コードレビュー、それは英語力のブートキャンプだった。
正直に言うと、最初はビビってました。
「コードレビューに英語?」
「レビューって技術的な内容だけじゃないの?」
「自分の英語、ネイティブに通じるのかな……?」
そんな不安を胸に、僕は海外のチームに飛び込みました。主にC#のWPFアプリケーションを開発するポジションで、設計から開発までを担当。技術にはある程度自信があったけど、英語にはまったく自信なし。特に、「書く英語」「読む英語」はなんとかなるけど、「レビューされる英語」「レビューする英語」となると、もう未知の世界。
でも結果的に言うと、このコードレビュー文化が、僕の英語を強くしてくれました。
今回は、僕がどうやってコードレビューを通じて英語力を鍛えていったのか、どんな英語表現を覚えたのか、そしてそれがどうキャリアやチーム内での信頼につながっていったのかをシェアしたいと思います。
海外に出て最初の「英語の壁」は、意外とSlackじゃなかった。
「海外チーム=英語コミュニケーション」というイメージがあるけど、実際に働き始めてまずぶち当たったのが、Pull Request(PR)のレビューコメントだった。
チャットや会議の英語は、ある程度予想できるし、顔を見ながらならジェスチャーや表情でも助けてもらえる。でもGitHubやAzure DevOpsのコメントはそうはいかない。完全に「文章で」「的確に」「技術的に」やり取りしなきゃいけない。
しかも、レビューっていうのは「相手のコードを読む」「意図を汲み取る」「問題があればやんわりと指摘する」という、高度なやりとり。
つまり英語の敬語・配慮・論理構成が問われる場所なんです。
英語レビューコメント、最初のうちは地雷原。
最初の頃、僕が書いてたレビューコメントはこんな感じ。
This code is bad. You should fix it.
……やばいでしょ?今なら分かる。完全に失礼。
でも、当時の自分には「丁寧に書く英語の感覚」がなかったんです。
上司に軽く指摘されて(優しくね)、徐々に改善していきました。例えばこう。
I think this method could be simplified a bit to improve readability.
Maybe consider extracting the logic into a separate function?
たったこれだけで、全然印象が違うんですよ。
英語には「やんわり言う文化」「提案として伝える文化」があるんだなって、初めて理解しました。
コードレビューは英語表現の宝庫だった。
僕が気づいたのは、コードレビューのコメントって、実はものすごくパターン化されてるってこと。
例えば以下のような表現:
- “Could you consider renaming this variable for clarity?”
- “Nice catch! Just a minor suggestion here.”
- “Is there a reason we’re doing it this way instead of using X?”
- “LGTM (Looks Good To Me), just one nitpick.”
最初はコピー&ペーストで覚えました。
でも、だんだんと「英語でどう丁寧に言うか」「どう論理立てて説明するか」が自然と身につくようになってきた。
テック英語は、学校で習った英語じゃない。
これはほんとに痛感しました。
テック英語って、**「技術×ビジネス×文化」**のミックス。
例えば、「冗長です」と言いたい時、日本語なら一言で済むけど、英語で直訳するとキツい印象になりがち。でも、以下のように言えばスムーズに伝わる。
This part might be a bit verbose; maybe we could simplify it?
この「might be」「maybe」「we could」っていう緩衝材の使い方は、レビューで毎日目にするから、自然と自分も使うようになる。
僕が使った「学習法」は、ズバリ「模写」と「逆翻訳」
まずやったのは、他のエンジニアのレビューコメントをひたすらコレクションすること。
- GitHubのPRを開いて、ベテランエンジニアのコメントを読む
- 「これは使えそう」と思ったフレーズをNotionにメモ
- 自分がコメントを書くときに、その表現を真似して使う
そして、レビューを受けた自分のPRのコメントをGoogle翻訳で訳してみて、「どんなニュアンスだったのか」をチェック。
英語→日本語→再び英語という逆翻訳をやることで、「英語でこう書くとこう伝わるのか」という実感が湧いた。
実際、英語力はどう変わったのか?
3ヶ月も経つと、自分でも驚くほどレビューコメントのやり取りがスムーズに。
コードレビューを通じて、次のような変化がありました。
- 単語力アップ(特にソフトウェア開発に特化した単語やフレーズ)
- 文章構成力アップ(結論→理由→提案、という流れが自然にできる)
- 「英語で褒める」「英語で提案する」マインドセットが身についた
そして何より、チームからの信頼がグッと増した。
レビューコメントは「英語教材」だった。実践で磨いたリアル英語フレーズと文化ギャップ。
コードレビューが始まると、最初に直面するのは**“あれ、なんて書けば失礼にならないんだ?”問題**です。
「ここ、変だよ」って言いたくても、直訳したら完全に攻撃的になる。
逆に、優しく書きすぎると何も伝わらない。
じゃあ、どうする?
僕がたどり着いたのは、レビューコメントには“黄金パターン”があるということでした。
それに気づいてから、レビューコメントは“英語の実戦教材”に早変わりしました。
僕が実際に使ってきたレビュー英語:基本フレーズ集
1. 提案・代替案を伝えるとき
Maybe we can consider using `ObservableCollection` instead of `List` here for better data binding support?
- ポイント:**”Maybe” + “we can consider”**で、強く否定せず提案する。
- よくある場面:WPFのUIバインディングで
Listを使っていた場合。
2. 軽めの指摘(優しめ)
Just a minor suggestion, but naming this variable more explicitly might help readability.
- ポイント:“just a minor suggestion” というクッション言葉。
- よく使う場面:変数名がちょっと曖昧なとき。
3. ベストプラクティスを促す
This works, but have you considered using MVVM pattern here to keep logic separate from UI?
- ポイント:「これは動くけど、〜を考えた?」という提案形が多用される。
- よくある場面:コードが動くけど、設計的に気になる場合。
4. ナイスなコードを褒める(信頼構築)
Nice use of `INotifyPropertyChanged` here. This will make the UI updates much smoother!
- ポイント:褒めはレビューの潤滑油。
- よく使う場面:地味だけど大事な設計や工夫が見えたとき。
英語レビュー文化で感じた“日本と海外の違い”
■ 1.「指摘」より「提案」が基本
日本のレビュー文化って、わりと「間違いを見つけて修正させる」スタイルが多めだけど、海外(特にアメリカの企業)では**「指摘ではなく提案」**が基本。
つまり:
- 「ここ直して」→ ❌
- 「〜という理由で、こうした方がいいかも?」→ ⭕️
こうした文化の違いが、英語の使い方にも直結する。
■ 2.レビューコメントは“対話”である
英語圏では、レビューコメントは「議論してよいもの」として捉えられている。
たとえばこんなやりとり:
Reviewer: Have you considered extracting this logic into a separate class?
Me: That makes sense. I’ll refactor it.
(または)
Me: That’s a good idea, but I was trying to avoid introducing another class due to X reason.
つまり、「意見のキャッチボール」が前提になっている。
これは日本の「レビュー=指摘されて修正するだけ」という感覚とは真逆だった。
■ 3.「レビューで信頼が育つ」ことの実感
レビューは単なる指摘の場ではなく、「この人、ちゃんと考えて書いてるな」「ちゃんと他人のコードを読んでくれてるな」という信頼を育てる場でもある。
レビューに丁寧に応えるようにしていたら、徐々にチームの信頼度がアップしてきて、
- 「〇〇の設計レビューやってくれない?」と頼まれるように
- 「リーダーシップあるね」と評価されるように
このプロセスの裏にあるのは、**“テクニカル英語が話せる=プロとしての評価につながる”**という構造だった。
“見て真似る”が、非ネイティブの学習スタートライン
僕のやり方は本当にシンプルでした:
- Pull Requestを読む(特に他の人のやつ)
→ 経験豊富なエンジニアのコメントが最強の教材 - Notionに“使えるフレーズ集”を作る
→ 実際のやりとりからそのまま保存 - 自分のPRで積極的に使ってみる
→ 最初は変でもいい、どんどん書く - レビューされたコメントを逆翻訳して理解する
→ 意味やニュアンス、表現の意図を分析する - Slackや会議でも、同じ表現を再利用
→ レビューで覚えた英語は、すぐ日常業務で使える
コードレビューで得た“副産物”の数々
英語力だけじゃない。レビューで得たのはこんな力でした:
- 設計の引き出しが増えた:人の設計を読み解く力がつく
- 論理的な説明力がついた:「なぜそうするのか?」を説明する訓練になる
- チーム内での可視化された貢献:レビューコメントは“記録”として残るため、実績になる
失敗とズレから始まった、“英語レビュー恐怖症”の正体
コードレビューを通じて英語を学ぶ――
そう言うと、なんだかスマートに聞こえるかもしれませんが、現実はけっこう泥臭いものでした。
特に海外チームに入ったばかりの頃は、レビューコメントが刺さりまくって、正直メンタル削れてました。
■ ある日のレビューで心が折れかけた話
僕がそのとき提出したのは、WPFの小さなUIモジュールでした。MVVM構成で、データバインディングとアニメーション付きのユーザー操作を担当。コード量としてはそれほど多くない。でも、ちょっとロジックが複雑になっていたのは自覚していました。
そして返ってきたレビューがこちら:
This seems unnecessarily complex. Is there a specific reason for doing it this way?
Also, naming could be improved to reflect the actual behavior.
え?「不必要に複雑」?
しかも「名前もイケてない」って言ってる?
めちゃくちゃ落ち込みました。
日本語で「複雑すぎる」と言われてもそこまで気にならないのに、英語で言われるとなんだか**“人格まで否定された”ような気分**になってしまう。
今思えば完全に思い込みなんですが、当時の僕にはそう聞こえてしまったんです。
■ 英語レビューでの“誤解”は、ほとんど文化のズレから来る
後で分かったことですが、英語レビューでは**“問題点を論理的に説明することが礼儀”**なんです。
つまり、遠回しにほめてごまかすより、ストレートに「ここは直すべきだ」と書くほうが、むしろ誠意あるコミュニケーションとされる。
その結果、こんな風に感じやすくなる:
- 「冷たい」→ 実は“誠実”
- 「ストレートすぎる」→ “誤解を防ぐために明確に書いてる”
- 「否定された」→ 実際は“建設的な改善提案”
レビュー文化の“翻訳”ができるようになるまでは、毎回心がジェットコースター状態でした。
■ “英語レビュー恐怖症”から抜け出す転機になった一言
ある日、Slackでペアになっていたエンジニアが、僕にこう言ってくれたんです。
“Your comments are getting sharper lately. That’s a good sign in our team.”
「コメントが鋭くなってきたね。それはうちのチームではいい兆候だよ。」
最初は意味がよくわかりませんでした。
でも彼は続けてこう言いました。
“We care about the code, so we point out the details. Silence means indifference.”
「僕らが細かいところまで言うのは、コードにちゃんと向き合ってるからだよ。何も言われないってのは、関心がないってことだからね。」
このとき、レビュー文化の根底にある価値観がようやく見えた気がしました。
■ 僕がやってしまった“やらかし”コメント
ところで、逆に僕がレビューコメントで失敗した例もあります。
以下は実際にやらかしたパターン。
This code is not good.
→ 一発アウトです。
(相手の心に火がつきます)
何が悪いかも書かず、「not good」とだけ言われたら、ネイティブでもカチンときます。
その後、以下のように言い換えることで、ちゃんと伝わるようになりました。
This implementation works, but I'm wondering if there's a more efficient way to achieve the same result.
Would you be open to exploring an alternative approach?
“I’m wondering if…” “Would you be open to…”
こういった表現は、批判ではなく提案として受け取ってもらいやすくなります。
■ 英語レビューで気をつけるべき3つのポイント
① 感情を入れずに、構造で伝える
- ❌「なんか変です」
- ✅「This breaks the MVVM separation since the ViewModel is now referencing the View.」
② “相手の立場”を考慮する(デバイスはローカルじゃない)
たとえば、自分の環境では動いても、相手の言語設定やOSロケールが違えばUIが壊れることがある。
レビューで「Works fine on my machine」と言いがちな時こそ、ローカル前提を疑うクセが大事。
③ “誰かが見ている”という意識を持つ
GitHubやAzure DevOpsのコメントは記録に残ります。
これはつまり、「将来の自分が読む」可能性もあるということ。
だからこそ、以下のようなテンプレはとても役立ちます:
Comment: Consider extracting this block as a helper method.
Reason: It improves readability and reduces duplication, especially if reused elsewhere.
■ 文化を理解することで、英語の“聞こえ方”が変わる
最後に、僕がレビューでの失敗と向き合う中で実感したこと。
英語は言語であると同時に、“文化の表現”でもある。
つまり、英語レビューの表現が“冷たく”見えるとき、それはその文化の期待値が違うだけであって、悪意ではない。
この「文化的翻訳」ができるようになると、レビューコメントを怖がらなくなります。
むしろ、「この人、本気でコードを見てくれてる」と思えるようになる。
レビューは怖くない。非ネイティブだからこそ育つ「伝える力」と「技術力」
コードレビューを通じて英語を学ぶ日々は、最初こそ不安だらけでした。
でも、今振り返ってみると、このプロセスは単なる「英語の学習」ではなく、
「異文化の中で生き抜く力」や「伝える技術」を育てる旅だったと実感しています。
■ コードレビューを“学習の場”に変えた瞬間
最初のうちは、「間違いを指摘されないように」とか、「英語がヘンだと思われたくない」という意識でいっぱいでした。
でもある時から意識が変わりました。
「このやり取りを、自分の語彙を増やす材料にしよう」
「どうせやるなら、“伝わる英語”を毎回意識して試そう」
そう思うようになってから、レビューを「怖い時間」から「貴重なインプットとアウトプットの場」へと変えることができました。
実際、以下のような“成果”が見える形で現れてきます。
■ 僕がレビュー英語で得た3つの“副産物”
① 自分の書いたコードの「意図」を説明する力がついた
レビューを通じて何度も自分の設計や実装方針を聞かれるうちに、「なぜこのコードを書いたのか?」を英語で論理的に説明するスキルが磨かれました。
今では仕様レビューや設計ミーティングでの英語発言も、ほとんど抵抗がありません。
② “質問する勇気”が持てるようになった
非ネイティブにとって「聞き返す」「確認する」ってけっこうハードル高いんですよね。
でも、レビューでのやり取りを繰り返すうちに自然とこんなことが言えるようになりました。
Just to clarify, are you suggesting refactoring the whole class or just this method?
Could you elaborate a bit on why this pattern is preferred in this case?
✔️ 英語が上手いかどうかではなく、「明確に確認する姿勢」こそが信頼を生む。
この体験は、ミーティングやチャットでも大きく役立つようになりました。
③ 海外チームで“頼られる存在”になれた
レビューコメントを丁寧に書くようにしていたら、ある日アメリカ人の同僚にこんな風に言われたんです。
“I really appreciate the level of detail you put into your comments. They’re always constructive.”
これは僕にとって大きな自信になりました。
英語がネイティブじゃなくても、丁寧な観察力と伝える努力は伝わる。
レビューはその証明になったのです。
■ 非ネイティブエンジニアにとっての“英語レビュー”の3つの意味
僕にとって、英語レビューとは単なるコードチェックではありませんでした。
以下の3つの力を同時に鍛える、「筋トレの場」だったんです。
| 力の名前 | 内容 | 成果例 |
|---|---|---|
| 1. テクニカルライティング力 | 技術を論理的に英語で伝える力 | 設計レビュー、アーキテクトとのディスカッションで活躍 |
| 2. 語彙・構文力(専門特化) | テック業界特有の表現・単語が身につく | 他のメンバーのレビューがすぐ理解できる |
| 3. 異文化理解&マインドセット | “異なる価値観”をリスペクトする力 | コメントの意図を誤解しなくなった |
■ これから英語レビューに挑戦するあなたへ:実践アドバイス
僕のように、海外でエンジニアとして働きたい、あるいはリモートで国際チームに加わりたいと思っている人に向けて、ここに具体的なアドバイスをまとめます。
💡1. “コピーして真似る”ことを恐れない
まずはベテランのレビューコメントを観察→模写。これは語学学習と同じで、「音読」のようなものです。
Suggestion: Consider renaming this method to better reflect its purpose.
→ 自分も次からこう書いてみる。それだけでも一歩前進です。
💡2. “フレーズ集”を持ち歩こう(Notionが便利)
僕は以下のようなカテゴリで整理してました:
- 提案系コメント(Suggest)
- 修正依頼系(Refactor / Fix)
- 質問系(Clarify / Confirm)
- 褒める・肯定する系(Nice Work / Looks Good)
空き時間に軽く眺めるだけでも、レビュー時の表現力がアップします。
💡3. 英語力よりも“態度と姿勢”が大事
完璧な英語を話せなくても、
- 伝えようとする姿勢
- 礼儀を持ってフィードバックする姿勢
- 相手の意図を汲み取ろうとする姿勢
この3つさえあれば、国境を超えて信頼されます。
■ おわりに:レビューは“武器”になる
英語レビューは怖くない。
むしろ、それを“武器”にして、あなたの価値を伝えるチャンスにできます。
僕自身、「英語苦手だな……」とずっと思ってました。
でも今は、コードレビューの場が、英語を鍛え、信頼を築き、キャリアを切り開く最高の舞台だったと思っています。
ぜひ皆さんも、コードレビューという「戦場」で、武器としての英語を育ててください。

コメント