はじめに
「集中したいときは、とりあえずコーヒーを飲めばいい」
昔の僕は、心からそう信じていました。
C# WPFでのUI設計を毎日こなす生活。
締め切りが近づくと、エスプレッソを二杯立て続けに飲んで、夜中までコードを書き続ける。
「これがプロのエンジニアの姿だろう」なんて、勝手に思い込んでいたんです。
でも、海外で働き始めて、衝撃を受けました。
周りのエンジニアたちは、僕が信じていた「集中の常識」をことごとくひっくり返してきたんです。
カフェイン=集中力? その神話を疑う
日本にいた頃は、残業文化とカフェイン文化がほぼセットになっていました。
「とにかく頑張る → 夜遅くまでやる → 眠いからコーヒー → また頑張る」
このループが、集中力の正しい使い方だと信じて疑わなかった。
でも、海外のチームに入ってまず驚いたのが、
「夜遅くまで頑張る」ことに価値を置いていない ということ。
それどころか、午後7時にはほとんどのメンバーがオフィスを出て、
「じゃあまた明日!」と笑顔で帰っていく。
僕だけが机に残り、冷めかけたコーヒーを片手にモニターを見つめていた。
そのとき、ふと気づいたんです。
「これって、本当に効率いいのか?」って。
コーヒーでは勝てない「集中の質」
実際、同じUIの仕様検討でも、
彼らは午前中の2時間くらいでサクッと議論をまとめ、
僕は午後いっぱいかけても結論が出せない。
「彼らが頭いいからだ」
「英語が母国語だから議論が早いんだ」
最初はそう思っていました。
でも、よく観察してみると違いました。
彼らはただ、集中力の“ピーク”を知って、それを最大限に活かしているだけだったんです。
たとえば、ある同僚のUIデザイナーは毎朝9時にデスクに座ると、
まずはメールもSlackも開かず、いきなりFigmaを立ち上げてデザイン作業に入ります。
その2時間は完全に「深い集中」のモード。
彼の言葉を借りるなら「朝の脳は、コーヒーよりずっと強力なエネルギードリンク」だそうです。
「集中の常識」を疑うことから始まった
そこから僕は、自分の集中の仕方を見直し始めました。
「眠気をカフェインで誤魔化す」んじゃなくて、
「そもそも眠くならない働き方」をどう作るか。
「夜中まで頑張る」んじゃなくて、
「短時間で深く集中する」方法を探す。
最初は半信半疑でした。
でも、試してみると、驚くほどパフォーマンスが変わっていったんです。
そしてあるとき、同僚から言われた一言が今でも忘れられません。
「Hiro、君は頑張りすぎなんだよ。集中は“頑張る”ものじゃなくて、“整える”ものなんだ」
この先に続く話
もちろん、ここで終わりではありません。
じゃあどうやって「整える」のか?
その答えは、決して特別な才能や高価なツールじゃありませんでした。
むしろ、ちょっとした習慣や環境の工夫、そして「神話を疑う姿勢」だったんです。
次のステップでは、
- 「午後の集中力が落ちるのは当たり前」
- 「短時間の休憩はむしろ効率を上げる」
- 「夜型より朝型の方が有利な理由」
こうした「集中の神話」をひとつずつ壊しながら、
実際に海外で働くUIエンジニアがどうやって深い集中を手に入れているかをお話しします。
「深い集中」を取り戻すために僕が試したこと
前回は「集中=カフェイン依存」という神話を疑い始めたところまでお話ししました。
ここからは、実際に僕が海外で働く中で気づいた「集中を整えるための工夫」を紹介します。
午前中を“黄金タイム”に変える
まず最初にやったのは、午前中をとにかく死守すること。
以前の僕は、朝出社したらメールやSlackをざっと確認して、そこからなんとなく仕事を始めるのが習慣でした。
でも同僚から言われたんです。
「Hiro、メールは午後でいいよ。午前は君のゴールデンタイムだ」
最初は「いや、連絡を無視したらまずいでしょ」と思いました。
でも試しに午前中は完全に「通知オフ」にして、UI設計の作業に集中してみたんです。
結果、驚きました。
いつも午後いっぱいかかっていた画面レイアウトの検討が、午前中の2時間で終わってしまったんです。
そこではっきり理解しました。
**「集中は時間の長さじゃなくて、ピークに合わせることが大事なんだ」**と。
カフェインはタイミングがすべて
もちろん、僕もまだコーヒーは飲みます。
ただし、飲むタイミングを変えました。
以前は、出社してすぐ「とりあえず1杯」でした。
でも、スタンフォードの神経科学者アンドリュー・フーバーマンのポッドキャストを聞いて知ったんです。
**「起きてすぐカフェインを取ると、体内リズムが狂って午後にだるくなる」**って。
そこで、僕は朝の1〜2時間は水だけにして、コーヒーは午前10時頃に飲むようにしました。
すると、不思議なくらい午後の眠気が減ったんです。
同僚にその話をすると、彼らも口を揃えて「そうそう、それが正解だよ」って笑う。
「眠気覚まし」じゃなくて「集中の持続」に使う。
これが本当のカフェインの力の使い方なんだと気づきました。
「短い休憩はサボりじゃない」
日本にいた頃は「休憩=サボり」というイメージが強かったです。
オフィスで席を立ってばかりだと「やる気がない」と思われるのが怖かったんです。
でも海外の職場では、みんな30分に一度くらい、自然に席を立って歩き回ったり、外で深呼吸して戻ってきたりする。
最初は「こんなに休んで大丈夫なの?」と思いましたが、実はこれが集中の秘密だったんです。
人間の脳は「ウルトラディアンリズム」と呼ばれる約90分周期で集中の波があるそうです。
つまり、90分ごとに小休憩を入れるのが理にかなっている。
実際に僕も、タイマーを90分に設定して、時間が来たら無理やりでも席を立つようにしました。
すると、午後になっても頭がスッキリしていて、UIの複雑な画面遷移の設計もスムーズに進むようになったんです。
夜型神話を壊す
もうひとつ、大きく変えたのは生活リズムです。
日本にいたときの僕は、完全に夜型。
夜中に音楽を聴きながらコードを書くのが「クリエイティブなエンジニアっぽい」と思っていました。
でも海外に出て、朝型で働く同僚たちを見て気づきました。
**「夜型は格好よくても、生産性では朝型に勝てない」**という事実に。
朝の頭は、本当に別物なんです。
WPFで複雑なデータバインディングを整理する作業なんて、夜だと2時間かかるのに、朝やると30分で終わる。
しかも、バグも少ない。
だから今では、夜はできるだけ早めに寝て、朝に「一番難しい作業」を持ってくるようにしています。
夜型だった頃の自分からしたら信じられないですが、結果がすべて証明してくれました。
「集中は整えるもの」という気づき
こうして振り返ると、僕がやったことは特別なことではありません。
- 午前中を死守する
- カフェインを正しいタイミングで使う
- 90分ごとに休憩する
- 朝型の生活に変える
たったこれだけです。
でも、この小さな習慣の積み重ねが、僕の仕事の質を大きく変えました。
以前は「夜遅くまでやって、なんとか終わらせる」が当たり前だったのが、
今では「短時間で深く集中して、時間内に仕上げる」ができるようになったんです。
そしてようやく、同僚の言葉の意味を理解しました。
「集中は頑張るものじゃなくて、整えるもの」
これはただのモットーじゃなくて、僕にとっては働き方を根本から変えた真実です。
集中を壊す「見えない敵」との戦い
ここまででお話ししたように、集中を整える基本の習慣はある程度つかめました。
でも、実際の仕事では 「整えた集中をぶち壊す敵」 が次々に襲ってきます。
しかもその敵は、外からだけじゃなく、自分の内側からもやってくる。
ここからは、僕が海外で働きながら出会った「集中を邪魔するもの」と、それをどう乗り越えたかを紹介します。
敵その1:通知の洪水
WPFの画面設計に没頭しているときに限って、Slackが「ピコン」と鳴る。
メールが「未読: 15件」と赤く光る。
気になって開いた瞬間、頭の中の思考の糸がプツンと切れる。
これ、日本にいた頃は当たり前でした。
「即レスこそプロ」という文化があって、少しでも返信が遅れると「対応が遅い」と言われる。
でも海外に来て驚いたのは、みんな 通知を完全に切っている こと。
Slackもメールも「見る時間」を決めて、それ以外はオフ。
最初は「そんなに無視して大丈夫?」と思いました。
でも実際、彼らの方が生産性も高いし、成果物の質もいい。
つまり、「通知に振り回されないことこそプロ」だったんです。
僕も真似して、Slackを午前と午後に1回だけチェックするルールを導入しました。
最初は手がムズムズして落ち着かなかったけど、2週間くらいで慣れました。
結果、UIの設計レビュー資料を以前より早く仕上げられるようになった。
敵その2:オープンオフィスの雑音
海外のオフィスはオープンスペースが多いです。
それはいいんですが、隣の人が電話していたり、後ろで議論が始まったりすると、集中は一瞬で崩れます。
最初は「仕方ない」と思っていたけど、ある日同僚に「ノイズキャンセリングのイヤホン使ってる?」と聞かれました。
正直、音楽を聴くと集中できないタイプだったので避けていたんですが、騙されたと思って試してみたんです。
すると、これが革命的でした。
音楽を流さなくても、ノイキャンだけで頭が静かになる。
それだけでコードレビューが一気に捗るんです。
「環境に文句を言うより、環境をコントロールする」
この発想を学んだ瞬間でした。
敵その3:内なる批判者
一番やっかいだったのは、実は「自分の心の声」でした。
海外で働き始めた頃、英語の会議で意見を言おうとしても、
頭の中で「この英語は正しいのか?」「間違ったら笑われるんじゃないか?」と声がして、口が重くなる。
結果、発言できずに会議が終わる。
終わった後は「やっぱり自分はダメだ」と落ち込む。
これが続くと、集中どころじゃなくなります。
頭の半分は「どう思われるか」で占領されて、本来の作業にリソースを割けないんです。
そんなとき、ある同僚に言われた言葉が救いになりました。
「Hiro、完璧な英語はいらないよ。僕らが欲しいのは君の考えだ」
その一言で、ガラッと意識が変わりました。
「うまく話す」じゃなくて「伝えること」に集中すればいいんだ、と。
すると不思議と心の声が静かになって、作業にも集中できるようになりました。
敵その4:マルチタスクの罠
これは僕が自分で自分を苦しめていたパターンです。
「同時に進めれば効率的だろう」と思って、
- UI設計書を書きながらSlackの返信
- コードレビューしながらTeams会議
みたいなことをやっていました。
でも結果は散々。
どちらも中途半端になり、かえって時間がかかる。
調べてみると、人間の脳は「マルチタスク」を処理できないそうです。
実際には「タスク切り替え」を高速で繰り返しているだけで、そのたびに集中が失われる。
そこからは、「ひとつのことに全集中、終わったら次へ」と徹底しました。
UI設計ならUI設計だけ、レビューならレビューだけ。
これだけで、仕事の質とスピードが両方上がりました。
敵を乗り越えるカギは「手放す」こと
振り返ると、集中を壊す敵に共通しているのは、
「全部やろう」「全部受け止めよう」としていた自分でした。
- 通知に全部反応する
- 環境の雑音を全部我慢する
- 内なる批判を全部真に受ける
- マルチタスクで全部同時にこなそうとする
これらを「手放す」ことで初めて、本当に集中できるようになったんです。
「集中を習慣にする」ことで見えた景色
ここまで紹介してきた工夫や気づきは、最初はただの「試し」でした。
でも、実際にそれを 習慣化 してみると、仕事も人生も驚くほど変わったんです。
習慣化の第一歩:小さく始める
最初から全部を完璧にやろうとしたら、きっと挫折していました。
だから僕は「ひとつだけ守る」を意識しました。
最初に決めたのは、
「午前中は通知を見ない」 これだけ。
Slackもメールも午前中は完全シャットアウト。
同僚にも「午前中は集中タイムだから、急ぎは直接話しかけて」と伝えておきました。
するとどうでしょう。
たったそれだけで、午前中の生産性が劇的に上がったんです。
午後には少し余裕が生まれ、気持ち的にも焦りが減りました。
この成功体験が、次の習慣への自信につながったんです。
習慣を支える「見える化」
次にやったのは、自分の集中を見える化すること。
僕はタスク管理アプリに「集中ブロック」という予定をカレンダーに入れるようにしました。
たとえば午前9時〜11時は「UI設計集中ブロック」。
それ以外はあえて予定を入れず、自由に動けるようにする。
カレンダーにブロックが入っていると、不思議と「ここは守らなきゃ」と思えるんです。
これは海外の同僚から学んだテクニックで、彼らは「自分との約束」と呼んでいました。
さらに、終わった後に「どれくらい集中できたか」を★1〜5でメモしていくと、
だんだん「どういう条件だと集中できるのか」が見えてくるんです。
僕の場合、★5の日は必ず「朝の散歩をした日」でした。
逆に★2以下の日は「夜更かしした日」。
こうやってデータで見えると、自分の傾向がハッキリしてきて、改善もしやすくなりました。
チームに広げる
面白いのは、この集中の工夫がチーム全体にも広がったことです。
あるとき、同僚に「午前中は通知オフにしてるんだ」と話したら、
「それいいね、僕もやるよ」と真似してくれました。
さらに「じゃあ午前中はみんな集中タイムにして、午後にまとめてミーティングしよう」という流れになったんです。
結果、チームの生産性が全体的に上がり、締め切り前の残業が激減しました。
「集中を習慣にする」ことは、個人だけじゃなくチーム全体に波及するんだと実感しました。
成果として現れた変化
こうした習慣が定着すると、仕事の成果にもはっきり表れました。
- 以前は3日かかっていたUI設計レビュー資料を、1日半で完成させられるようになった。
- コードレビューで指摘されるバグの数が減った。
- 会議での発言も増えて、「Hiroは落ち着いていて論点が整理されている」と言われるようになった。
特に大きかったのは、「焦り」が減ったことです。
集中が習慣になると、「やるべき時間にやるべきことをやれば終わる」と信じられる。
その安心感が、エンジニアとしての自信にもつながっていきました。
人生の余白が広がる
集中が習慣になると、仕事の時間が短縮されただけでなく、人生に余白が生まれたのも大きな変化でした。
以前は「仕事が終わらないから夜遅くまで残る → 翌日寝不足で効率が落ちる → また残業…」という悪循環でした。
でも今では定時で帰れる日が増え、趣味のランニングや読書に時間を使えるようになった。
特に印象的だったのは、週末に頭がスッキリしていること。
昔は「疲れ果てて寝るだけの休日」でしたが、今は「新しい技術を勉強したり、ブログを書く余裕」がある。
これがキャリアにもいい循環をもたらしているんです。
最後に伝えたいこと
ここまで話してきたことをまとめると、集中を習慣にするポイントは3つです。
- 小さく始める – まずは「午前中は通知を見ない」だけでもいい
- 見える化する – 集中ブロックをカレンダーに入れて、自分の状態を記録する
- チームに広げる – 習慣は共有することでさらに強固になる
海外で働きながら学んだのは、集中は「才能」でも「根性」でもなく、工夫と習慣の積み重ねだということです。
かつての僕のように「コーヒーと残業でなんとかする」時代から、
「習慣と工夫で集中を整える」時代へ。
このシフトを経験できたことは、エンジニアとしても、人としても大きな財産になりました。
結論
もし今、あなたが「集中できない」「仕事が終わらない」と悩んでいるなら、
答えは意外とシンプルです。
「集中を頑張る」のではなく、「集中できる環境と習慣を整える」
それだけで、見える景色は一気に変わります。
そしてその変化は、仕事だけじゃなく、人生全体を豊かにしてくれます。
僕自身、まだ完璧ではありません。
でも少なくとも、今の僕はもう「コーヒーに頼って夜中まで粘るエンジニア」ではなくなりました。
代わりに、「集中を整えることで、余裕を持って成果を出すエンジニア」になれたと胸を張って言えます。
あなたもぜひ、自分だけの「集中を整える習慣」を見つけてみてください。
それが、エンジニアとして長く戦い続けるための、最高の武器になるはずです。

コメント