英語で話すなんて無理──そう思っていた僕が、海外で「伝える人」になるまで
“なんで俺なんだよ…” 英語プレゼン初指名の衝撃
「英語でデモやってくれる?」上司の一言に固まった日
ある日、チームリーダーからSlackが飛んできた。
“Hey Hiro, can you do the demo for the new feature in tomorrow’s client meeting?”
目が止まった。いや、心臓が止まった。
「え? なんで俺?」
「英語まだ怪しいし、プレゼンなんて一度もやってないし…」
「誰か他の人がやった方が…」
そう返しかけて、手が止まった。
いや、断れない空気だった。
チームのなかでいちばん仕様に詳しいのは僕。
誰よりも、この機能に向き合ってきた自覚があった。
「これは…逃げられないな」
スライド作成、リハーサル、そして自己嫌悪
とりあえずスライドを作り始めた。
でも、英語で書くスライドというだけで、異様に時間がかかる。
✔ “この言い回しって伝わる?”
✔ “この単語、使い方合ってる?”
✔ “日本語なら一言なのに、英語にしたらやたら冗長…”
2時間経って、たった3スライド。
そのスローペースに、自信がどんどん削られていった。
音読してみても、口がまわらない。
“asynchronous processing”が言えない。
「アクセントどこ?」と毎回つまづく。
そして出てくる最悪の言葉:
「これ、やっぱ俺じゃない方がよくない…?」
“伝える”どころか、“声すら出せる気がしない”という恐怖
翌朝。リモート会議の準備をしながら、手は汗びっしょりだった。
PCの前に座っても、頭は真っ白。
– 自分の声が震えたらどうしよう
– “Pardon?”って言われたら固まるかも
– そもそも相手、僕の英語聞き取れるのか?
プレゼン内容より、「自分の英語」に100%意識が向いていた。
完全に、“伝えること”より“失敗しないこと”を考えていた。
そんなとき、以前同僚が言っていた言葉を思い出した。
“プレゼンは、英語の試験じゃない。伝えたい気持ちがあれば、間違えても届くよ。”
それでも怖かった。だけど、その一言だけを頼りに、マイクをオンにした。
“自信ゼロ”で挑んだ初プレゼン。そのとき、会議室が静まり返った
いよいよ本番。Zoomの「Join」ボタンが押せなかった
その日の午前10時。
クライアントとの定例ミーティング。参加者は全員ネイティブ。
緊張で手汗が止まらず、Zoomの「Join」ボタンの上でカーソルが震えていた。
「やめたい」
「回線切れてくれないかな」
「いや、逃げたらもっと怖くなる…」
深呼吸して、意を決してクリックした。
始まった瞬間、心臓がバクバク。でも…
会議が始まり、5分後には僕のターン。
画面共有を始めると、スライドの文字がなぜか全部小さく見える。
いや違う、目が泳いでいるだけだった。
喉が渇いて、口の中がカラッカラ。
そして、震える声でこう言った。
“Hi, everyone. I’m Hiro from development team. Today, I’ll show… um… new feature we developed…”
英語、途切れ途切れ。
でも、誰も笑っていない。
むしろ、みんな静かに聞いている。
その瞬間、少しだけ安心した。
“通じる英語”は、完璧じゃなくてよかった
話しているうちに気づいた。
相手は僕の発音より、**「何を伝えたいか」**に集中してくれている。
スライドの説明は、予定の70%くらいしか言えなかったけれど、
画面を見せながら、手を動かしながらこう言った。
“Here, when user click this button, we show new dialog. It helps avoid mistake. We design it simple.”
伝えきれてない。でも、伝えようとしている。
そして──
“Ah, I see. That’s nice.”
“Looks clear to me.”
というリアクションが返ってきた。
英語はボロボロだったけど、意図は伝わった。
プレゼン後、“拍手”の代わりにチャットが鳴った
発表が終わって、画面共有を閉じると、
Slackにチームメンバーからリアクションが届いていた。
“Great job, Hiro!”
“You nailed it. That was super clear.”
“Thanks for walking us through. Love the feature!”
僕は、文字通りホッとして、椅子に沈み込んだ。
そして思った。
「ああ、やってよかった。」
上手く話すことが目的じゃなかった
プレゼン後、先輩がSlackでメッセージをくれた。
“Hiro, I remember my first English presentation too. I was scared as hell. But you did awesome.”
そこで気づいた。
✔ たどたどしくてもいい
✔ 発音が変でもいい
✔ 単語が正しくなくてもいい
大切なのは、
「自分の言葉で説明しよう」とする姿勢
だったんだ、と。
“プレゼンが終わって安心”なんて、甘かった
“Any questions?” の瞬間に、血の気が引いた
初の英語プレゼンが終わったとき、正直こう思っていた。
「これで終わった…もうしゃべらなくていい…」
でも、司会が最後にこう言った。
“Thanks Hiro! Any questions from the client side?”
その瞬間、背筋に冷たい汗が走った。
「来るな来るな来るな来るな…」
と願っていたのに、現実はこうだった。
“Yeah, just one thing. What happens if the user closes the dialog without saving?”
……聞き取れたけど、どう答えればいい?
しかも今、頭の中が真っ白。
英語じゃなくて、「思考」が止まっていた
このとき初めて知った。
質問に答えること=その場で英語を組み立てること
だけじゃなく、同時に内容も即座に整理することだということを。
つまり、
- 質問の意図を理解して
- 技術的な仕様を思い出して
- 自分の立場として何を言うべきか判断して
- それを英語で言う
という4段階の同時処理。
日本語でも難しいこの対応を、英語でやるのは…正直、無理ゲーだった。
恥ずかしい沈黙。でも、救ってくれた言葉
10秒ぐらい沈黙していたと思う。
(体感では1分以上に感じた)
ようやく出たのはこんな言葉だった。
“Ah… good question. I think… if user close, system keep last input. But we not save. So maybe we can… warn user?”
ネイティブからすればめちゃくちゃな英語だったと思う。
でも、クライアントの反応は意外にもポジティブだった。
“Got it. Makes sense. Maybe just add a tooltip or something.”
そしてチームリーダーがさりげなくフォローを入れてくれた。
“Yeah, good point. We’ll consider showing a warning before exit.”
このとき気づいた。
“完璧な答え”じゃなくて、“方向性が共有できること”が大事だったんだ。
即答できなくてもいい。“姿勢”で伝えることもできる
それ以来、僕は「全部を一人で答えよう」としなくなった。
たとえば、こんなフレーズを準備するようにした。
- “Let me clarify before I answer.”(少し整理させて)
- “That’s a good question. I’ll double-check with the team and get back to you.”(後で確認する前提)
- “I think the current behavior is A, but if you’re suggesting B, that’s something we can explore.”(提案への対応)
これらを使えば、即答できなくても会話は成立する。
むしろ「きちんと考えて答えようとしている」姿勢が、信頼につながることもある。
“準備”と“アドリブ”は別モノ。でもどちらも必要だった
この経験を通して強く実感したのは:
✔ スライドを完璧にしても、Q&Aがグダると印象は落ちる
✔ 逆に、多少スライドが拙くても、質問に丁寧に向き合えば印象は良くなる
✔ プレゼンは“パフォーマンス”じゃなく“対話”だった
英語力以上に問われたのは、「考える力」と「構える姿勢」だった。
英語が苦手な僕が、“プレゼンできる人”になれた理由
英語プレゼンは、“技術”より“勇気”が先だった
何度も言い間違えたし、途中で詰まることもあった。
だけど振り返れば、最初に必要だったのは「完璧なスライド」や「正しい文法」ではなかった。
それは――
「怖くても、やってみる」勇気だった。
プレゼンは、誰よりも話が上手な人がやるものではない。
そのトピックに向き合った人にしかできないものだった。
つまり、僕にしか話せないことがあった。
「発音がキレイ」より、「構成が伝わりやすい」ほうが強い
何度かプレゼンの機会を重ねて、少しずつ変わっていったことがある。
それは、自分の英語への“向き合い方”だった。
✔「間違えないように」話すのをやめた
✔「どうすれば伝わるか」を優先した
✔ スライドは“視覚で補う設計”を心がけた
✔ 話す内容は“3ポイント以内”に絞った
このあたりを意識するようになってから、
発音が完璧じゃなくても、「聞きやすい」と言われるようになった。
“わかりやすい構成”があれば、発音はカバーできる。
そう気づいた。
自分の言葉で話すからこそ、“信頼”が生まれる
ある日、リーダーからこう言われた。
“Hiro, your presentation is always clear. You speak from experience. That makes a difference.”
それを聞いて、ハッとした。
僕は、ネイティブのように話せるわけじゃない。
でも、自分の仕事、自分の視点、自分の考えを**“自分の言葉”で伝えていた**。
それが伝わったんだ。
正しい英語より、“責任ある発言”が信頼をつくる。
プレゼンは“話術”じゃない。
自分の頭で考えて、自分の言葉で相手に届ける行為なんだ、と知った。
英語プレゼンで学んだ、最大のこと
それは──
「自分には伝える価値がある」と信じること。
英語が下手でも、構わない。
一語一語たどたどしくても、構わない。
でも、そこに「伝えたい」「伝える責任がある」という覚悟があれば、
英語は“ただの道具”として、ちゃんと働いてくれる。
これから海外でプレゼンに挑むエンジニアへ
最後に、かつての自分に、そしてこれを読んでいるあなたに向けて。
✔ 英語が不安でも、怖くても、話す機会を断らないでほしい
✔ 初回はボロボロでいい。それが次への足がかりになる
✔ プレゼンは「英語力の評価」ではなく、「信頼構築のチャンス」
そして、
あなたの声が必要な現場は、必ずある。

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