はじめての海外コーディング現場――日本との違いにカルチャーショック!
海外でITエンジニアとして働くことになった日のことは、今でもはっきり覚えている。
私の主戦場はC#とWPF。日本では何年もこの技術で設計開発をしてきたし、「設計書通りにコーディングして、レビュー通して、テストして、納品」という一連の流れにもすっかり慣れていた。
だから正直、「国が違ってもやることは同じでしょ?」なんて軽く考えていた部分もあった。
でも、その考えがいかに甘かったかは、初日に気づくことになる。
■まず、コーディング開始前の「空気」が違う!
日本での現場は、朝イチに「チーム朝礼」→「タスク確認」→「静かに作業開始」という流れが多かった。
席に座った瞬間、周囲はシーン…。
キーボードを打つ音だけが部屋に響く。Slackでのやりとりすら、ちょっと遠慮がちに送るような空気。
レビュー依頼も「タイミングを見て…」「忙しそうだから後で…」と、かなり気を使っていた。
ところが海外。特に今の私の職場(アメリカのミッドサイズIT企業)では、朝の雰囲気からして全然違った。
朝一番、オフィスに入るとまず「Good morning!」の嵐。
Slackじゃなくて、直接デスクに来て話しかけられる。
「昨日のあのバグ、どうだった?」「週末なにしてた?」みたいな雑談があちこちで飛び交ってる。
チームスタンドアップミーティング(日本でいう朝会)も、まるでラジオ番組のフリートークみたいににぎやか。
タスク進捗の話もするけど、ユーモアや軽口が混じるのが当たり前。
「なんだこの明るい現場は…!」
正直、最初はこのノリについていけなくて、ちょっとフリーズしてた。
■仕様書がない!?ドキュメント文化の違い
日本の現場では「まず詳細設計書を作って、それがレビュー通ってから実装スタート」というのが鉄板ルールだった。
仕様が1行でも曖昧だったら、レビューで即NG。
「設計書に書いてないことを勝手に実装したら怒られる」みたいな文化。
でも今の海外チームでは、その「詳細設計書」というものが、まず存在しない(笑)。
あるのは、Jiraのチケットに箇条書きされた簡単な「やることリスト」だけ。
たとえば…
Jiraチケット例:
- Implement search filter for customer list
- Optimize loading performance
- Refactor existing API call for better error handling
これだけ。
データ構造もAPI仕様も、必要ならSlackで聞くか、コード読んで自分で理解するしかない。
しかも、UIの挙動は「Figma」のプロトタイプ画面だけが手がかり。
「え…これだけで実装始めるの?」
って最初は本当に不安だった。
だけど同僚たちは、そんなの気にせずどんどん書き始める。
「わかんないことあったら、すぐ聞けばいいじゃん?」っていうスタンス。
この「聞く前提」「自走前提」の文化には、なかなか慣れなかった。
■コーディングスタイルにも大きな違いが!
日本の時は、「規約遵守」「コーディングスタイルガイドに従え」が絶対。
メソッド名のキャメルケース/パスカルケース、コメントの書き方、変数名の付け方まで、事細かにルール化されていた。
しかも、少しでも外れるとレビューで指摘される。
でも今のチームは「基本的には自由」。
もちろん、会社全体で使っている静的解析ツール(SonarQubeとか)があるし、大きな違反は検出されるけど、細かい命名規則とかはそこまで厳しくない。
海外チームメンバーの一言:
「コードは動けば正義、でも読みやすさはもっと大事。名前付けは“次に読む人が困らない”ことがゴール。」
この「自由だけど責任感がある」スタイルも、日本とは明確に違うところだった。
■最後に:最初の壁は「何を聞いていいかわからないこと」
一番しんどかったのは、正直これ。
日本だと「上司がちゃんとタスクを整備してくれる」「仕様は先にドキュメントにまとまっている」という安心感があった。
でも海外では、「足りない情報は自分で取りに行く」ことが当たり前。
「このタスク、何をどうすればいいのか」「誰に聞けばいいのか」すら、最初は自分で判断しないといけない。
戸惑いから適応へ――海外コーディング文化にどうやって慣れていったのか?
最初の数週間は、本当に「頭の中がずっと混乱モード」だった。
毎朝Slackで飛んでくる英語のメッセージ。誰が誰に何を言ってるのか分からない。
タスクの説明も「これやっといて!」の一言だけで終わる。
Jiraのチケットも超ざっくり。
日本での「仕様書ベース文化」になれていた自分には、もはやカオス。
でも、ここで折れて帰国するわけにはいかない。
生活もあるし、何より「せっかくつかんだ海外勤務のチャンス」だ。
…そう自分に言い聞かせながら、少しずつ適応していくことにした。
■ステップ①:「完璧主義」を捨てる決意
まず一番にやったのは、心の中の「日本式エンジニアの常識」をリセットすること。
日本での私は、「タスクの定義が曖昧なら、まず文書化して上司に確認」「レビュー依頼は100%自信が持てるタイミングで出す」タイプだった。
でも海外では、それをやってると間に合わない。
先輩エンジニアからのアドバイス:
「とりあえずプロトタイプでいいから動くもの作って、あとで直せばいいんだよ。迷ったらSlackで投げろ。」
この言葉は衝撃だった。
「え、そんなラフでいいの…?」
最初は戸惑ったけど、試しにプロトタイプ版を早めにPushしてみると、すぐに同僚がコメントくれた。
実際のPull Requestでの会話例:
- 自分:
「Hey, this is just a quick draft, but let me know your thoughts!」 - 同僚:
「Nice start! For the filter logic, maybe use LINQ instead of manual loops. Also, let’s add unit tests later.」
これで「あ、未完成でもOKなんだ」「むしろ早めに見せた方がいいんだ」って実感できた。
■ステップ②:「聞く力」を鍛える
次に変えたのは、「わからないことをすぐ聞く」スキル。
日本では、先輩が忙しそうにしていたら、声をかけるタイミングをずっと探ってしまっていた。
でもこっちは違う。
Slackでわからないことがあったら、遠慮せずその場で聞く。
しかも、相手も「すぐに返信できない時は無理に返さない文化」だから、気楽に質問できる。
ある日の質問Slack:
「Hey team, quick question: For the new API, do we have any error handling standard? Should I throw exceptions or use result codes?」
→ 数分後にTech Leadが返信
「Good point! Throw exceptions for critical errors, but use result codes for validation errors. Let’s update the Confluence page too.」
このスピード感とオープンなやりとりは、日本では考えられなかった。
「聞くこと=迷惑じゃない」という感覚が、少しずつ身についていった。
■ステップ③:コードレビューを「怖いもの」から「学びの場」へ
日本時代、コードレビューって「間違い探し」みたいなものだった。
「どこがダメか指摘される時間」「できれば指摘されないほうがいい」みたいな空気があった。
でも今の職場は、レビューコメントがめちゃくちゃフランク。
しかも、改善提案がすごく具体的で建設的。
レビューコメント例:
- 「Great job! Just a minor nitpick: maybe rename this method for clarity?」
- 「Love this approach. One small suggestion: consider async/await here for better performance.」
しかも「Thanks for the feedback!」「Good catch!」と、レビューコメントへのリアクションも活発。
最初は「指摘される=怒られる」って思い込んでたけど、徐々に「むしろありがたいアドバイス」って受け止められるようになった。
■ステップ④:「完成品志向」から「イテレーション志向」へ
日本では「最初からきっちり完成品を作る」のが美徳だった。
でもこっちでは「まず動くものを作る→フィードバックもらう→直す→また改善する」の繰り返し。
最初の2週間くらいで、この流れに慣れないと、どんどん置いていかれる。
上司の一言:
「If it’s not perfect, that’s fine. Shipping fast is more important. Let’s iterate.」
今では、自分でも自然に「まずは動くものをリリース」「あとで直す」って考え方ができるようになった。
スピード感、フィードバック重視、対話優先。
全部が新しい感覚だった。
■振り返り:一番大事だったマインドセットは?
最終的に、最も大きかった変化は「心の壁をなくすこと」だった。
「これを言ったら怒られるんじゃ…」「まだ不完全だから見せちゃダメかも…」
そんな日本式の「空気読みすぎマインド」を、少しずつ手放していくことで、やっと現場に馴染めるようになった。
日本式エンジニア経験が海外で「武器」になった瞬間
適応に必死だった最初の数ヶ月。
正直、自分にとっては「ずっと受け身」「学ぶだけ」の期間だった。
「どうすればこの現場で迷惑かけずに仕事できるか」
「どうすればこのスピード感に乗れるか」
そんなことばかり考えていた。
でも、ある日突然、その状況がガラッと変わる出来事が起きた。
■ある日の重大プロジェクト――仕様がグダグダすぎる!
その日は突然やってきた。
新しいクライアント案件で、WPFアプリケーションの大規模機能追加が決定。
チームに配られたJiraチケットは、正直言って…ひどかった(笑)。
Jiraの内容:
- Add new search filters
- Improve performance
- Redesign UI
以上。これだけ。
しかも、会議で出てくる仕様の話もフワフワ。
「うーん、たぶんこんな感じで…」「まだお客さんから詳細来てないけど、まあ進めて」
いや、進められないって…。
そのとき、私の中で長年日本でやってきた「仕様整理スキル」がムクムクと目を覚ました。
■「仕様、ちゃんと整理してもいいですか?」と提案
勇気を出して、ミーティングでこう言ってみた。
「Before jumping into coding, maybe I can draft a functional specification first? Just to make sure everyone is on the same page.」
最初、チームは「え、そんなの必要?」みたいなリアクションだった。
でもProduct Ownerが「確かに今のままだと、エンジニア全員で違う方向向いてコーディング始めちゃいそうだね」って言ってくれた。
■日本式「仕様まとめ力」が大活躍!
そこからは、まるで日本時代に戻ったような気持ちで、一気に仕様ドキュメントを作った。
自作のFunctional Spec概要:
- 機能一覧
- 画面遷移フロー
- 各フィルター条件の動作詳細
- APIとのインターフェース設計案
- エラーパターン一覧
- テスト観点リスト
これをConfluenceにアップして、Slackで全員にシェア。
さらに、レビュー用ミーティングも自分で主導して開催。
最初は「こんなに細かく書く必要ある?」という反応もあったけど、数日後、全員がこう言い出した。
同僚の反応:
- 「This is amazing. Super helpful!」
- 「Thanks for putting this together. Now I finally understand what we’re building.」
- 「Can we make this a habit for future projects too?」
まさか、こんなふうに感謝されるとは思わなかった。
あのとき初めて、「日本でやってきた丁寧な設計ドキュメント作り」が、海外でも評価される武器になるんだって実感した。
■レビュー文化に「日本式品質意識」をプラス
次に活きたのは「レビュー時の指摘力」。
日本時代、私は「バグを未然に防ぐための細かいコードチェック」に命をかけてきた。
ネーミング、パフォーマンス、例外処理、Nullチェック、ユニットテストカバレッジ…。
日本の現場では当たり前だったけど、海外の同僚たちはそこまで細かく見ない人も多かった。
だから、自分がレビューに回ったときは、気づいたことはどんどんコメントするようにした。
最初は「細かすぎるかな…嫌われないかな…」と不安だったけど、意外にも受け入れられた。
ある同僚からのDM:
「Hey, I really appreciate your attention to detail. You catch things I always miss.」
むしろ「QA的な視点で見てくれる人」として、信頼が少しずつ上がっていくのを感じた。
■「日本人特有の段取り力」も評価された瞬間
また、タスク管理やスケジュール管理の部分でも、日本式の「先回り力」が活きた。
例えば、Sprintの最終週で「これ絶対間に合わないな…」という予感がしたとき、自分から率先してリスケ提案をしたり、タスクの優先順位をチームに問いかけたり。
ある日の発言:
「Hey team, looking at our current burndown chart, seems like we might miss the deadline. Shall we discuss scope cutting or moving some tasks to next sprint?」
この時も、上司から「Good proactive thinking!」と褒められた。
日本で培ってきた「納期意識」「段取り力」「品質へのこだわり」。
最初は「海外では通用しないんじゃ?」と思っていたけど、実際は「自分だけが持ってる強み」だった。
■そして今――「日本式と海外式のハイブリッドエンジニア」へ
振り返れば、最初の数ヶ月は本当に辛かった。
文化の違い、スピード感の違い、ドキュメントの無さ…。
でも、「日本式の丁寧さ」「段取り力」「品質意識」があったからこそ、逆にチームの中で差別化できた。
今では、チーム内でこんな役割になっている。
- 「とりあえず走り出すアメリカ人メンバー」
- 「その後ろでちゃんと仕様と品質を固めていく自分」
この「スピードと品質のバランス感覚」こそが、今の自分の武器になっている。
海外エンジニア現場で生き抜くために――これから挑戦する人へのリアルアドバイス
数ヶ月、いや、1年以上経った今、ようやく心から言える。
「海外のIT現場、最初はしんどいけど、慣れるとめちゃくちゃ楽しい!」
…本音でそう思える。
ここからは、これまでの経験から学んだ「日本人エンジニアが海外現場でうまくやっていくための心構え」
そして「これから挑戦する人へのアドバイス」を、リアルに包み隠さずシェアしたい。
■1.「わからないことはすぐ聞く」――“相談力”は最強の武器
まず、一番大事なのはこれ。
日本でありがちなNGマインドセット:
- 「質問する=恥ずかしいこと」
- 「もう少し自分で調べてからにしよう…」
- 「みんな忙しそうだから今は我慢…」
これ、全部ダメ。
海外現場では「情報が曖昧なまま放置して、勝手に自己流で進めて失敗する」ほうが、はるかに迷惑。
分からない時は、Slackでも、ミーティングでも、直接でも、すぐ聞く。
「誰に聞けばいいかわからない」なら、それすら聞けばOK。
最初は怖いけど、慣れればそれが当たり前になる。
むしろ、「Good question!」って褒められることすらある。
■2.「完璧を目指さない」――7割でいいからまず出す!
これ、日本人エンジニアあるあるだけど…
「完璧なコードが書けるまでPR出せない」
「全部テストパターン網羅できるまでレビュー依頼できない」
これやってると、海外では完全に置いていかれる。
現地の感覚:
- 「まず動くものを出す」
- 「フィードバックもらってから直せばいい」
- 「早く見せるほうがチームのためになる」
私自身、「とりあえずPushして早めに相談」する習慣をつけてから、仕事が一気に楽になった。
■3.「ドキュメント力」はむしろ強みになる
最初は「日本で当たり前だった詳細設計スキルなんて、海外じゃ通用しない」と思ってたけど、むしろ逆だった。
特にアジャイル現場だと、「誰もドキュメント書かない」「仕様がふわっとしてる」ということが日常茶飯事。
そんなとき、日本式の「情報を構造化してまとめる力」はめちゃくちゃ重宝される。
アドバイス:
- 必要なら自分でConfluenceにドキュメントページ作ってしまう
- 画面フローやAPI仕様、データフロー図など、自分が必要だと思うものは勝手に書く
- 他の人が「おお、これ便利!」って思ってくれたら勝ち
■4.「細かい品質へのこだわり」も、自分らしさとして活かす
もちろん、海外現場には「スピード命」「多少バグあっても後で直せばいい」という空気がある。
だけどそれは「品質をないがしろにしていい」という意味ではない。
自分は自分で、「バグを未然に防ぐ」「設計の粗を事前に指摘する」というスタンスを持ち続けていい。
むしろ、そういうポジションの人材は、どの現場でも一定数必要とされる。
私が大事にしていること:
- 「言い方」だけはフレンドリーにする(命令口調にならない)
- 「Why(なぜこれが問題か)」を必ずセットで伝える
- 「改善案」までセットでコメントする
このやり方にしてから、ネガティブな反応はほぼゼロ。
むしろ「この人がレビューしてくれると安心」という評価につながった。
■5.「自分の価値は“文化の違い”そのものにある」と知る
ここが一番大事。
最初は、文化の違いに苦しむ。
スピード感、会話スタイル、仕様の曖昧さ、プロセスの緩さ…。
でも、それこそがチャンス。
日本人が持つ「細部への注意力」「納期意識」「段取り力」「品質へのこだわり」。
これらは、海外の現場にとっては「新しい視点」であり「不足しているピース」だったりする。
ある日、Tech Leadが言ってくれた一言:
「We needed someone like you. Your structure and attention to detail balance our fast-moving style.」
この言葉を聞いたとき、本当に泣きそうになった。
「文化が違うからこそ、自分には価値がある」
「異文化エンジニアだからこそ、できることがある」
そう心から思えた瞬間だった。
■最後に:これから海外に挑戦する人へ――エンジニアとして生き抜くためのマインドセットまとめ
✅ わからないことはすぐ聞く
✅ 完璧主義は捨てる、まず動くものを作る
✅ 日本で培ったドキュメント力・品質意識は大事にする
✅ チームに合わせつつ、自分の強みは貫く
✅ 「文化の違い」を恐れず、むしろ楽しむ
最初は誰でも「自分だけ場違いなんじゃ…」って不安になる。
でも大丈夫。
どの現場でも、どの国でも、どんなプロジェクトでも、
「あなたにしかできない貢献」が必ずある。
Good luck!
そして、Welcome to the world of global engineering!

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