新しい土壌に根を張るということ
日本で働く、あるいは日本から海外に出て、そしてまた日本に戻る。
エンジニアとしてキャリアを重ねていると、そんな選択肢が現実味を帯びる瞬間があります。
特に僕のように 海外で働いた後に、再び日本での可能性に目を向けたエンジニア にとって、日本という市場は「よく知っているのに、実はまだ知らない場所」だったりする。
僕が初めて海外に出たのは、キャリアの行き詰まりがきっかけでした。
C# / WPF をメインに設計と開発をしていたけれど、日本の組織での成長ラインは、ある程度まで行くと「そこから上」は、技術ではなく社内的な信頼や年功、いわば “組織にどれだけ馴染んだか” で決まっていくことが多かった。
「このまま、気づいたら10年経ってしまうのかな」
そんな不安が、海外に飛び出す背中を押した。
でも、海外に出て気づいたことがある。
確かに海外では、スキル中心で評価される。
技術が強い人、課題解決ができる人、能動的に動ける人は確実に伸びる。
けれど同時に、
「どれだけ会社に価値を残したか」
「チームやプロジェクトにどんな影響を与えたか」
という観点は、結局どこでも必要だった。
そして、日本には日本なりの強力な成長モデルがある。
それは 「長期的に積み上げるキャリアの再現性が高い」 ということ。
海外でのスキル向上は短期成長の加速装置として強い。
一方、日本は長期で積み上げる土台として強い。
どちらが良い、悪いではなく、
両方を知っているエンジニアは、実はすごく強い。
日本での成長は “内部から蓄積される”
日本の企業文化は、外から見ると時に「年功序列」「縦社会」と揶揄される。
でも、それは裏を返せば 「一度信頼を獲得すると、長期的に投資してもらえる」 ということでもある。
僕が日本にいた頃は、その価値に気付けなかった。
なぜなら、目の前の成長スピードばかりを気にしていたからだ。
海外で働き、変化が速い環境の中で勝負をしたあと、改めて思う。
日本の働き方は、長期戦に強い。
・長期プロジェクトでの品質管理
・顧客理解の深さ
・チームカルチャーの共通認識
・継続改善の思想
これは、海外で3年働いた程度では到達できない「熟成された強さ」だった。
だからこそ、
海外を経験したエンジニアが日本に戻ると、めちゃくちゃ価値が出る。
じゃあ、日本でキャリアを再び伸ばすには?
このブログのテーマはここにあります。
「日本での長期的なキャリア形成を、どう設計するか?」
すでに日本には、以下の2つの成長ルートが存在する。
- 社内キャリアの深耕(内部昇進・スペシャリスト・テックリード)
- 社外キャリアの開拓(スタートアップ・副業・起業・独立)
そして重要なのは、
どちらも“並行して準備できる”ということ。
日本は「安全基地」と「挑戦フィールド」の両方を作れる稀有な国でもある。
たとえば、会社での仕事とは別に、
・業務外のOSS活動
・技術勉強会での登壇
・ブログでのアウトプット
・スタートアップでの週末ジョイン
といった形で、自分の価値を社外にも積み上げられる。
海外では副業禁止だったり、職務契約で成果物の権利が企業に帰属したりすることが多いけれど、
日本は意外とアウトプットの自由度が高い。
つまり、言い換えると
「社内で積み上げる信用 × 社外で蓄積する影響力」
この掛け算が、未来のキャリアを決める。
日本の内部キャリアを伸ばすためのリアルな戦略
日本の企業でキャリアを積むとき、どうしても避けて通れないのが「年功序列」「上下関係」「社内信頼」といった、いわゆる“組織の文脈”です。
でも、ここで誤解してほしくないのは、
日本のキャリアは、年功で決まるわけじゃない
ただし「実力だけ」でも評価されない、というだけ。
この微妙なバランスが、日本のキャリア形成を少し難しく見せている原因でもある。
僕自身、海外から戻ってきたとき、このギャップに結構戸惑いました。
スキルがあれば通じると思っていたら、そうじゃなかった。
でも、逆に言えば、ここをちゃんと攻略できると 日本でのキャリアは加速して伸びていく。
では、具体的にどう動けばいいか。
抽象論ではなく、僕が実際にやって効果があった方法をベースに話します。
1. 「技術が強い人」から「任せられる人」になる
海外ではエンジニアは「職能」で評価されることが多いけど、
日本ではそこに「信頼」と「安定性」が加わる。
つまり、
“この人に任せれば大丈夫”と思われる状態を作ること。
これがめちゃくちゃ重要。
じゃあ何で信頼が生まれるのか?
・納期を守る
・報連相がタイムリー
・ミスした時に隠さずに説明できる
・仕様変更にイライラしない
・顧客と話せる
こういう、「人として扱いやすい」「安心できる」という要素が効いてくる。
言い換えると、
日本の組織は、スーパーハッカーよりも、安定して結果を出せる人を昇格させる。
僕は最初、ここに抵抗があった。
「技術が一番だろ」と。
でもある日、ベテランに言われた言葉が刺さった。
“プロジェクトは技術で動くんじゃなくて、信頼で動くんだよ”
そこから、僕は「技術の強さ」を見せるより、
“任せていい人”の振る舞いを意識するようになった。
結果、案件での裁量、設計の決定権、チーム内での自主性が増えた。
2. 自分の仕事を「言語化」して社内に成果を残す
技術者がやりがちなのは、成果を出しても説明しないこと。
「見ればわかるっしょ」
「動いてるのが成果でしょ」
「コード読めばわかるじゃん」
気持ちはわかるけど、
評価は“伝わった成果”に対して行われる。
つまり、
成果 = 実績 × 認知度
どれだけすごいことをやっても、
評価者がそれを把握してなければ 0ポイント。
じゃあどうやって「認知させる」か?
・朝会で、改善点と理由を短く言語化
・スプリントレビューで、設計意図を共有
・社内Wikiに「なぜそう設計したか」を記録
・後輩に教えるときに、説明の型を入れる
特に効果が大きかったのは 「Whyベースの設計メモ」。
ただ実装するんじゃなくて、
- なぜこの構造にしたか
- どのリスクを排除したか
- 他案は何が課題だったか
これを文章として残す。
すると、プロジェクトが進むほど、
「設計判断ができる人」として評価されていく。
3. “社内にしか価値がない人” にはならない
日本型キャリアでやりがちな落とし穴がこれ。
「この会社で通じる仕事のやり方」ばかりに最適化してしまうと、
いつか転職も昇進も停滞する。
だから、僕は 社外発信 を意識して続けている。
・Qiita
・Zenn
・ブログ
・コミュニティ勉強会
・LT登壇
特におすすめは ブログ。
理由はシンプル。
ブログは「価値の倉庫」になるから
社内では見えないあなたの思考や経験を、
社外に蓄積し続けることで、
・転職が有利になる
・社外から声がかかる
・講演の機会がくる
・副業につながる
つまり、社内評価と社外評価の両輪が回り始める。
海外で働いたことがあるエンジニアは、
それだけで既に 語る材料がある。
だから、隠すのはもったいない。
4. 年功序列を“使う側”になる
年功序列は「待つ人」には地獄だけど、
「仕組みを使う人」にとっては強力な追い風になる。
・信頼を積み上げる
・成果を言語化して残す
・社内外で存在感を作る
これを続けると何が起きるか?
「昇格が、時間の問題になる。」
つまり、
実力 + 信頼 → あとは時間が味方する
これが、日本型キャリアの「長期で強い構造」。
海外では、評価はシビアで短期決着になる。
でも日本では、信頼の累積が効いてくる。
この構造を理解できると、
日本の企業は「育成力の高い場所」になる。
ここまでのまとめ
仕組みを理解すれば、日本の内部キャリアはむしろ伸ばしやすい。
日本は「技術だけ」でも「年功だけ」でも進まない。
信頼、言語化、社外発信、この3つがキャリアを加速させる。
社外キャリアを広げるという選択肢
日本の企業で内部キャリアを積み上げることは、長期戦で強い。
でも、ここでひとつだけ落とし穴があります。
それは、
「社内での評価が高い = 市場価値が高い」ではない、ということ。
これ、実際に転職活動をしたことがある人なら、たぶん痛いほど感じたことがあるはず。
会社の中では頼られる存在だったのに、
他社に行ったら「で、それって他の会社でも通用するんですか?」と聞かれる。
もしくは、**「そのスキルは社内専用ですね」**と伝えられる。
僕自身、これを海外から帰国したあとに強烈に味わった。
当時の僕は、
- 海外プロジェクト経験あり
- 技術リード経験あり
- 複数技術領域に精通
という、いわば「それなりに通用してる」状態だと思っていた。
でも、転職エージェントの評価シートにはこう書かれていた。
“魅力的だが、再現性が説明できていない”
これが意味するのは、
「社内での成果は、その組織の中でしか語れないと価値にならない」
つまり、
社内の成功は“ローカルスコア”。
市場で評価されるには“グローバルスコア”が必要。
では、その「外でも通じる価値」をどうやって作るか?
ここで登場するのが 社外キャリア だ。
社外キャリアとは何か?
これは転職のことだけじゃない。
もっと広い意味で言うと、
「会社に依存しない、自分自身の価値の発信と蓄積」 のこと。
代表的な形はこんな感じ。
- 副業
- スタートアップの支援(週末・夜だけのジョイン)
- 技術コミュニティでの活動
- 技術ブログ・技術投稿
- OSSコントリビューション
- 個人開発
- 登壇 / ワークショップ
- コンサル / アドバイザリー
- 小規模起業
これらは全部、キャリアの「外側」に属する行動。
でも実は、ここで得た経験や肩書きが、
あとで 社内キャリアにもブーストを掛ける。
僕の経験で言うと、
海外勤務から戻ってきたあと、
僕がやった最初の社外活動は ブログ だった。
正直、最初は誰も読んでない。
アクセス数は1日10PV。うち8PVくらい自分。笑
でも、半年くらい続けていたら、
とある技術コミュニティの人に見つけてもらい、
勉強会で話す機会をもらった。
そこから連鎖的に、
- スタートアップ支援
- 技術顧問のオファー
- カンファレンス登壇
などにつながった。
これで僕は確信した。
「価値は、社内で築くものじゃなくて、社外で見せたときに成立する」
では、どうやって社外キャリアを広げるか?
ポイントは 大きく動かないこと。小さく始めること。
いきなり会社辞めて起業?
それはギャンブル。
いきなり副業で週20時間?
それは時間が死ぬ。
いきなりコミュニティリーダー?
疲れて燃え尽きる。
正解はこれ。
まず「週に1回、1時間」だけ社外に時間を使う。
できることは何でもいい。
例:
- ブログに 1つの学び を書く
- Zennに 短いTips を投稿する
- メモをTwitterに3行書く
- Githubに 小さな修正 を投げる
- connpassで 興味ある勉強会 に申し込む
大切なのは、
成果じゃなく「存在を外に出すこと」
これが本当に効く。
人は「見える人」にチャンスを渡すから。
おすすめの取っ掛かり(ハードル低い順)
| 取り組み | 難易度 | 効果 | 理由 |
|---|---|---|---|
| X(Twitter) / Threads / Mastodonで技術メモ発信 | 低 | 中 | 3行でいいし、継続しやすい |
| ブログ (note / Zenn / Blogger / 自前) | 中 | 高 | 思考が言語化され、信用になる |
| コミュニティの参加だけ | 低 | 中 | 人脈は財産。参加だけでも価値あり |
| connpass/Doorkeeperで勉強会登壇 | 中 | 高 | 「話せる人」は市場で強い |
| スタートアップ支援(週末1〜2時間) | 高 | とても高い | 実戦での成長と市場価値が跳ねる |
特に スタートアップの手伝い は爆発的に経験値が増える。
ただし、いきなりやるとキツいので、基礎体力(言語化・自走力)が必要。
社外キャリアを広げるときの心構え
- 承認は求めない
→ 最初は反応がなくて当たり前 - クオリティより継続
→ 下手でも雑でも「続ける人」は勝つ - 自分を過大評価しない
→ 小さく始めると息が長い - 楽しめる領域にする
→ 好きなテーマじゃないと半年続かない - 社内の愚痴や機密は絶対に書かない
→ これは即アウト。信用が死ぬ。
社外キャリアは、社内キャリアを強くする
- 社内では「任せられる人」に見られ、
- 社外では「価値を持っている人」として見られる。
この状態になると、キャリアは一気に動き始める。
具体的には、
- 選べる仕事が増える
- 逃げ道ができる
- 望まれる人材になる
つまり、
“会社に依存せずに、会社と対等に関わる自分” が作れる。
これが、僕が言いたかった「社外キャリアの本質」です。
キャリアは循環する。選び直していいし、作り直せる。
ここまで、
「日本の社内でどう価値を積むか」
「社外でどう自分の市場価値を作るか」
について話してきました。
そして結論は、とてもシンプルです。
キャリアは“積み上げ”じゃなくて、“循環”で成り立つ。
僕らは、よくキャリアを「階段」だと思っている。
上に登るか、落ちるか。
そして、一度登り方を間違えると、下まで落っこちてしまうような気がしてしまう。
でも実際は違う。
キャリアは、螺旋(らせん) みたいなものだ。
- 一周目は、技術を覚えるフェーズ
- 二周目は、任せてもらうフェーズ
- 三周目は、言語化して後輩を育てるフェーズ
- 四周目は、社外で価値が認識されるフェーズ
- 五周目は、人を導いたり、プロダクトを作ったりするフェーズ
つまり、
同じ場所を回っているように見えて、実は前に進んでいる。
これは、「成長が見えない」と感じたときに、心をすごくラクにする考え方でもある。
僕が海外で働いていたとき、
そして日本に戻ってきたとき、
さらに副業を始めたとき、
毎回「自分はスタート地点に戻ったな」と感じた。
でも、あとから振り返ると、
戻っていたんじゃなくて、レベルを上げた状態で同じテーマに再挑戦していた。
だからこそ、安心していい。
キャリアは、いつでも選び直せるし、作り直せる。
じゃあ結局、明日から何をすればいい?
ここまでの話で重要なのは、「小さく続けること」。
いきなり転職しろとか、起業しろとか、週末ビジネスしろとか、
そういう話じゃない。
やるべきことは、たったひとつ。
“外に向けて、1つだけアウトプットする”
それだけでいい。
例えば、明日できることはこんなにシンプル。
- 今日の仕事で「気づいたこと」を3行書く(SNS / ノート / メモ)
- ZennかQiitaに、小さなTipsを1つ残す(100〜200文字でいい)
- 実装中に悩んだところを書き留めておく
- 人に「なぜそうしたか」を説明してみる
- connpassで、興味ある勉強会を1件だけ予約する
重要なのは「小さく動くこと」。
なぜか?
習慣は、負荷が低いものからしか生まれないから。
そしてもう1つ。
成果は、習慣からしか生まれないから。
キャリアを循環させるための行動ルート
ゆっくりでいいので、こんな流れを回していくと良いです。
経験する
↓
言語化する
↓
外に出す
↓
人とつながる
↓
新しい経験が来る
ここで面白いのは、
これを回し始めると、“勝手に次の機会が来る”こと。
例えば、
ブログを書く
→ たまたま誰かが読む
→ 勉強会登壇の声がかかる
→ スタートアップから声がかかる
→ 副業の収入が生まれる
→ 市場価値が上がる
→ 社内での評価も上がる
こういう 波のような連鎖 が起きる。
キャリアって、努力で「作る」ものじゃなくて、
動き続けることで勝手に育っていくものなんです。
最後にひとつだけ
僕は海外で働いた経験のあるエンジニアとして、
そして日本でまたキャリアを積んでいる人間として、
あなたに伝えたいことはこれです。
「完璧じゃなくていい。動いている人が勝つ。」
知識が足りないとか、
スキルが十分じゃないとか、
英語がまだ不安とか、
自信が持てないとか。
その全部、関係ない。
動いている人だけが、未来を変える。
もし、あなたが今、
「将来どうしよう」とか
「このままでいいのかな」とか
そんな不安を抱えているなら、
それは 動き出す前の一番良いタイミング です。
明日からでいい。
いや、今から3分でもいい。
外に、あなたの言葉を一つ置いてみてください。
それが、次の循環のスタートになるから。

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