「話す」より難しい? でも“聞く力”こそ評価されるスキルだった
エンジニアが会議で活躍する方法というと、多くの人はこう考えます。
「うまく話すこと」
「意見を伝えること」
「発言回数を増やすこと」
もちろんそれも大事。でも、
実は“聞く力”こそ、発言よりも評価されやすいスキルだって知ってましたか?
「黙ってる人」と「聞いてる人」は、全然違う
会議中、何も話さないでずっと黙っている人を見たとき、どう思いますか?
- 無関心?
- 意見がない?
- やる気がない?
そんなふうに誤解されがちですが、実は「よく聞いてる人」こそ、重要な存在だったりします。
なぜなら、
- 発言者の意図を整理して返せる
- 会話の流れを俯瞰できる
- みんなが見落としている矛盾に気づける
こういう力が、「この人、頼れるな」と思われる鍵になるからです。
✅ 実体験:ただ“聞いただけ”でキャリアが変わった話
ある日、海外チームとの設計会議で、アメリカ側のリードエンジニアとヨーロッパ側のPMが大激論を交わしていました。
- APIの設計方針を巡って、お互い譲らない
- 議論はどんどん脱線
- 他のメンバーはみんな沈黙
そのとき、普段ほとんど話さないインド人の若手エンジニアが、ポツリと言いました。
“So if I understood correctly, both of you agree on reducing payload size, but disagree on caching mechanism?”
──空気が止まり、全員が「…あっ」となった瞬間。
その発言で、議論がスッと整理され、建設的な方向へ。
後日、その彼はPMからSlackでこう言われました。
“Thanks for listening so well. You helped us move forward.”
それ以降、彼は会議のまとめ役として信頼されるようになりました。
“聞ける人”は、組織の“ハブ”になる
彼のような「聞き手」は、チームにおいて**“情報をつなぐ存在”**になります。
- 話がかみ合わないときに“橋渡し”できる
- アイデアを“再構成”できる
- 誰が何を気にしているかを“記憶”している
これは、単なる受け身ではありません。
**戦略的に聞く力=アクティブリスニング(積極的傾聴)**なのです。
アクティブリスニングの基本3ステップ
- 要約して返す(パラフレーズ)
→「つまり、こういうことですよね?」
→ “So what you’re saying is…” - 気になった部分を深掘る(質問)
→「その判断の背景って何かあったんですか?」
→ “What made you decide that?” - 共感と観察を伝える(感情・立場への理解)
→「ああ、それだと確かにリスク高そうですね」
→ “I see why that would be frustrating.”
これだけで、「ただ黙って聞いてる人」から「話しやすい相手・信頼できる人」へ変われます。
なぜ“聞く人”が評価されるのか?
- 💬 発言者が話しやすくなる → 会議の生産性が上がる
- 📌 論点の整理役になる → リーダーシップが見える
- 🌍 異文化間での橋渡し役になる → 国際的チームで重宝される
特に多国籍の開発現場では、
「言葉の壁」や「文化の違い」で議論が混乱することが日常茶飯事です。
だからこそ、「話をまとめられる人=聞ける人」が、実は一番評価されるんです。
🛠 ワンポイントTips:「聞いてる」ことを“視覚的に示す”方法
英語会議だと、ただ黙っていると「理解してないのかな?」と誤解されることも。
そこで、「ちゃんと聞いてますよ」と自然に伝えるテクニックをいくつか紹介します。
- 🔁 相手の言葉を繰り返す(Echo)
→ “Right, the latency issue…” - 📒 メモを取っている様子を画面共有(NotionやMiro活用)
- 🤔 質問より「確認の発言」
→ “Let me make sure I got this…” - 👀 表情・頷きで「反応」する(特にカメラONの場合)
これだけでも、あなたの“存在感”は会議で格段にアップします。
まとめ:聞く力は“黙ってる”こととは違う
- 「話さない=受け身」ではない
- むしろ、整理・補助・観察の力が発揮できるのが“聞く力”
- 会議の空気を変え、信頼を生む
- 英語力に自信がなくても、“聞ける人”にはなれる
聞くことで得られる“信頼”と“主導権”──対話力がリーダーを作る
✅ 聞ける人は、最も“信頼される存在”になる
会議の中で、こんな人いませんか?
- 相手の話を遮らず、最後まで聞いてくれる
- 発言がまとまらないときに「それってこういうことですか?」と整理してくれる
- 技術的な話でも、専門用語に飲まれず、意図をくみ取ってくれる
…こういう人、信頼されますよね。
実はこれ、全部「聞く力」から生まれているスキルなんです。
ケース1:ジュニア→リーダーへ昇格した理由は「聞く技術」
ある日本人ジュニアエンジニア(在カナダ勤務)が、社内で一気に評価された話です。
英語がネイティブほど得意ではない彼女は、「話す力」では周囲にかなわないと感じていました。
しかし彼女がやったことは、
- 会議中、発言者の内容をリアルタイムでNotionにまとめる
- 混乱している会話を「要するに…こういうことでしょうか?」と再整理
- 議論の“抜けている視点”を質問という形で提示
結果、周囲はこう評価するようになりました:
「あの人がいると、議論がかみ合う」
「誰よりも全体を理解している」
「話を聞いてくれるから安心して話せる」
→ 1年後、プロジェクトリードに抜擢。
🧠 聞くことで「誰よりも全体を見渡せる立場」になる
話すことに集中している人は、意外と“全体像”を見落とします。
でも、聞くことを意識している人は:
- 誰が何に困っているか
- 話題がどうズレているか
- 「言われてないけど気になっていること」は何か
こうしたチームの見えないニーズに気づけます。
だから、調整・交渉・進行など、**“見えないリーダーシップ”**を発揮できるようになるんです。
🎯 “聞く力”を鍛える5つの実践テクニック
1. 「理解」を伝えるフレーズを即返す
英語会議では、“理解していることを可視化”しないとスルーされがち。
以下のような“受け答えフレーズ”で存在感を出せます。
- “Let me make sure I got this right.”
- “If I understand correctly, you’re suggesting…”
- “So you’re saying we should prioritize A over B?”
- “Interesting point. I hadn’t thought about that angle.”
この一言で、「ちゃんと聞いてる人」→「一緒に考えてくれてる人」に格上げされます。
2. 「気づき」に変える質問力
ただ聞くだけじゃなく、「質問する聞き方」を意識しましょう。
例:
- “What’s your biggest concern about this approach?”
(この方法で一番懸念しているのはどの点ですか?) - “What led you to that decision?”
(その判断に至った背景を教えてもらえますか?) - “Would there be any risk if we took the other option?”
(もう一方の案を取った場合、リスクはありますか?)
→ 相手は「この人、深く理解しようとしてくれてるな」と感じます。
3. 「沈黙を怖れない」余白のつくり方
多国籍チームでは、誰かが話した直後に
すぐに「反応」しなければ…と焦ってしまうこともありますよね。
でも、優れた聞き手は“余白”をつくる人でもあります。
- “Let’s take 10 seconds to think about that.”
- “Interesting. I want to sit with that idea for a moment.”
- “Give me a sec to digest this.”
→ こうした言葉を入れるだけで、チーム全体に「考える時間」をもたらせます。
4. 「聞いた内容のメモを再利用」する
聞く力をアウトプットにつなげるには、“聞いたことを可視化”するのがベスト。
- 会議後のSlackで「今日の要点5つ」をまとめて共有
- 次のミーティングで「前回出てた話を踏まえると…」と流れを継続
- 技術ディスカッションで「こういう発言がありましたが、補足どうですか?」と促す
→ 「聞いてた人」から「文脈を持ち込める人」へレベルアップ。
5. 「聞いた上で、言葉を与える」技術
最後に、一番重要な“相手の話に価値を与える”一言。
- “What you said about X really stuck with me.”
- “You made a great point earlier about scalability.”
- “I think your idea deserves a deeper discussion.”
→ 発言者は、「自分の発言が意味を持った」と感じ、あなたへの信頼感が爆上がりします。
✅ 聞く力は、主導権を“奪う”のではなく“託される”形で得られる
話すことは、力を「見せる」行為。
でも、聞くことは、力を「引き出す」行為です。
そして、チームが最も信頼するのは、
**“話せる人”よりも、“引き出してくれる人”**です。
だからこそ、「聞く力」を持つエンジニアが、
次第にミーティングを回す立場になり、
クライアントの信頼を得て、
マネージャーやリードとして推薦されていくのです。
“聞く”だけで終わらない──相手の価値を引き出す会話術へ
🎯「聞いたあと」に何ができるか?が評価の本質
結論から言うと、会議や1on1、ディスカッションでの「聞く力」の最終ゴールはこうです:
相手の考えを“整理”し、
気づきを“与え”、
その人の価値を“引き出す”こと。
それを実現できると、あなたは「質問のうまい人」「対話の質が高い人」としてチーム内の中心になります。
✅ 実践事例:「聞いてくれた人」の一言で、行動が変わった
アメリカ本社と共同で進めていた新規プロダクトのUI設計会議。
ヨーロッパ側のデザイナーが、自信なさげにこう発言しました:
“This might be too much of a deviation from the original wireframe, but I think it improves accessibility… I’m not sure though.”
普通なら、「そうだね」「いや、元のままでいいよ」で終わるかもしれません。
でも、日本人のエンジニアがこう返しました:
“What made you feel unsure about it?”
“I’d love to hear what accessibility issues you were solving for.”
──その一言で、デザイナーは再び口を開き、自信を持ってプレゼンを始めました。
後日、そのデザイナーはSlackでこう感謝しました:
“You helped me express what I couldn’t organize in my own head.”
つまり、「聞くこと」で相手の“考えを引き出し”、
チームの前でその人の価値を“照らした”わけです。
✅ 相手の価値を引き出す「深堀り質問」テンプレ集
💡 相手の考えを引き出すとき
- “What made you think that way?”
→ どうしてそう考えたの? - “Was there a particular scenario that led to this idea?”
→ 何か具体的な状況がありましたか? - “What would success look like for you here?”
→ 成功のイメージはどんな感じですか?
💡 迷っている相手の背中を押すとき
- “What’s holding you back from going forward with this?”
→ 踏み切れない理由って何ですか? - “Do you think this direction is risky, or just unfamiliar?”
→ 危険なのか、それとも未知なのか? - “What would help you feel more confident in this decision?”
→ どうすれば自信が持てそうですか?
💡 アイデアをさらに深めたいとき
- “That’s a great starting point. How would it scale?”
→ 面白い発想ですね。それがスケールするとしたら? - “Who else would benefit from this idea?”
→ 他に誰にとってメリットがあると思いますか? - “How could we prototype this quickly?”
→ すぐ試すとしたら、どう動きます?
🧠 ポイント:相手の言語化を“サポート”する
多くの人が会議で話せないのは、英語力でも、スキル不足でもなく、
「考えがうまく言語化できない」からです。
そこで、“聞き手”の出番です。
- 「こういうことが言いたかったんでしょうか?」と仮説で返す
- キーワードだけを拾って質問で引き出す
- “Don’t worry, I just want to explore your idea a bit.” と安心を与える
→ すると、相手は「話してもいいんだ」と感じて、価値ある言葉が引き出されます。
🌍 グローバル環境での“影響力”は、問いかけから生まれる
海外でエンジニアとして働いていて痛感するのが、
何を知っているか、ではなく、
どう他人の知識・視点を活かせるか、が影響力につながる
という事実。
特に国籍・文化が違うチームでは、
“自分と違う前提”を持つ相手の意見を引き出せる人が、
無意識のうちにリーダーシップを発揮する存在になっていきます。
💬 会話の中で「質問型リーダーシップ」を実現するには?
以下のような習慣を取り入れてみてください。
✅ 1on1や会議後に「思考の余白」を与える質問を残す
- “If you could redo today’s meeting, what would you change?”
- “Is there anything we didn’t say but probably should have?”
→「言わなかったけど、実は…」という本音が出やすくなる
✅ Slackやチャットで“考えるきっかけ”を促す
- “This is an idea we didn’t go deep on. Anyone want to explore it async?”
- “Your comment earlier had potential. Can we circle back later?”
→ 自分の存在が“対話の継続性”に貢献していることを示せる
✅ プロジェクト開始時に「個人の視点」に寄り添う
- “Before we start, what’s important to each of you in this project?”
- “How do you each define success here?”
→ 価値観の共有=心理的安全性の確保につながる
🎓 聞く力 × 会話術 = “相手を輝かせる力”
“いい聞き手”は、ただ黙って頷いているだけの人ではありません。
“本当に信頼される聞き手”は、相手の思考や視点を整理し、それを言葉にして伝え返せる人です。
- 他人のアイデアを育てる
- 言語化を手伝う
- 会話の深度を上げる
この力は、やがて“技術力”と同じくらい、いやそれ以上に、
あなたをチームの中心へと導いてくれます。
“聞く力”をキャリアの武器に変える方法
🔁 自分の「聞くスタイル」を棚卸ししてみる
まず、聞く力をキャリアに活かすには、
自分がどんなタイプの聞き手なのかを把握することから始まります。
例:よくある“聞き手の癖”タイプ
| タイプ | 特徴 | 課題 |
|---|---|---|
| 解決志向型 | 相手が話すとすぐ「こうすればいい」と提案 | 相手の本音を逃しやすい |
| 共感型 | 頷きや感情を重視し、安心感を与える | 具体性や建設的対話に欠けやすい |
| 要点整理型 | 会話の論点をうまくまとめられる | 相手が話しきる前に締めがち |
| 沈黙型 | 相手に話させるのが得意 | 意図的な反応が薄く存在感が残りにくい |
それぞれに強みがあります。
大事なのは、どんな場面で、どのスタイルを意識的に使い分けるかです。
🎯 聞く力は「見えない成果」として評価される
グローバルなチームでは、リーダーやメンバーの評価基準がこうなっています:
- 発言の量より、チームの流れを変えられたか?
- アイデアの質より、他人の意見をどう育てたか?
- 技術力の高さより、誰とでも話せる信頼を持っていたか?
これらはすべて、「聞く力」がベースにある成果です。
たとえば、会議後に「あなたがいたから議論が深まった」と言われるようになると、
次第に次のような“期待”をされるようになります:
- 会議のファシリテーション
- 1on1の聞き役
- チーム内の不満の吸収役
- 難しいステークホルダーとの対話係
──これこそが、キャリアにおける「目に見えないリーダーシップ」です。
📈 評価に直結する“聞くリーダーシップ”の実践
実際に、海外で活躍するC# WPFエンジニアとして、
「聞く力」をどう活かしてリーダーシップを取っていけるのか。
具体的な場面別に見てみましょう。
📌 1. 技術レビュー:相手の意図を汲む質問が差を生む
悪い例:
「このコード、何でこんな書き方したんですか?」
良い例:
「この設計、どんな背景がありましたか?」
「これは速度を重視した結果ですか?それとも保守性でしょうか?」
→ “聞きながら相手の判断基準を言語化”することで、議論が建設的になります。
📌 2. チームビルディング:不満を「聞ける」人が信頼される
Slackの雑談で小さな愚痴を聞いたときに:
悪い例:
「まあ、それは仕方ないよね」
良い例:
「それって、最近よくある感じですか?」
「そのとき、何が一番ストレスでしたか?」
→ 感情の背景を聞くことで、チーム全体の雰囲気や課題も“見える化”できます。
📌 3. 英語が苦手でも「聞き手」ならチャンスを作れる
ネイティブの中で自信がないとき:
悪い例:
(黙ってしまう)
良い例:
“Sorry, just to clarify, did you mean that we’d move to a microservice model?”
“Let me make sure I got this right…”
→ 質問という形で「会話に参加」することで、存在感と信頼を得られます。
🧠 マネジメントにおける「聞く力」の威力
将来的にテックリードやマネージャーを目指す方にとって、「聞く力」は避けて通れません。
なぜなら、マネジメントとは「決めること」ではなく、
**「聞き出すこと」「整理すること」「納得させること」**だからです。
🌱 たとえば、1on1ではこんな問いが有効です:
- “What’s been energizing you at work lately?”
- “Where do you feel stuck these days?”
- “What’s one thing you’d change about how we work together?”
これにしっかり耳を傾けられるマネージャーがいるだけで、
チームの離職率やモチベーションが大きく変わることが実証されています。
(参考:Radical Candor, Gallup調査)
🔁 聞く力を“継続的に磨く”ための3ステップ
- 毎週1回、「聞く会話」を振り返る時間をとる
→「今日、自分が話した時間」「相手が話した時間」を簡単にメモするだけでもOK
- 「沈黙」を怖がらない練習をする
→ 意図的に3秒沈黙して相手の反応を見る練習
→ 沈黙のあとに出る言葉ほど“本音”のことが多い
- ポッドキャストや動画で“聞き方のうまい人”を観察する
→ 例:「The Tim Ferriss Show」「How I Built This」などのインタビュー系番組
🔚 まとめ:話す力より、聞く力が“キャリアの地盤”になる
ここまでのVol.8シリーズを通してお伝えしてきたのは、
「聞くこと」は、最も過小評価されているキャリアスキルだということ。
- 話さずとも信頼は得られる
- 相手の思考を引き出すことで自分の評価が上がる
- その先に、“見えないリーダーシップ”がある
あなたが“ただのエンジニア”から、
“チームを変える存在”へと成長するための、
最初の一歩が「聞く力」なのです。

コメント