- 静かに忍び寄る“2025年型バーンアウト”
- ―サブタイトル:気づかないうちに限界ラインを踏んでいないか?―
- ■「工程表ではなく、人生が詰む」
- ■「ハッスル文化」という落とし穴
- ■「昔のやり方では、もう防げない」
- ■「静かに壊れる」
- ■「この問題は、技術よりも“生存戦略”の話だ」
- ■このシリーズで伝えたいこと
- バーンアウトが引き起こす“静かな崩壊”
- ―サブタイトル:心が限界を迎えると、人生のすべてが少しずつ傾き始める―
- ■① 思考力と判断力が、驚くほど落ちる
- ■② モチベーションが「ゼロ」ではなく「マイナス」へ向かう
- ■③ 仕事のミスが増え、自己嫌悪で自分を削る
- ■④ プライベートにも影響が出る
- ■⑤ 海外エンジニア特有のバーンアウト
- ■⑥ そして、最終的に「辞めたい」という感情が生まれる
- ■⑦ 燃え尽きは“突然”表に出る
- ■「承」まとめ
- 逆転のカギは“休むこと”ではなく“整えること”だった
- ―サブタイトル:限界の先にあったのは、「無理しない」だけでは辿り着けない再起動術―
- ■① バーンアウトに気づいた瞬間が、回復のスタートライン
- ■② “頑張る”の定義を壊すところから始まる
- ■③ 小さな「可視化」が心を軽くする
- ■④ 「やらないことリスト」を作ると、一気に楽になる
- ■⑤ “負荷を減らす”ではなく“負荷の質を変える”
- ■⑥ 「ミーティングに自分ルール」を入れる
- ■⑦ 「自分だけの安全地帯」を作る
- ■「転」まとめ
- 「エンジニア人生を“長く楽しむ”という選択」
- サブタイトル:未来のキャリアは、“消耗戦”じゃなくていい
静かに忍び寄る“2025年型バーンアウト”
―サブタイトル:気づかないうちに限界ラインを踏んでいないか?―
2025年。海外で働くエンジニアとして日々コードを書き、仕様書と向き合い、ミーティングの合間にまた別のミーティングが滑り込んでくる──そんな生活の中で、ふとした瞬間に「なんか最近、前より呼吸が浅くない?」と感じることがある。
正直、僕自身も“その感覚”を初めて意識したのは、出社前にコーヒーを片手に椅子へ座った瞬間だった。胸の奥に謎の重さがあり、やる気というより“義務感だけ”で体が動いていた。
そのときは「まぁ疲れてるだけでしょ」と流した。でも、後から振り返ると、あれは完全にバーンアウト(燃え尽き)の入口だった。
■「工程表ではなく、人生が詰む」
ここ数年、エンジニアの働き方はとんでもない変化を迎えている。
AIの進化、スピード感の爆上がり、リリースサイクルの短縮、リモートワークとオフショア連携による“時差ミーティング地獄”──
外から見れば華やかだけど、内側にいる僕らだけが知っている現実はもっとドロドロしている。
特に2025年になってからは、「このスピードに乗れないと置いていかれる」という空気が、より濃度を増して広がってきたように感じる。
業界自体が「競争 × 変化 × 人材流動」で高速回転し始め、休む間を誰も与えてくれない。
でもね──このままの勢いで走り続けると、“プロジェクトが詰む”前に“自分の人生が詰む”可能性の方が高い。
■「ハッスル文化」という落とし穴
海外で働いていると特に感じるのが、“やる気がある奴が正義” みたいな空気だ。
- 早朝ミーティング?参加できるやつがえらい
- 夜中の障害対応?即レスできるやつは頼れるやつ
- 勉強し続けていない?成長意欲低いね
- 疲れてる?それって努力不足じゃない?
こういう価値観は、一見すると「プロ意識が高い」と思われがち。でも本音を言うと、これはただの“ハッスル文化”という名の幻想だ。
僕も海外の現場に出て最初の頃、この罠に完全にハマっていた。
「頑張り続ければ成長する」
「時間さえかければ何とかなる」
そう思っていた。でも、実際にはこうだった。
頑張れば頑張るほど、心が壊れるスピードも速くなる。
■「昔のやり方では、もう防げない」
一昔前なら、
- 休日にゆっくり休めば回復する
- 旅行すればリフレッシュできる
- 好きなことで気分転換すればいい
こうした“伝統的な対処法”でもある程度は持ち直せた。
でも2025年の働き方は、そのレベルの回復速度ではぜんぜん追いつかない。
なぜか?
理由はシンプルで、ストレスの絶対量が昔より桁違いに増えているからだ。
- Slack/Teamsが常時鳴る
- 世界中の時差を跨いで会議が行われる
- AIと共存するためのインプット速度が尋常じゃない
- コードレビューの基準はどんどん上がる
- セキュリティも品質も「ミスゼロ」が当然の空気
- 「来週からリリースを早めるから」的な突然の変更
つまり、以前の“回復法”では、今の“ダメージ量”に追いつかないのだ。
ここに、現代エンジニアのバーンアウトが深刻化している一番の理由がある。
■「静かに壊れる」
バーンアウトって、実は突然起こるものじゃない。
ある日いきなり「はい、限界!」と身体がスイッチを切るわけではない。
静かに、目に見えない速度で、じわじわと心が蝕まれていく。
- 休んでも疲れが取れない
- コードの質が落ちてる気がする
- 文章を読む集中力が続かない
- ミーティングが苦痛
- 朝のログインがやたら重い
- なぜかイライラする
こういう微細な兆候が積み重なって、気づいたときには“普通の休息では回復できない状態”になっている。
僕自身も、初期のサインを完全に見落としていた。
「気のせい」「慣れればいける」「ちょっと疲れてるだけ」
すべてを軽く流して、結果として限界ギリギリまで自分を追い込んでしまった。
今だから思うけど、あの時点で生活習慣の“メンタル設計”を変えておけばよかった。
■「この問題は、技術よりも“生存戦略”の話だ」
海外エンジニアというと、どうしても技術的な話が中心になる。
でも、2025年の現場に立つエンジニアにとってもっと大事なのは、
「どう生き残るか」
「どう心を壊さず、成長し続けるか」
という“生存戦略”だ。
いま世界中でエンジニア不足が深刻になっているけれど、
単純に人が足りないというより、メンタルが持たなくて離脱してしまう人が増えているのが根本的な原因だったりする。
だからこそ、僕らは“技術力”と同じくらい、
メンタルのセルフマネジメント能力を高める必要がある。
■このシリーズで伝えたいこと
このブログシリーズでは、
- 海外エンジニアが直面しやすいバーンアウトのメカニズム
- 僕自身が実際に体験した「静かな壊れ方」
- そこから復帰するまでに使ったメンタル設計の方法
- 海外ならではのギャップや文化的ストレスの乗り越え方
- 長く働き続けるための“人生術”
など、読んだ人が「これ知っといてマジでよかった」と思える内容を、起承転結で深堀りしていきたい。
“働き方のスピードは上がったけど、心の回復速度は変わらない”
そのギャップに潰されないために、僕が海外で学んだリアルな経験とヒントをすべてシェアするつもりだ。
バーンアウトが引き起こす“静かな崩壊”
―サブタイトル:心が限界を迎えると、人生のすべてが少しずつ傾き始める―
前回の「起」で、2025年のエンジニア環境がどれだけ過酷な圧力を生み出しているか、そして“静かに忍び寄るバーンアウト”の存在について触れた。
でも、本当に怖いのはここからだ。
バーンアウトというと、
「疲れた状態」
「ちょっと働きすぎてるだけ」
みたいに軽く見られることが多い。
しかし、実際にはそんな生易しいものじゃない。
僕は一度この状態に片足を突っ込んでしまった時期があり、そこから見えた“実害”はあまりにも現実的で、そしてゆっくりと人生を蝕んでいった。
ここでは、あの時の経験や海外エンジニアの仲間たちから聞いた話も含めて、現実に何が起きるのかをリアルに書いていく。
■① 思考力と判断力が、驚くほど落ちる
バーンアウトの初期に起きるのは、「集中できない」という分かりやすいサインだ。
しかし、本当の地獄はその後に来る。
・思考が遅くなる
・情報が頭に入ってこない
・判断が極端に鈍る
・些細な判断にも時間がかかる
・文章が頭に入らなくなる
これらがまとめて襲ってくる。
僕が一番ヤバいと思った瞬間は、簡単なif文のロジックチェックに15分以上かかった時だった。
「これ、本当に“ただの疲れ”じゃないな…」
と背筋が少し冷えた。
コードレビューでもミスを指摘される頻度が増える。
レビューコメントを読んでいるつもりなのに、文章が頭に残らない。
まるで脳がスポンジになったかのように、情報がすり抜けていく。
技術力が落ちているんじゃなくて、脳が正常に働いていない。
これを自覚したとき、かなりの恐怖を覚えた。
■② モチベーションが「ゼロ」ではなく「マイナス」へ向かう
バーンアウトは、モチベーションを食い尽くす。
そして、ゼロで止まらない。
- やる気がない
- 仕事が億劫
- 面倒くさい
こういう感情はよくある。
でもバーンアウトが怖いのは、そこから先だ。
「仕事に触れること自体が苦痛になる」
僕の場合は、PCを開くと胸の奥がぎゅっと締め付けられるようになった。
ZoomやTeamsのアイコンを見るだけで嫌な汗がにじむ。
メッセージ通知が鳴ると心拍数が上がる。
これって、もはや“やる気がない”なんてレベルじゃない。
身体が拒否反応を起こしているのだ。
■③ 仕事のミスが増え、自己嫌悪で自分を削る
集中できない → ミスが増える
ミスが増える → 自信がなくなる
自信がなくなる → 心がさらに疲れる
この“負のスパイラル”は、気づくと深いところまで進んでいる。
僕はある時、テストデータの更新漏れが原因で、海外チームの動作検証が丸ごと止まってしまったことがある。
普段なら絶対にやらないような凡ミスだった。
その時の申し訳なさと情けなさが重なって、夜ベッドでしばらく動けなかった。
しかも、海外環境では“言語の壁”がこのダメージを倍にする。
「英語で説明しなきゃいけない」
「状況を正確に伝えないといけない」
ミスしたうえに、この精神的負荷が重なる。
ミーティングで話すたび、自分の語彙力の低さにまた自己嫌悪が湧く。
エンジニアリングより先に、心が削れる。
■④ プライベートにも影響が出る
バーンアウトは仕事だけの問題ではない。
生活そのものにも深く影響が及ぶ。
- 食欲が落ちる(逆に暴飲暴食になる人もいる)
- 寝ても疲れが取れない
- 朝起きた瞬間にため息が出る
- 趣味の時間を楽しめない
- 外に出る気力がなくなる
- 家族や友人とのコミュニケーションが減る
僕は趣味のギターを触る気になれなくなった時、「これは相当まずいぞ」と感じた。
趣味って、心の栄養のはずなんだよね。
そこが枯渇するというのは、精神的にかなり深刻なサインだ。
■⑤ 海外エンジニア特有のバーンアウト
そして見逃せないのが、海外で働くエンジニア特有の要因だ。
●① 言語の壁
英語がネイティブじゃないだけで、毎日追加の負荷がかかり続ける。
「英語で考えて、英語で理解して、英語で説明する」
これを何時間も繰り返すのだから、疲労の蓄積が早い。
●② 文化ギャップ
海外の“ハッスル文化”
「自分の意見は即言うのが当然」
「成長のために自分を追い込み続けろ」
こういう価値観が普通に飛び交う。
●③ オフショア連携の時差
深夜ミーティングや早朝の会議は、確実に生活リズムを壊していく。
●④ 孤独
家族や友人の支えが近くにいない場合、精神的負荷が仕事でのストレスを倍増させる。
正直、海外エンジニアのバーンアウトは、日本国内よりもリスクが高いと個人的には思う。
■⑥ そして、最終的に「辞めたい」という感情が生まれる
バーンアウトが進むと、「もうこの業界向いてないかも」「辞めたい」という考えが頭をよぎり始める。
実はこれ、世界的に見ても珍しくない。
エンジニア業界の離職理由トップは給料ではなく、精神的疲労だと言われている。
僕も一時期、本気で「このまま続けて大丈夫かな…」と悩んでいた。
でも、今振り返ると辞めたいわけじゃなくて、心が限界を迎えていただけだった。
■⑦ 燃え尽きは“突然”表に出る
一番怖いのは、
外からは元気に見えるのに、内側では限界スレスレまで行っていることが多い
という点だ。
僕の同僚にも、明るくて仕事もできて、周囲から頼られていた人がいたけど、ある日突然長期休暇に入った。
「そんな風に見えなかった」とみんな言った。
でも、本人から話を聞いたら、内側ではずっと苦しんでいたらしい。
バーンアウトは静かに進み、
限界を超えた瞬間に“一気に崩壊する”。
■「承」まとめ
バーンアウトはただの“疲労”ではない。
これは、脳の機能低下 × 自信喪失 × 生活の崩れ × 孤独 が複合的に絡み合って起きる、非常に根深い問題だ。
そして、放置すると仕事だけでなく、人生そのものを大きく傾けてしまう。
次回の「転」では、
どうやってバーンアウトの悪循環を止めるか?逆転のきっかけはどこにあるのか?
を、僕の経験と具体的なケースを交えて掘り下げていく。
逆転のカギは“休むこと”ではなく“整えること”だった
―サブタイトル:限界の先にあったのは、「無理しない」だけでは辿り着けない再起動術―
「承」でバーンアウトがどれほど静かに、そして深刻に人生を侵食していくかを見てきた。
ここまで読むと、もしかしたらこう思った人もいるかもしれない。
「じゃあ休めばいいんだろ?」
もちろん休むことは大切だ。
しかし残念ながら、休むだけでは根本的な解決にならない。
僕も“休めば治るはずだろ”と考えていた時期があったが、実際は違った。
実際に体験すると分かるが、バーンアウトは「休息不足」だけで起きるわけではない。
もっと複雑で、深い。
バーンアウトから抜け出すには、
・環境
・習慣
・思考
・仕事のやり方
・自分の扱い方
すべてを“整え直す”必要がある。
つまり、ただの「休息」ではなく 再設計(Re-design) が必要だ。
では、その“逆転のスイッチ”はどこにあったのか?
ここでは、僕が海外で働きながら見つけた、現実的で持続可能な「再起動プロトコル」を紹介していく。
■① バーンアウトに気づいた瞬間が、回復のスタートライン
まず最初に強く伝えたいのはここ。
自分が“やばいかもしれない”と思った瞬間が、最初の勝ちだ。
なぜなら、多くのエンジニアは限界になっても気づかない。
特に海外では「I’m good!」「No worries!」の文化があるため、弱さを見せにくい。
僕自身、“大丈夫なふり”をする癖がついていた。
でも、ある日ふと鏡を見たとき、
「顔に全然力がないな…」
と気づいた瞬間があった。
この小さな気づきこそ、回復の第一歩になる。
■② “頑張る”の定義を壊すところから始まる
バーンアウトが起きる原因は「頑張りすぎ」ではなく、
“頑張る方向の誤り” だ。
日本で育った僕たちは、
「努力は美徳」
「耐えることに価値がある」
「がむしゃらに頑張るのが正しい」
という文化の中で育つ。
しかし海外に来ると、努力の概念が違う。
- 効率の悪い努力=評価されない
- 無理して働く=マネジメントの問題
- 休む=生産性確保のための当然の行為
そして最も衝撃を受けたのは、
“疲れている自分を責めない文化” が当たり前だということだ。
バーンアウトを抜け出すための第一歩は、
“努力=長時間労働”という呪いを捨てることだった。
■③ 小さな「可視化」が心を軽くする
僕が最初にやった対策は意外と地味だった。
自分の疲労を言語化する。
そして、目に見える形にして記録する。
たとえば、
- 今日は集中できない
- 午後は胸が苦しくなった
- ミーティング前に緊張が強く出た
- 夜になっても頭が回らない
これらを一行メモとして残す。
すると、あることに気づく。
「これはただの怠けじゃない」
「身体がSOSを出している」
と冷静に理解できるようになるのだ。
海外エンジニア仲間に相談したら、
「疲労のジャーナルを書くのはメンタルヘルスの基本だよ」
と言われて驚いた。
日本では弱音として扱われがちだけど、
海外では“現状把握スキル”の一つだと捉えられている。
■④ 「やらないことリスト」を作ると、一気に楽になる
頑張ることより先に、
“頑張らないことを決める”
のが回復の大きな鍵だった。
僕が最初に作った「やらないことリスト」がこちら。
- 18時以降のチャット返信はしない
- 相手の英語力と自分の英語力を比較しない
- 朝のタスクを詰め込みすぎない
- 自分で背負い込める以上のタスクを抱えない
- 「すぐやります」を禁句にする
たったこれだけで、心の負荷が20%くらい一気に軽くなった。
特に海外チームだと、
「チャットが鳴るたびに反応しなきゃ」
というプレッシャーが強い。
でも、一度「返信時間のルール」を決めると、
相手も自然とそれを尊重してくれるようになった。
海外の良いところは、“明文化したルールは守られる文化”だということだ。
■⑤ “負荷を減らす”ではなく“負荷の質を変える”
僕が最も効果を実感したのがここ。
バーンアウト状態から抜け出すには、
ただ負荷を減らすだけでは不十分だ。
負荷の中身を変える必要がある。
たとえば、
●悪い負荷の例
- ずっと会議が続く
- 自分で判断できない仕事が多い
- 英語での説明が必要なタスクばかり
- 一人で抱える仕事が多い
- 評価基準が曖昧な作業
●良い負荷の例
- 小さくてすぐ終わるタスク
- 一人で完結できる作業
- 得意分野のタスク
- 自分で方向性を決められる仕事
- “成功体験”が積み重なる作業
僕はマネージャーに正直にこう伝えた。
“最近、複雑な作業が多くて頭が追いついてません。
しばらくは小さめのタスクを中心に回したいです。”
意外にもマネージャーはすぐ理解してくれた。
海外では“自己管理できている人”としてむしろ評価されることが多い。
■⑥ 「ミーティングに自分ルール」を入れる
海外エンジニアはミーティングが多い。
バーンアウト中のミーティングは本当にきつい。
だから僕は次のような“ミーティングプロトコル”を導入した。
- 30分以上の会議には必ず議題を事前に要求
- 会議中のメモ量を減らす
- 分からないところはその場で聞く
- カメラオンを強制する会議は断る
- 連続会議の日は、会議の合間に3分散歩
特に効果があったのは、
「事前議題の要求」 だ。
議題があるだけで、
・頭の準備ができる
・不安が激減する
・会議中の理解速度が上がる
というメリットがある。
相手も、「議題を送って」というとむしろ喜ぶ。
海外の良いところは、こういう“合理性”が自然と受け入れられる点だ。
■⑦ 「自分だけの安全地帯」を作る
最後に、僕が最も助けられた習慣がこれだ。
それは、心を休める“安全地帯”を作ること。
- 朝のコーヒーだけは静かに飲む
- 散歩だけは毎日10分でも必ず行く
- 自分の母国語で話せる相手と通話する
- 仕事と関係ない勉強をする
- 好きな音楽を10分だけ聴く
これらは一見小さな習慣だ。
しかし、
「自分の基準で選べる行動」
を毎日積み重ねるだけで、心の回復スピードが大きく変わる。
特に僕の場合、
“日本語での会話時間を増やす”
ことがメンタルに大きく効いた。
海外生活では、英語だけの環境にいると気づかないうちに心がすり減る。
母国語に触れるだけで、驚くほど精神が安定する。
■「転」まとめ
バーンアウトを逆転させる鍵は、
“休むこと”ではなく、“整えること”。
- 自分の疲労を可視化する
- やらないことリストを作る
- 負荷の「量」ではなく「質」を変える
- ミーティングにルールを設ける
- 小さな安全地帯を作る
これらの積み重ねが、
限界まで疲れ切った心に“再起動ボタン”を与える。
次回ラストの「結」では、
バーンアウトから完全に抜け出し、
“長く走れるエンジニア”へ変わった方法
を、実体験ベースで具体的にまとめていく。
「エンジニア人生を“長く楽しむ”という選択」
サブタイトル:未来のキャリアは、“消耗戦”じゃなくていい
正直に言うと、僕が海外で働き始めた頃は、「長く働く」という発想すらありませんでした。
毎日がサバイバルで、目の前のタスクを倒すことで精一杯。
心のどこかで「こんな生活、いつまで続けられるんだろう?」と常に不安を抱えていたと思います。
でも、いま振り返ると、あの頃の僕は “長く戦うための装備” を持っていなかっただけ でした。
そして気づきました。
エンジニアのキャリアは、短距離走ではなくマラソンだ。
さらに言うなら、マラソンより長い「トレイルラン」に近い。
- 地面のコンディションは常に変わる
- ゴールも一本道ではない
- 自分のペースを保てる人が強い
- 途中で立ち止まるのは悪いことではない
- 装備(スキル・メンタル・休息)がすべてを左右する
この「結」パートでは、そんな僕が最終的に行き着いた “燃え尽きずに走り続けるためのエンジニア人生術” をまとめていきます。
1. 「キャリアは積み上げ」ではなく「循環するもの」と考える
昔の僕:
「スキルを積み上げれば積み上げるほど、より価値があるエンジニアになれる」
いまの僕:
「スキルは循環させた方が強くなる」
なぜか?
- 常に新技術が登場する
- 既存の知識は時として負担になる
- “引き算の学び” が必要な場面もある
- 経験は“再配置”することで新たな価値になる
例えば、WPFで得たUI/UXの知識は、海外企業でReact開発をサポートする際にもめちゃくちゃ生きる。
C#で培ったアーキテクチャ思考は、Pythonのバックエンドでも活かせる。
つまり、キャリアは階段ではなく 螺旋(らせん)。
同じ場所を回っているようで、実は少しずつ上に進んでいる。
この考え方を持つと、
「新しいことを覚えなきゃ…!」というプレッシャーがかなり減ります。
2. “ゆっくり” は怠けじゃなくて戦略
海外で働くようになると、日本よりもさらに「成果で評価される世界」になる。
だからこそ、がむしゃらに働くより、余白を作った方が成果が出ると身をもって学んだ。
僕が最終的に大事にしていることは、以下の4つ:
① 1日のどこかに“バッファ時間”を作る
Slackを閉じて10分だけ目を閉じる。
散歩に出る。
コーヒーを入れ直す。
それだけで午後のパフォーマンスが全然違う。
② 「やらないタスク」を増やす
Todoを減らすのではなく、
「これは本当にやらなくていいのか」を考える。
海外企業で学んだのは、
優秀な人ほど“やらないこと”を決めるということ。
③ SNS断食を習慣化する
技術系SNS(X、Reddit、TikTok)を見るたびに、
「知らない技術だ…」
「みんな優秀すぎる…」
と不要な焦燥感が湧く。
だから週に一度は、完全にSNSを断つ “デジタル休暇” を入れている。
これだけで精神のノイズが一気に減る。
④ “自分の得意” の棚卸しを毎年やる
得意は疲れない。
苦手は疲れる。
年に一度、自分の仕事の棚卸しをして、
「疲れずにできる仕事」 を中心にキャリア設計するようにしている。
3. 休む能力は、世界基準で評価される
日本では「頑張っている=価値がある」と思われがち。
でも、海外に来て痛感したのは、
休む力が高い人ほど、仕事の質も高い
ということ。
これは本当に真実です。
アメリカ人の同僚は、
「休むのはリスク管理だよ」と普通に言う。
ドイツ人の同僚は、
「休暇を取らない方がチームに迷惑」と本気で思ってる。
休むことは弱さではなく “パフォーマンス管理” なんだと完全に意識が変わった。
4. 自分の“限界サイン”を言語化しておく
僕がよくやるのは、「早期警戒リスト」を作ること。
自分が燃え尽きかけている時に出る症状をメモしておく。
例えば僕の場合:
- 朝起きてPCを見ると胸がざわつく
- コードレビューが普段より刺々しくなる
- オフの日も技術のことを考えてしまう
- タスクに取り掛かるまでの時間が長くなる
- メリデメの判断が極端になる
こういう “限界のシグナル” が見えたら、
すぐに休む、仕事を軽くする、助けを求める。
エンジニアは頭脳労働だから、
限界は身体ではなく“脳の挙動”に現れる。
だから言語化しておくと本当に助かる。
5. 「未来の自分が笑う選択」を優先する
僕の海外でのキャリアを一言でまとめると、
「未来の自分が後悔しない選択」を積み重ねてきただけ。
- その選択は未来の自分を消耗させないか?
- 今はしんどくても、1年後に感謝できるか?
- 技術を学ぶ理由は“焦り”か、それとも“好奇心”か?
- いま自分が戦っている相手は本当に“外”ではなく“内側”では?
こうした問いを持つと、
行動の質が驚くほど変わっていく。
6. 最後のメッセージ:「燃え尽きないエンジニアが、最強」
結局のところ、
どれほど技術力が高くても、
どれほど責任感が強くても、
燃え尽きたらゲームオーバー。
生き残るエンジニアは、
“走り続けられるエンジニア”です。
僕自身、海外で働きながら何度も限界を経験して、
ようやくその意味が腑に落ちてきた。
でも逆に言えば、
うまく休めるだけで、キャリアは一気に伸びる。
これ、本当に本当です。
あなたのキャリアは、まだまだ長い。
2025年以降は、さらにエンジニアの働き方が多様化する。
だからこそ、
- 休める自分
- 助けを求められる自分
- 余白を作れる自分
- 燃え尽きる前に立ち止まれる自分
これらを整えておくことこそ、
エンジニア人生を“長く、楽しく”する最強の戦略になる。

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