。
会社が合わないと思ったら、転職していい。逃げていい。 - 英語が下手でも、気持ちは伝わる。
完璧じゃないから、助け合いが生まれる。 - 1人で頑張りすぎないで。
海外で働くって、かっこいいけど孤独にもなりやすい。 - 「続ける」ことが最大の成果。
長くやれる人が、一番遠くに行ける。
最後に:このブログが“あなたの防波堤”になりますように
僕の体験は、特別なものじゃない。
でも、ここに書いたことで、“言葉にならないモヤモヤ”が整理できた人がいたら嬉しいです。
アメリカでのテックキャリアは、確かに刺激的。
でもそのぶん、心と体のメンテナンスは**“毎日のタスク”として設計すべきもの**だと思う。
バーンアウトは、甘えじゃない。
そして、それを防ぐこと・乗り越えること・共有することは、恥じゃない。
むしろ、それこそが今後のグローバル時代に必要な
**「リアルなプロフェッショナリズム」**なのかもしれません。

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