- The Invisible Enemy – 見えない敵の正体
- 起:第一章「バグが“消えたフリ”をする瞬間」
- 第二章「ゾンビバグはどこから来るのか?」
- ■ ゾンビバグは「コードの問題」ではない
- 第三章「バグ退治の答えは、まさかの“医学”だった」
- ■ きっかけは、医師の友人との一言
- ■ エンジニアリングには“対症療法”が多すぎる
- ■ 医学の“診断プロセス”は、バグ調査にめちゃくちゃ使える
- ■ 僕が実際に医学式“鑑別診断”を導入してみたら…
- ■ ゾンビバグは「一つの原因」ではなく、複合原因で生きている
- ■ そして気づいた:“治るバグ”と“治らないバグ”がある
- ■ じゃあどうやって“根治療法”を実現するのか?
- 最終章「ゾンビバグをチームから“永遠に”追放する方法」
- ● 対症療法(応急処置)
- ● 根治療法(後で必ずやる“原因除去”)
- ① 仕様・背景の透明性を最大化する
- ② 応急処置と根治療法を徹底的に分ける
- ③ バグを「誰かの責任」にしない文化を作る
The Invisible Enemy – 見えない敵の正体
(約3000文字)
起:第一章「バグが“消えたフリ”をする瞬間」
エンジニアを何年かやっていると、必ず遭遇する現象があります。
それは 「直したはずのバグが、数日後にしれっと息を吹き返す」 というホラー映画みたいな出来事。
僕は海外で働き始めてから、この“バグの幽霊現象”に何度も振り回されました。
チームレビューも全部通して、QAも合格して、ユーザーのフィードバックも落ち着いた……はずのバグが、ある日 Slack でピコンと通知を鳴らすんです。
「Hey, we got the same issue again.」
(また同じバグ出てるよ)
あの瞬間の胸のザワッと感。
「え、まさか…?」って、背筋が冷えるあの感覚。
エンジニアなら分かってくれると思うんですが、
直したはずのものが直ってない。
これは、普通のミスとはちょっと違う種類のストレスなんですよね。
■ そもそも、なんでバグは“見えない敵”になるのか?
海外で働いてから気づいたことがあります。
日本にいた頃は、僕はバグを“敵”というより“課題”として見ていました。
だけど海外の現場に出ると、言語の壁、文化の違い、レビューのスタイルの差が重なって、バグはもっと立体的なものとして現れます。
バグはただのコードのミスじゃない。
- 設計の思い込み
- コミュニケーションのズレ
- 「書いた本人にしか分からない暗黙知」
- 過去の暫定対応
- ドキュメントの不在
こういう**“環境要因”**が合わさることで、バグは姿を変え、時に“見えない敵”になるんです。
特に WPF のように XAML と C# が混在する環境だと、UI とロジックの境界が曖昧なことも多く、「いや、そこで発火するのかよ!」みたいなイベント誘発が原因だったりする。
実際、僕も海外のプロジェクトでこんなことがありました。
■ 実例:原因不明の UI フリーズ事件
あるとき、ユーザーから
「操作すると UI が 1 秒固まる」
という報告が来た。
パフォーマンスログを見ると問題なし。
メモリも CPU も正常。
コードも追ったけど怪しいところがない。
なのに、確かに固まる。
そして翌日、なぜかフリーズが消える。
「直した覚えないのに…?」となる。
でも数日後、また再現する。
この瞬間に悟ったんです。
“あ、これは普通のバグじゃない”
“見えない敵だ” と。
なぜか?
海外チームではこんなことがよく起きるんですよ。
- 別チームが裏でコードを変更してた
- Feature flag が知らないうちに ON になってた
- ローカルのビルド設定が微妙に違っていた
- スレッド文化が人によって違う(async/await vs Task.Run vs 背景ワーカー)
原因はコード1行じゃなく、
“複数の要素が連鎖して起きている”。
だから正体が分からない。
触れると消える。
放置すると現れる。
まさに “Invisible Enemy(見えない敵)”。
■ 海外現場で学んだこと:バグはローカルではなく「文化」から生まれる
日本で働いていたときは「バグ=技術の問題」と思っていました。
でも海外で働くと、考え方が変わります。
バグって、技術よりも“認識のズレ”から生まれる。
例えるなら…
- 日本 → 丁寧に仕様を固めてから実装する文化
- 海外 → スピード重視でまず実装する文化
この違いがバグにダイレクトに効いてくる。
また、海外チームは分業が進んでいるため、
「誰がどの部分を触ったのか分からない」という状況も普通。
Pull Request は見ても、
それが別コンポーネントにどう影響するかまでは誰も把握していない。
だから発生するんです。
“自分が作った覚えのないバグ” が。
そして、出たり消えたりする。
■ さらに厄介な現象:“Zombie Bug”(ゾンビバグ)
僕のチームでは、再発バグのことを
Zombie Bug(ゾンビバグ) と呼んでいます。
・完全に倒したと思ったのに蘇る
・倒すたびに違う姿で帰ってくる
・どこから湧いてきたのか分からない
たぶん、あなたも遭遇したことがあるはず。
特に WPF アプリのような状態管理の複雑な UI では、
バインディング・依存プロパティ・イベント・非同期処理など、
“ゾンビ化のトリガー” がそこら中に落ちている。
そして厄介なのは、
ゾンビバグには 伝統的なデバッグ方法が効かない こと。
ログを増やしても、
ブレークポイントを仕掛けても、
再現条件を絞っても、
ゾンビはゾンビ。
倒したフリをしても“また来る”。
■ 実は僕たちは「バグの発生源」を見誤っている?
あるとき、僕はふと思ったんです。
「なぜこんなにバグが再発するのか?」と。
コードが悪い?
レビューが甘い?
設計が雑?
もちろん全部関係あるけど、
それだけじゃない。
もっと根本的な原因がある。
多くのエンジニアが気づいていない、
“見えない問題”が潜んでいる。
実はこれ、
エンジニアリングの世界の外側にヒントがありました。
これは後の章(転)で詳しく話しますが、
ある意外な場所に、
“ゾンビバグを完全に消す方法” のヒント が転がっていたんです。
聞いた瞬間、僕自身びっくりしました。
「え、そこから学ぶの?」と。
ただ、その話をする前に、
まずはゾンビバグがなぜ発生するのか、
そしてなぜ僕たちがそれを“見抜けないのか”。
承では、その深層をさらに掘り下げていきます。
第二章「ゾンビバグはどこから来るのか?」
バグが何度も再発する理由。
これを突き詰めていくと、僕が海外で働く中で本当に痛感した、ある“残酷な真実”に辿り着きます。
それは…
ゾンビバグは、コードの中にいるんじゃない。
チームとプロセスの“隙間”に住んでいる。
ということ。
これに気づけなかったせいで、僕は何度も失敗しました。
直したはずのバグが翌週には息を吹き返し、
「この修正、本当に意味あったのか…?」と心が折れそうになったこともあります。
でも、その正体を知ってからは、
バグとの向き合い方が根本から変わりました。
では、ゾンビバグの巣はどこにあるのか?
実体験ベースで分解していきます。
■ 巣①:「認識のズレ」— みんな同じものを見ていない
海外現場でまず最初に驚いたのは、
“同じ仕様書を見ているのに、全員が別の解釈をしている” という状態が日常的に起きること。
例えば、こんな会話。
● 僕
「このボタンは“保存後に閉じる”動作で合ってる?」
● 海外同僚
「うん、そのつもりだけど、UI から閉じずに次へ進める動線も必要だよね?」
● 僕
「え、それ仕様に書いてた?」
● 海外同僚
「僕の理解ではそう。」
この瞬間、僕は悟った。
仕様とは“文書”じゃなくて、“文化+背景”で理解されるものなんだ、と。
文化も経験も違う人間同士で開発すれば、
当然そこに“認識のズレ”が生まれる。
そしてこの認識のズレこそが、
ゾンビバグ最大の発生源 なんです。
■ 巣②:「一時対応のツケ」— その場しのぎのパッチが未来を蝕む
あなたも経験したことがあるかもしれませんが、
海外チームではスピードが求められることが多い。
結果として、
“とりあえず動くパッチ”が本番に乗ることがしばしばあります。
問題は、そのパッチが
半年後、別の場所で牙をむくということ。
僕のチームではこんなことがありました。
● 事件:半年後に蘇ったデッドロック
ある非同期処理でデッドロックが発生した。
緊急だったので、僕たちは
Task.Run で包んで強引に非同期化するパッチを入れた。
その時は確かに治った。
しかし半年後、別の機能追加の際に、
UI スレッドとバックグラウンドスレッドの競合が発生し、
同じ種類のデッドロックが再発した。
コードを見ると、あの時のパッチが静かに残っている。
あのときは「応急処置」で済ませたつもりだったけど、
それは 未来の爆弾を埋めただけだったんです。
ゾンビが蘇る理由は、
こういう「一時対応の遺産」が積み上がることにある。
■ 巣③:「責任の分散」— 誰の仕事か分からないとバグは生き残る
海外プロジェクトでは分業が進んでいるので、
担当領域が細かく分かれています。
これは効率的なように見えるけれど、
実は大きな罠でもある。
“自分以外がやってくれるだろう”
この心理が、ゾンビバグにエサを与える。
ある時、通知機能のバグが出た。
誰が担当かというと…
- 通知サービスは Backend チーム
- UI の表示は Frontend チーム
- エラーログのパイプラインは DevOps
- 設計は Product Owner
結果どうなったか?
誰も自分が完全な責任者だと思っていなかった。
だから誰も“根本修正”をしない。
表面上は直っても、本体は残り続ける。
ゾンビバグはこうして息を吹き返す。
■ 巣④:「学習の欠如」— バグの“死因分析”が行われない
海外チームは改善の文化が強いと思っていた。
でも実際は、時間がなければ振り返りはすぐ削られる。
ある大規模な不具合が発生したとき、
僕は「Post-mortem やる?」と聞いた。
すると返ってきた答えは…
“We should, but not this sprint. Too busy.”
(やるべきだけど今スプリントは無理。忙しすぎる。)
この瞬間、僕は気づいた。
“忙しい”はバグを殺す時間を奪い、
ゾンビに変える魔法の言葉だ。
学ばないチームには、
同じ種類のミスがまた起きる。
それだけじゃない。
前回のミスの痕跡がコードに残っている。
結果、ゾンビバグが増殖する。
■ 巣⑤:「状態管理の複雑さ」— 特に WPF はゾンビが湧く
WPF 開発をしているあなたならわかると思います。
WPF は“状態”が複雑すぎる。
- Binding
- DependencyProperty
- ICommand
- async/await
- UI スレッド
- Behavior
- Trigger
- MVVM Framework
これらが絡み合って、
「正常に見えるけど裏側で異常が起きている」
という状態がいくらでも発生する。
特に海外チームはみんな書き方が違う。
- Reactive Extensions を愛するエンジニア
- 伝統的 MVVM 派
- Task.Run 乱用派
- コードビハインド大好き派
文化の融合が、
ゾンビバグのモンスター化を加速させる。
■ ゾンビバグは「コードの問題」ではない
ここまで読んで、
ゾンビバグの本質が少し見えてきたと思う。
ゾンビバグは…
- 仕様のズレ
- プロセスの隙間
- コミュニケーション不足
- 一時対応の遺産
- 状態の複雑化
- 文化の違い
こういった“目に見えない要因”に寄生して生まれる。
つまり、
ゾンビバグはコードではなく
“チームの健康状態”の指標なんです。
これに気づいた時、
僕はバグとの戦い方を大きく変えました。
そして、
ここから物語は「転」に向かっていきます。
次の章では、
僕が実際に海外現場で発見した、
“ゾンビバグを消し去るための、まったく別の視点”
について話します。
あなたが驚くような“意外な分野”から学んだ方法です。
第三章「バグ退治の答えは、まさかの“医学”だった」
ゾンビバグの正体を探る中で、
僕は「コードではない場所にヒントがある」ということに気づきました。
そしてある日、
思いもしないところでその“答え”に出会うことになります。
それは 医学の世界 でした。
■ きっかけは、医師の友人との一言
僕には医者をやっている友人がいて、
久しぶりに会ったときに、仕事の話になった。
僕が「直したはずのバグが再発するんだよ…」と愚痴ったとき、
彼がさらっとこんなことを言ったんです。
「それって、症状だけ治して原因を治してないからじゃない?」
僕は思わず固まりました。
え、何その一言で本質を突くのやめて?
ってレベルで心に刺さった。
医者の世界では当然らしい。
“症状”を抑えるのは対処療法。
“原因”を取り除くのが根治療法。
そして、こうも言われました。
「症状だけ治しても、患者は必ず再発するよ。
本当の原因は、別の臓器や生活習慣にあったりする。」
この瞬間に、
僕の中の点と点がスッとつながったんです。
■ エンジニアリングには“対症療法”が多すぎる
思い返すと、僕たちエンジニアがやっているのは…
- 表面に出てきたエラーを潰す
- 再現ログの最後の一点だけを修正する
- 場当たりで Exception を握りつぶす
つまり、
“症状”にしか手を出していないことが多い。
医師の友人が言った
「根治療法をしなきゃ治らないよ」
という言葉は、そのままゾンビバグに当てはまる。
なぜ再発するのか?
理由はシンプル。
● 症状にパッチを当てても、
原因は体の奥(=コードの奥、設計の奥)に残ったままだから。
■ 医学の“診断プロセス”は、バグ調査にめちゃくちゃ使える
医師は、症状が似ていても
原因が全く違うケースを毎日相手にしているわけですよね。
だからこそ
“原因を絞り込む方法”を体系化している。
このプロセスが、
実はそのままエンジニアリングに応用できる。
例えば、医学ではこんな手順で診断します。
**① 問診(状況把握)
② 検査(再現条件を探す)
③ 鑑別診断(原因の可能性を全部洗い出す)
④ 臨床所見(ログや実機で裏付け)
⑤ 診断確定(根本原因に到達)
⑥ 治療(根治療法と対症療法を分ける)**
これ、よく考えると…
完全にバグ調査プロセスと一致する。
ただ僕たちは普段、“一部” しか使っていない。
ほとんどのエンジニアは…
- ②の「検査(ログ確認)」だけして
- いきなり⑥の「治療(修正)」に入る
つまり ③と④を飛ばしている。
この“飛ばし”がゾンビバグを生む。
■ 僕が実際に医学式“鑑別診断”を導入してみたら…
医療の鑑別診断では、
症状から推測し得る“全ての可能性”を一度書き出します。
例えば「発熱」という症状でも、
- 感染症
- 免疫反応
- 内臓疾患
- 血液疾患
- ストレス反応
…など、原因は多岐にわたる。
エンジニアリングでも同じ。
たとえば「起動時に UI がフリーズする」という症状なら…
- Heavyな処理がUIスレッドを塞いでいる
- Bindingの循環参照
- コンストラクタで非同期処理
- ViewModelの巨大初期化
- Dispatcher.Invoke の誤用
- static なキャッシュがパンパン
医学でいう“原因リスト”のように、
これを全部書き出して、
一つずつ潰していく。
これをやってみた結果、
驚くほど再発が減ったんです。
■ ゾンビバグは「一つの原因」ではなく、複合原因で生きている
医学の世界では
“原因は一つとは限らない”
という前提で治療するらしい。
その考えは、エンジニアリングでも完全に当てはまる。
ゾンビバグって、だいたい…
- 過去の仮パッチ
- 新しい仕様変更
- スレッドの競合
- データの境界条件
- チーム間の認識ズレ
こういった複合要因が
スパゲッティ状に絡み合って起きている。
だから単純にコード1行直しても治らない。
医学式のアプローチは、それを見抜く。
■ そして気づいた:“治るバグ”と“治らないバグ”がある
医師の友人が最後に言った言葉が忘れられない。
「治せる原因を消さないと、
患者は一生薬を飲み続けることになるよ。」
この言葉をエンジニアリングに適用するとこうなる。
● 対症療法=表面的な修正
● 根治療法=設計の見直し、責任範囲の明確化、暗黙知の排除
僕は当時、
ゾンビバグが再発するのは「技術力不足」だと思っていた。
でも違った。
根治療法を知らなかっただけだった。
■ じゃあどうやって“根治療法”を実現するのか?
ここで転の最後に、
次の「結」につながる“ヒント”を出して終わりにします。
それは――
**バグの根本原因は、
コードではなく「人」と「プロセス」に潜んでいる。**
医学が原因を“人の生活習慣”まで遡って治療方針を作るように、
エンジニアリングも「チームの習慣」まで見直さないと治らない。
そして次の章では、
僕が海外現場でたどり着いた
“ゾンビバグを完全に封じ込める仕組み”
について詳しく書いていきます。
それは、コードレビューやテストのテクニックではなく、
もっと“根本的”で、
しかも “誰も教えてくれないのに超効果的” な方法です。
最終章「ゾンビバグをチームから“永遠に”追放する方法」
医学の世界にヒントを得て、
僕は「バグを症状ではなく“原因”から治療する必要がある」と気づきました。
そこから、海外現場のプロジェクトに戻り、
本気で “根治療法” を実践していくことになります。
結論からいうと……
ゾンビバグは、正しいプロセスと文化を作れば、本当に消える。
それは魔法でも才能でもなく、
チームが少しだけ行動を変えるだけで実現できる。
ここでは、僕が実際に海外チームで導入し、
再発率を劇的に減らした、超実践的な方法を紹介します。
今日からあなたのチームでも再現できるはずです。
■ Step1:バグを “人の問題” として扱わない
多くのチームで、バグ報告が起きると、
無意識に「誰がやった?」という空気になる。
でもこれが最悪。
バグ=誰かのミス
ではなく
バグ=プロセスの不備
医学の世界で
「この人が病気になったのは本人が悪い」
なんて言わないですよね。
システムのバグだって同じ。
僕のチームでは、最初にこの文化を根付かせた。
● 解決策:
“No blame culture(責任追及しない文化)”を徹底する
するとどうなったか?
エンジニアが
「深刻なバグでも素直に報告できる」
雰囲気が生まれた。
隠す必要がなくなる → 再発する前に捕まえられる
この効果は想像以上に大きかった。
■ Step2:バグを「治療」ではなく「診断」から始める
医学では治療より診断が重要。
エンジニアリングでも同じ。
● NG:
いきなりコードを開いて、いきなり修正する
● OK:
“原因の候補” をすべて書き出す
僕はチームに
医学の“鑑別診断”と同じシートを導入した。
シートの項目は以下の通り。
① 症状(ユーザーが見ている現象)
② 発症タイミング(いつ、どんな操作で)
③ 寄与しうる要因(コード・仕様・データ)を全列挙
④ 可能性の高いものに優先順位付け
⑤ 検証方法(ログ or 実機 or デバッグ)
⑥ 再発防止策(設計/運用/文化レベル)
これを導入するとどうなったか。
- 「同じバグだと思ったら実は別件」
- 「コードの深部に潜む本物の原因」
- 「別機能に隠れていた根っこ」
こういった“見えない原因”が浮かび上がってきた。
つまり
ゾンビバグが隠れていた穴が全部見える化された。
■ Step3:一時対応(対症療法)と根治療法を分ける
医学では、
- 痛み止め:対症療法
- 手術:根治療法
と明確に区別する。
エンジニアリングでもこれを導入した。
● 対症療法(応急処置)
- 急ぎのリリースで必要なパッチ
- クリティカルバグを止血する暫定ロジック
- Exception 捕捉で一時的に落ちないようにする
● 根治療法(後で必ずやる“原因除去”)
- 設計の見直し
- ViewModel の肥大化解消
- スレッドモデルの再設計
- コードビハインドからMVVMに移行
- 長期的な技術的負債返済
そしてここで重要なのが、
「応急処置のまま本番に放置しない」文化づくり
僕たちは、
- 応急処置をしたら
- 必ず翌スプリントの “Root Fix タスク” を作成
というルールにした。
この一歩が
技術的負債の膨張を根本から止める。
■ Step4:仕様の“背景・意図”まで共有する文化を作る
ゾンビバグ最大の原因は、
仕様の誤解・ズレ。
特に海外チームは背景が違うから起きやすい。
そこで僕が導入したのが、
仕様レビューでは「目的(Why)」から話す文化
仕様レビューをするときは、
- 何を作るか(What)
- どう動くか(How)
だけでは会議を始めない。
必ず
「なぜそれを必要とするのか(Why)」
から始める。
これを導入すると、
- 解釈のズレが激減
- UI と Backend の認識が一致
- 顧客の意図と実装のギャップが消える
結果的に
バグになる“種”自体が減った。
■ Step5:根治に必要なのは“技術力”より “透明性”だった
ゾンビバグの本質は「チームの隙間」だと話したけど、
その“隙間”は、
実は小さなコミュニケーション不足でできている。
そこで導入したのが、
開発プロセスの“透明性向上”
具体的には:
- 障害やバグの情報はSlackで「全員が見える場所に自動投稿」
- デイリースクラムで再発バグは必ず議題にする
- Pull Request には必ず「なぜその修正にしたか」コメントを書く
- 仕様議事録を全員がアクセスできる場所に置く
- 誰がどの機能を理解しているか可視化するスキルマップを作る
すると、
“認識のズレの温床”がどんどん潰れていった。
透明性が高いチームは、
本当の問題が自然に表面化する。
■ Step6:最後に辿り着いた“究極のバグ根絶法”
長くなったけど、
僕が海外チームで何年も戦ってきて辿り着いた結論は、
**ゾンビバグの根源は「人と文化」にあり、
コードはその結果にすぎない。**
だからこそ、
ゾンビバグを永遠に消す方法は、
次の3つに集約される。
① 仕様・背景の透明性を最大化する
(WHY を共有するチームはズレが起きない)
② 応急処置と根治療法を徹底的に分ける
(パッチの遺産を未来に残さない)
③ バグを「誰かの責任」にしない文化を作る
(問題が早く表に出る → 再発前に潰せる)
この3つが揃った瞬間、
本当に、目に見えて再発が消えていった。
昔は
「またあのバグが出た…」
と胃が痛かったのに、
この仕組みをチームで回し始めてからは、
- 再発率が激減
- チーム間の衝突が減少
- コードレビューの質が向上
- 心理的安全性が高まる
- 「また出た理由」がすぐに説明できる
開発のストレスが圧倒的に減った。
■ 最後に:あなたのチームにも必ずできる
ゾンビバグとの戦いは、
技術の問題でも、言語の問題でもない。
チーム文化 と プロセス の問題。
日本人エンジニアとして海外で働く中で、
僕はこの事実を全身で思い知らされました。
でも裏を返せば…
**文化さえ変えれば、
どんなチームでもバグは必ず減らせる。**
あなたが今、
- 再発バグに悩んでいる
- 理不尽な仕様ズレに疲れている
- コードの複雑さに押しつぶされそう
そんな状態なら、
この章で紹介した“根治療法”は必ず役に立つ。
ぜひあなたの現場でも試してみてほしい。

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