なぜ「趣味選び」が、海外エンジニアのサバイバル戦略なのか?
(※今回は「起」の部分のみを執筆します)
毎日お疲れ様です。
今日も一日、Visual Studioの濃いグレーの画面と向き合い、XAMLの複雑なBindingと格闘し、C#のロジックを最適化し、ビルドの通らないVM(ViewModel)と睨めっこ…。僕らITエンジニア、特にWPFみたいなデスクトップアプリ開発者は、一日の大半を、抽象的で複雑なロジックの世界で過ごしてますよね。
脳みそが、論理回路で焼き切れるんじゃないかってくらい疲弊する。
そして、終業。
オフィスを一歩出れば、そこは異国の地。飛び交う言語は母国語じゃなく、文化も、常識も、飯の味付けも違う。日本にいるときのような「いつもの居酒屋で愚痴大会」なんて簡単な逃げ道は、ここにはありません。
さて、あなたはその「疲れ果てた分析脳」と「異国での孤独感」を抱えて、どうやって夜を過ごしますか?
多くの人が陥る「ワナ」があります。
それは、**「受動的な消費」**に逃げることです。
例えば、アパートに帰って、とりあえずビールを開け、YouTubeをダラダラ流し見する。故郷のバラエティ番組や、アルゴリズムが勧めてくる動画を、ただただ消費する。あるいは、Netflixで話題のドラマを一気見して、気づいたら深夜2時。
気持ちは、痛いほどわかります。僕もそうでした。
海外で働くって、仕事のストレスだけじゃなく、「生活のすべてがアウェイ」っていう、じわじわ削られる環境ストレスが常にかかっている状態。だから、脳みそを一切使わない「楽」な方へ逃げたくなるんです。
でも、断言します。
その「受動的な消費」は、「リチャージ(再充電)」ではありません。
それは、**「麻酔」**です。
一時的に疲れと孤独を忘れさせてくれるけど、バッテリーは一切充電されない。それどころか、翌朝、さらに重い倦怠感と「昨日、俺は何をしていたんだ…」という虚無感と共に目覚めることになります。
僕が海外に来て最初の半年が、まさにこれでした。
仕事のパフォーマンスは上がらず、プライベートの満足度も低い。休日は寝だめとNetflix。せっかく海外に来たのに、現地のコミュニティにも触れず、スキルも(仕事以外では)伸びない。完全に「サバイバル・モード」で、日々を食いつぶしていました。
このままじゃマズイ。
そう思って、僕は自分の「オフタイム」の過ごし方を、ソフトウェアの設計と同じように、一度真剣に「設計」し直すことにしたんです。
僕らエンジニアは、「分析」と「構築」のプロのはず。
問題(=脳が疲弊し、孤独である)を定義し、要件(=脳をリフレッシュさせ、自己肯定感を高め、できればキャリアにもプラスになる)を決め、解決策(=趣味)を実装する。
このブログで提唱したいのは、単なる「おすすめ趣味リスト」じゃありません。
僕らエンジニアが、自分自身の「分析脳」に最適化された趣味を「選択」し、「クラフト」していくための、実用的なフレームワークです。
なぜ、ただの「息抜き」ではなく、「戦略的なリチャージ」が必要なのか?
それは、僕らの脳が「論理」や「システム」を好むようにできているからです。仕事でC#のロジックを組むのが好きな脳は、オフタイムでも「ただボーッとする」ことでは満足できないケースが多い。
仕事とは**「違う種類」の論理、違う種類の「構築」**を求めているんです。
例えば、
- 仕事(WPF)では抽象的なデータ構造を扱うから、趣味(DIY電子工作)では物理的な「はんだ付け」と「回路」という「目に見えるロジック」を扱う。
- 仕事では他人の決めた仕様(Requirements)に従うから、趣味(個人プロジェクト)では「自分が神」となって、100%自分の裁量でクソコード(でも愛すべき)を書いてみる。
- 仕事ではロジカルシンキング(左脳)ばかり使うから、趣味(楽器学習)では音楽理論(これもロジックだ)と身体操作(右脳)を組み合わせてみる。
これが、本記事のフックである「Crafting Your Recharge(リチャージをクラフトする)」という考え方です。
この連載(起承転結)では、海外でエンジニアとして「ただ生き残る」のではなく、「圧倒的に成長し、楽しむ」ための、僕なりの「人生術」としての趣味戦略を、実体験ベースで徹底的に解説していきます。
次の「承」では、具体的に「じゃあ、自分にとって『リチャージ・ポテンシャル』が高い趣味ってどうやって見極めるの?」という、超具体的なフレームワークについて語っていきます。
この「起」を読んで、「あ、俺(私)のことだ」と思ったあなた。
ぜひ、次の記事も読んでみてください。あなたの海外エンジニアライフが、もっと豊かで、もっと刺激的なものになるヒントが、きっと見つかるはずです。
分析脳に効く「リチャージ・ポテンシャル」の見極め方
さて、「起」のパートでは「海外エンジニアよ、Netflixを消せ。それは麻酔だ」と、ちょっと強めに問題提起をしました。
読んでくれたエンジニア仲間からは、「言いたいことはわかる」「俺もまさにそれ」という共感と同時に、「じゃあ、一体何をすりゃいいんだよ!」「仕事で疲れてるのに、趣味でまで頑張れるか!」という悲鳴も聞こえてきそうです。
わかります。その通り。
だからこそ、僕らは「がむしゃらに頑張る趣味」ではなく、「自分の分析脳に最適化された、リチャージ・ポテンシャルの高い趣味」を、**戦略的(ここ大事)**に選ぶ必要があるんです。
「起」で書いたように、僕らはソフトウェアを設計(デザイン)するプロです。
同じように、自分のオフタイムも「設計」してみよう、という話。
そのための設計図、僕が海外でWPFのコードを書きながら、試行錯誤の末に見つけた「趣味選びのフレームワーク」を、今日は余すところなくシェアします。
僕が使っているのは、**「3つの評価軸」**です。
これから新しく趣味を始めようとするとき、または今やっている趣味が本当に自分を充電してくれているかを見極めるとき、この3軸でマッピングしてみてください。
軸1:インプット(消費型) vs アウトプット(生産型)
これは最も重要です。
- インプット(消費型):Netflixを見る、YouTubeを見る、SNSを眺める、人のブログを読む(今あなたがやってることですね!)、音楽を聴く、ゲームを(ただクリア目的で)プレイする。これらは「受動的」です。脳は情報を受け取るだけ。
- アウトプット(生産型):コードを書く、文章を書く、絵を描く、楽器を演奏する、料理を作る、DIYで何かを作る、ブログで発信する。これらは「能動的」です。脳が情報を処理し、新しい価値を生み出します。
「起」で麻酔だと言ったNetflixやYouTubeは、典型的な「インプット型」です。
なぜこれがマズイか?
僕らエンジニアの仕事って、実は「超・アウトプット型」なんですよね。仕様書を読み(インプット)、それをC#のロジックやXAMLのUIに変換(アウトプット)し続ける。
じゃあ、オフタイムは「インプット型」でバランス取ればいいじゃん、とはならないのがミソです。
仕事のアウトプットは、**「他人の仕様」であり「制約だらけ」**のアウトプットです。ここで僕らの「クリエイティブな意思決定」のエネルギーは、かなり消耗させられます。
だから、オフタイムに必要なのは「受動的なインプット」ではなく、
「100%自己裁量でできる、制約のないアウトプット」
なんです。
誰にも文句を言われない自分だけの個人プロジェクト、自分が弾きたい曲を弾く楽器、自分が食べたいものを作る料理。これらは、仕事で歪められた「アウトプット欲」を健全な形で満たし、**「自己効力感(俺、やればできるじゃん)」**という最強のメンタル安定剤を補充してくれます。
【判定】:趣味は「アウトプット型」に大きく舵を切れ。
軸2:抽象(アブストラクト) vs 具象(コンクリート)
はい、次。これ、特に僕らWPFエンジニアのような「画面の中」で完結するプログラマーにブッ刺さる軸です。
- 抽象(アブストラクト):目に見えないもの。ロジック、データ構造、アーキテクチャ、ビジネスプロセス、数学、金融。僕らの仕事(C#のコード、MVVMの設計、DIコンテナの構成)は、99%これです。
- 具象(コンクリート):目に見え、手で触れ、五感で感じられるもの。木材、はんだ、電子部品、料理の食材、土、楽器の弦、自分の筋肉。
僕らは一日8時間以上、下手したら10時間、Visual Studioという「抽象の世界」で、目に見えないデータと格闘しています。XAMLのBindingエラーと戦い、メモリリークを追いかけ、複雑なビジネスロジックをコードに翻訳する。
脳の「抽象ロジック担当」エリアは、もうオーバーヒート寸前です。
その状態で、家に帰って「趣味はチェスです」「個人プロジェクトで新しいアルゴリズム組みます」をやると、どうなるか?
…わかりますよね。それは、リチャージじゃなく、仕事の延長です。脳の同じ場所を使い続けて、すり減らしているだけ。
じゃあ、どうするか。
意図的に**「具象」**に触れるんです。
- はんだごてを握り、電子部品を基板につける。熱と煙と匂いを感じる。(具象)
- ギターの弦を指で押さえ、ピックで弾く。指先の痛みと、アンプから出る「音」という物理的な振動を感じる。(具象)
- 小麦粉と水をこねて、パンを焼く。手の感触、発酵する匂い、焼き上がりの味を感じる。(具象)
- ジムでバーベルを握る。筋肉のきしみと重さを感じる。(具象)
抽象の世界に疲れた脳は、物理的な「手触り」を伴う「具象」に触れることで、最高のデフラグ(古いな、例えが)…いや、リフレッシュが行われます。
【判定】:仕事が「抽象」なら、趣味は「具象」を選べ。
軸3:ソロ vs コミュニティ
最後は、特に「海外で働く」僕らにとって重要な軸です。
- ソロ:一人で完結するもの。読書、個人開発、一人で楽器練習、ジョギング。
- コミュニティ:他者と関わるもの。チームスポーツ(フットサルとか)、ボードゲーム、英会話(や現地語)のランゲージエクスチェンジ、Meetupに参加する、OSS(オープンソース)開発。
エンジニアという人種は(僕も含めて)、本質的に「ソロ」を好む傾向があります。一人でコードに没頭するほうが楽だし、気を使わなくていい。
ですが、ここは「海外」。
意識して「コミュニティ」に属しにいかないと、マジで**「社会的な孤立」**に陥ります。
仕事仲間は、あくまで仕事仲間。利害関係のない、フラットな人間関係は、日本にいるときのようには自動的に構築されません。
孤独は、メンタルをじわじわと蝕みます。
だからこそ、趣味のポートフォリオ(趣味は一つじゃなくていい)の最低一つは、「コミュニティ型」の要素を入れることを強く推奨します。
別に、陽キャになって騒げという話じゃありません。
「趣味」という共通言語があれば、コミュニケーションは驚くほど楽になります。
- 現地のクライミングジムで、登り方を教えあう。
- ボードゲームカフェで、「その戦略えぐいね」と笑いあう。
- 僕の場合、現地のC# Meetupではなく、あえてPythonとかRustのMeetupに行って、「WPFエンジニアだけど、ちょっと見に来たよ」と話してみる。
利害関係のない「サード・プレイス」を持つこと。これが、異国での精神的なセーフティネットになります。
【判定】:最低一つは「コミュニティ」軸の趣味を持て。
まとめ:「最強のリチャージ趣味」をマッピングする
さあ、この3軸が出揃いました。
このフレームワークを使って、いくつかの趣味をマッピングしてみましょう。
例1:Netflixを一気見する
- 軸1:インプット(最悪)
- 軸2:抽象(仕事と同じ)
- 軸3:ソロ(孤立)
- 判定:最悪のリチャージ。 まさに麻酔。
例2:個人プロジェクトでWebサービスを作る(C#で)
- 軸1:アウトプット(最高)
- 軸2:抽象(仕事と同じ…)
- 軸3:ソロ(孤立)
- 判定:微妙。 自己効力感は得られるが、脳の疲れは取れず、孤立も解消されない。「転」で詳しく話しますが、これは諸刃の剣です。
例3:DIY電子工作(Arduinoやラズパイ)を、現地のMaker Spaceでやる
- 軸1:アウトプット(最高)
- 軸2:具象(最高)
- 軸3:コミュニティ(最高)
- 判定:最強のリチャージ。 これが、僕が「はんだごてを握れ」と言った理由です。
例4:現地のフットサルチームに入る
- 軸1:アウトプット(体を動かすのは広義のアウトプット)
- 軸2:具象(最高)
- 軸3:コミュニティ(最高)
- 判定:最強のリチャージ。
どうでしょう?
「なんとなく楽しそう」で選ぶのではなく、「今の自分に足りない軸はどれか?」で選ぶ。
これが、僕が提唱する**「海外エンジニアの戦略的リチャージ術」**の根幹です。
次の「転」のパートでは、このフレームワークを使って、僕が実際に試してきた「スマート・ホビー」の具体例(コーディング、DIY、戦略ゲームなど)が、どうキャリアに「意外な副産物」をもたらしたか、もっと突っ込んだ実体験をシェアしていきます。
「スマート・ホビー」がキャリアにもたらす意外な副産物
「承」で紹介した3つの軸、覚えてますか?
- インプット(消費) vs アウトプット(生産)
- 抽象(ロジック) vs 具象(ブツ)
- ソロ(孤独) vs コミュニティ(繋がり)
僕らWPFエンジニアの仕事は、ぶっちゃけ「アウトプット型」だけど「超・抽象(画面の中)」で「ほぼソロ(自分のタスクと向き合う)」です。
だから、趣味では**「アウトプット型」を維持しつつ、「具象」と「コミュニティ」の軸をブーストする**のが最強のリチャージになる、という話でした。
これを踏まえて、僕が試した趣味の「成功例」と「(一見)失敗例」を見ていきましょう。
事例1:【諸刃の剣】個人プロジェクト(コーディング)
エンジニアが趣味、っていうと真っ先にこれですよね。
「承」の例では「判定:微妙」と書きましたが、やり方次第で「神」にも「ゴミ」にもなります。
- 最悪のパターン(過去の僕):仕事でC# (WPF) を使ってるのに、趣味でもC# (WPF) で「俺の考えた最強のMVVMフレームワーク」を作り始める。
- 【判定】→ 軸1 (Output): 〇 / 軸2 (Abstract): × / 軸3 (Solo): ×
- 【結果】→ 脳の同じ場所を使いすぎてオーバーヒート。リチャージどころか、無給の残業。自己満は得られるが、疲れが全く取れない。
- 最高のパターン(今の僕):仕事(C#)とは**「あえて遠い」技術**を触る。僕の場合は、Python (Flask) でしょーもないWeb APIを作ったり、React (JavaScript) でペラ一枚のWebサイトを作ったり。
- 【判定】→ 軸1 (Output): 〇 / 軸2 (Abstract): △ / 軸3 (Solo): △
- 【結果】→ 「あれ、Web系ってこんな感じで非同期処理書くんだ」「JSのUI更新、XAMLのBindingと全然考え方違うな…」と、脳の違う回路が刺激される。
【得られた「意外な副産物」】
これがデカかった。
ある日、海外の職場で、僕らのWPFアプリと、別チームが作ったPythonベースの機械学習(ML)モジュールを連携させるタスクが発生しました。
WPFチームの同僚(現地エンジニア)たちは、C#は神レベルでも、Pythonは「?」状態。
MLチームは、Pythonは書けるけど、C#の作法(.NETのIPCとか)は知らない。
ここで、趣味でPythonを触っていた僕が、「あ、それFlaskでAPI立てて、WPF側からHttpClientで叩くのが一番早くないすか? Python側のデータ整形、こんな感じでお願いできます?」と、**両チームの「通訳」**として動けたんです。
結果、僕はそのブリッジ部分の設計を任され、プロジェクトは爆速で進みました。
上司からの評価は爆上がり。
趣味で「違う言語」に浮気していたおかげで、僕は「ただのWPFエンジニア」から**「異種技術を繋げるブリッジ・エンジニア」**という、一段上の価値(と給料)を手に入れたんです。
事例2:【最強の趣味】DIY電子工作(はんだごて)
「承」でも「最強」と書きましたが、これ以上の「具象」趣味を僕は知りません。
ArduinoやRaspberry Piのスターターキットをポチる。それだけ。
- 「はんだごて」を握るということ:
- 【判定】→ 軸1 (Output): 〇 / 軸2 (Concrete): ◎ / 軸3 (Solo/Community): △
- 【結果】→ 抽象的なコードの世界から、物理的な「熱」「煙」「匂い」「(チクッとする)痛み」の世界への強制ダイブ。
- C#のコードが「動かない」のは、ロジックのバグ。
- Arduinoが「動かない」のは、**「俺のはんだ付けがヘタクソ」か「抵抗の値を間違えた」**という、超・物理的な原因。
これが、WPFで疲れ果てた「抽象脳」を、最高の形でクールダウンさせてくれるんです。
【得られた「意外な副産物」】
僕のWPFの仕事、実は工場の「産業機械」の制御UI開発でした。
それまで、僕はハードウェアチームから送られてくる「仕様書(データパケットの定義)」だけを見て、C#のコードを書いていました。
でも、電子工作を始めてから、ハードウェアチームとの会話が激変したんです。
「このセンサーからの信号、チャタリング(物理的な接点のブレ)ひどいんで、ハード側でデバウンス入れてます? それともこっち(WPF)でロジック組んで吸収します?」
「このモーターの制御、PWM(パルス幅変調)の周波数、アプリ側から変えられたりします?」
以前の僕は「送られてくるデータ(抽象)」しか見てなかった。
今の僕は「なぜそのデータが来るのか(具象)」を理解している。
結果、僕は「ハードウェアの気持ちがわかるUIエンジニア」というレアな存在になりました。機械の挙動を深く理解した上でUIを設計できるので、バグが減り、仕様決めもスムーズに。ハードウェアチームからは「お前が担当で助かった」と絶大な信頼を得ました。
事例3:【人生のバランサー】戦略ゲームと楽器
この2つは、軸3(コミュニティ)と、脳の「別エリア」を鍛えるのに役立ちました。
- 戦略ゲーム(ボードゲーム、MTGなど):
- 【判定】→ 軸1 (Output): 〇 / 軸2 (Abstract): 〇 / 軸3 (Community): ◎
- 【結果】→ 「抽象」で仕事と被るけど、使う脳が「論理」より「戦略・駆け引き」。「軸3(コミュニティ)」を強制的に満たせるのが最強。
- 【副産物】→ 現地のボードゲームカフェやMTGのショップ大会に行くと、利害関係ゼロの「趣味仲間」ができます。英語(現地語)がヘタクソでも、ゲームのルールという「共通言語」があるから、すぐに仲良くなれる。ここで得た「異文化コミュニケーション能力」と「ハッタリをかます度胸(笑)」は、ぶっちゃけ会社の会議よりよっぽど実戦的です。
- 楽器(ギター):
- 【判定】→ 軸1 (Output): 〇 / 軸2 (Concrete): 〇 / 軸3 (Solo): ×
- 【結果】→ ほぼ「ソロ」趣味ですが、プログラミングとは真逆の脳を使います。
- プログラミングは「IF A THEN B」という「逐次的なロジック」。
- 音楽は「C→G→Am→F」という「感情的なロジック」。
- 【副産物】→ 「できないことを、毎日15分練習して、できるようにする」という行為の、最もピュアな形です。バグ(弾けないフレーズ)をデバッグ(反復練習)する。この「地道な反復作業への耐性」は、エンジニアのキャリア全体を支える「忍耐力」の筋肉を、確実に鍛えてくれます。
どうです?
趣味は、ただの「息抜き」じゃない。
仕事とは全く違う軸で「アウトプット」と「具象」を追求することが、巡り巡って、あなたのエンジニアとしての「幅」を広げ、専門性を深めてくれるんです。
WPF一本槍(I型人材)だった僕が、Python(Web)と電子工作(ハード)の知識を得て、**「π型人材(パイ型人材)」**になれた。
これが、僕が「戦略的リチャージ」と呼ぶものの正体です。
さて、これで「起」「承」「転」と揃いました。
最後は、結論である「結」です。
「わかった、でもそんなに全部できないよ!」
「俺にはどの趣味がベストなんだ?」
その疑問に答えるため、最終回「結」では、これら全てをどう組み合わせ、あなただけの**「最強の充電ポートフォリオ」**を設計するか、その具体的なステップを解説します。
自分だけの「最強の充電ポートフォリオ」を設計しよう
「ポートフォリオ」って、金融(株とか投資信託)の世界でよく聞く言葉ですよね。
「卵は一つのカゴに盛るな」ってやつ。
資産をいろんな金融商品に分散させることで、リスクを減らし、リターンを安定させる戦略です。
僕らの「オフタイム」という超・貴重な資産も、全く同じ。
もし、あなたのオフタイムが「Netflix 100%」だとしたら?
それは、一つの金融商品に全額ぶっ込んでいるのと同じ。超ハイリスクです。
その趣味(?)は、あなたに「一瞬の快楽」というリターンしかくれず、「キャリアの成長」や「コミュニティ」のリターンはゼロ。メンタルが落ち込んだら、一緒に破綻します。
だから、僕らはオフタイム(資産)を、性質の違う複数の「趣味(金融商品)」に賢く「分散」させる必要があるんです。
これが、僕がたどり着いた「戦略的リチャージ術」の最終回答です。
じゃあ、どうやってその「ポートフォリオ」を組むのか?
具体的なステップを見ていきましょう。
Step 1:現状把握(As-Is):「あなたの穴」を見つける
まずは、今のあなたが「何の資産」に偏っているのか、客観的に分析します。
「承」で紹介した3軸の出番です。
1. あなたの「仕事」を分析する
- 例:僕(C# WPFエンジニア)の場合
- 軸1:アウトプット(制約あり)
- 軸2:超・抽象
- 軸3:ほぼソロ(コードと向き合う時間)
2. あなたの「今のオフタイム」を分析する
- 例:過去の僕(Netflix廃人)の場合
- 軸1:インプット
- 軸2:抽象
- 軸3:ソロ
3. 「穴」を特定する
- 上の分析結果を足し合わせると、僕の生活は…
- 「具象」が、ゼロ!
- 「コミュニティ」が、ゼロ!
- 「アウトプット」も、”自由な”ものがゼロ!
これが、あなたの「穴」です。
この穴を埋めるものこそが、あなたにとって「リチャージ・ポテンシャル」が最も高い趣味、ということになります。
Step 2:ポートフォリオの「核」を決める
穴が見つかったら、その中で「一番ヤバい穴」を埋める趣味を「メイン(核)」として設定します。
僕の場合、「具象」と「コミュニティ」の両方がゼロでした。
いきなり両方を満たすのはハードルが高い。
だから、まずは**「仕事と真逆」**の「具象」を埋めることにしました。
これが「転」で絶賛した「DIY電子工作(はんだごて)」です。
あるいは、「料理」でも「ジム」でも「楽器」でもいい。とにかく「手」や「体」を動かすものです。
- メイン趣味:DIY電子工作
- 軸1:アウトプット(〇)
- 軸2:具象(◎)
- 軸3:ソロ(△)
これを週に2〜3回、ガッツリやる時間を確保します。
これだけで、仕事(抽象)で疲れた脳が、物理的な作業(具象)によって劇的にリフレッシュされるのがわかりました。
Step 3:「サブ」でバランスを取る
メインの趣味が決まったら、次に「サブ」の趣味を組み込みます。
サブの役割は、メインでカバーしきれなかった「残りの穴」を埋めることです。
僕の場合、メイン(DIY)は「ソロ」作業でした。
まだ「コミュニティ」の穴が埋まっていません。
そこで、サブとして、週末に「ボードゲームカフェ」や「MTG(戦略ゲーム)の大会」に行くことを組み込みました。
- サブ趣味:戦略ゲーム
- 軸1:アウトプット(〇)
- 軸2:抽象(△)
- 軸3:コミュニティ(◎)
メイン(具象・ソロ)と、サブ(抽象・コミュ)。
これで、僕のオフタイムは、仕事(抽象・ソロ)とは全く違う要素で満たされ、完璧なバランスが取れました。
Step 4:「息抜き枠」も確保する(大事!)
「じゃあ、Netflixはもう絶対見ちゃダメなのか!?」
そんなことはありません(笑)。
ポートフォリオには「安全資産(現金)」も必要です。
僕にとって、それが「個人プロジェクト(Python)」であり、たまの「Netflix」です。
- 息抜き枠:個人プロジェクト / Netflix
- 疲れてるけど、何か「生産的(アウトプット)」なことをしたい夜 → 個人プロジェクト
- 本当に脳が死んでて、何も考えたくない夜 → Netflix(ただし、「1時間だけ」と決める)
ほら。
これで、あなただけの「最強の充電ポートフォリオ」が完成しました。
【僕のポートフォリオ例】
- メイン(具象・ソロ): DIY電子工作(週2回)
- サブ(コミュ・抽象): 戦略ゲーム(週末)
- 息抜き(自由枠): 個人プロジェクト / Netflix(その日の気分)
このポートフォリオは、あくまで「僕(WPFエンジニア)」の例です。
あなたが例えば、フロントエンド(抽象・ソロ)なら同じような構成がいいかもしれないし、もしあなたがプロジェクトマネージャー(抽象・コミュ)なら、むしろ「ソロ」で「具象」な「ジョギング」や「ソロキャンプ」がメインになるかもしれません。
あなたの仕事の「真逆」に、あなたの「最強のリチャージ」は眠っています。
結論:オフタイムは「設計」できる、最強の資産だ
4回にわたって、海外エンジニアのための「戦略的リチャージ術」を語ってきました。
海外で、慣れない環境で、高い専門性を求められながら働く僕らは、日本にいるとき以上に「オフタイムの質」に自覚的になる必要があります。
なんとなく「消費」して過ごすオフタイムは、あなたのメンタルとキャリアをじわじわと蝕んでいきます。
でも、難しく考える必要はありません。
まずは、今週末、いつもNetflixを見ていた時間の「30分」だけ。
その30分を使って、
- 「承」で紹介した3軸で、自分の現状を紙に書き出してみる。
- 近所のDIYショップを覗いてみる。
- Meetup.comで、面白そうなボードゲームの会を探してみる。
その「最初の一歩」が、あなたの海外エンジニアライフを、「ただ生き残る」モードから、「圧倒的に成長し、楽しむ」モードへと切り替える、最初のトリガーになるはずです。
僕も、今日もXAMLと格闘した後、家で待ってるArduinoの基板に向き合おうと思います。
長いコラム、最後まで読んでくれて、本当にありがとうございました。
あなたの海外生活が、もっと豊かで、もっと刺激的なものになることを、同じ海外エンジニア仲間として、心から願っています。

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