時差と空気の違いに戸惑った、けど――新しい「朝」の始まり
朝7時。
アメリカのどこか、郊外のアパートメント。
窓の外にはリスが走っていて、日本のマンションでは聞き慣れなかった「鳥の声」が聞こえる。時計を見ると、Slackの通知がすでに5件。だけど焦らない。なぜなら――こっちはまだ朝だから。
■「え、そんなゆっくりで大丈夫なの?」と思ったあなたへ
僕が今働いているのは、アメリカのソフトウェア会社の開発チーム。
職種は「WPFアプリの設計・開発エンジニア」。
チームは世界中に散らばっていて、上司はサンフランシスコ、デザイナーはスペイン、QAはインド。
だから朝は、あえてゆっくり始めるようにしてる。
この「自分の生活リズムで働ける感覚」が、リモートワーク最大の魅力かもしれない。
■ 朝のルーチンは「英語のチューニング」から
さて、仕事を始める前にやるのが、「耳と頭を英語モードにする作業」。
最初は苦戦したけど、慣れるとむしろ楽しい。最近のルーティンはこんな感じ。
- 起きたらまず、YouTubeでTech系のショート動画を3本見る(おすすめ:Fireship、TechLead、Traversy Media)。
- 次に、英語で天気予報を聞く。今日は30度、オフィスはクーラー効きすぎ注意。
- コーヒーを淹れながら、昨日のPull Requestのコメントを英語で読み直す。
WPFエンジニアといっても、毎日XAMLを書いてるわけじゃない。
SlackやGitHubのコメント処理も大事な仕事のひとつ。英語が読めないと、そこで詰む。でもこれも、**「慣れゲー」**です。
■ 英語が不安でも「言葉以外の価値」がある
僕がチームに入ったとき、正直言って「英語力」では他のメンバーに勝てなかった。
だけどWPFのXAML設計とか、MVVMのアーキテクチャ、Dependency Injectionの知識はかなり実践的に積んできた。
だから、**「この人は英語はシンプルだけど、コードが信頼できる」**って評価されるようになった。
大事なのは「英語がうまいこと」よりも、
「誤解のない伝え方」と「コードの一貫性」。
これは本当に痛感した。
■ 海外で働くって、意外と“普通”だった
もともと海外に住んだこともなかった僕が、今こうして海外企業でWPF開発をしてるなんて、昔の自分が聞いたら「無理でしょ」って言うと思う。
でも実際は、「思ったより普通にできた」。
必要なのは、
- 英語の基礎(文法は中学レベル+テック用語)
- WPFとC#の中級レベル(MVVM、DependencyProperty、CustomControlが扱える程度)
- Git、GitHub、Slack、Notionあたりのツール慣れ
これだけあれば、“やれる人”として見てもらえる。
■ まとめ:朝は焦らなくていい、自分のペースで整える
この「起」の章では、僕の一日の始まり――つまり朝の時間にフォーカスしてみた。
海外リモートWPFエンジニアとして、最初に気をつけたことは「焦らないこと」。
非ネイティブでもやっていける理由は、自分の強みを理解し、それをうまく活かせる環境を選んだこと。
リモート会議、タイムゾーン、そして“英語の壁”を越える瞬間
午前9時半。
コーヒーを飲み終えてPCの前に座る。Slackでメンションがついていたメッセージにざっと目を通して、GitHubのPull Requestを1つレビュー。
10時からは、週次の**「チームシンク」**(Team Sync)というZoom会議が始まる。
■ 会議の言語は「シンプルな英語」+「デモとスクショ」
このチームシンク、実は英語力に自信がない人にとってもハードルはそんなに高くない。
なぜなら、みんなネイティブじゃないから。
- フランス出身のプロジェクトマネージャーは少し巻き舌気味。
- インドのQAエンジニアは早口だけど、文法はカタい。
- 僕はカメラをオンにして、スライド代わりに自分の画面でUIのスクショを共有する。
言葉でうまく伝えられないときは、「見せる」。
これは海外で働く上で本当に強力なスキル。WPFはUI設計が強みだから、実際の画面キャプチャや、XAMLコードのスニペットで議論の主導権を握ることもできる。
■ コーディングタイム:Slackは閉じる、集中の時間
会議が終わったら、1〜2時間は集中モードに切り替える。
Slackはサイレントモードにして、Visual Studioを立ち上げる。
今日は「ダークモード対応機能」のデザイン変更。WPFのResourceDictionaryを使ってテーマを切り替える設計をしていた。自分で作ったControlTemplateが綺麗に動いた瞬間はちょっとした快感。
今日のタスク:
- Light/Darkテーマの切り替えロジック実装(
App.xaml.cs) MainWindow.xamlの色定義をThemes/Colors.xamlに移行- Pull Request用の英文コメントを書く
ここでちょっと立ち止まって考えるのが、「英語でどう説明するか」という問題。
■ 英語でPull Requestを書くのは慣れると楽しい
Pull Request(PR)は、海外リモートワークで自分の存在を“見せる”大事な武器になる。
たとえば、こんなふうに書く:
### Summary
This PR adds theme-switching support using ResourceDictionary, enabling light/dark mode UI.
### What Changed
- Refactored theme logic in `App.xaml.cs`
- Moved static color values into `Themes/Colors.xaml`
- Applied new bindings to `MainWindow.xaml`
### Why
Improves user accessibility and aligns with UX feedback from the last sprint.
コツは、
- 短く、具体的に
- 「なぜ」やったかを明記
- コードの意図を伝えること
正直、英語が不完全でも伝わる。重要なのは**「意図を持って書いた」**こと。
■ お昼ごはんは、時差のおかげで「フレックスタイム」
海外リモートでよかったなと思う瞬間が、お昼の自由度。
僕の場合、12時〜14時の間で空いてる時間にランチをとる。
時差の関係で、午後はSlackも比較的静かなので、この時間にちょっと買い物に出たり、散歩に行ったりすることもある。
「仕事時間=9時〜17時」という感覚は、ほぼない。
大事なのは成果であって、時間じゃない。
■ 自分の強みを活かして“居場所”をつくる
WPFという分野は、実はそこまで開発者人口が多くない。
ReactやFlutterほどのトレンド性はないけど、その分**「やれる人」が重宝される**。
たとえば、MVVMの理解、INotifyPropertyChangedの実装パターン、UserControlの再利用性設計など、細かい知識の積み重ねが、**「あ、この人は頼れる」**という評価に直結する。
日本で黙々と積んできたスキルが、ここで武器になる感覚。
これが、英語での劣等感を上回る瞬間だと思ってる。
まとめ:英語で仕事するのは「完璧」じゃなくて「伝わる」が大事
「英語が苦手だから、海外では働けない」と思ってた過去の自分に、今ならこう言いたい。
“伝わる英語”でいい。
技術に自信があるなら、ちゃんと届く。
そして、
Slackに何も返信がこなかった=英語が変だからではなく、
**「みんな時差で寝てるだけ」**だったりする。
海外リモートの働き方は、ゆるくて、自由で、でも実力主義。
だからこそ、地味な努力がちゃんと評価される世界だとも言える。
予定どおりにはいかない、“文化と距離”という名のバグ
午後3時。
SlackでQAエンジニアからのメンションが飛んできた。
「Your latest commit broke the tab behavior on the Settings panel.」
え?と思って急いでビルドし直し、再現してみると――確かに、TabControlの切り替えがうまくいっていない。
おかしい。ローカル環境では動いていた。
だが、彼のスクリーンショットを見ると、画面スケーリングが125%になっていた。
ああ、そうか。
Windows環境のDPIスケーリングが影響していたのだ。
■ リモート開発の落とし穴:自分の環境は「世界の基準」じゃない
日本では当然のように96DPI前提でUI設計していた。
でも、世界は違う。
- インドの開発者は、ノートPCをHDMIでTVに出力して120%スケール
- ドイツのテスターはMacBookにBootCampでWindows環境(しかも英語ロケール)
- アメリカのPMはデュアルモニターで片方が縦型配置
「え、そんなの予想できないよ」と思うかもしれない。
でもそれが、“グローバル開発”という現場のリアルだ。
■ “Yes”は本当の「Yes」じゃない
もっと衝撃的だったのは、「言葉の温度差」。
週次会議で、あるUI仕様について僕が説明したとき、PMが「Sounds good.」と笑顔で答えた。
日本人的感覚なら、「あ、OKってことだな」と思って先に進める。
でも次の日、彼が書いていたSlackメッセージにはこうあった:
“I thought we were still exploring that idea. Not fully decided.”
ん?“Sounds good”って言ったじゃん……?
ここで気づいたのが、
英語の“Yes”や“Sounds good”は、必ずしも「決定」ではないということ。
文化的に、ネガティブな感情や反論をストレートに出さない場合がある。
特にアメリカでは「協調」や「前向きな空気感」を大事にするため、イエスでも「保留」の場合がある。
■ エラーではなく“仕様の不一致”が一番きつい
バグなら直せる。
英語のミスなら伝え直せる。
でも一番つらいのは、「相手と見てるものが違った」ことに数日後に気づく瞬間だ。
あるとき、自分では**「完璧に要件を満たした」**と思った機能に対して、レビューで返ってきたのはたった一言。
“I think we misunderstood each other.”
やってしまった……と思った。
だけど、そういう時に大切なのが自分を責めすぎないこと。
むしろ、自分の中でルール化した。
■ 僕が“言葉の壁”より大事にしている3つのルール:
- 決まったらドキュメントにする(Notionに残す)
- 「これで合ってる?」を口癖にする(Are we aligned?)
- 仕様は「動画と絵」で共有する
英語がネイティブじゃなくても、伝える工夫で信頼は積み上がる。
そして、一度ついた信頼は、言葉のミスでは崩れない。
■ 自分を守るための「沈黙しない力」
ミーティング中、内容が100%理解できていないとき、以前は「とりあえず笑顔でやり過ごす」ことがあった。
でもそれが一番危ない。
だから今は、わからないときはこう言うようにしている。
“Sorry, just to clarify…”
“Can I ask for a quick example?”
“Let me make sure I understand this right…”
これが言えるようになっただけで、エンジニア人生がだいぶ変わった。
まとめ:予想外は、進化のチャンスだった
- 仕様の食い違い
- 言語の裏にある文化の違い
- 想定外の環境差異
こうした「転び方」があるからこそ、自分の引き出しが増えていく。
日本で学んだ技術、日本語の精密な思考、丁寧なレビュー文化――
それらを**“言語の壁”の向こうにある混沌**に持ち込んで、調整する。
このプロセスこそが、グローバルエンジニアの真髄なのかもしれない。
働き方は選べる時代、“完璧じゃない”からこそ武器になる
午後6時。
タスクボードを確認して、今日の進捗をSlackに簡単にポストする。
GitHubのPRに「LGTM(Looks Good To Me)」のスタンプが付き、静かにMacのフタを閉じる。
一日が終わる。
でも、前の職場みたいに「疲れ切ってクタクタ」という感覚はあまりない。
むしろ、「ちゃんと前に進んだ」という実感がある。
■ 僕の“WPFエンジニアの海外ルーチン”は、完璧じゃないけど「機能してる」
振り返ると、リモートで海外チームと働くようになってから、たくさんの発見があった。
- 朝は、英語脳に切り替える“習慣”からスタート
- 昼は、WPFの知識とツールを駆使して“成果”を出す時間
- 午後は、文化や言葉のギャップに向き合う“柔軟性”が求められる時間
この全てが、自分の「働き方の一部」になった。
最初は戸惑いの連続だったけど、気づけば自分なりの**“海外スタイル”**ができあがっていた。
■ 技術に助けられ、失敗に育てられた
正直、英語力だけで見たら、僕は“普通”の非ネイティブスピーカーだと思う。
でも、WPFの設計力・UI実装の丁寧さ・チームを助ける動き方、そういった部分が評価されてきた。
Slackの絵文字ひとつで感謝が伝わったり、
GitHubのコメントが「Wow! Clean implementation.」で始まったり。
こういう瞬間に、**「あ、僕はここにいてもいいんだ」**って思える。
■ 日本のエンジニアだからこそ持っている“価値”
これは実体験として強く感じているけど、
**日本のエンジニアが持っている“精密さ”と“丁寧な仕事ぶり”**は、世界的に見ても大きな武器になる。
例えば:
INotifyPropertyChangedの実装でも、イベントハンドリングの抜けを見逃さない- UIのレスポンスやキーボードナビゲーションに細かく配慮できる
- 設計ドキュメントに日本人ならではの「構造美」が出る
海外のチームメイトから見れば、「そこまで考えてるの?」ってなることも多い。
でも、それが信頼になる。
■ 海外で働く=「どこでも通用する力を育てる」こと
WPFエンジニアとして、今こうしてリモートで働く中で実感しているのは、
場所にとらわれず、**「自分のスキルで誰かの役に立てる」**という感覚。
- 時差があっても
- 英語が完璧じゃなくても
- 海外の文化が時々よくわからなくても
**“一緒にプロダクトを作っている”**という共通言語がある。
そこに乗れた時、自分の中の「働く」という感覚が変わった。
■ 未来の自分と、これから海外を目指すあなたへ
未来の自分にもし伝えるなら、こう言いたい。
「今いる場所で悩んでいても、一歩外に出れば世界は広い」
「言葉より、コードと姿勢で信頼される世界もある」
「失敗しても大丈夫。ちゃんと前に進める」
そして、このブログを読んでくれたこれから海外を目指すエンジニアのあなたへ。
海外で働くのに、“特別な人”になる必要はありません。
コツコツ積んだ技術と、小さな勇気があれば、きっとあなたにも道が開けます。
📘 まとめ:WPFで世界とつながる、自分のスタイルでいい
僕の一日ルーティンは、ただの参考例にすぎません。
でも、どこかに「自分でもやれるかも」と思ってくれる人がいたら、それが一番うれしいです。
- 完璧じゃなくていい
- 英語が下手でもいい
- ミスしても、そこから学べばいい
WPFも、人生も、バインディング次第でちゃんと機能する。
それを、この働き方が教えてくれました。

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