「腰が痛い、肩も上がらん」──コードより先に自分がバグった話
「あれ、腰が痛いな……」
そんなつぶやきが、ある日から毎朝のルーティンになってしまった。
これは、僕がベルリンでリモート勤務を始めて半年が経った頃のことだった。
朝、パソコンに向かってコーヒーを片手にコードを書き始め、気づけば夕方。肩はパンパン、腰はズーンと重い。だけどそのままSlackのDMが飛んできて、「あー、もうちょい」とキーボードを叩き続ける。
結果、夜になると椅子から立ち上がるだけで**「よっこらしょ」の効果音つき**。これはもう、完全にエンジニア版・慢性デバッガー症候群だ。
海外で一人暮らししてると、思った以上に「体を気にするきっかけ」が少ない。
同僚とランチに行くことも、終業後に軽く運動する機会も減る。
日本なら、駅まで歩いたり、オフィスの中を少し移動したりっていう「日常の中の運動」があった。でもこっちでは、**「玄関からトイレまでの20歩が移動距離のすべて」**なんて日もザラ。
その結果、身体の調子が仕事のパフォーマンスに直結するのを、身をもって痛感することになった。
「体が資本」って、本当だったんだ。
若い頃は「多少無理しても大丈夫」と思っていた。
納期前に2日寝ないでコードを書いたり、腰が痛いのに椅子に座りっぱなしだったり。
でも30代を過ぎて、しかも言葉も文化も違う場所で孤独にリモートワークしてると、体とメンタルの両方に負荷がかかってくるのが早い。
たとえば:
- 肩こりから偏頭痛が起きる
- 腰痛で集中力が切れる
- 血流が悪くて、手がしびれる
- 気分が落ち込んで、Slackの返信すら億劫になる
つまり、身体の不調=キャリアのリスクなんだとようやく気づいた。
「毎日、外に出る」はもう古い? なら、部屋の中に“運動インフラ”を作るしかない
海外にいると、「あ、今日は雨だから外出やめよう」「冬でマイナス5度だし」っていう感じで、運動を後回しにしがち。でもそれって、自分の仕事効率やメンタルを後回しにしてることと同じなんだよね。
そこで僕が始めたのが、仕事部屋をジムにするDIY計画。
大げさに聞こえるけど、実際は以下の3ステップだけ。
- 家具の配置を変えて、マットを敷けるスペースを作る
- 小型のトレーニング器具(ダンベル・チューブ・バランスボール)を常備
- ポモドーロの休憩時間に「1種目だけ運動」ルールを導入
最初は「気が散るかな」と思ったけど、むしろ逆だった。運動すると頭がスッキリして、コードのロジックがすっと浮かぶことが増えた。
実際、運動と脳機能の関係は科学的にも証明されている
実はこれ、気合や根性じゃなくて理にかなったヘルスハックでもある。
たとえば:
- 軽い運動が集中力を高める
→ スタンフォード大学の研究では、20分のウォーキングで創造性が最大60%向上するというデータも。 - ストレッチや筋トレでセロトニンが分泌され、メンタルが安定
→ リモートワークで感じる孤独感にも効果あり。 - 良い姿勢=良い呼吸=良い集中力
→ 背筋を伸ばすだけで思考が整理されやすくなる。
だからこそ、僕らみたいな「脳をフル回転させる仕事」にこそ、“身体のケア”は戦略的に必要なんだと思う。
健康もタスク管理する時代:運動を“ルーティン化”するエンジニア的アプローチ
「運動しなきゃ」と思ってはいるのに、気づいたら今日も座りっぱなし──。
そんな経験、あなたにもきっとあると思う。僕もそうだった。いや、今でもサボる日がある。だけど、「意思の力」に頼らない方法を手に入れてから、健康維持のハードルがぐっと下がったんだ。
キーワードは**「自動化」と「最小ハードル」**。
つまり、“やる気がなくても、自然に動いちゃう仕組み”を作るってこと。これ、まさにエンジニアが得意なやつでしょ?
Step 1|ポモドーロ・タイマー × マイクロ筋トレ
まず試してほしいのが、「25分コード→5分運動」のサイクル。これはポモドーロ・テクニックと呼ばれる集中力管理の有名な方法なんだけど、ここに運動を“インジェクション”するのがコツ。
僕の一例(1時間のブロック)
- 1ポモドーロ目(25分):集中してコーディング
- 休憩(5分):スクワット15回+ストレッチ
- 2ポモドーロ目(25分):レビュー対応・ミーティング準備
- 休憩(5分):ダンベルカール+深呼吸
これをやると、頭がリセットされる+身体が硬直しない+血流アップで眠気予防の三拍子。しかも、「5分だけだから」と思うとハードルが低い。
Slackにも「/remind me to stretch in 25 minutes」って設定して、アプリに“言われて動く”仕組みを作ってる。
Step 2|“見える化”で脳をハックする
エンジニアあるあるだけど、**「ログが残るとやる気が出る」**という現象、ない?
Gitの草を毎日伸ばしたくなるのと同じで、運動も「ログ管理」すると続きやすい。
そこで僕が使っているのが、以下のツールたち:
| ツール名 | 用途 |
|---|---|
| Loop Habit Tracker(Android)/Habitica(マルチ) | 習慣づけアプリ。連続日数が表示されてモチベ維持に効く |
| Google Calendar | 1日1回、15分だけ「フィットネスタイム」と予定をブロック |
| Notion/Obsidian | 運動記録をMarkdownで残しておく(#健康タグを使って自動集計) |
こうすると、「今日もやった」ことが可視化されて達成感が出る。
それに、週末にログを見返すと、「あ、自分なりにちゃんとメンテできてるな」って小さな自信にもなる。
Step 3|準備ゼロ運動ゾーンを作る
“やろうと思ったときにすぐ始められる”って、習慣化の最大のカギ。
つまり、「靴を履く」「服に着替える」みたいなワンアクションが必要だと、人間は一気に面倒になる。
だからこそ、部屋の中に「すぐ動けるゾーン」を作るのがめちゃくちゃ効く。
僕のセットアップ
- デスク横にヨガマット常設
- ダンベルとチューブは椅子の下
- 壁に貼った**ストレッチメニュー(A4)**が目に入る場所に
- PCのロック画面を筋トレのメモにする(笑)
つまり、運動というより“軽い操作”として取り入れる。
「コードを書いたらGitにPushする」みたいに、「ポモドーロ終わったらバンドを引く」が自然な流れになると、完全に生活に溶け込むんだよね。
Step 4|“休む”ことにもエンジニア脳を使う
これ、僕が海外でひとり仕事してる中で一番大事だと思った部分。
日本にいると「疲れたら誰かと飲みに行く」「温泉に行く」「カフェでちょっと一息」みたいな逃げ場があった。でも海外にいると、言語も文化も違うし、**“回復の選択肢が少ない”**んだよね。
だからこそ、回復も“戦略的”に設計する必要がある。
僕が意識している休み方:
- 金曜の午後に「体と脳のフルメンテ日」をセット
→ ヨガ+スーパー銭湯系アプリ+カフェ作業(非エンジニア系読書) - 毎朝10分の瞑想(HeadspaceやInsight Timerを使用)
→ 頭の中の雑音を減らして、感情をリセット - 「今日は集中できないな」という日は**“仕事の代わりに健康投資日”に切り替える**
→ 罪悪感ゼロで、自分に充電
こうすることで、「頑張りすぎて燃え尽きる」ことを未然に防げるようになった。
これって、コードレビューでいう「早めのエラー検出」と同じ発想だよね。
Step 5|「誰かとやる」仕組みも、実は超有効
最後にひとつだけ付け加えると、“健康タスク”も孤独だと続かない。
でも、海外で一人暮らししてると、「一緒にやろうよ」って言える仲間もなかなかいない。
そんなときに便利だったのが、「健康系Discord」や「習慣化コミュニティ」。
僕が実際に参加してよかったのは:
- 健康習慣リモート部屋(Discord):毎朝「おはようストレッチ配信」がある
- Redditのr/fitness30days:月ごとにテーマがあって投稿してモチベ維持できる
- Focusmate:作業タイマーだけど、運動タイムとしても使える
「今日やったよ」って誰かに報告できるだけで、続ける力がまったく変わる。
これ、まさにエンジニアがScrumで進捗報告するのと同じ原理。
集中できない理由は、コードのせいじゃなかった:食・睡眠・姿勢を“デバッグ”せよ
「何か集中できない……」
でもそれ、タスクやプロジェクトの問題じゃなくて、自分の“燃料”と“整備”の問題かもしれない。
運動習慣を少しずつ取り入れてきたことで、体は動くようになった。でも、それでも「なんか乗らない日」がある。
調子が良い日と悪い日の差が激しくて、「今日はダメだな」と諦めてしまうこともあった。
それを救ってくれたのが、**エンジニア視点での“体調ログのデバッグ”**だった。
■ Case 1:コードが書けない日は、だいたい“脳がガス欠”
朝イチから頭が回らない。なんか言語化が遅い。API設計でミスが増える──。
最初は「やる気の問題かも」と思ってた。でも実際は、脳が必要な燃料(=栄養)をちゃんと摂ってなかっただけだった。
✅ 変えたのは“朝ごはん”
在宅勤務だと、「朝食抜き」でコーヒーだけって日も多かった。でもこれ、完全にNG。
脳はグルコース+たんぱく質+微量栄養素がないとパフォーマンスを発揮できない。
特にたんぱく質が足りないと、集中力の元になる神経伝達物質が作られない。
✅ 海外でも手に入りやすい、エンジニア脳向け朝食:
- ギリシャヨーグルト+バナナ+くるみ
- オートミール+プロテインパウダー+冷凍ベリー
- 卵×ライ麦パン×アボカド(脂質で脳の回転アップ)
「何を食べるか」を意識しただけで、午前中の“スタートダッシュ感”が全然違う。
“お腹が空いてるから集中できない”って、実はめっちゃ多い。
■ Case 2:寝つきが悪い=明日の生産性が死ぬ
これは、地味だけど一番深刻だった。
リモートワークで生活時間がずれがちになって、寝つきが悪くなった。
眠りが浅いと、翌日の会議でも言葉が出てこないし、レビューで細かい見落としも増える。
✅ 導入したスリープ・ハック
- 画面の色温度を夜モードに(f.luxやNight Shift)
- 寝る90分前にぬるめのシャワーで体温を一度上げる
- “明日のToDo”を紙に書き出して脳内キャッシュを消す
- 就寝前はKindle読書(紙っぽい画面が眠気を誘う)
これで、“深く寝られる率”がかなり上がった。特に、ToDoを書き出すのはめちゃくちゃ効く。
「あのバグ直さなきゃ…」みたいな無意識のタスクを、寝る前に一旦外に出すのがポイント。
■ Case 3:椅子が悪いだけで、全部が台無しになる
信じられないかもしれないけど、姿勢の悪さは、集中力・メンタル・体調の全部に影響する。
僕が実際にやらかしたのは、IKEAで買った普通の椅子に8時間以上座ってたこと。
その結果:
- 腰がズドンと重くなり
- 頭痛が続くようになり
- 気分も落ち込み、作業効率ががた落ち
✅ 最小投資で姿勢を変えるアイテム
- 低反発ランバーサポート(腰に挟むだけで姿勢が安定)
- フットレスト(足がぶらぶらしてると姿勢が崩れる)
- PCの位置を目線の高さにする台(もしくは空き箱でもOK)
- 立ち作業用のデスクモード(昇降式 or 簡易スタンド)
僕は中古のスタンディングデスクを買ったけど、まずは**「目線を上げる」「腰を守る」の2つだけでもOK。
これだけで「肩が凝らない日」があるだけで、人生めちゃくちゃ楽になる**。
■ メンタルにも地味に効いてくる“体の不調”
エンジニアにとって、体調は単なる「肉体の問題」じゃない。
集中力=脳の活動を支える土台が崩れると、自己評価まで下がる。
「なんかコードが読めない」
「レビューで自信が持てない」
「Slackの返信がしんどい」
──これ、実は身体からくるメンタルのサインかもしれない。
だから僕は、毎日のチェックリストにこう書いている。
- □ 朝ごはん、栄養足りてた?
- □ 今、姿勢は整ってる?
- □ 昨晩、6時間以上寝た?
- □ 「疲れてるだけかも」って考えた?
このチェックだけでも、自分に優しくなれるし、「今できること」に集中できるようになる。
健康を守るって、**自分を正しく評価するための“前提条件”**なんだと思う。
“一生モノの体”を設計する:エンジニア脳で考える健康のロードマップ
運動の習慣化、食事の最適化、睡眠の調整、姿勢の改善。
ここまで紹介してきたことは、どれも“今の自分”を良くするための戦術だった。
でも、僕たちはソフトウェアのように「バージョンアップ」ができる。
そしてそれは、「短期のパッチ」だけでなく、長期的なアーキテクチャ設計があってこそだと思う。
だから最後は、“将来も現役でコードが書ける自分”のために、エンジニア脳で考える健康設計図を描いてみたい。
■ Health-as-Code:人生における「技術的負債」を減らす
技術的負債って、書いたときは便利だけど、将来的にどんどん首を絞めるやつ。
健康もまったく同じで、「今ラクだから」と運動を先延ばしにしたり、「今だけ」とジャンクフードを食べ続けたりすると、それが後々の“バグ”として現れる。
- 肩こり → 慢性頭痛
- 腰痛 → 歩行困難
- 睡眠不足 → 認知機能の低下
- メンタル不調 → 社会的孤立
ここから抜け出すには、「未来の自分が困らない設計」を今からやること。
つまり、Health-as-Code:自分の体にも設計思想を持ち込むってことなんだ。
■ 僕がやっている“ヘルス設計3原則”
① “パフォーマンス・バッファ”を持つ
プロジェクト設計と同じで、常に100%稼働を前提にしない。
疲れて動けない日、体調が悪い日、心が沈む日……海外で一人だと余計にそういう日が増える。
だから、最初から「週に1日は全休する」「3日に1回は完全にPCに触れない日を作る」って決めてる。
これがあるだけで、回復に追われる生活じゃなく、整えて働ける生活が作れる。
② “再起動できるルーチン”を仕組みにしておく
たとえば病気になったり、出張でリズムが崩れたり、引っ越ししたりすると、健康習慣は一気にリセットされる。
だからこそ、**「ゼロからでも再起動できる健康ルーチン」**をあらかじめ定義しておくと強い。
例:
- 朝起きたら白湯を飲む(体内スイッチ)
- 10分だけストレッチ(動きの起点)
- 昼食前に5分散歩(光+空気リセット)
→ たったこれだけでも「健康モード」への入り口ができる。
③ “人生全体”を走りきるアーキテクチャを意識する
僕たちは、20代だけじゃなく、30代、40代、50代になってもコードを書き続けたい。
そう考えたとき、短期のハックだけでは足りない。
だから、
- 腰に負担がかからない椅子に“投資”する
- 健康保険や海外保険の内容を“設計”する
- 将来的な体調変化に備えて“学びの棚卸し”をする
……こうした「未来への予測と対策」こそ、本質的なエンジニアの視点だと思う。
■ “ひとりでも続けられる”を設計できたら、どこでも生きられる
海外で一人働くって、言葉以上に孤独と戦うことが多い。
誰にも「大丈夫?」って聞かれないし、無理をしても誰も止めてくれない。
だからこそ、**自分の体の声を一番近くで聞いてくれる“システム”**が必要なんだ。
- 朝の気分をチェックする簡単なログ
- 瞑想アプリでのメンタルのリセット
- 食べたものや睡眠の記録を可視化するツール
これらはただのツールじゃない。**“孤独を超えて、自分を守るための仕組み”**だ。
それが設計できれば、どこにいても、どんな働き方をしても、自分のペースで走り続けられる。
■ 健康は「成果」じゃなく「前提条件」
最後に。
僕は長い間、「運動してる人は意識高い」とか、「健康にこだわるのは暇な人」ってどこかで思ってた。
でもそれは完全に逆だった。
健康って、“成果を出すための土台”であり、“自分らしく働くための前提条件”だった。
コードのように、見えにくいけど重要な「基盤レイヤー」。それを無視して積み上げても、どこかで崩れる。
だからこそ、エンジニアこそ、健康に設計思想を持ってほしい。
それが、長く働く、楽しく生きる、一番シンプルで強力な武器になるから。

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