はじめて知った、”やり方の違い”という壁
海外でITエンジニアとして働きはじめた当初、正直、自分が経験してきた「日本でのやり方」がそのまま通用すると思ってた。
特に自分は、C#とWPFを中心に、長年日本のSIerや受託開発でガチガチのウォーターフォール環境でやってきたタイプ。
日本ではよくある風景としてはこうだ。
まずは要件定義、次に基本設計、詳細設計、製造、テスト、納品。
設計書もテンプレート通り、レビューも「形式的にやってます」感満載。
正直、コーディングは「設計書に沿ってただひたすら実装するだけ」。
でも、いざ海外に出て、いわゆるプロダクト開発系の企業に入ってみたら、
「え?これが普通なの?」と戸惑う場面の連続だった。
① コーディングへの姿勢そのものが違う
まず衝撃だったのが、**「とにかくコーディングが最優先タスク」**という文化。
日本の現場だと、「設計書がしっかりしてないと実装には入れません」と言われる場面が多いけど、海外では全然違う。
プロダクトオーナーと話して、ざっくりUser Storyが決まったら、すぐプロトタイピング開始。
細かい仕様が途中で変わるのは当たり前。
最初から「作りながら詰めていく」スタイルが普通。
しかも設計ドキュメントも、最小限のConfluenceドキュメントか、GitHubのREADMEレベル。
あとはPR(プルリク)のコメントでディスカッションするか、Slackでチャットして終わり。
「え?設計レビューは?」
「ないよ、コードレビューで全部カバーするから」
このやり方に、最初めちゃくちゃ戸惑った。
② 開発フローのスピード感にショック
そして次に来るのがスピード感。
1週間単位のスプリントでどんどんリリースしていく。
日本の「3ヶ月かけてリリース1回」とかのペース感とは全然違う。
特にWPF案件だったんだけど、それでもCI/CDパイプラインがしっかり組まれていて、Pull Requestマージ後すぐにステージ環境反映、QA、リリースの流れができてた。
「え、WPFでそこまで自動化するの?」ってビックリしたけど、
海外はデスクトップアプリでもDevOps化が普通。
GitFlowベースで、開発ブランチ→ステージング→プロダクションという流れ。
CIツールはAzure DevOpsとGitHub Actionsが多かった。
③ チームメンバーの「コードへのプライド」
そして何より感じたのが、**「エンジニア一人一人が、コーディングにめちゃくちゃプライドを持っている」**ということ。
日本では「とにかく動けばいいから、バグだけ出さないで」みたいな雰囲気が多かったけど、
海外だと**「このコードは将来の誰かがメンテする、だからきれいに書く」**という意識が根付いてる。
変数名もわかりやすさ重視、メソッドも極力短く、SOLID原則に沿って、DRY、KISSを徹底する。
ユニットテストカバレッジも、最低80%とか普通に求められる。
「このコードの責任は自分にある」という空気があるから、レビューも超真剣。
「もっと良い方法があるよ」
「このロジックは複雑すぎる、分割して」
「命名が曖昧」
みたいなフィードバックがSlackやGitのPRコメントでガンガン飛んでくる。
でも誰も怒ってないし、みんなフラットに技術の話をしてる。
そこがまた日本と違うところだった。
④ ミーティングスタイルも別世界
あと、**「会議で何をどう決めるか」のスタイルも日本とは全然違う。
日本だと、会議の目的があいまいで、延々と議論がループすることが多かったけど、
海外現場では基本「決断の場」「意思決定の場」**という位置づけ。
例えばデイリースクラムもそうだし、バックロググルーミング、プランニングミーティング、レトロスペクティブ…。
どれも**「アクションを決める」ための場**で、ダラダラ雑談はしない。
⑤ 最初の壁:適応できるか?
そんな環境に飛び込んで最初の1ヶ月、
**「このままじゃ通用しないかもしれない」**って本気で焦った。
設計書を書いてから動き出す癖、
指示待ち体質、
レビューが怖いという意識、
ミーティングでの発言の少なさ。
全部、日本で染みついた悪い習慣だったことに、ここでようやく気付いた。
カルチャーショックからの脱却 ~どう適応し、何を変えていったのか~
最初の1ヶ月は正直つらかった。
「これが世界標準なのか…自分はこのままじゃ使えないエンジニア扱いされるかもしれない」
そんな不安が毎朝胸にのしかかっていた。
① マインドセットの根本転換:「指示待ちから、自走型エンジニアへ」
日本では「言われたことを正確にこなす」が正義だった。
でも海外では真逆。
「言われる前に動け」
「自分から提案しろ」
「分からないことは聞く前にまず調べて、自分なりの仮説を持ってから相談」
最初はSlackでのやり取りも、発言が極端に少なくて
「なんでこの人、何も言わないの?」という雰囲気に…。
そこで最初にやったのは、「まずは小さく発言するクセをつけること」。
具体的には:
- 毎朝のデイリースクラムで「昨日やったこと」「今日やること」「困っていること」を必ず話す。
- Slackで質問が来たときは、無理にでも5分以内にリアクションする。
- プルリクのコメントにも、自分の意見を書く。
最初はビビりながらだったけど、これを続けるうちに
「この人、ちゃんと参加してるな」って認識されはじめた。
② コードレビュー文化に慣れる:「指摘=攻撃じゃない」
次の壁はコードレビュー。
日本では「レビュー=怒られる場」だった経験があったから、最初はプルリク出すたびに胃が痛くなった。
でもある日、先輩エンジニアに言われた一言で気づいた。
「Reviewはチーム全員で良いプロダクトを作るための共同作業だよ。指摘があるのは、君に期待してるから。」
そこから気持ちが一気に変わった。
「ミスしてもいい。とにかく早く出して、早くフィードバックもらおう」
そう割り切ることにした。
具体的に自分がやりはじめたアクションは:
- プルリクの粒度を小さくする(差分200行以内に抑える)
- 必ず自分でセルフレビューしてから出す
- 「この部分はまだベストプラクティスじゃない、だけどこういう理由でこうしてる」とPRコメントに事前説明を書く
- レビュアーから指摘があったら、必ず「Thanks for pointing out!」で返す
結果、1ヶ月経つ頃には
「この人、成長早いね」って言ってもらえるようになった。
③ テスト文化への適応:「テストを書くのが当たり前」
日本時代、自分は正直、ユニットテストを書く文化にほとんど触れてこなかった。
「納期優先でとにかく動くものを…」という案件が多かったから。
でも今の現場では、**「テストがないプルリクは、そもそもレビューすらされない」**というルール。
最初はNUnitやXUnitの基本的な書き方からおさらい。
モックフレームワーク(Moqとか)も必死で勉強。
先輩の書いたテストコードをひたすら読んでパターンを盗んだ。
慣れてくると、次第にこう考えられるようになった。
「テストを書く=未来の自分を助けること」
バグ修正も怖くなくなるし、リファクタリングもしやすい。
実際、テストがあるからこそ、大規模な設計変更にも安心して取り組めるというのが実感できた。
④ 英語の壁:「技術用語は分かる。でも雑談が怖い」
テクニカルな会話はまだなんとかなる。
でも、一番苦戦したのが**「雑談コミュニケーション」**だった。
デイリースタンドアップの最初に交わされる軽い雑談。
ランチのときの冗談。
Slackのオフトピックチャンネルでのやりとり。
最初は全部スルーしてた。
でもあるとき気づいた。
「技術スキルだけじゃダメだ。このチームに“人として溶け込む”努力をしないと」
そこで:
- 朝のミーティングでは「Good morning!」だけでも言うようにした。
- 軽いジョークがあったときは「笑ってリアクションだけでもする」
- 時間があるときに、同僚の趣味について軽く話を振る
この小さな努力が、半年後には大きな違いを生んでた。
「Hiroは静かだけど、いいやつだよ。ちゃんとチームに溶け込んでる」
と言われるようになった。
⑤ 自分を変えた「小さな積み重ね」
振り返ってみると、適応のカギはたった一つ。
「少しずつでいいから、毎日なにか一歩進むこと」
- 発言回数を増やす
- レビューに慣れる
- テストを書く習慣をつける
- チームメンバーと雑談する
どれも最初は小さな行動だったけど、
それが半年後、大きな信頼と自信につながった。
自分の「変化」と、チームからの評価の変化
半年が過ぎた頃、気づいたことがある。
最初の頃は「ついていくので精一杯」「迷惑かけないように」とばかり考えてたけど、
気づけば自分が**「頼られる側」「相談される側」**になりはじめていた。
① コードレビューで「教える側」に回るようになった
あれほどビビっていたコードレビュー。
でも半年も経つと、後から入ってきたジュニアエンジニアのレビュー担当にアサインされるようになった。
最初は恐る恐るコメントを書いていたけど、
「このメソッド、単一責任原則から外れてるよ」
「このロジックはテストしづらいから、もう少し分割しよう」
「この命名、もっとドメインに寄せたほうがわかりやすいかも」
そんなコメントをするたび、相手から
「Thanks Hiro, that makes sense!」
って返事が来る。
気づけば、**「Hiroにレビューしてもらえると安心」**なんて言われるように。
しかもそれが、プロダクトマネージャーやアーキテクトの耳にも届いて、
次のスプリントプランニングでは、設計レビューにも呼ばれるようになった。
② チーム内での「設計フェーズ」への参加が増えた
これまでは「実装担当」だけだったのに、次第に**「この機能、どう設計するべきか」**という段階から意見を求められるように。
たとえば、あるWPFアプリの新しいモジュール設計会議では、
「MVVMパターンをもっとクリーンに適用したいんだけど、どんなアプローチがいいと思う?」ってアーキテクトから直接聞かれるようになった。
その時、
「Data Bindingのパフォーマンス問題を避けるためには、Reactive Extensions使うのも一つの手ですよ」
と提案したら、全員が
「おお、それいいじゃん!」ってなって、正式に採用された。
この瞬間、**「自分、チームに必要とされてる」**って心から実感できた。
③ フィードバック文化への慣れ:「他人の成長を支援する側」へ
自分が最初に苦しんだ「厳しいフィードバック文化」。
今では、自分が後輩にフィードバックをする側になっていた。
最初に心がけたのは、
「過去の自分みたいに、委縮させないこと」
具体的には:
- 指摘するときは必ず最初にポジティブポイントを伝える
(例:「このアプローチは面白いね、特にこの部分の工夫は良かった!」) - 改善点は理由つきで提案する
(例:「ただ、この部分はパフォーマンス上のリスクがあるから、こう書き換えるともっとよくなるよ」) - 必ず最後に「もし不明点あれば、一緒にペアプロしてもいいよ!」とサポートの姿勢を見せる
これを続けた結果、
ジュニアメンバーからも
「Hiroのレビューはわかりやすいし、次から気をつけようって素直に思える」
と言われるようになった。
④ 英語での技術ディスカッションに自信がつく
もともと「聞き専」「Yesマン」だった自分が、
次第にミーティングでのディスカッションでも
「そのアプローチにはこのリスクがあると思う」
「代替案としては、こういう実装パターンが考えられる」
など、自分の考えをロジカルに英語で伝えられるようになった。
最初は原稿を事前にメモして準備してたけど、
半年~1年経つ頃には、ほぼ即興で意見を言えるレベルに。
ある日、チームリードからSlackでDMがきた。
「Hey Hiro, I really appreciate your input during the last design meeting. You’re becoming a key contributor to the team discussions.」
これ読んで、正直ちょっと泣きそうになった。
⑤ チーム全体からの信頼:「この案件はHiroに任せれば大丈夫」
案件によっては、サブリーダー的ポジションを任されることも増えてきた。
- タスクのチケット分割
- ストーリーポイント見積もり
- スプリントゴールへの貢献度調整
- リリース前の最終チェック
もちろんまだプレッシャーはあるし、全てが完璧ではない。
でも「日本にいた頃の自分」では、絶対に経験できなかったポジションに、少しずつ立てるようになってきた。
特にWPFのパフォーマンスチューニングとか、MVVMの最適化に関しては、**「この分野ならHiroに聞こう」**と言われるようになってるのが、自分でも嬉しい。
⑥ 振り返り:環境が変われば、人は変われる
いま振り返って思う。
もしあのまま日本で同じ働き方を続けてたら、
きっと今も「指示待ちエンジニア」で止まってたと思う。
でも海外のこの環境で、「自走力」「発言力」「レビュー力」「テスト力」「設計力」
全部が少しずつ磨かれた。
もちろんまだまだ道半ばだけど、
**「変わり続ける力」**だけは、この半年~1年で確実に手に入れた実感がある。
この経験から得た教訓と、これから海外で働くエンジニアへのアドバイス
気がつけば、海外でエンジニアとして働きはじめてから1年以上が経った。
最初の頃の戸惑い、不安、焦り、全部が今となっては自分の成長の糧だったと思う。
この章では、そんな経験から得たリアルな学び、そしてこれから海外でチャレンジする誰かに伝えたいことを書き残しておこうと思う。
① 「完璧主義を捨てる」ことが最大の成長戦略
日本でのエンジニア時代、自分は無意識に「ミスしないこと」が最優先だった。
- 失敗しないこと
- 上司に怒られないこと
- スケジュール遅延しないこと
でも、海外に出て一番学んだのは、**「ミスしてもいい、むしろ早く失敗して、早く学べ」**という考え方。
例えば、こんな文化があった。
- Pull Requestをとにかく小さくして、早く出す
- 「分からないまま進めるくらいなら、すぐ聞く」
- 「結果よりプロセス重視。どう考えたかが大事」
今では心の中でこう唱えている。
「Done is better than perfect.」
(完璧よりもまず終わらせろ)
② 「自走力」「発信力」「提案力」がないと生き残れない
日本の現場では、「言われたことをやる」だけで評価される場面も多かった。
でも海外だと、それだけじゃ完全にアウト。
特に印象に残ってるのが、あるSprint Retrospectiveでの出来事。
Scrum Masterからこう言われた。
「Hiro、何か改善案ある? 次のスプリント、どこ変えたい?」
日本なら「特にありません…」で済ませていた場面だけど、
今の自分は違った。
「テストの実行タイミングがバラバラだから、Git Hooksでコミット前にユニットテストを走らせるようにしてみたい」
と言ったら、即採用。
そこからチームで一気に品質が上がった。
この経験で痛感した。
「自分がチームを良くする責任がある。
誰かがやってくれるのを待つ時代は終わった。」
③ 「技術力」だけじゃダメ。「ソフトスキル」が評価を左右する
正直、技術力だけなら、今のチームにも自分より遥かに優秀な人はたくさんいる。
でも、**自分の評価が上がってきた背景には、「コミュニケーション力」「コラボレーション力」**が大きいと感じる。
具体的には:
- ミーティングでの積極的な意見出し
- Slackでの相談&サポート姿勢
- 他チームとの調整
- チームビルディングイベントでの雑談参加(笑)
ある時マネージャーから言われた。
「Hiroはチーム全体の雰囲気をよくしてくれる。
それも立派な貢献だよ。」
日本ではあまり評価されない、こういう**「空気をつくる力」**が、
海外現場ではしっかり見てもらえる。
④ 「学び続ける姿勢」が、何よりの武器
海外エンジニア界隈では、**「学びを止めた人」**が一番早く脱落する。
自分がこの1年で習慣化したこと:
- 毎朝30分、最新技術ブログを読む
(例:Medium, DEV.to, Microsoft Docs) - 毎月1つ、新しいライブラリやフレームワークを試す
- YouTubeやUdemyで「ソフトスキル系」「英語プレゼンテク」動画も視聴
- 毎週、自分のコードで「何か1つ改善するポイント」を探す
学び続けていれば、失敗してもリカバリできる。
そういうマインドが、今の自分を支えている。
⑤ これから海外で働きたい人へのリアルアドバイス
最後に、これから海外エンジニアを目指す人に伝えたいこと。
✅ とにかくアウトプットする癖をつけよう
GitHubでコード公開でもいいし、QiitaやZennで日本語記事書くのもOK。
**「誰かに見られる前提で作業する習慣」**は絶対に役立つ。
✅ 英語は「完璧に話す」より「最低限伝わる」を目指せ
文法とか発音とか、最初は気にしなくていい。
**「言いたいことが伝われば100点」**っていう気持ちで、まずは話そう。
✅ 「自分の意見を持つ」ことを恐れない
「こうしたほうがいいと思う」
「自分はこう考える」
これを言えないと、海外現場では「存在感ゼロ」のまま終わる。
✅ 怖がらずに失敗しよう
間違ってもいい。
むしろ、**「早く失敗して、早く改善する」**のが正解。
そのプロセスが評価される世界だから。
✅ 一歩ずつ、でも確実に
最初から「世界レベルのエンジニア」になれなくても大丈夫。
「昨日の自分より、今日の自分が少しでも前に進んでいる」
これが積み重なれば、必ず評価はついてくる。
【まとめ】
最初は怖かった。
でも、あの時飛び込んで、本当に良かった。
日本でくすぶっていた「自分の可能性」が、
この海外という環境でようやく花開きはじめた気がする。
これからも、もっと成長したい。
そして、「次に海外を目指す誰か」の背中を押せる存在になりたいと思ってる。
もし、この記事を読んで「自分もやってみたい」って思った人がいたら、
心からこう言いたい。
「大丈夫。怖いのは最初だけ。
あとは全部、あなたの努力次第で道は開けるから。」

コメント